職場の同僚や上司の並外れた働きぶりについて英語で描写しようとした際、「あの人はまさに仕事中毒だ」と表現したい場面があるかもしれません。
日本語の「仕事人間」や「仕事の虫」という言葉には、職務への強い責任感やプロフェッショナルとしての勤勉さを称える、ポジティブなニュアンスが含まれることが多々あります。しかし、英語でそのまま辞書的な訳語を使ってしまうと、相手に対して予想外の否定的な印象を与え、人間関係にヒビを入れてしまう恐れがあります。正しいニュアンスを理解して状況に応じた単語を使い分けることは、グローバルなビジネス環境において非常に重要です。英語教室などで実践的なコミュニケーションスキルを学ぶ際にも、こうした単語の裏にある温度感を知ることは大きな助けとなります。
本記事では、「仕事中毒」を意味する代表的な英単語であるworkaholicの正確な意味合い、ネイティブスピーカーが感じる心理的なニュアンス、そして相手を不快にさせないための関連表現や、そのまま職場で使える実践的な会話例について徹底的に掘り下げて解説していきます。
では、まずは最も基本となる単語の定義と、その背後にある深い意味合いから見ていきましょう。
- 仕事中毒の人は英語でworkaholic(ワーカホリック)
- ネイティブに伝わるworkaholicの発音と語源
- workaholicは褒め言葉?勤勉さを表す表現との明確な違い
- 忙しさを表す他の表現(busy, overworked)との使い分け
- workaholicを使った基本の文型と応用フレーズ
- 「〜に違いない」を表すmust beの活用と推量の表現
- 「仕事以外のことが苦手」を英語で自然に伝える方法
- workaholicの関連語と派生表現の深いニュアンス
- 相手を不快にさせないための配慮と英語圏の労働文化
- 職場でそのまま使える!場面別の実践的な英会話例
- 日本人が陥りやすいよくある不自然な英文と誤用例
- 理解度をチェックする練習問題と詳しい解説
- workaholicにまつわるよくある質問(Q&A)
仕事中毒の人は英語でworkaholic(ワーカホリック)
- 仕事中毒を表す代表的な英単語はworkaholicである
- 単なる「忙しい人」ではなく心理的な「執着」や「依存」を含む
- 数えられる名詞であるため、単数形の場合は冠詞の「a」が必須となる
「仕事中毒の人」を英語で表す際、最も一般的に使われ、かつ的確に状況を言い当てることができる単語がworkaholicです。
この言葉は、仕事への欲求が極めて強く、働いていないと精神的に落ち着かなくなるほど仕事にのめり込んでいる状態の人物を指します。日本語の文脈に応じて、「仕事依存の人」「仕事人間」「仕事の虫」「自ら働き過ぎる人」「仕事をやめられない人」などと訳すことができます。単に労働時間が長いという表面的な現象だけでなく、内面的な動機付けに焦点が当たっているのが特徴です。
- フレーズ
- My boss is a real workaholic.
