デスクの電話が鳴って、表示された番号が海外のものだったとき。受話器を取る前の数秒で、頭の中が真っ白になる。あの感覚には、英語が得意な人でも心当たりがあります。
顧客との電話は、相手の表情も資料も使えません。耳と口だけが頼りで、しかも相手は待ってくれない。だから「英語は読み書きなら何とかなるのに、電話だけは苦手」という人がとても多いのです。
ただ、その苦手さの正体は英語力そのものではありません。電話で使う表現は範囲が驚くほど狭く、しかも同じ型を何度も使い回せます。名乗る、用件を聞く、待ってもらう、聞き返す、都合を確認する、折り返す。この六つの引き出しに二、三個ずつ表現を入れておけば、顧客対応の電話はかなりの割合で乗り切れます。
この記事では、一本の短い電話をまるごと体験したうえで、受ける側・かける側の流れ、都合の断り方と代替案の出し方、数字やスペルの確認、クレーム対応の言葉選び、そして日本語の電話マナーとの違いまでを順番にたどります。読み終えたときには、あなたのメモ帳に書き写せる具体的な一文がいくつも残っているはずです。独学で口が動くところまで持っていきたい方は、実際に声を出す場として英語教室を併用するのも一つの手です。
まずは、電話全体を支えている「型」から見ていきましょう。ここを押さえると、以降のフレーズがすべて同じ地図の上に並びます。
英語の電話対応で顧客に失礼にならない六つの型
- 電話は「名乗る→用件→都合の確認→対応→次の約束→締め」の六段階で動く
- 丁寧さは難しい単語ではなく、相手の時間への配慮と代替案で決まる
- 日本語の電話マナーをそのまま英語に直訳すると詰問調になりやすい
- 覚えるべき表現は場面ごとに二、三個で足りる
顧客との英語の電話は、六つの段階に分解できます。名乗る、用件を伝えるか聞き取る、相手の都合を確認する、その場でできる対応をする、次のアクションを約束する、締めの挨拶をする。この順番は受ける側でもかける側でも変わりません。
なぜ型から入るのかというと、電話で言葉に詰まる原因の多くが「次に何を言うべきかわからない」ことにあるからです。単語が出てこない場合よりも、話の進め方を見失って沈黙する場合のほうが、相手には不安に映ります。逆に段階を体で覚えていれば、多少表現が拙くても会話は前に進みます。
たとえば担当者が不在だったとき、日本語では「席を外しております」で会話が止まりがちです。英語では不在を伝えたあと、必ず次の一手を出します。伝言を預かるか、折り返すか、別の担当者につなぐか。この三択を提示するところまでが一つの型です。
もう一つ、日本語との大きな違いが相手の時間への配慮です。英語の電話では、用件を告げたあとに「いま話しても大丈夫ですか」と確認する習慣があります。日本語では相手が忙しければ察して切ってくれるだろうと考えますが、英語では言葉にして確認するほうが礼儀にかないます。
そして丁寧さの正体は、難しい語彙ではありません。would や could を一語差し込む、断ったら代替案を添える、聞き取った内容を復唱する。この三つの習慣だけで、印象は大きく変わります。

型が見えたところで、実際の会話を一本まるごと通してみましょう。短いやり取りの中に、六段階のほとんどが詰まっています。
一本の電話をまるごと体験する会話例と和訳
- 顧客からの電話に出て、都合が悪いことを伝え、時間を決め直すまでの一往復
- 名乗り・用件・都合確認・代替案・希望聴取・着地の六要素がすべて入っている
- まず全体を音読し、そのあとで語句を分解すると定着しやすい
最初に扱うのは、こんな状況です。顧客から電話がかかってきたけれど、あなたはこれから外出しなければならない。今すぐには話せない。この「話せないと伝えて、話せる時間を決め直す」やり取りが、顧客対応で最も気を使う場面の一つです。
- 場面設定
- You are talking with a client.(担当者が顧客と電話で話している場面)
- 担当者
- Hello, Sato here.
- 顧客
- This is Mr. White from XYZ Corporation. The reason for my call is to speak with you regarding your visit to London. Is this a good time for you to talk?
- 担当者
- Actually, no. I’ve got to run. I’ll be out of the office till 2:00 p.m. Can I call you back two hours from now?
- 顧客
- I’m afraid I’m not available at that time.
- 担当者
- What time suits you best?
- 顧客
- Three o’clock would be fine.
- 担当者
- That’s OK. I’ll call you back then.
- 顧客
- Thank you.
