レジの前で立ち止まり、「この人は並んでいるのかな、それとも待ち合わせかな」と迷ったまま、結局黙って立ち尽くしてしまう。カフェで空いている椅子を見つけたのに、隣の人に声をかけられず、そのまま店を出てしまう。単語も文法もそれなりに勉強してきたのに、こういう数秒の場面でだけ言葉が出てこない——そんな経験に心当たりがあるなら、足りないのは知識ではありません。
この記事では、街で出番の多い場面を、列・空席・勧誘・エレベーター・道案内・レジという順に整理していきます。それぞれのフレーズには、使う場面、丁寧さの度合い、言い間違えやすいポイント、そして実際の会話の流れまで添えました。
読み終えたときには、明日の通勤路や次の旅先で口に出せる一言が手元に残っているはずです。独学で不安が残る部分を人と練習したい場合は、英語教室のようにやりとりの場を確保する方法もあります。

声をかける前の共通ルール:まずは Excuse me
街中で必要な英語は、驚くほど短い一文で足りることがほとんどです。長い文章を組み立てる力よりも、「この場面ではこの一言」という引き出しをいくつ持っているかが結果を左右します。逆に言えば、覚えるべき量はそれほど多くありません。
まずは、どの場面にも共通する土台となる一言から見ていきましょう。
- 知らない人に声をかけるときは、質問の前に Excuse me を置くだけで印象が大きく変わる
- Excuse me は「呼びかけ」と「通してください」の両方に使える万能フレーズ
- ぶつかった・踏んだなど実際に迷惑をかけたときは I’m sorry. と使い分ける
- 声のトーンと視線を添えると、短い一言でも詰問に聞こえない
街中の英語で最初に身につけるべきは、複雑な疑問文ではなく Excuse me という二語です。これがあるかないかで、同じ質問でも受け取られ方が変わります。
理由はシンプルで、英語でも日本語と同じように「これから話しかけます」という合図が必要だからです。日本語で知らない人に「すみません」と前置きするのと同じ役割を、Excuse me が担っています。合図なしに質問だけを投げると、相手は身構えてしまいます。
たとえば列で「並んでいますか?」と聞くとき、いきなり Are you in line? と言うと、状況によっては「あなた、並んでるんですか?」と詰め寄るように響くことがあります。Excuse me, are you in line? と一続きにするだけで、同じ内容がただの丁寧な確認になります。
- フレーズ
- Excuse me.
- 日本語訳
- すみません。
- 使う場面
- 知らない人に質問したいとき、人混みを通りたいとき、店員を呼びたいとき。街中のあらゆる声かけの入口になります。
- 注意点・誤用例
- 足を踏んでしまった直後に Excuse me. だけで済ませると、謝罪として弱く聞こえます。実害があったときは I’m sorry. を選びます。また、強い口調で吐き捨てるように言うと「どいてくれ」という苛立ちの表現になってしまいます。
- 発音・ニュアンス
- 「エクスキューズミー」と一語ずつ切らず、イクスキューズミーと繋げ、cuse の部分に軽く山を置きます。文末をやや上げると柔らかい呼びかけ、下げると「失礼します」と場を通る宣言に近づきます。
呼びかけのバリエーションも一緒に持っておくと、相手や場面に合わせて選べます。
- Excuse me, could I ask you something?/すみません、少し伺ってもいいですか?(丁寧・落ち着いた場面向け)
- Sorry to bother you./お邪魔してすみません(作業中・会話中の人に)
- Hi, quick question./ちょっと聞きたいことがあるんですが(カジュアル・同年代の相手に)
- Excuse me, do you have a second?/すみません、少しお時間ありますか?
Excuse me は「通してください」の意味でも活躍します。人混みをすり抜けるとき、電車を降りるとき、この一言で自然に道が開きます。
- Excuse me, coming through./すみません、通ります
- Excuse me, this is my stop./すみません、ここで降ります
- Could I get by?/通らせてもらえますか?
- Excuse me, could I squeeze past?/すみません、横を通らせてもらえますか?(狭い通路で)
日本語の「すみません」を全部 Sorry で置き換えるのは避けたいところです。呼びかけの場面で Sorry, are you in line? と言っても通じますが、Sorry を連発すると「何かに謝り続けている人」という印象になり、自信のなさが相手に伝わってしまいます。呼びかけは Excuse me、実際の迷惑には I’m sorry、と頭の中で線を引いておくと迷いません。

土台ができたところで、街中でいちばん出番の多い場面に進みます。それは、列にまつわるやりとりです。
列に関する英語フレーズ:並んでいますか?から割り込みの指摘まで
- 並んでいるか尋ねる基本形は Are you in line? / Are you waiting?