- 日本語訳
- 私の上司は本当に仕事人間(仕事中毒)です。
- 使う場面
- 上司が休日も休まず働き、周囲にもそれを無言で求めてくるような状況を、同僚に愚痴としてこぼす場面でよく使われます。
workaholicの中心的な意味合いは、「抱えている仕事量が多い」という客観的な事実にとどまりません。本人が自らの意思で仕事を手放せない、休むべき日や休暇中にも仕事のメールを執拗に確認してしまう、休むことに罪悪感を覚える、仕事以外の趣味や家族との活動に気持ちをうまく切り替えられないといった、心理的な強迫観念や執着のニュアンスを色濃く含んでいます。
文法的な注意点として、workaholicは数えられる名詞(可算名詞)として扱われます。そのため、1人の人物について述べる場合は必ず冠詞の「a」を伴わなければなりません。「He is workaholic.」のように形容詞的に使うのは文法的に誤りであり、不自然に聞こえます。必ず「He is a workaholic.」という形をとりましょう。複数の人物を指す場合は「They are workaholics.」のように複数形の「s」を付けます。
意味と文法を確認したところで、次はこの単語の発音のコツと、その興味深い語源について見ていきましょう。
ネイティブに伝わるworkaholicの発音と語源
- 後半の「HOL」の部分に強いアクセント(強勢)を置く
- workとalcoholic(アルコール依存)が組み合わさった混成語である
- 「-aholic」は何かをやめられない状態を示す接尾辞として働く
どんなに正しい単語を知っていても、発音が間違っていては相手に伝わりません。workaholicの発音記号は、イギリス英語で/ˌwɜː.kəˈhɒl.ɪk/、アメリカ英語で/ˌwɝː.kəˈhɑː.lɪk/と示されます。
日本語のカタカナで「ワーカホリック」と書いてしまうと、すべての音を均等な強さで平坦に読んでしまいがちですが、英語ではそれは通じにくくなる原因です。最大のポイントは、後半の「HOL」の部分を最も強く発音することです。
「work-a-HOL-ic」のように音節を区切り、最初の「work」よりも「HOL」に第一アクセント(強勢)を置きます。また、workの末尾の子音(k)と、それに続く弱い母音(a)が自然に連結(リンキング)するため、実際の日常会話では「ワークァホリック」に近い滑らかで流れるような音として聞こえることが多くなります。「He’s a workaholic.」という文全体で言う場合も、この単語に情報の重要な焦点があるため、文の中でも比較的強く読まれます。
この単語の成り立ち(語源)を知ると、なぜネガティブなニュアンスが含まれるのかがより鮮明に理解できます。workaholicは、「work(仕事)」と「alcoholic(アルコール依存の人)」という2つの言葉を組み合わせて作られた混成語(かばん語)です。1960年代後半から70年代にかけて広く使われるようになりました。
alcoholicの後半部分である「-aholic」または「-oholic」が切り出され、「何かをやめられないほど好む人」「何かに異常なほど夢中になり過ぎている人」を表す接尾辞のような要素として定着しました。この形を持つ日常表現には、買い物がやめられない人を指す「shopaholic(買い物依存症の人)」、チョコレートに夢中な人を指す「chocoholic(チョコ中毒の人)」などがあります。
「-aholic」を付ければどんな単語でも自然な英語になるわけではありません。coffeeholic(コーヒー中毒)やbookaholic(活字中毒)といった表現も一部で見られますが、これらはその場で作られた遊び心のある冗談(スラング)として響くことがあります。むやみに自作の単語をフォーマルなビジネスの場面で使うのは避けましょう。
こうした語源の背景があるため、workaholicには「依存」や「不健康」という重みがあります。次に、この言葉が相手を褒める目的で使えるのかどうか、そして勤勉さを表す別の表現との違いを詳しく見ていきましょう。

workaholicは褒め言葉?勤勉さを表す表現との明確な違い
- workaholicには否定的な含みがあり、褒め言葉としては不適切である
- 純粋な勤勉さを褒める場合はhard workerやhardworkingを使う
- 相手の献身的な姿勢を評価する場合はdedicatedが非常に効果的
結論から言えば、workaholicには通常、好ましくない含み(ネガティブなニュアンス)があります。「仕事熱心」「責任感がある」「勤勉」といった純粋な意図で相手を褒める目的で使用すると、大きな誤解を生む原因になります。
努力や仕事に対する真摯な姿勢を称賛したい場合は、あなたの意図に合わせて以下のような表現を使い分けるのが正解です。
hard worker(働き者)との違い
相手の働きぶりを肯定的に評価する際の最も安全で一般的な表現が、名詞のhard worker(よく働く人、働き者)です。
- フレーズ
- Ken is a hard worker.