和訳で流れを確かめる
- 担当者
- はい、佐藤ですが。
- 顧客
- こちらはXYZ社のホワイトです。あなたのロンドン訪問に関してお話ししたくお電話しました。いまお話ししてもお時間は大丈夫でしょうか。
- 担当者
- 実は、いまは都合が悪いのです。急いで出なければなりません。午後2時までは社を離れております。いまから2時間後に折り返してもよろしいでしょうか。
- 顧客
-
たった八往復ですが、要素はほぼ全部そろっています。名乗る、用件を聞く、都合が悪いと伝える、代替の時間を提案する、断られたら相手の希望を尋ねる、決まった内容で着地する。この流れを丸ごと覚えてしまえば応用の幅が一気に広がります。
会話に出てきた語句の意味
- Hello, ○○ here.
- はい、○○です。自分宛てにかかってきた電話に出るときの軽い名乗り。
- client / corporation
- client は仕事上の顧客、得意先、取引先。corporation は法人、企業体。
- reason for 〜 / regarding 〜
- 〜の理由/〜に関して、〜について。
- Is this a good time 〜?
- 〜するのに都合の良い時間ですか。
- have got to run / be out of 〜
- 急いで行かなければならない、急用がある/〜にいない。
- call you back / I’m afraid 〜
- 電話をかけ直す/残念ながら〜、あいにく〜。
- available / suit
- 手が空いている、応対できる/適合する、都合が合う。
意味がわかっただけでは、まだ口から出ません。次に、この会話の一語一語を掘り下げて「どこまで丁寧なのか」「顧客相手に使えるのか」を見極めていきます。
会話に出た表現を丁寧さの目線で掘り下げる
- 名乗りは This is 〜 / 〜 speaking / 〜 here の三種を関係性で選ぶ
- 用件の切り出しは The reason for my call is to 〜 が最も安全
- would や could を一語足すだけで断定が和らぐ
- I’ve got to run. や Actually, no. は親しい相手向けの軽い言い方
最初のつまずきは名乗り方です。電話では I’m Sato. とは言いません。ここを間違えると、いきなり不自然な入り方になってしまいます。
- フレーズ
- This is Sato speaking.
- 日本語訳
- 佐藤でございます。
- 使う場面
- 取引先や初対面の顧客からの外線を受けたとき。社名と組み合わせて使えば、そのまま第一声になります。
- 注意点・誤用例
- I’m Sato. は対面での自己紹介の型で、電話ではほとんど使いません。Sato here. は社内の内線や顔なじみの相手向けの軽い形なので、かしこまった顧客には This is 〜 speaking. のほうが安心です。
- 発音・ニュアンス
- This is は「ジスィズ」とつなげ、名前にだけ強い拍を置きます。speaking は「スピーキン」と最後を軽く落とすと自然です。
電話口で I’m Sato. と名乗ると、相手には対面の挨拶を電話でしているような違和感を与えます。This is 〜 / 〜 speaking / 〜 here の三つをセットで覚え、関係性に応じて選び分けてください。迷ったら This is 〜 speaking. が最も守備範囲の広い形です。
続いて用件の切り出しです。顧客が使っていた The reason for my call is to 〜 は、かける側の定型として覚える価値があります。
- フレーズ
- The reason for my call today is to discuss the delivery schedule.
- 日本語訳
- 本日は納品日程についてご相談したくお電話しました。
- 使う場面
- 名乗った直後、相手が身構える前に用件の輪郭を示すとき。today を挟むと落ち着いた響きになります。
- 注意点・誤用例
- くだけた場面なら I’m calling about 〜 や I’m calling to 〜 で十分です。逆に社内の同僚に The reason for my call is 〜 を使うと、やや大げさに響きます。
- 発音・ニュアンス
- reason for my call までを一息で言い、to のあとの動詞にアクセントを置くと用件が耳に残ります。
regarding は about の格式ある言い換えです。同じ役割の語として with regard to 〜、in regard to 〜、concerning 〜 があります。about ばかりになりがちな人は、ここで一つ増やしておくと文が締まります。
- フレーズ
- Is this a good time for you to talk?