- 列はアメリカ英語で line、イギリス英語などでは queue
- Is this the line for …? は for の後ろを差し替えるだけで無限に応用できる型
- 待ち時間は How long is the wait? の一文で足りる
- 割り込みは責めずに「列はあちらから始まっています」と事実を伝えるのが穏当
街中の英語で最も使用頻度が高いのは、列にまつわる短い確認です。ここを押さえるだけで、街での困り方が目に見えて減ります。
なぜなら、列があるところには必ず「これは何の列か」「この人は並んでいるのか」「あとどれくらい待つのか」という三つの疑問が生まれるからです。レジ、券売機、トイレ、人気店の前、空港の保安検査、イベント会場。どこでも同じ構造が繰り返されます。
つまり、この三つに対応する型を持っていれば、場所が変わっても同じフレーズで対応できます。順に見ていきましょう。
並んでいますか?と尋ねる
- フレーズ
- Excuse me, are you in line?
- 日本語訳
- すみません、並んでいますか?
- 使う場面
- レジや券売機の近くに人が立っているが、列なのか単に待ち合わせなのか判断できないとき。自分がどこに立つべきかを決めるための確認です。
- 注意点・誤用例
- Are you lining? という言い方はしません。動詞で使うなら line up です。また In line? だけに省略すると、呼びかけなしの単語投げになり詰問調に聞こえます。短くしたいなら Excuse me, in line? と呼びかけだけは残します。
- 発音・ニュアンス
- are you は「アーユー」と繋げ、in line の line にアクセントを置きます。文末を上げると質問として明確に伝わります。
列は英語で line、並んでいる状態は in line と表現します。地域によっては in ではなく on line を使う話者もいて、ニューヨーク周辺ではこの言い方が根強く残っています。どちらを使っても意味は問題なく伝わるので、聞こえ方の違いとして知っておく程度で十分です。
列の形がはっきりしていない場所では、Are you waiting? のほうが自然に響きます。ソファに座って順番を待っているのか、単に休んでいるだけなのか判断しづらいとき、この一言で確認できます。
- フレーズ
- Are you waiting?
- 日本語訳
- 待っていますか?/並んでいますか?
- 使う場面
- 病院やクリニックの待合室、番号札方式の店、ベンチに人が座っている受付前など、列が一直線に並んでいない場所。
- 注意点・誤用例
- Are you waiting for me? と for を付けてしまうと「私を待っているんですか?」という別の意味になります。for は付けずに切るのがポイントです。
自分が答える側になる場面も想定しておきましょう。街で外国人に声をかけられたとき、次の一言がすぐ出てくると気持ちが楽になります。
- Yes, I’m in line./はい、並んでいます
- No, go ahead./いいえ、どうぞお先に
- No, I’m just waiting for a friend./いいえ、友人を待っているだけです
- The line starts back there./列はあちらから始まっています
- I’m the last one, so you’re behind me./私が最後なので、あなたは私の後ろです
line と queue の違い
イギリス、アイルランド、オーストラリアなどでは、列を queue と呼ぶのが一般的です。発音はカタカナで書けば「キュー」。綴りに反して ueue の部分はほとんど読みません。
- Are you in the queue?/並んでいますか?(英国式)
- Is this the queue for the ticket office?/これは切符売り場の列ですか?
- Please queue up here./ここにお並びください
- The queue’s massive today./今日は列がすごく長いですね
動詞との組み合わせも押さえておくと、聞き取りが一気に楽になります。案内表示やスタッフの指示によく登場する形です。
- stand in line / wait in line/列に並んで待つ
- get in line/列に加わる
- line up/一列に並ぶ
- queue up/列を作る(英国式)
- cut in line/割り込む(米国式)
- jump the queue/割り込む(英国式)
アメリカで queue を使っても通じますし、むしろ「古風で上品な言い方」として面白がられることもあります。ただし、ATM やコールセンターの「待ち行列」など、システム上の順番待ちは英米どちらでも queue と呼ぶため、この語自体を知っておく価値は十分にあります。
これは何の列ですか?
長い列を見つけたとき、まず確認したいのは目的です。並んだあとで「ここは別の窓口の列でした」と言われるのが、旅先でいちばん痛いパターンです。
- フレーズ
- Is this the line for the restroom?
- 日本語訳
- これはトイレの列ですか?
- 使う場面
- 複数の列が並んでいる場所、列の先が見えない場所。for の後ろを checkout(レジ)、security(保安検査)、tickets(チケット)、check-in(搭乗手続き)、immigration(入国審査)に差し替えれば、空港でも劇場でもそのまま使えます。
- 注意点・誤用例
- 「入場のための列ですか」と目的が動作の場合は for ではなく to を使い、Is this the line to get in? となります。for のあとは名詞、to のあとは動詞、と分けて覚えると混同しません。
- 発音・ニュアンス
- Is this the の三語は「イズィスザ」と潰れます。for のあとの名詞をはっきり発音すれば、前半が崩れても意図は伝わります。
- What is this line for?/これは何の列ですか?