- 日本語訳
- ケンは働き者です。
- 使う場面
- 同僚の真面目な仕事ぶりを他の人に紹介したり、ポジティブな評価を下したりする際に使います。
hard workerには、「仕事に熱心に取り組むが、必要なときにはしっかり休める」「家族や趣味とのバランスを取る能力がある」という健全な前提が残されています。対してworkaholicには、「休むことが極端に苦手」「仕事から心理的に距離を置けない」という危うさが含まれます。似ているようで、相手に与える印象は真逆と言っても過言ではありません。
hardworking(勤勉な)との違い
名詞ではなく形容詞として相手の性質を表したい場合は、hardworking(勤勉な、よく働く)を使用します。
「She is a hardworking manager.(彼女は勤勉な管理職です)」や「We are looking for someone honest and hardworking.(私たちは誠実で勤勉な人を探しています)」のように使います。採用面接、推薦状、公式な人物評価などで相手を褒めるのであれば、hardworkingを使うのが最も安全で確実な選択肢です。ここで「He is a workaholic manager.」としてしまうと、「彼は働き過ぎる管理職だ」「部下にも長時間労働を強いる人物だ」というブラックな評価が加わってしまいます。
dedicated(献身的な)との違い
仕事、組織、あるいは特定の目的や顧客に対して深い情熱を注いでいる様子をより崇高な意味で褒めるなら、dedicated(献身的な、熱心な)が非常に有効です。
「He is a dedicated teacher.(彼は熱心な教師です)」のように使います。相手の並外れた努力や高いプロ意識に焦点を当てる美しい表現です。文法的な注意点として、「be dedicated to」という熟語で使う場合、このtoは不定詞ではなく前置詞です。そのため、後ろに動詞を置く場合は必ず動名詞(-ing)にします。「She is dedicated to helping her clients.(彼女は顧客を支援することに全力を注いでいます)」のように活用しましょう。
このように、褒め言葉としての表現は豊かに存在します。では、「忙しい状態」そのものを表す別の言葉とはどう違うのでしょうか。
忙しさを表す他の表現(busy, overworked)との使い分け
- busyは一時的で外部要因によるスケジュールの過密さを表す
- overworkedは会社からの過剰な要求による「過労」を示す
- workaholicは本人の自発的・内面的な依存傾向を指す
労働時間が長い事実や、働き過ぎている状態を示す単語には、誰もが知るbusy(忙しい)や、overworked(働かされ過ぎている、過労の)といった表現があります。これらとworkaholicの最大の違いは、「なぜ忙しいのか」という「原因の所在」にあります。
busy(忙しい)との違い
busyは、予定やタスクが多くて物理的に「忙しい」状態をシンプルに表します。「My boss is very busy this week.(私の上司は今週とても忙しいです)」のように使います。
忙しさはあくまで一時的かもしれません。会社の繁忙期、予期せぬトラブル対応、突然の出張、タイトな締め切りなど、外部の事情によってスケジュールが埋まっている状態です。対してworkaholicは、たとえ業務が落ち着いていても自ら新しい仕事を探して没頭してしまうような、個人の内面的な「性向・習慣」を指します。締め切りがあるから忙しいのはbusyであり、何もなくても働いてしまうのがworkaholicです。
overworked(過労の)との違い
overworkedは、「働かされ過ぎている」「仕事を抱え過ぎている」という受動的な意味合いを持つ形容詞です。
「The staff are overworked.(スタッフは働かされ過ぎています)」や「I’ve been feeling overworked lately.(最近、仕事を抱え過ぎていると感じます)」のように使います。workaholicは本人が自発的に仕事を手放せない傾向に使われますが、overworkedは会社の人員不足、マネジメントの失敗、過剰な業務量など、外部の環境要因によって意図せず働き過ぎになっている場合に使われます。本人は休みたいのに休めないのがoverworkedの核心です。
これらの違いを理解した上で、実際にworkaholicという単語を文の中でどう組み立てるのか、実践的な文型を見ていきましょう。

workaholicを使った基本の文型と応用フレーズ
- 最も基本となるのは「be a workaholic」の形
- 変化の過程を示す「become a workaholic」も頻出する
- realやquiteを添えることで程度の甚だしさを強調できる
workaholicは主に人を指す名詞として使われます。日常会話やビジネスシーンでよく使われる基本の文型をいくつか押さえておきましょう。
be a workaholic(仕事中毒である)