- 日本語訳
- いまお話ししてもお時間は大丈夫でしょうか。
- 使う場面
- 自分がかける側で、名乗って用件を告げたあと。予約のない電話ではこの一言が礼儀の中心になります。
- 注意点・誤用例
- 言い換えは Do you have a minute? / Is now a convenient time? / Have I caught you at a bad time?。最後の形は「お忙しいところでしたか」という含みなので、答えが Yes だと都合が悪い意味になります。
- 発音・ニュアンス
- good time を「グッタイム」とつなげ、文末を上げます。早口にせず、相手が答える隙を空けるのがコツです。
I’ve got to run. は「もう行かなくちゃ」という口語です。気心の知れた取引先なら自然ですが、初対面のかしこまった相手には I’m afraid I have to step out shortly.(申し訳ありませんが、もうすぐ出なければなりません)と言い換えると無難です。
available は人にもモノにも使える便利語です。人に使えば「手が空いている、応対できる」、席や在庫に使えば「空いている、入手できる」。I’m not available at that time. は理由を言わずに断れる大人の表現で、顧客対応でも重宝します。
suit は「都合が合う」。What time suits you best? と同じ意味で What time works for you? も日常的に使われます。work は「うまくいく、都合がつく」で、Does Thursday work for you? のように予定調整全般に応用できます。
最後に would の働きです。Three o’clock is fine. でも通じますが、would が入ると「3時であればありがたいのですが」という控えめな色がつきます。丁寧さを足したいときは would と could を差し込む。この習慣ひとつで、同じ内容が驚くほど柔らかく響きます。
では、実際に受話器を取る瞬間から順に、場面別のフレーズをそろえていきましょう。
電話を受けるときの流れと場面別フレーズ
- 第一声は社名と自分の名前を告げてから用件を尋ねる
- 保留にする前には必ず一声かけ、戻ったら Thank you for holding.
- 不在を伝えたら、伝言・折り返し・別担当の三択を出す
- 聞き返しは失礼ではなく、取り違えを防ぐ技術
受ける側の第一声で、会社の印象が決まります。ここは考える時間がないので、口が勝手に動くまで音読しておく価値がある部分です。
第一声で名乗る
- フレーズ
- Thank you for calling ABC Corporation. This is Lisa Nakamura speaking.
- 日本語訳
- お電話ありがとうございます。ABC社の中村リサです。
- 使う場面
- 外線を受けたときの標準形。時間帯に応じて Good morning, ABC Corporation, Lisa speaking. How may I help you? と替えても構いません。
- 注意点・誤用例
- 社名より先に自分の名前を言うと、相手はどこにかけたのか一瞬わからなくなります。社名、名前、用件伺いの順を崩さないでください。
- 発音・ニュアンス
- Thank you for calling は「サンキュフォコーリン」と一続きに。How can I help you? と May I help you? を合わせた How may I help you? はより丁寧に響きます。
相手の名前や社名を確認する
- フレーズ
- May I have your name, please? / Could I ask who’s calling, please?
- 日本語訳
- お名前を伺えますか。/どちら様でしょうか。
- 関連フレーズ
- Could you tell me the name of your company?(御社名を教えていただけますか)/I’m sorry, could I have your name again?(もう一度お名前を伺えますか)/Would you mind spelling your name, please?(つづりを教えていただけますか)
- 注意点・誤用例
- Who are you? は詰問に聞こえます。「どちら様ですか」を直訳しないでください。
- 発音・ニュアンス
- 聞き取れたら Thank you, Mr. Collins. と一度復唱します。確認と丁寧さを同時に果たせます。
聞こえないときに Hello? Hello? と連呼すると、苛立っているように響きます。無言や連呼ではなく、I’m sorry, I can’t hear you very well. のように言葉にして状況を伝えてください。相手は自分の声量や電波を調整できます。
自分宛ての電話だったとき
- フレーズ
- Speaking. / This is Sato speaking. / That’ll be me. How can I help you?
- 日本語訳
- 私です。/佐藤は私です。/私です。ご用件をお伺いします。
- 使う場面
- Could I speak to Mr. Sato? と聞かれたときの返し。Speaking. の一語だけでも成立します。
- 注意点・誤用例
- Yes, I am Sato. は不自然です。また Speaking. だけだと素っ気なく響く場面もあるので、顧客には This is Sato speaking. と続けるほうが柔らかいです。
- 発音・ニュアンス
- 面識のある相手なら Hi, Mr. White. How have you been? と一言添えると会話が温まります。
保留にする・取り次ぐ
- フレーズ
- Could you hold on a second? Thank you. / One moment, please. I’ll transfer you to the sales department.