- Is this the line to get in?/これは入場のための列ですか?
- Am I in the right line?/この列で合っていますか?
- Which line should I get in?/どの列に並べばいいですか?
- Is there a separate line for online tickets?/オンラインチケット用の別の列はありますか?
最後尾はどこですか?
列が曲がっていたり、店内と店外に分かれていたりすると、最後尾の判別は現地の人でも難しいものです。堂々と聞いてしまうのが早道です。
- Where is the end of the line?/列の最後尾はどこですか?
- Is this the end of the line?/ここが列の最後尾ですか?
- Are you the last person in line?/あなたが列の最後の方ですか?
- Who’s last?/最後はどなたですか?(かなりカジュアル)
- Should I line up behind you?/あなたの後ろに並べばいいですか?
答える側の表現もセットで持っておきましょう。方向を指し示すジェスチャーを添えれば、単語が少なくても十分に伝わります。
- The line starts over there./列はあちらから始まっています
- The end of the line is around the corner./最後尾は角を曲がったところです
- It wraps around the building./建物をぐるっと囲むように続いています
- You can line up right here./ここに並んで大丈夫です
待ち時間を聞く
- フレーズ
- How long is the wait?
- 日本語訳
- 待ち時間はどのくらいですか?
- 使う場面
- レストランの入口、遊園地のアトラクション、病院の受付、人気店の行列。並ぶかどうかを決めるための一文で、スタッフにも他の客にも使えます。
- 注意点・誤用例
- How long is the waiting? とは言いません。ここでの wait は「待ち時間」という名詞です。また How much time? は時間の量を尋ねる別の言い方になり、行列の文脈では不自然に響きます。
- 発音・ニュアンス
- How long を一気に言い、wait を強めて終えます。答えは About twenty minutes. のように概算で返ってくるのが普通です。
- How long will we have to wait?/どのくらい待つことになりますか?
- Does the line move quickly?/この列は早く進みますか?
- Have you been waiting long?/長く待っていますか?
- I’ve been waiting for about twenty minutes./20分ほど待っています
- Is it usually this busy?/いつもこんなに混んでいますか?
答える側になったときは、been waiting for +時間 の形で応じられます。数字が出てこなければ、A while.(けっこう前から)や Not too long.(そんなに長くないです)でも会話は成立します。
順番の確認と譲り合い
列では、順番が入れ替わりそうな場面がしばしば起こります。強く主張するより、事実を柔らかく置くのが穏当です。
- I believe I’m next./次は私だと思います
- I think you were here first./あなたのほうが先だったと思います
- I’m after her./私は彼女の次です
- We’re together./私たちは一緒です
- Please, go ahead./どうぞ、お先に
- You can go ahead of me./私より先にどうぞ
- After you./お先にどうぞ(やや古風で丁寧)
買うものが少ない人を先に通す、急いでいる人に譲る。こうした気遣いは Go ahead, please. の一言で伝わります。譲ってもらったら Thank you, that’s very kind of you. と返すと、短いやりとりが気持ちよく閉じます。
列を離れる・戻る
- Could you save my spot for a moment?/少しの間、私の場所を取っておいてもらえますか?
- Would you mind holding my place?/私の順番を取っておいていただけませんか?
- I’ll be right back./すぐ戻ります
- Excuse me, I was in line here./すみません、私はここに並んでいました
- Thanks for holding my spot./場所を取っておいてくれてありがとう
場所取りが許容されるかは国や施設のルール次第です。長時間離れる場合や、後から人数が増える場合は、周囲の人かスタッフに確認しておくとトラブルを避けられます。
割り込みに気づいたとき
割り込みは、悪意ではなく「列に気づいていない」ことが原因の場合が大半です。最初から責める言い方をせず、事実として列の位置を伝えるのが穏当な対応になります。
- Excuse me, the line starts back there./すみません、列はあちらから始まっています
- Excuse me, there’s a line./すみません、列があります
- We’ve been waiting in line./私たちは並んで待っています
- Sorry, but I was next./すみません、次は私でした
- Please don’t cut in line./割り込まないでください
Please don’t cut in line. は明確な抗議になります。相手が引かない、口論になりそうという場面では自分で対処しようとせず、Excuse me, someone just cut in line. とスタッフに伝えるのが安全です。海外では列のトラブルが思わぬ揉め事に発展することもあるため、自分の安全を優先してください。
実際のやりとりの流れ
- 学習者
- Excuse me, are you in line?