最も基本的で頻繁に使われるのが、主語 + be動詞 + a workaholicの形です。「I’m a workaholic.(私は仕事中毒です)」「My husband is a workaholic.(私の夫は仕事人間です)」のように、現在の状態をシンプルに表現します。過去のことなら「Both of my parents were workaholics.(私の両親は二人とも仕事人間でした)」のようにbe動詞を過去形にします。
become a workaholic(仕事中毒になる)
かつてはそうではなかったのに、ある出来事を境に働き方が変わってしまった過程に焦点を当てる場合は、become a workaholic(仕事中毒になる)という表現が自然です。
「He became a workaholic after he was promoted.(彼は昇進してから仕事中毒になりました)」のように、転職、昇進、独立起業などを表す文と非常に相性が良い形です。断定を少し弱めたい場合は、「She became something of a workaholic…(彼女は少し仕事中毒のようになりました)」と「something of」を挟むと響きが柔らかくなります。
a real workaholic(かなりの仕事人間)
程度の強さを強調したい場合は、前に形容詞のrealを置いて「a real workaholic(本当の仕事中毒、かなりの仕事人間)」と表現します。「My sister is a real workaholic.(私の姉はかなりの仕事人間です)」のように使います。「quite a workaholic」も同様に程度の強さを表し、話し手の呆れや驚きの感情を含ませることができます。
続いて、こうした表現を使って「あの人は仕事中毒に違いない」と推測する際の助動詞の働きについて見ていきましょう。
「〜に違いない」を表すmust beの活用と推量の表現
- mustには「義務」だけでなく「強い推量」の意味がある
- must be は確固たる根拠に基づく「〜に違いない」を表す
- 断定を避けたい場合はmay beやmight beを利用する
誰かの異常な働きぶりを見て、「彼は仕事中毒に違いない」と結論付ける際、英語では助動詞のmustを活用します。日本人学習者はmustを見るとすぐに「〜しなければならない」という義務や強制の意味を思い浮かべがちですが、日常会話では別の重要な働きがあります。
- フレーズ
- She never takes a day off. She must be a workaholic.
- 日本語訳
- 彼女はまったく休みを取りません。仕事中毒に違いありません。
- 注意点・ニュアンス
- ここでのmustは義務ではなく、目の前の事実(まったく休みを取らない)に基づく強い推量を示しています。
「must be + 名詞・形容詞」の形は、知っている情報から「ほぼ間違いなくそうだろう」と強く推測するときに使われます。例えば、「He must be tired after working all night.(一晩中働いたのだから、彼は疲れているに違いありません)」といった具合です。
しかし、他人のことを強い言葉で断定するのは時としてリスクを伴います。推測の確信度がそこまで高くない場合や、断定的な表現を避けてマイルドに伝えたい場合は、助動詞のmayやmightを使います。「He may be a workaholic.(彼は仕事中毒かもしれません)」「She might be turning into a workaholic.(彼女は仕事中毒になりかけているのかもしれません)」とすれば、可能性の一つとして述べる形になり、会話に角が立ちません。
次に、仕事中毒の人が陥りがちな「仕事以外のことが楽しめない」という状態を英語でどう描写するかを見ていきます。
「仕事以外のことが苦手」を英語で自然に伝える方法
- struggle to do で心理的に「〜するのに苦労する」を表現する
- switch off from work で「仕事から気持ちを切り替える」を示す
- 直訳に頼らず、相手の心理的状態を説明する表現を選ぶ
仕事中毒の人の大きな特徴は、働く時間が長いことだけではなく、「仕事以外の活動を楽しめない」「休むのが下手である」「常に仕事のことが頭から離れない」という点にあります。これを英語で伝える際、「〜が苦手だ」を直訳してbe not good atだけで表現しようとすると、単なる能力の欠如のように聞こえてしまい、不自然になることがあります。
struggle to do things outside of work
struggle to doは「〜するのに苦労する、もがく」という意味の動詞フレーズです。「Workaholics often struggle to do things outside of work.(仕事中毒の人は、仕事以外のことをするのに苦労しがちです)」と表現することで、単なるスキルの問題ではなく、心理的にうまく切り替えられないもどかしさや精神的な難しさを的確に表現できます。
have trouble switching off from work
現代のビジネスパーソンにとって最も身近でよく使われる表現が、switch off from workです。文字通り、頭の中にある仕事のスイッチをパチリと切って、心身を休ませる感覚を表します。
- フレーズ
- I can leave the office, but I can’t switch off from work.
