【英語で説明】「お墓参り」の習慣は日本だけ?アメリカの死生観と文化の違いを徹底解説
お盆やお彼岸、年末年始に家族でご先祖様のお墓参りに行く。これは多くの日本人にとって、幼い頃から慣れ親しんだ大切な習慣です。しかし、この「お墓参り」、海外ではどのように捉えられているのでしょうか?実は、私たちが当たり前だと思っている習慣は、世界的に見ると必ずしも一般的ではありません。この記事では、アメリカの文化を例に取りながら、日本と海外のお墓参りに対する考え方の違い、その背景にある宗教や死生観の謎を解き明かしていきます。異文化を理解し、自分の文化を英語で説明できるようになりたい方は、英語教室でコミュニケーションスキルを磨くのも一つの手です。さあ、奥深い追悼文化の世界を探求しましょう。
レッスンの内容
日本人にとっての「お墓参り」とは?
比較を始める前に、まずは私たち自身の文化を再確認してみましょう。日本のお墓参りは、単なる儀式以上の意味を持っています。

家族でご先祖様を敬う、日本の美しい伝統文化です。
お盆、お彼岸に根付く先祖供養の心
日本のお墓参りは、仏教の教えと古来の祖先崇拝が融合した独自の文化です。特に重要なのが、年に数回ある特定の時期です。
- お盆 (Obon): 夏に行われる仏教行事で、ご先祖様の霊がこの世に帰ってくるとされています。家族が集まり、ご先祖様をお迎えし、共に過ごす大切な期間です。
- お彼岸 (Ohigan): 春分と秋分の日を中日とした各7日間。あの世(彼岸)とこの世(此岸)が最も近くなる日とされ、ご先祖様への感謝を伝える絶好の機会と考えられています。
これらの時期に、お墓を掃除し、花や線香を供え、手を合わせてご先祖様に日々の感謝や報告をすることが、日本の伝統的な先祖供養の形です。
「お墓参り」を英語で表現してみよう
この一連の行動を英語で説明するには、いくつかのフレーズを組み合わせると分かりやすいでしょう。
In Japan, we have a custom of visiting our ancestors’ graves during the Obon festival in summer and the Ohigan periods in spring and autumn. We clean the gravestone, offer flowers, and burn incense sticks to show respect and gratitude to our ancestors.
(日本では、夏のお盆や春秋のお彼岸に先祖のお墓参りをする習慣があります。私たちは墓石を掃除し、花を供え、線香を焚いて、ご先祖様への敬意と感謝の気持ちを表します。)
アメリカ人はお墓参りに行かない?リアルな英会話から探る
一方、アメリカでは事情が異なるようです。日本人のケイとアメリカ人のブライアンの会話から、その文化的なギャップを見てみましょう。
【会話で学ぶ】ケイとブライアンのカルチャーギャップ
Kei: Look at all the graves in this churchyard. Where are your ancestors’ graves, Brian?
(この教会の庭にはたくさんのお墓があるね。ブライアン、あなたの先祖のお墓はどこにあるの?)
Brian: My family’s plot is in Kansas, where my grandfather was from. I visit Kansas often to see family, but I hardly ever go to the cemetery.
(僕の家のお墓はカンザスにあるんだ。おじいちゃんがカンザス出身でね。家族に会いにカンザスにはよく行くけど、墓地にはほとんど行かないよ。)
Kei: You don’t visit the graves?
(お墓参りしないの?)
Brian: We don’t really have a custom of visiting graves regularly. The last time I was there was about two years ago, when my grandmother passed away.
(僕たちには定期的にお墓参りをする習慣があまりないんだ。最後にそこに行ったのは、2年くらい前におばあちゃんが亡くなった時かな。)
Kei: Oh, I’m sorry, I didn’t mean to bring up sad memories.
(そうなのね、ごめんなさい。悲しいことを思い出させるつもりはなかったの。)
Brian: It’s all right. I believe she lived a full and happy life. She looked so peaceful, almost like she was smiling. We go to Kansas to see our living relatives, not specifically to visit the graves.
(大丈夫だよ。彼女は充実した幸せな人生を送ったと思う。すごく安らかな顔で、まるで笑っているみたいだったんだ。僕たちは生きている親戚に会いにカンザスに行くのであって、特別にお墓参りのために行くわけじゃないんだ。)
Kei: I see. The way of thinking about graves is quite different from ours in Japan.
(なるほど。お墓に対する考え方が、日本の私たちとはかなり違うんだね。)
会話のポイント解説:覚えておきたい英語表現
- hardly ever go: ほとんど行かない。`hardly` だけで「ほとんど~ない」という強い否定を表します。
- custom: (社会や文化の)習慣、慣習。個人の癖や習慣を指す `habit` とは区別されます。
- pass away: 「亡くなる」の丁寧な言い方。`die` よりも間接的でソフトな表現です。
- I’m sorry to hear that: 「それはお気の毒に」という意味で、相手の不幸な知らせに対して使われる定番のフレーズです。会話中の `I didn’t mean to bring up sad memories` は、自分が悲しい話題の引き金になってしまったことへの謝罪で、より具体的な表現です。
なぜ違う?日米のお墓参り文化、その背景にある3つの理由
この習慣の違いは、どこから来るのでしょうか?その根底には、宗教、死生観、そして埋葬方法という3つの大きな違いが存在します。
理由1:宗教観の違い(仏教 vs キリスト教)
日本のお墓参りは、ご先祖様への感謝を伝え、供養するという仏教の思想が色濃く反映されています。ご先祖様は、お墓や仏壇を通じてこの世の家族を見守ってくれていると考えられています。
一方、キリスト教の多くの宗派では、故人の魂は死後、神の待つ天国へ召されると考えられています。魂はお墓には留まっていないため、お墓はあくまで故人の肉体が眠る記念の場所という位置づけです。そのため、定期的に「供養」に行くという発想自体が希薄になります。
理由2:死生観の違い(輪廻転生 vs 天国での復活)
仏教には、生命は何度も生まれ変わりを繰り返すという「輪廻転生」の考え方があります。ご先祖様の供養をしっかり行うことは、来世の幸せにも繋がると信じられています。
対照的にキリスト教では、人生は一度きりであり、死後は「最後の審判」を経て、神の国で永遠の命を得て復活すると教えられています。故人との再会は地上の墓地ではなく、天国で果たされると信じられているのです。この死生観の違いが、お墓に対する向き合い方の違いに繋がっています。
理由3:埋葬方法の違い(火葬 vs 土葬)
日本では衛生面や土地の制約から、現在では99%以上が火葬です。遺骨をお墓に納めるため、「お骨」が眠るお墓はご先祖様の象徴として非常に重要視されます。
キリスト教では、最後の審判で肉体が復活するという教義から、伝統的に土葬が主流でした。遺体をそのまま埋葬するため、衛生上の観点から、墓地への頻繁な立ち入りを避ける文化が生まれた地域もあったと言われています。
世界の多様な追悼文化:アメリカの事例から
では、アメリカでは故人を追悼する文化が全くないのかというと、そうではありません。日本とは違う形で、故人を偲ぶ習慣が存在します。