すみません、並んでいますか? - 先客
- Yes, I am. I think the line starts back there.
はい、並んでいます。列の最後尾はあちらだと思います。 - 学習者
- Oh, I see. Thank you. Do you know how long the wait is?
なるほど。ありがとうございます。待ち時間はどのくらいかご存じですか? - 先客
- Maybe ten minutes. It moves pretty fast.
10分くらいでしょうか。けっこう早く進みますよ。 - 学習者
- Great. Thanks for your help.
よかった。教えてくれてありがとうございます。
やりとり全体でわずか5往復、時間にして20秒ほどです。列の英語はこの規模で完結する、と知っておくだけでも心理的なハードルが下がります。
続いて、列と同じくらい迷いやすい「座る」場面に移ります。
空席かどうかを尋ねる英語フレーズ
- 最も自然な定番表現は Is this seat taken?
- open と taken では Yes / No の意味が逆になる
- Do you mind if I …? の承諾は No、拒否が Yes
- 断られたら食い下がらず Thank you anyway. で引くのが礼儀
座席を尋ねる場面では、Is this seat taken? をひとつ覚えておけば大半に対応できます。
この表現が便利なのは、taken が「取られている=誰かのもの」という意味を持つからです。荷物が置いてある席、連れが一時的に席を外している席、上着だけがかかっている席まで、まとめてカバーできます。
カフェ、公園のベンチ、電車、待合室、フードコート。座りたい席の隣に人がいるとき、無言で座るのはお互い気まずいものです。ひとこと添えるだけで空気が変わります。

- フレーズ
- Excuse me, is this seat taken?
- 日本語訳
- すみません、この席は誰か使っていますか?
- 使う場面
- 混んだカフェ、電車の空席、劇場やスタジアムの座席、相席が前提のフードコート。
- 注意点・誤用例
- taken に対する Yes は「使われています」という意味です。空いていると思い込んで Yes を聞いた瞬間に座ってしまう誤解が起こりやすいので、答えの向きに注意します。Is this seat empty? はやや不自然で、物理的に空っぽかを尋ねる響きになります。
- 発音・ニュアンス
- taken は「テイクン」で、後半をほとんど飲み込みます。seat と taken の二語を強めれば十分伝わります。
- Is this seat open?/この席は空いていますか?(Yes が「空いています」)
- Is anyone sitting here?/ここは誰か座っていますか?
- May I sit here?/ここに座ってもいいですか?
- Do you mind if I sit here?/ここに座ってもかまいませんか?
- Is this seat occupied?/この席は使用中ですか?(ややかたい響き)
- Mind if I join you?/ご一緒してもいいですか?(カジュアル)
Do you mind if …? の直訳は「〜したら気になりますか?」です。したがって承諾するときの答えは No, not at all.(いいえ、まったく)や Go ahead.、断るときが Yes 側になります。うっかり Yes と答えると「困ります」という意味になってしまうため、承諾なら No、と覚えておきます。とっさに迷ったら Yes / No を使わず、Please, go ahead. と内容で答えるのが安全です。
初対面の相手に尋ねるのですから、ここでも冒頭に Excuse me を添えるのが基本です。空いていればお礼を言って座り、先客がいた場合は無理に食い下がらず引くのが礼儀になります。
- Thank you./ありがとうございます
- Thanks, appreciate it./ありがとう、助かります
- OK, no problem./分かりました、大丈夫です
- Understood. Thank you anyway./了解です。ともあれありがとう
自分が座っている側になったときの返しも、一緒に覚えておくと安心です。日本国内でも観光客に声をかけられる機会は増えています。
- No, go ahead./いいえ、どうぞ
- It’s free./空いていますよ
- Sorry, my friend is coming back./ごめんなさい、友人が戻ってきます
- Actually, someone’s sitting there./実はそこ、人が座っています
- Let me move my bag./かばんをどけますね
混んだ電車やバスで席を譲る場面では、次の言い方が使えます。相手が断ることもあるので、返答の形まで知っておくと落ち着いて対応できます。
- Would you like to sit down?/お座りになりますか?
- You can have my seat. I’m getting off soon./私の席をどうぞ。すぐ降りますので
- Please, take my seat./どうぞ、私の席へ
- I’m OK, thanks./私は大丈夫です、ありがとう(断るとき)
- 学習者
- Excuse me, is this seat open?
すみません、この席は空いていますか? - 先客
- Sorry, my wife will be here in a minute.
ごめんなさい、妻がもうすぐ来るんです。 - 学習者
- Understood. Thank you anyway.