- 日本語訳
- 会社を出ることはできますが、仕事から気持ちを切り替えられません。
- 使う場面
- 帰宅後や休日にまで仕事の心配をしてしまったり、物理的に職場を離れても精神的に休まらない状況を吐露する際に使います。
また、極端な状況を描写したい場合は「He does nothing but work.(彼は仕事ばかりしています)」のように、nothing but(〜以外何もしない、〜ばかり)という強い表現を用いることも可能です。これは話し手の不満や誇張が含まれることが多く、家族からのクレームなどによく登場します。
さらに踏み込んで、この「仕事中毒」という概念に関連する他の英単語や派生語についても知識を広げてみましょう。

workaholicの関連語と派生表現の深いニュアンス
- workaholismは「仕事中毒の状態・概念」を表す抽象名詞である
- addicted to work は医学的な「依存症」に近い強い響きを持つ
- live for one’s work は文脈により肯定的にも否定的にもなる
workaholicの周辺には、似たような意味を持つ関連表現がいくつか存在します。状況によって適切に使い分けることで、より精緻な英語表現が可能になります。
workaholism(仕事中毒の状態)
workaholismは「仕事への依存的な傾向」や「仕事中毒の状態そのもの」を表す抽象名詞です。特定の人物を指すのではなく、概念や社会現象を指します。「Workaholism can affect personal relationships.(仕事への過度な没頭は、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります)」のように、論文、報道、人事系の文章などでよく見かける硬い語彙です。
addicted to work(仕事に依存している)
be addicted toは「〜の中毒になっている、依存している」という強い表現です。「He seems to be addicted to work.(彼は仕事に依存しているように見えます)」のように使いますが、アルコールや薬物への依存を表現する際にも使われる単語であるため、他人に面と向かって使うと医学的な判断を下しているように聞こえ、非常に角が立ちます。使用には注意が必要です。
live for one’s work(仕事を生きがいにする)
「He seems to live for his work.(彼は仕事を生きがいにしているようです)」という表現は、文脈や声のトーンによって、ポジティブにもネガティブにもなり得る面白い表現です。情熱を注いでいるという称賛に聞こえることもあれば、「あの人には仕事しか生きがいがない」という皮肉や哀れみに聞こえることもあります。
こうした言葉が持つ重みを理解した上で、実際のコミュニケーションで相手を不快にさせないための配慮と、文化的背景の違いについて考えてみましょう。
相手を不快にさせないための配慮と英語圏の労働文化
- 本人に直接「You’re a workaholic.」と断定するのは避けるべき
- 心配を伝える際は、観察した客観的な事実に基づき声をかける
- 英語圏ではワークライフバランスとメンタルヘルスの意識が非常に高い
ここまで見てきたように、workaholicは日常的な単語でありながら、強烈な批判的、あるいは医学的な依存状態に近い響きを持つため、使う相手や場面には細心の注意が必要です。特に、働き過ぎている本人に向かって直接「You’re a workaholic.」と断定してしまうのは危険です。相手には「あなたは異常なほど仕事ばかりしている」「私生活が破綻している」と非難されているように受け取られかねません。
もし同僚や部下の過労を純粋に心配して声をかけるのであれば、相手にレッテルを貼るのではなく、観察した客観的な事実と純粋な気遣いを伝える表現を選びましょう。
- フレーズ
- You’ve been working very long hours lately. I hope you’re getting enough rest.