- 日本語訳
- 少々お待ちいただけますでしょうか。/少々お待ちください。営業部におつなぎします。
- 関連フレーズ
- Just a moment, please.(少々お待ちください)/I’ll put you through.(おつなぎいたします)/Would you mind holding while I check?(確認いたしますのでお待ちいただけますか)/Thank you for holding.(お待たせいたしました)
- 注意点・誤用例
- 無言で保留にすると、切れたと勘違いされます。保留前に必ず一声かけ、待たせる見込み時間が長いなら It may take a few minutes. と添えます。
- 発音・ニュアンス
- 戻ったら Thank you for holding. または Thank you for waiting. から再開します。Sorry to keep you waiting. も使えます。
担当者が不在・応対できないとき
- 不在を伝える
- I’m afraid he’s not available at the moment.(あいにく、ただいま電話に出られません)/I’m sorry, she’s on another line.(ただいま他の電話に出ております)/I’m afraid he’s out of the office right now.(ただいま外出しております)/She’s in a meeting until four o’clock.(16時まで会議に入っております)/He’s off today. He’ll be back tomorrow morning.(本日は休みを取っております。明朝には出社いたします)
- 次の一手を出す
- Could I take a message?(伝言をお預かりしましょうか)/Would you like him to call you back later?(のちほど折り返させましょうか)/I’ll tell her you called.(お電話があった旨、申し伝えます)/Is there someone else who could help you with this?(ほかの者でお役に立てることはございますか)/May I have your phone number, just in case?(念のためお電話番号を伺えますか)
- 注意点・誤用例
- 不在の理由を細かく説明する必要はありません。He is in the bathroom. のような具体的すぎる説明は避け、not available でまとめます。
- 発音・ニュアンス
- I’m afraid は「アイムアフレイ」と軽く添えるだけで、断りの角が取れます。文頭に置く習慣をつけてください。
伝言を受けたら、必ず復唱して確認します。Let me repeat that back to you.(復唱させてください)や Let me just write that down.(書き留めますので少しお待ちください)を挟むと、聞き間違いを防げます。復唱は最も費用対効果の高い一手間です。
聞き取れないとき
- フレーズ
- I’m sorry, could you repeat that, please? / Could you speak a little more slowly, please?
- 日本語訳
- すみません、もう一度おっしゃっていただけますか。/もう少しゆっくり話していただけますか。
- 関連フレーズ
- Do you mind saying that again?(もう一度お願いできますでしょうか)/I’m sorry, I can’t hear you very well. Could you speak a little louder?(お電話が遠いようです。もう少し大きな声でお願いできますか)/Do you mean the delivery date, not the order date?(注文日ではなく納品日のことでしょうか)
- 注意点・誤用例
- What? だけを返すと乱暴に響きます。Pardon? や Sorry? のほうが安全で、そこに could you 〜 を足せば十分丁寧です。
- 発音・ニュアンス
- わからない箇所を特定して聞き返すと一往復で解決します。全体を Could you repeat that? と返すより、Sorry, the date again? のほうが早いこともあります。
聞き返すのは失礼ではありません。わからないまま話を進めて用件を取り違えるほうが、あとで大きな迷惑になります。聞き返す勇気は、電話対応の技術のひとつです。

受ける側の準備が整いました。次は、事前に台本を用意できる「かける側」です。ここは準備量がそのまま余裕になります。
電話をかけるときの流れと場面別フレーズ
- 名乗り・取り次ぎ依頼・用件・都合確認・締めの五段階でメモを作る
- 取り次ぎ依頼では姓だけでなくフルネームを言うと相手が助かる
- 締めの直前に次のアクションを口にすると自然に終われる
かける側の強みは、話す内容を先に決められることです。名乗りの一文と用件の一文だけでも紙に書いておけば、最初の緊張のピークを越えられます。
名乗って取り次いでもらう
- フレーズ
- Hello, this is Shoko Tanaka from ABC Corporation. Could I speak to Mr. Jones in Sales, please?
- 日本語訳
- もしもし、ABC社の田中祥子です。営業部のジョーンズさんをお願いできますでしょうか。
- 関連フレーズ
- My name is Shoko Tanaka. I’m calling from ABC Corporation.(ABC社の田中祥子と申します)/Would Mr. Jones be available?(ジョーンズさんはお手すきでしょうか)/I’d like to speak to the person in charge of overseas shipping.(海外発送のご担当者とお話ししたいのですが)
- 注意点・誤用例
- Mr. や Ms. のあとは通常は姓のみですが、同姓の社員がいる可能性を考え、電話ではフルネームを言うと取り次ぐ側が助かります。
- 発音・ニュアンス
- 自分の名前と社名はゆっくりはっきり。ここを早口にすると、相手は最初から聞き返す必要が出てしまいます。
用件を伝える
- フレーズ
- I’m calling to inquire about your products.
- 日本語訳
- 御社の製品についてお伺いしたくお電話しました。
- 関連フレーズ
- The reason for my call is to confirm the schedule for your visit to London.(ロンドンご訪問の日程を確認したくお電話しました)/I’m returning a call from Mr. Jones.(ジョーンズさんからお電話をいただいたので折り返しました)/I’m following up on the quotation I sent last week.(先週お送りした見積書の件でご連絡しました)
- 注意点・誤用例
- 用件を長く説明する前に、Is this a good time for you to talk? を挟むのが英語圏の作法です。順番を逆にすると、相手は途中で切りにくくなります。
- 発音・ニュアンス
- following up on は「フォロウィンガポン」とつながります。催促の場面でも柔らかく響く便利な言い方です。
相手が不在だったとき
- フレーズ
- Could I leave a message? / Would you mind asking him to call me back?