分かりました。ありがとうございます。
では、逆に自分が「断る側」になる場面はどうでしょうか。街中で意外と難しいのが、勧誘への対応です。
勧誘やセールスを断る英語フレーズ
- 曖昧な微笑みや会釈は「断り」として伝わらない
- 基本は No, thank you. / I’m not interested. / I’m all right.
- 理由を説明しようとすると会話が続いてしまう
- 身の危険を感じる場面では、はっきりした拒絶表現に切り替える
勧誘への対応で大事なのは、短く、はっきり、繰り返すという三点です。
日本のように会釈だけで通り過ぎようとすると、意思表示として受け取られず、付きまとわれることがあります。声をかける側は「反応があった=可能性がある」と判断するため、曖昧さがかえって長引く原因になるのです。
観光地でお土産を勧められる、レストランの客引きに袖を引かれる、路上でクレジットカードや寄付、宗教の勧誘を受ける。長期滞在ならなおさら遭遇頻度が上がります。
- フレーズ
- No, thank you.
- 日本語訳
- いえ、けっこうです。
- 使う場面
- 路上の物売り、客引き、無料サンプル、アンケート、寄付の呼びかけ。どんな申し出にも使える基本形です。
- 注意点・誤用例
- No, thank you. を語尾上がりで柔らかく言いすぎると、迷っているように受け取られることがあります。逆に thank you を省いて No! だけを強く言うと必要以上に攻撃的です。穏やかなトーンで、語尾は下げて言い切るのが最もきれいに伝わります。
- 発音・ニュアンス
- 「ノーサンキュー」ではなく No / thank you の間に一瞬の区切りを置きます。歩みを止めずに言うと、それ以上会話が続きません。
- I’m not interested./興味がありません(はっきりした断り)
- I’m all right./大丈夫です
- I’m in a hurry./すみません、急いでいます
- Thanks, but I’m good./ありがとう、でも大丈夫です
- Sorry, not today./ごめんなさい、今日はいいです
- I’ve already got one./もう持っています
- I’m just looking, thanks./見ているだけです、ありがとう
- Maybe next time./また今度にします
冷たく突き放す必要はありません。Thank you や Sorry を先に置いてから断ると、角が立たずに意思だけが伝わります。
それでも離れない相手には、繰り返しと簡潔さが効きます。理由を説明しようとすると会話が続いてしまうので、No, thank you. だけを穏やかな声で繰り返し、歩みを止めないのが最も実践的です。
Please leave me alone.(放っておいてください)や Please stop following me.(ついてこないでください)は、身の危険を感じる場面向けの強い表現です。普通の物売りに対して使うと過剰反応になりますが、実際に不安を覚えたときはためらわずに使い、同時に人通りの多い場所や店の中へ移動してください。言葉より、その場を離れる判断が優先されます。
一方で、条件次第では検討したい場面もあります。まず内容を確認し、それから判断するというやりとりです。
- 店員
- Would you like to sign up for a point card?
ポイントカードをお作りになりますか? - 学習者
- What kind of benefits are there?
どのような特典がありますか? - 店員
- You can save up points, so it’s a good deal. But there’s an annual membership fee of ten dollars.
ポイントが貯まるのでお得です。ただ、年会費が10ドルかかります。 - 学習者
- Ah, I see. Thank you, but I’m all right.
なるほど。ありがとう、でも大丈夫です。
I’m all right. と I’m good. は「足りています/間に合っています」というニュアンスの断りです。飲み物のおかわり、試食の勧め、袋の要否など、日常の小さな申し出を断るときにも幅広く使えます。
次は、他人と至近距離で数十秒を過ごす、あの独特な空間の英語です。
エレベーターで階を聞く・答える英語フレーズ
- 操作盤の前に立ったら What floor? と尋ねるのが一般的な作法
- would you like を添えると丁寧さが一段上がる
- 階を答えるときは序数(first, second, third…)を使う
- イギリス式の first floor は日本やアメリカの2階に相当する
エレベーターでは、What floor? という二語だけで役割を果たせます。
操作盤の前に立った人が、後から乗った人に行き先を尋ねてボタンを押すのが、英語圏の一般的な習慣です。黙って立っていると、かえって気まずい空気になります。
ホテル、オフィスビル、デパート。乗り合わせる時間はほんの数十秒ですが、この一言があるかないかで空気は大きく変わります。
- フレーズ
- What floor would you like?
- 日本語訳
- 何階になさいますか?
- 使う場面
- 自分が操作盤の前にいて、後から人が乗ってきたとき。ホテルやオフィスビルなど、丁寧さが求められる場所に向いています。
- 注意点・誤用例
- How many floor? は誤りです。階を尋ねるのは what または which です。また、狭い空間で大声になりやすいので、音量は普段より一段下げます。
- 発音・ニュアンス
- would you は「ウッジュー」と繋がります。What floor? だけでも通じますが、would you like を添えると柔らかく響きます。
- What floor?/何階ですか?(最短・カジュアル)
- Which floor?/どちらの階ですか?