- 日本語訳
- 最近、かなり長時間働いていますね。十分に休めているとよいのですが。
- 注意点・ニュアンス
- 批判ではなく共感と配慮を示す大人の表現です。You don’t have to answer emails tonight.(今夜はメールに返信しなくても大丈夫ですよ)と具体的な提案を添えるのも効果的です。
こうした配慮が求められる背景には、英語圏における労働文化の違いが大きく関係しています。日本でも働き方改革が進んでいますが、多くの欧米企業などの英語圏の職場では、長時間労働を「会社への忠誠心」や「美徳」と見なす文化はとうの昔に薄れています。むしろ、限られた勤務時間内で効率的に成果を出し、有給休暇(paid leave)をしっかりと取得し、仕事と仕事以外の境界線(boundaries)を引けることこそが、優秀なビジネスパーソンの証拠とされます。
work-life balance(仕事と私生活の調和)の維持や、burnout(燃え尽き症候群)の予防といったメンタルヘルスの観点がマネジメントにおいて極めて重視されているため、workaholicという言葉は深刻なリスク指標として捉えられやすいのです。真面目で責任感の強い人ほど、自分でも気付かないうちに仕事を優先し過ぎることがあります。国籍やステレオタイプだけで相手の働き方を決めつけず、目の前の相手の状況をよく観察することが大切です。
それでは、これまでに学んだ知識を総動員して、実際の職場でそのまま使える実践的な英会話のダイアログ(対話例)を確認していきましょう。
職場でそのまま使える!場面別の実践的な英会話例
- 同僚の過労を心配し合う会話の流れを掴む
- 働き者の称賛と仕事中毒の懸念を区別して話す
- 自分自身の傾向に気付き、反省する表現を身につける
ここでは、職場でよくある3つのシチュエーションを想定し、自然な会話の流れをロールプレイ形式でお伝えします。
会話例1:上司や同僚の働き過ぎを心配する場面
夜遅いオフィスで、同僚(A)とあなた(B)が、まだ残業している別の同僚トムについて話しています。
- ダイアログ
-
A: Tom is still at the office.
(トムはまだ会社にいますね。)B: Again? It’s almost ten. He’s been working late every day this week.
(またですか?もうすぐ10時ですよ。今週は毎日遅くまで働いていますね。)A: Yes. He must be a workaholic. He gets to the office earlier than we do, and goes home later than everyone else.
(ええ。きっと仕事中毒なんでしょう。私たちより早く会社に来て、誰よりも遅く帰りますからね。)B: I feel sorry for him. I hope he takes some time off soon.
(気の毒に思います。近いうちに休暇を取ってくれるとよいのですが。)
「earlier than we do」のように、比較級の後に続く動詞をdoで受けることで、arriveやgetの重複を避けることができます。また、「I feel sorry for him.」は相手を哀れむのではなく、純粋な同情や心配を表す定番のフレーズです。
会話例2:褒め言葉との使い分けについて議論する場面
優秀な社員であるエマについて、同僚同士が評価を語り合っています。
- ダイアログ
-
A: Would you describe Emma as a workaholic?
(エマのことを仕事中毒の人だと思いますか?)B: Not really. She’s hardworking, but she knows when to stop.
(そうは思いません。彼女は勤勉ですが、やめるべきとき(休むべきとき)を分かっています。)A: That’s an important difference.