メモリアルデーには、多くの墓地が星条旗で彩られます。
メモリアルデー(戦没者追悼記念日)
5月の最終月曜日にあるメモリアルデーは、もともと南北戦争の戦没者を追悼するために始まった祝日です。現在では、軍務中に亡くなったすべての人々を追悼する日として、国全体で非常に大切にされています。この日には、多くの人が墓地を訪れ、故人の墓に花や星条旗を飾り、その犠牲に敬意を表します。
墓地の役割と雰囲気の違い
日本の墓地が山の斜面などに静かに佇んでいることが多いのに対し、アメリカの墓地(cemetery)は、広大な芝生が広がる公園のような雰囲気の場所が多く見られます。人々が散策したり、ベンチで休憩したりと、故人を偲びながらも穏やかな時間を過ごす、開かれた空間としての役割も持っています。
多様な宗教が共存するアメリカのリアル
「アメリカの習慣」と一括りにはできないのが、多民族国家の現実です。キリスト教の中でもカトリックとプロテスタントでは考え方が異なりますし、ユダヤ教、イスラム教、そして仏教など、多様な宗教が共存しています。それぞれのコミュニティが、独自の伝統と儀式に則って故人を追悼しています。
【現代の課題】変わりゆく世界のお墓事情
伝統的なお墓のあり方は、日本だけでなく世界中で変化に直面しています。

自然に還るという考え方から、樹木葬など新しい供養の形が注目されています。
日本における「墓じまい」と新しい供養の形
少子高齢化や核家族化が進む日本では、お墓を継承する人がいない、お墓が遠くて管理できないといった理由から、既存のお墓を撤去する「墓じまい」が増えています。その代わりに、遺骨を永代供養塔に納めたり、手元で供養したり、あるいは自然に還すといった新しい選択肢が広がっています。
海外での散骨や自然葬の広がり
海外でも、宗教観の変化や環境意識の高まりから、伝統的な土葬に代わる選択肢が人気を集めています。美しい海に遺灰を撒く海洋散骨(scattering ashes at sea)や、墓石の代わりに木を植える樹木葬(tree burial)など、よりパーソナルで自然と一体化する形での追悼が選ばれるようになっています。
まとめ:形は違えど、故人を思う心は世界共通
日本とアメリカのお墓参り文化には、宗教や歴史に根差した大きな違いがあることが分かりました。定期的にご先祖様の元へ足を運ぶ日本と、葬儀や記念日に故人を偲ぶアメリカ。その形は異なりますが、根底にある「亡くなった大切な人を敬い、忘れないようにする」という気持ちは、世界共通のものです。
異文化に触れることは、自分たちの文化の独自性と素晴らしさを再発見するきっかけにもなります。今の自分があるのは、これまで生きてきたご先祖様のおかげ。その感謝の気持ちを、自分たちらしい形で持ち続けることが、何よりも大切なのかもしれません。
それではまた、See you!