- Which floor do you need?/何階ですか?
- Going up?/上ですか?
- Going down?/下ですか?
- I’m going down./下に行きます
- Hold the door, please!/ドアを押さえてください!
- Could you press five, please?/5階を押してもらえますか?
- Excuse me, this is my floor./すみません、ここで降ります
- Could I squeeze by?/少し通らせてもらえますか?
階数を答えるための序数
階数を答えるときは序数を使います。first, second, third, fourth, fifth, sixth, seventh, eighth, ninth, tenth と続き、最初の三つは形が不規則で、four 以降は基本的に -th が付きます。fifth や twelfth のように綴りが変わるものもあります。
- Fifth floor, please./5階をお願いします
- Twelfth, thanks./12階、ありがとう
- Same as you./あなたと同じ階です
- Ground floor, please./1階をお願いします(英国式)
- Basement two, please./地下2階をお願いします
- Top floor, thanks./最上階、ありがとう
階の数え方には地域差があります。イギリスやオーストラリアなどでは地上階を ground floor と呼び、その上が first floor です。つまりイギリスの first floor は、日本やアメリカでいう2階に相当します。ホテルの部屋番号や集合場所の指定でずれが生じやすいので、迷ったら Is the ground floor the same as the first floor here? と確認するのが確実です。地下は basement、屋上は rooftop、駐車場階は parking level と呼びます。
- 乗り込む人
- Going up?
上ですか? - 操作盤の前の人
- Yes. What floor would you like?
はい。何階ですか? - 乗り込む人
- Fifth floor, please. Thank you.
5階をお願いします。ありがとうございます。 - 操作盤の前の人
- No problem.
どうぞ。 - 降りる人
- This is me. Have a good one.
ここで降ります。よい一日を。
This is me. は「ここが私の降りる階です」という決まった言い方です。短いのに現地感があり、覚えておくと重宝します。
ここまでは自分から声をかける場面が中心でした。次は、声をかけられる側になることも多い道案内の英語を見ていきます。
道を尋ねる・尋ねられるときの英語フレーズ
- 尋ねる基本形は How do I get to …? と Could you tell me where … is?
- 困っている人には Do you need any help? の一言で声をかけられる
- 案内は方向+目印の二段構えにすると伝わりやすい
- 分からないときは Sorry, I’m not from around here. で問題ない
道案内では、方向と目印をセットで伝えると成功率が上がります。
「まっすぐ行って左」だけでは、相手はどこまで進めばいいのか判断できません。そこに「コンビニのところで」という目印が加わると、一気に具体的になります。地名や通りの名前が分からなくても、目に見えるものを挙げれば伝わります。
自分が尋ねるとき
- Excuse me, how do I get to the station?/すみません、駅へはどう行けばいいですか?
- Could you tell me where the nearest ATM is?/最寄りのATMがどこか教えてもらえますか?
- Is it far from here?/ここから遠いですか?
- How long does it take on foot?/歩いてどのくらいかかりますか?
- Am I going the right way?/この方向で合っていますか?
- Could you show me on the map?/地図で示してもらえますか?
- Which exit should I take?/どの出口を使えばいいですか?
- フレーズ
- Could you show me on the map?
- 日本語訳
- 地図で示してもらえますか?
- 使う場面
- 口頭の案内が聞き取れなかったとき、道順が複雑なとき。スマートフォンの地図を見せながら言えば、言葉の壁を一気に越えられます。
- 注意点・誤用例
- Teach me the way は不自然です。teach は学問や技能を教える動詞なので、道案内では tell me や show me を使います。
自分が答える・声をかけるとき
- Are you looking for something?/何かお探しですか?
- Do you need any help?/お手伝いしましょうか?
- Go straight and turn left at the second corner./まっすぐ行って、2つ目の角を左です
- It’s about a five-minute walk./歩いて5分ほどです
- It’s right next to the convenience store./コンビニのすぐ隣です
- I’m going that way. I can walk you there./私もそちらへ行くので、ご一緒しますよ
- Sorry, I’m not from around here./すみません、この辺の者ではないんです
- Let me look it up for you./調べてみますね
案内に使う語彙をいくつか押さえておくと、自分が聞く側になったときの聞き取りも楽になります。corner(曲がり角)、traffic light(信号)、intersection(交差点)、across from(〜の向かい)、next to(〜の隣)、on your right(右手に)、at the end of the road(突き当たり)、two blocks down(2ブロック先)。
道案内ができなくても、Sorry, I’m not from around here. と正直に伝えれば十分です。無理に案内して間違った方向に送ってしまうより、その方が親切です。
街歩きの締めくくりは、必ず立ち寄るあの場所です。
店やレジでのやりとりに使う英語フレーズ
- レジが開いているかは Is this checkout open? で確認できる
- 見ているだけのときは I’m just browsing, thank you. が便利
- 支払い方法・袋・サイズは決まった短文で足りる
- 店員の Are you all set? は「これで大丈夫ですか?」の意味
店での会話は、やりとりの型がほぼ固定されているのが特徴です。
支払い、袋、サイズ、在庫。聞かれる内容も答える内容も限られているため、覚えるべき文は多くありません。逆に言えば、この数文を準備しておけば買い物の場面でつまずくことはほとんどなくなります。
- Is this checkout open?/このレジは開いていますか?