(それは重要な違いですね。)B: Yes. She works efficiently and protects her personal time.
(ええ。彼女は効率よく働き、自分の私生活の時間もしっかり守っていますよ。)
会話例3:自分自身のワーカホリックな傾向に気付く場面
休暇明けの同僚との雑談で、ついつい仕事をしてしまった自分を振り返っています。
- ダイアログ
-
A: Did you work during your vacation in Hawaii?
(ハワイでの休暇中にも仕事をしたのですか?)B: Yeah, I couldn’t help it. I answered a few emails every morning.
(ええ、やめられなかったんです。毎朝、何通かメールに返信しました。)A: You may be a bit of a workaholic.
(あなたは少し仕事中毒かもしれませんね。)B: You may be right. I have trouble switching off from work.
(そうかもしれません。仕事から気持ちを切り替えるのがどうも苦手で。)
「I couldn’t help it.」は「自分ではどうすることもできなかった、抑えられなかった」という意味の便利なフレーズです。また、「a bit of」を挟むことで断定をやわらげ、冗談めかした響きを持たせています。
こうした自然な表現がある一方で、日本人がよくやってしまう文法的な間違いも多数存在します。次は誤用例を見ていきましょう。
日本人が陥りやすいよくある不自然な英文と誤用例
- 冠詞の抜けや、workとalcoholicを切り離すミスに注意する
- homeの前にtoを置いてしまう前置詞のミスを防ぐ
- feel pity to ではなく feel sorry for を正しく使う
英語学習の過程で、日本語の直訳思考や文法的な勘違いから、ネイティブスピーカーにとって非常に不自然に聞こえる英文を作ってしまうことがあります。ここでは、働き方に関する話題で日本人が陥りやすい代表的な誤用例と、その正しい直し方を見ていきましょう。
誤:He is workaholic.
正:He is a workaholic.
解説:workaholicは形容詞ではなく数えられる名詞です。単数の場合は必ず冠詞の「a」が必要です。
誤:He is a work alcoholic.
正:He is a workaholic.
解説:語源はwork + alcoholicですが、通常は切り離さず、1つの単語として綴り、発音します。
誤:He goes to home late.
正:He goes home late.
解説:この場合のhomeは「家へ」という方向を示す副詞として働いているため、直前に前置詞のtoを置くのは文法的に誤りです。go home, come home, get homeで覚えましょう。
誤:I feel pity to him.
正:I feel sorry for him.
解説:pityを使うなら前置詞はforですが、日常会話では上から目線に聞こえがちです。「気の毒に思う」はfeel sorry forが自然です。
誤:He comes to office early.
正:He comes to the office early. (または gets to the office)
解説:特定の職場のオフィスを指す場合は、定冠詞のtheが必要です。
間違いやすいポイントを整理できたところで、実際に知識が定着しているか、練習問題で確認してみましょう。
理解度をチェックする練習問題と詳しい解説
- ニュアンスの違い(勤勉 vs 過労)を正確に選択できるか確認する
- 比較級や前置詞などの細かい文法ルールを復習する
- 解答解説を読んで、間違えた理由をしっかりと理解する
本記事で解説した内容をもとに、日本語の意味に最も合う英文を選択する問題と、空欄補充問題を用意しました。頭の中で答えを出してから、解説を読んでください。
Part 1: 適切な英文の選択
問1.彼女は会社から押し付けられた仕事を抱え過ぎています。
A. She is overworked.
B. She is dedicated.
C. She is a workaholic.
【解答と解説】
正解は A です。外部からの要因によって過労状態にあるため、受動的な意味合いを持つoverworkedが適切です。Bは「献身的な」、Cは「自発的な仕事中毒」なので不適切です。