- 日本語訳
- 伝言をお願いできますか。/折り返しのお電話をいただくようお伝えいただけますか。
- 関連フレーズ
- Do you know when she’ll be back?(いつ頃お戻りになるかご存じですか)/I’ll call back later this afternoon.(午後にあらためてお電話いたします)/Could you just tell him that I called?(お電話した旨だけお伝えいただけますか)/Let me give you my number.(私の電話番号を申し上げます)
- 注意点・誤用例
- 伝言は要点だけにします。長い内容は Could I send an email instead? と切り替えたほうが正確に伝わります。
- 発音・ニュアンス
- 電話番号を伝えるときは二桁ずつ区切らず、一桁ずつ区切ってゆっくり。最後にもう一度繰り返すと親切です。
電話を切る
- フレーズ
- OK, I’ll send you the files by the end of the day. Thank you for your time. Goodbye.
- 日本語訳
- それでは、今日中に資料をお送りします。お時間をいただきありがとうございました。失礼いたします。
- 関連フレーズ
- So, I’ll see you next Monday at ten.(では来週月曜の10時にお会いしましょう)/Thank you for your help. Goodbye.(いろいろとありがとうございました)/It was nice talking to you.(お話しできてよかったです)
- 注意点・誤用例
- Bye-bye. は親しい間柄向けです。顧客には Goodbye. か Have a nice day. でまとめます。
- 発音・ニュアンス
- 締めの直前に次のアクションを口にすると、会話が自然に終わります。用件が終わったのに切りにくい、という状態を避けられます。
かける側の流れも見えました。では、冒頭の会話の山場だった「都合が悪いと伝えて時間を決め直す」場面を、言い換えごと掘り下げていきます。
都合を確認し、かけ直しを約束する言い方
- 断るときは必ず代替案を添え、「いつなら大丈夫」を示す
- 断られたら粘らず、選択権を相手に渡す
- 決まった時間は最後に復唱して行き違いを防ぐ
顧客対応で最も気を使うのが、この場面です。「いまは話せない」と伝える行為そのものは失礼ではありません。失礼になるのは代替案を出さないときです。
今は話せないと伝える
- フレーズ
- I’m afraid this isn’t a good time. Could I call you back?
- 日本語訳
- あいにく、いまは都合がつきません。折り返してもよろしいでしょうか。
- 関連フレーズ
- I’m just about to head into a meeting. May I call you back in an hour?(これから会議に入るところです。1時間後に折り返してもよろしいですか)/I’m afraid I’m tied up until two. Would two thirty work for you?(2時まで手が離せません。2時半でいかがでしょうか)/Sorry to cut this short, but I have to run to another appointment.(恐れ入りますが、次の約束がありまして)
- 注意点・誤用例
- 冒頭の会話の Actually, no. は気心の知れた相手を前提にした軽い言い回しです。初対面の顧客には Actually, I’m afraid now isn’t the best time. と afraid を足して和らげます。
- 発音・ニュアンス
- tied up は「タイダップ」。忙しさを角の立たない言い方で表せる定番表現です。
相手の都合を尋ねる
- フレーズ
- What time suits you best? / When would be a good time to reach you?
- 日本語訳
- 何時がご都合よろしいですか。/いつ頃おかけしたらよろしいでしょうか。
- 関連フレーズ
- What time works best for you?(何時が一番ご都合よろしいでしょうか)/Would this afternoon be convenient for you?(本日午後はご都合いかがでしょうか)/Shall I call you back, or would you prefer to email?(折り返しましょうか、それともメールのほうがよろしいですか)
- 注意点・誤用例
- 時差がある相手には your time を添えます。Would three o’clock your time work for you? のようにすると、確認の一往復が省けます。
- 発音・ニュアンス
- suits you は「スーツュー」とつながります。works for you のほうが日常的で、どちらも同じ意味です。
断られたときの受け方
- フレーズ
- I see. Then what time would be convenient for you?