- Is anyone waiting for this register?/このレジを待っている人はいますか?
- There’s a shorter line over there./あちらにもっと短い列があります
- Do you take cards?/カードは使えますか?
- Could I get a bag, please?/袋をもらえますか?
- I’m just browsing, thank you./見ているだけです、ありがとう
- Do you have this in a different size?/これの別のサイズはありますか?
- Could I have the receipt?/レシートをもらえますか?
- Can I pay separately?/別々に支払えますか?
店員側からよく飛んでくる質問も、あらかじめ知っておくと固まりません。Are you all set?(これで大丈夫ですか?)、Cash or card?(現金かカードか)、Do you need a bag?(袋は必要ですか)、Are you finding everything okay?(お探しのものは見つかりましたか)といった形です。
- 店員
- Hi, are you finding everything okay?
こんにちは、お探しのものは見つかりましたか? - 学習者
- I’m just browsing, thank you.
見ているだけです、ありがとう。 - 店員
- Sure, let me know if you need anything.
もちろんです。何かあればお声がけください。 - 学習者
- Actually, do you have this in a different size?
あ、これの別のサイズはありますか?
フレーズが揃ってきたところで、もうひとつ大事な話が残っています。同じ文を言っても伝わる人と伝わらない人がいる、その差はどこにあるのでしょうか。
通じさせるための伝え方と発音の工夫
- 伝わらない原因は文法よりも「届け方」にあることが多い
- 目を見て、短く、言い切る
- 疑問文は語尾を上げ、事実の伝達は下げる
- 聞き返しの4フレーズを持っておけば会話が途切れない
- 分からないときに笑ってごまかすと了解と受け取られる
フレーズを覚えても実際に伝わらないとき、原因は文法ではなく届け方にあることがほとんどです。
目を見て、はっきり短く
街の雑音のなかで長い文をつぶやいても届きません。Excuse me, are you in line? を相手の顔を見て言い切るだけで、伝わり方は大きく変わります。うつむいたまま完璧な文を言うより、顔を上げて短い文を言う方が確実です。
語尾の上げ下げを意識する
Are you in line? のような疑問文は、文末を上げるだけで質問だと伝わります。逆に The line starts back there. は下げて言い切ると、事実の伝達として自然に響きます。単語が多少崩れても、この抑揚が正しければ意図は届きます。
聞き返しを恐れない
一度で聞き取れないのは当たり前です。次の4つを持っていれば、会話が途切れません。
- Sorry?/すみません、もう一度?
- Could you say that again?/もう一度言ってもらえますか?
- Could you speak a little slower?/少しゆっくり話してもらえますか?
- What do you mean?/どういう意味ですか?