問2.彼は仕事中毒に違いありません。
A. He must workaholic.
B. He must be a workaholic.
C. He has to be work.
【解答と解説】
正解は B です。強い推量を表すmust beの後に、数えられる名詞として冠詞のaを伴ったa workaholicが続くのが正しい文法です。
問3.彼は私たちより早く会社に来ます。
A. He gets to the office earlier than we do.
B. He gets the office more early than us.
C. He comes at office earliest us.
【解答と解説】
正解は A です。earlyの比較級はearlierです。また、get to the officeで「オフィスに到着する」となります。「than we do」のdoはgetsの反復を避ける代動詞として機能しています。
Part 2: 空欄補充問題
以下の日本語の意味になるように、( )に適切な1語を入れてください。
1. 私の上司は本当に(かなりの)仕事人間です。
My boss is a ( ) workaholic.
2. 彼は職場で長すぎる時間を過ごします。
He spends too much time ( ) work.
3. 彼のことを気の毒に思います。
I feel ( ) for him.
4. そのことについて私たちにできることは何もありません。
There’s nothing we can do ( ) it.
【解答】
1. real(quiteでも可)
2. at(at work = 職場で)
3. sorry(feel sorry for = 〜を気の毒に思う)
4. about(do something about = 〜について何らかの対処をする)
ここまでお読みいただきありがとうございます?単語の意味だけでなく、コロケーション(よく一緒に使われる単語の組み合わせ)や前置詞の使い方までセットで覚えることで、いざという時にスムーズに口から出るようになります。
workaholicにまつわるよくある質問(Q&A)
workaholicの反対の意味を持つ英語はありますか?
直接的な対義語としての単一の単語はありません。しかし、仕事よりも私生活や家庭を最優先する人を指して「family man(家庭的な男性)」と言ったり、仕事と生活のバランスがうまく取れている状態を「have a good work-life balance」と表現したりすることで、対極の概念を伝えることができます。なお、単に怠けているという意味合いであれば「lazy person」や「slacker(怠け者)」などが該当します。
「I am a workaholic.」と自己紹介で言うのは変ですか?
初対面のビジネスシーンでの自己紹介としては推奨されません。相手に「余裕がない人」「自分の生活をコントロールできていない人」「一緒に働くと残業を強要されそう」というネガティブな印象を与えるリスクが高いためです。熱心さをアピールしたい場合は、「I’m very dedicated to my work.(仕事には非常に熱意を持っています)」や「I consider myself a hard worker.(自分は勤勉だと思っています)」を使用する方が安全かつ好印象です。
He is a work alcoholic. と言うのは間違っていますか?
はい、明確な間違いです。workとalcoholicを切り離して2語にする表現は存在しません。「workaholic」という1つの綴りの単語として完全に定着・成立しているため、書く時も発音する時も常にくっつけて扱います。
workaholicな人に「無理しないでね」と英語で伝えるには?
「Don’t work too hard.(あまり無理しないで働きすぎないでね)」や「Make sure you get some rest.(しっかり休んでくださいね)」が日常会話でよく使われる自然なフレーズです。また、週末に入る前や別れ際の挨拶として「Take it easy.(気楽にね、無理しないで)」と声をかけるのも非常にスマートで効果的です。
I can’t help it.はどういう時に使う表現ですか?
「I can’t help it.」は「自分ではどうすることもできない、抑えられない、仕方がない」という意味のイディオムです。仕事中毒の人が、つい休日もパソコンを開いてしまう自らの行動に対して「やめられないんだ(I can’t help it.)」と言い訳をする際などに頻繁に使われます。動名詞を伴って「I can’t help checking my emails.(メールをチェックせずにはいられない)」という応用形もよく使われます。
workaholicは履歴書やレジュメに書いても良いですか?
絶対に避けるべきです。英語圏の採用担当者は、タイムマネジメントができず燃え尽きるリスクが高い候補者を敬遠します。履歴書でアピールするなら、dedicated, highly-motivated, strong work ethic などのポジティブなビジネス用語を選択してください。