- 日本語訳
- 承知しました。それでは何時がご都合よろしいでしょうか。
- 関連フレーズ
- No problem at all. I’ll work around your schedule.(かしこまりました。ご都合に合わせます)/That’s OK. I’ll call you back at three, then.(承知しました。では3時にかけ直します)/Let me confirm — I’ll call you at three today.(確認させてください。本日3時にお電話します)
- 注意点・誤用例
- 断られた直後に別の候補時間を続けて三つ並べると、押しが強く感じられます。まず一度引いて、選択権を相手に渡してください。
- 発音・ニュアンス
- work around your schedule は「ご予定に合わせて動きます」という前向きな響きで、顧客対応と相性が良い言い方です。
時間が決まったら、必ず最後に復唱します。約束のすり違いは、電話対応で最も後を引く失敗です。ここまで来れば通常の電話は乗り切れますが、実務では想定外も起こります。
通信トラブル・スペル・数字を確実に伝える
- 切断や電波不良は言葉で状況を伝え、かけ直しを申し出る
- 聞き分けにくい子音は単語に置き換えて確認する
- 15と50、3月4日と4月3日は取り違えの定番なので言い方を工夫する
- 留守番電話は名前・用件・依頼・連絡先の四点で足りる
電話が切れた・電波が悪い
- フレーズ
- I’m afraid we got disconnected. / I’m sorry, the connection is not good. Shall I call you back?
- 日本語訳
- 電話が切れてしまったようです。/接続状態が悪いようです。こちらからかけ直しましょうか。
- 関連フレーズ
- You’re breaking up a little. Could you move to a different spot?(少し音が途切れています。場所を変えていただけますか)/Can you hear me now?(いま聞こえますか)
- 注意点・誤用例
- 切れたときは、かけた側がかけ直すのが一般的な作法です。ただし顧客が相手なら、こちらから Shall I call you back? と申し出るほうが親切です。
- 発音・ニュアンス
- breaking up は携帯電話の音切れを表す定番語。「壊れている」ではありません。
スペルと数字を確認する
- フレーズ
- Is that “M” for Mike or “N” for November?
- 日本語訳
- Mike の M でしょうか、それとも November の N でしょうか。
- 関連フレーズ
- How do you spell your name?(お名前はどのように綴りますか)/Could you spell that out for me?(綴りを教えていただけますか)/A as in Alpha, B as in Bravo(Alpha の A、Bravo の B)
- 使う場面
- 名前や注文番号を書き取るとき。BとV、MとN、SとFは電話越しで混同しやすい代表格です。
- 発音・ニュアンス
- 単語に置き換えて確認する方法は世界中の電話業務で使われており、失礼にはあたりません。
数字の15(fifteen)と50(fifty)は電話越しで最も取り違えの多い組み合わせです。one five, not five zero のように一桁ずつ読み上げて確認してください。日付も 3/4 が国によって3月4日か4月3日か変わるため、the fourth of March のように月名で言い切るのが安全です。金額や個数の取り違えは、そのまま業務上の損失につながります。
留守番電話にメッセージを残す
- フレーズ
- This is Shoko Tanaka from ABC Corporation. I’m calling in regards to the price list. Please call me back at 1234-567-890 when you get this message. Thank you.
- 日本語訳
- ABC社の田中祥子です。価格表の件でお電話しました。このメッセージをお聞きになりましたら、1234-567-890までお電話いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
- 使う場面
- 相手が不在で留守番電話に切り替わったとき。名前、用件、してほしいこと、連絡先の四点にまとめます。
- 注意点・誤用例
- 長々と経緯を話す必要はありません。詳細が多い用件は、留守電で概要だけ伝えてメールに切り替えます。
- 発音・ニュアンス
- 電話番号は最後にゆっくり、二度繰り返すと親切です。名前と番号だけは特別ゆっくりを合図にしてください。
トラブル対応の言葉がそろったところで、顧客対応で最も繊細な場面に進みます。苦情や問い合わせを受けたときの言葉選びです。
顧客からのクレームや問い合わせに答えるときの言葉選び
- 謝意と共感を先に置いてから中身に入る
- 即答できないことは安請け合いせず、確認する旨を伝える
- いつまでに何をするかを明示すると相手は落ち着く
苦情の電話でこじれるのは、事実確認から入ってしまうときです。相手はまず気持ちを受け止めてほしい。だから順番を変えます。感謝と共感を先、事実確認を後です。
- フレーズ
- Thank you for bringing this to our attention. I’m very sorry for the inconvenience.