沈黙を笑顔で埋めない
分からないときに笑ってごまかすと、了解したと受け取られます。I’m not sure I understand.(よく分かりません)と正直に言ったほうが、結果的に早く解決します。曖昧な笑顔は親切さではなく、混乱の原因になります。
短い相槌で会話を回す
I see. / Got it. / That makes sense. / Sure. / No problem. といった一語二語の反応は、内容以上に「聞いています」というサインになります。相槌が入るだけで、相手は安心して話を続けられます。
聞き返すときに Once more, please. や One more time. を使う人がいますが、相手によっては命令口調に聞こえることがあります。Could you say that again? のように could you を使った形にしておくと、どんな相手にも安全です。
伝え方が整ったら、次は多くの人が同じところで足を止める、典型的なつまずきを確認しておきましょう。
つまずきやすいポイントと誤用例
- open と taken では Yes / No の意味が反転する
- Do you mind …? の承諾は No
- I’m fine. は文脈によって意味が変わる
- Are you in line? を省略しすぎると詰問調になる
- 序数の言い間違いは「数字+please」で切り抜けられる
ここで挙げるつまずきは、知っていれば防げるものばかりです。事前に一度目を通しておくだけで、本番の誤解が減ります。
Is this seat open? と Is this seat taken? の答えが逆になる
open なら Yes が「空いています」、taken なら Yes が「使われています」です。相手の答えが Yes か No かだけでなく、続く表情や身振りも合わせて判断すると誤解を防げます。相手が笑顔で椅子を引いてくれたなら、Yes / No にかかわらず座って問題ありません。
Do you mind …? に Yes と答えてしまう
承諾は No、拒否は Yes です。とっさに迷ったら Yes / No を使わず、Please, go ahead. や Sorry, I’d rather not. と内容で答えるのが安全です。実際、現地の話者もこの形で答えることが多く、余計な混乱が起きません。
I’m fine. の使いどころ
断りの文脈では「大丈夫です=けっこうです」ですが、体調を尋ねられた文脈では「元気です」になります。断りだと明確にしたいなら、I’m good, thanks. や No, thank you. のほうが誤解が少ないです。
Are you in line? を省略しすぎる
In line? だけでも通じることはありますが、Excuse me を付けずに単語だけ投げると詰問調に聞こえます。短くするなら Excuse me, in line? のように、呼びかけだけは残します。
序数の言い間違い
5階を fifth と言うところで five floor と言ってしまうのは典型的なつまずきです。ただしエレベーターでは数字だけを言って Five, please. とすることも実際には多いので、迷ったら数字+please で切り抜けられます。
Thank you のあとに黙ってしまう
お礼を言われたときに無言だと、そこで会話が不自然に終わります。You’re welcome. / No problem. / Sure. / Any time. のどれかを返すだけで、やりとりがきれいに閉じます。

最後に、ここまでのフレーズをどの順番で、どう身につけていくかを整理します。
覚える順番と1週間の練習メニュー
- 一度に全部覚えず、頻度の高い8フレーズから始める
- 8つが自動化したら「型」を増やして応用範囲を広げる
- 実際の場面を思い浮かべながら音読するのが効く
- 1日5分の小さなリハーサルで、口を開く抵抗が下がる
身につける順番は、使用頻度の高い8つに絞るのが確実です。
一度に全部を暗記しようとすると、いざその場面が来たときに何も出てきません。数を絞って口が勝手に動く状態を作ったほうが、実際に使える確率は上がります。
まず自動化させたい8フレーズ
- Excuse me./すみません
- Are you in line?/並んでいますか?
- The line starts back there./列はあちらからです
- How long is the wait?/待ち時間はどのくらいですか?
- Is this seat taken?/この席は使っていますか?
- No, thank you./けっこうです
- What floor would you like?/何階ですか?
- Sorry, could you say that again?/すみません、もう一度お願いします
この8つが自動化したら、Is this the line for …? や Do you mind if I …? のように、後ろを差し替えて使える「型」を増やしていきます。型で覚えると、覚えたフレーズの数以上に対応できる場面が広がります。
1週間の練習メニュー例
練習は、実際の場面を思い浮かべながら声に出すのが効きます。以下は1日5分程度で回せる進め方の一例です。自分の生活に合わせて入れ替えて構いません。
- 1日目:Excuse me を中心に、呼びかけの4パターンを声に出す。鏡を見て、視線を上げたまま言う練習を加える。
- 2日目:列の基本3文(Are you in line? / The line starts back there. / How long is the wait?)を各10回音読する。
- 3日目:Is this the line for …? の for のあとを、restroom、checkout、tickets、security と入れ替えて言ってみる。
- 4日目:座席の2文(Is this seat taken? / Do you mind if I sit here?)と、その答え方をセットで練習する。
- 5日目:断りの表現を、穏やかなトーンと歩きながらの発話で練習する。No, thank you. を3回続けて言う練習も入れる。
- 6日目:エレベーターの What floor would you like? と序数の1〜12を通しで言う。数字+please の言い方も確認する。
- 7日目:この記事の会話例4本を、役を交代しながら通しで音読する。詰まった箇所だけ翌週に回す。
通勤中のエレベーターで「もし英語で聞かれたら」と想定してみる。カフェで席を探しながら頭の中で Is this seat taken? と唱えてみる。この小さなリハーサルが、本番で口を開く抵抗を下げてくれます。
音読で口の形が固まってきたら、次は相手のいる状態で試す段階です。相槌のタイミングや聞き返しの間合いは、独学だけでは確認しづらい部分でもあります。人と話す場を一つ確保しておくと、練習した8フレーズが実際の会話でどう動くかを試せます。
よくある質問
- 使い分けに迷いやすい表現を質問形式で整理
- 地域差のある語(line / queue、floor の数え方)も確認できる
- 聞き取れないときの対処法もここでまとめて確認できる
最後に、読者から寄せられやすい疑問を短く整理しておきます。気になる項目だけ拾って読んでも構いません。