- 日本語訳
- お知らせいただきありがとうございます。ご不便をおかけし、
注意点
That’s not our fault. や It’s not my department. は、たとえ事実であっても顧客対応では避けてください。責任の所在を口にする前に、Let me find out who can help you with this. と受け皿を示すほうが、話が早く収まります。
言葉選びの方針が定まりました。次に、日本語の発想をそのまま英語に持ち込むと起きやすいずれを、まとめて点検しておきましょう。
つまずきやすい違いと言い換えの目安
- 「どちら様ですか」の直訳は詰問になる
- Would you mind 〜? の承諾は No だが Sure. でも意図は通じる
- client と customer は関係の性質で選び分ける
- call you back と call back は主語と向きで使い分ける
Who are you? と聞かない
「どちら様ですか」を直訳すると詰問になります。正しい形は May I ask who’s calling? です。who’s calling という言い方をひとかたまりで覚えると、迷わなくなります。
Would you mind 〜? への返事
「〜すると気になりますか」という質問なので、承諾は No、断りは I’m afraid I do. です。ただし Sure. や Of course. と答えても意図は伝わります。混乱するくらいなら Sure, no problem. で構いません。
client と customer と account
client は継続的な取引関係にある依頼主や得意先で、専門サービスの提供先に使うことが多い語です。customer は商品やサービスを購入する一般の顧客。account も「取引先」の意味で使われ、a key account は「重要取引先」を指します。
till と until、call you back と call back
till は口語的、until は書き言葉寄りですが意味は同じです。会話では I’ll be out till two. で自然に通じます。
かけ直しの表現は向きで選びます。相手にかけ直すなら call you back、自分がかけ直すと宣言するなら I’ll call back later でも成立します。折り返しをお願いするなら Could you ask her to return my call? という言い方も便利です。
Actually, no. の直接さ
冒頭の会話は、気心の知れた関係を前提にした軽い言い回しでした。初対面の顧客なら afraid を足して和らげる。この一語の差が、そのまま印象の差になります。
知識の整理はここまでです。残るのは、覚えた表現を電話口で使える状態に変える作業です。
苦手意識をほどく練習手順と一週間の復習計画
- 苦手さの正体は英語力より場数の不足にある
- 音読、片側だけの返し、条件差し替えの三段階で練習する
- メモ枠と名乗りの二行を紙に用意しておく
- 一週間で一巡する軽い計画にすると続けやすい
電話は顔が見えません。相手の表情もジェスチャーも使えず、耳だけが頼りです。だから英語での電話が苦手だという人が多いのです。
ただ、その苦手さの正体は英語力そのものではないことがほとんどです。相手が早口である、なじみのない訛りがある、伝わったか確かめられない、困ったときの言い回しを知らない、周りの同僚に聞かれている。これらは、日本語で電話を取り始めた新人が感じる不安とまったく同じ構造をしています。
日本語なら数か月で慣れるのに英語では慣れないのは、単に場数が足りていないからです。だからこそ、電話特有の決まり文句だけを先に覚えると負担が一気に軽くなります。
練習の三段階
第一段階は音読です。冒頭の会話を声に出して数回読みます。目で追うだけでは、口の筋肉が覚えません。
第二段階は片側だけの返しです。自分を担当者の側に置き、顧客のセリフだけを目で追って、自分の返しを口から出します。台本を半分隠すだけで、負荷が実戦に近づきます。
第三段階は条件の差し替えです。時間を「2時間後」ではなく「30分後」「明日の午前」に、用件を「ロンドン訪問」から「見積書の確認」に入れ替えて、同じ流れを組み立て直します。同僚と役を交代しながら演じるのも実戦に近い練習になります。

机の上に用意しておくもの
実務的な備えとして、メモの枠を印刷しておく方法があります。相手の名前、社名、用件、電話番号、折り返し希望時刻。この五項目の記入欄をあらかじめ紙に用意しておけば、聞くべきことを聞き忘れません。
かける側になるときは、名乗りの一文と用件の一文だけを英語で書いておきます。この二行があるだけで、最初の緊張のピークを越えられます。
一週間の軽い復習計画
続けやすさを優先して、一日十分程度で一巡する組み立てにします。
- 1日目:冒頭の会話を三回音読し、名乗りの三形(This is 〜 / 〜 speaking / 〜 here)を口に出す
- 2日目:受ける側の第一声と名前確認の五文を暗唱する
- 3日目:保留・取り次ぎ・不在対応の三択を、状況を変えて三通り言ってみる
- 4日目:聞き返しの五文と、スペル確認の言い方を練習する
- 5日目:かける側の五段階を、自分の実際の業務内容に置き換えて台本にする
- 6日目:都合の断り方と代替案の出し方を、三つの時間帯で言い分ける
- 7日目:冒頭の会話を台本なしで通し、詰まった箇所だけ本文に戻る
一巡したら、詰まった箇所だけを二巡目で回します。全部を等しく繰り返す必要はありません。
とはいえ、一人で音読を続けていると「この言い方は相手にどう響いているのか」が確かめられません。声に出して相手の反応を受け取る場を持つと、練習の精度が上がります。実際の会話で試したい方は、こちらから内容をご覧いただけます。
最後に、今日から使える八つの表現を並べておきます。この八つが口をついて出るようになれば、冒頭の会話は自分の言葉になります。
まとめ:今日から使う八つの表現早見
- 受ける、名乗る、切り出す、確認する、断る、代替案、希望を聞く、着地の八点
- この八つで一本の電話の骨格が完成する
数を絞るのは、迷う時間をなくすためです。電話は考える余裕がないので、選択肢が少ないほうが強い。まずは八つだけを口が覚えるまで繰り返してください。
- 受ける第一声
- Thank you for calling ABC Corporation. This is Sato speaking.(お電話ありがとうございます。ABC社の佐藤です)
- 軽い名乗り
- Sato here.(はい、佐藤です)
- 用件の切り出し
- The reason for my call is to 〜(〜のためにお電話しました)
- 都合の確認
- Is this a good time for you to talk?(いまお話ししてもお時間は大丈夫でしょうか)
- 断り
- I’m afraid I’m not available at that time.(あいにくその時間は都合がつきません)
- 代替案
- Can I call you back two hours from now?(いまから2時間後に折り返してもよろしいでしょうか)
- 希望を聞く
- What time suits you best?(何時が一番ご都合よろしいですか)
- 着地
- I’ll call you back then.(それではその時間に折り返します)
最後に、学習者からよく寄せられる疑問をまとめておきます。気になる項目だけ拾い読みしてください。
よくある質問(FAQ)
- 名乗り方、聞き返し、語の使い分けなど実務で迷いやすい点を整理
- 迷ったときの安全な選択肢を優先して示す
電話で名乗るとき、This is 〜 と 〜 speaking と 〜 here はどう選べばよいですか。
関係性で選びます。取引先や初対面の顧客からの外線には This is Sato speaking. が最も安全です。社名を添えて Thank you for calling ABC Corporation. This is Sato speaking. とすれば第一声として完成します。Sato here. は社内の内線や顔なじみの相手向けの軽い形です。なお I’m Sato. は対面での自己紹介の型なので、電話では使いません。迷ったら This is 〜 speaking. を選んでください。
相手の言葉が聞き取れず何度も聞き返すのは失礼になりませんか。
失礼にはあたりません。わからないまま話を進めて用件を取り違えるほうが、あとで大きな迷惑になります。I’m sorry, could you repeat that, please? や Could you speak a little more slowly, please? を使ってください。また、全体を聞き返すより、わからない箇所を特定して Sorry, the date again? のように尋ねると一往復で解決します。聞こえないときに Hello? を連呼するのは苛立って響くので避けてください。
client と customer はどのように使い分けますか。
client は継続的な取引関係にある依頼主や得意先を指し、専門サービスの提供先に使うことが多い語です。customer は商品やサービスを購入する一般の顧客を指します。加えて account も取引先の意味で使われ、a key account は重要取引先を表します。社内で顧客をどう呼んでいるかに合わせるのが実務的です。
顧客からの電話で今は話せないとき、どう伝えれば失礼になりませんか。
断ることそのものは失礼ではなく、代替案を出さないことが失礼になります。I’m afraid this isn’t a good time. Could I call you back? のように断りと折り返しの申し出をひと続きにしてください。そこで断られたら粘らず、What time suits you best? と選択権を相手に渡します。時間が決まったら Let me confirm — I’ll call you at three today. と復唱して行き違いを防ぎます。
数字や日付を取り違えずに伝える方法はありますか。
数字は一桁ずつ読み上げます。15と50は電話越しで最も混同しやすいので、one five, not five zero のように確認してください。日付は 3/4 が国によって3月4日か4月3日か変わるため、the fourth of March のように月名で言い切るのが安全です。名前や注文番号のつづりは、A as in Alpha のように単語に置き換えると、BとVやMとNの混同を防げます。
留守番電話にメッセージを残すときは何を話せばよいですか。
名前、用件、してほしいこと、連絡先の四点で足ります。This is Shoko Tanaka from ABC Corporation. I’m calling in regards to the price list. Please call me back at 1234-567-890 when you get this message. Thank you. のように簡潔にまとめてください。電話番号は最後にゆっくり二度繰り返すと親切です。詳細が多い用件は概要だけ残し、続きはメールに切り替えるほうが正確に伝わります。
英語の電話に苦手意識があります。何から練習すればよいですか。
電話特有の決まり文句から入るのが負担の少ない順番です。取り次ぐ、待ってもらう、聞き返す、都合を確認する、折り返すという五つの引き出しに、それぞれ二、三個の表現を入れておきます。練習は、会話を声に出して数回読む、相手のセリフだけを見て自分の返しを口から出す、時間や用件を差し替えて組み立て直す、という三段階が効果的です。同僚と役を交代して演じると実戦に近づきます。
電話は顔が見えません。だからこそ、決まり文句をいくつか持っているだけで、驚くほど気持ちが軽くなります。次に受話器を取るとき、この記事の八つの表現のうち一つでも口から出れば、それがもう前進です。

