英単語を一つずつ聞けば分かるのに、会話になった途端に知っている表現まで消えてしまう。そんな経験があるなら、語彙力だけでなく、単語と単語の間で起こる音の変化に耳が慣れていない可能性があります。
たとえば、give upを「ギブ・アップ」、can Iを「キャン・アイ」と別々に記憶していると、会話で聞こえる「ギヴァップ」「キャナイ」に近い流れを同じ表現だと認識しにくくなります。英語では、単語の境目で口の動きを毎回止めず、前の音を次の音へ受け渡すからです。
この記事では、英語のリエゾンが何を指すのか、どの条件で音がつながるのか、連結・脱落・同化・はじき音・弱形をどう聞き分けるのかを順番に整理します。後半では、短い例文を使った練習手順と、自分の声を確認する方法まで扱います。
発音は文字だけでは確認しにくいため、実際の音声を聞きながら学ぶことが大切です。自分だけでは口の形や音の境目を判断しにくい場合は、英語教室で講師の発音と自分の発音を聞き比べる方法もあります。
英語のリエゾンは「単語の境目で起こる音の変化」
- 狭い意味では音の連結、広い意味では会話中の音声変化全体を指す
- 名称よりも「元の音がどう変わったか」を見ることが重要
英語学習でいうリエゾンは、隣り合う音が影響し合い、単語の境目を越えて滑らかにつながる現象を指します。日本語では「連音」「連声」などと表されることがありますが、教材によって扱う範囲が異なります。
狭い意味では、give‿upのように前の子音が後ろの母音につながる連結をリエゾンまたはリンキングと呼びます。広い意味では、音の脱落、同化、弱形、北米英語で見られるはじき音なども含めてリエゾンと呼ぶ場合があります。
英語圏の発音学習では、会話の中で語が連続するときの発音をconnected speechと呼びます。単語を単独で読んだときの音と、文中で発音したときの音が異なることは、特別な例外ではありません。隣の音、強勢、話す速さ、地域的なアクセント、伝えたい意味によって、音の形が変わります。
リンキングとの違いは教材の定義で変わる
リエゾンとリンキングは、英語学習の場ではほぼ同じ意味で使われることがあります。一方で、リンキングを「音がつながる現象」に限定し、リエゾンを複数の音声変化を含む大きな枠として扱う教材もあります。
そのため、用語の境界を一つに決めようとするより、目の前の表現で何が起きているかを確認するほうが実用的です。音がそのままつながったのか、聞こえにくくなったのか、別の音に近づいたのかを分類すれば、聞き取れなかった理由が見えてきます。
far awayで確認する語末のr
- フレーズ
- far‿away
- 日本語訳
- 遠く離れて
- 使う場面
- 場所や人が遠くにあることを表すときに使います。例:The station is far away.
- 注意点・誤用例
- すべての話者が同じ強さで語末のrを出すわけではありません。「ファー・アウェイ」と必ず切る、または強い日本語の「ラ」を足す、と決めないようにします。
- 発音・ニュアンス
- 語末のrを発音するアクセントでは、そのrがawayの最初の母音へ流れます。語末のrを通常発音しないアクセントでも、次に母音が来るとrが現れることがあり、これをlinking rと呼びます。
ここで押さえたいのは、英語の発音には一つの形しかないわけではないという点です。アクセントによる違いを知っていれば、自分が練習した音と異なる発音を聞いても、別の単語だと早合点しにくくなります。
では、なぜ日本語を母語とする学習者は、この音の流れにつまずきやすいのでしょうか。次は、日本語と英語の音の組み立て方を比べます。

日本語話者がリエゾンを聞き取りにくい理由
- 日本語の音の感覚では、英語の語末子音に不要な母音を足しやすい
- 英語は重要な語を強く、機能語を短く弱く発音する傾向がある
日本語では、「か」「と」のように子音と母音がまとまりになった音が多く使われます。その感覚で英語を読むと、stopの最後を「プ」、pickの最後を「ク」のように発音し、子音の後ろへ日本語の母音を加えやすくなります。
英語のpick upでは、pickの/k/を「ク」として完成させる必要はありません。舌の奥で/k/の準備をしたまま、upの母音へ移れば、/k/が次の語の始まりに移ったように聞こえます。つまり、子音を次の母音へ渡すことが基本です。
単語を同じ強さで読むと境目が増える
英語では、名詞、主要な動詞、形容詞、副詞など、意味の中心になる語が比較的強く発音されます。冠詞、前置詞、接続詞、代名詞、助動詞などは、文脈上で強調されない限り短く弱くなる傾向があります。
I need to GET up at SIX.という文では、GETとSIXが目立ちやすく、toやatは短くなります。すべての語を辞書で確認するときのように同じ長さで読むと、単語間に小さな停止が増え、英語本来の強弱が見えにくくなります。
つづりを見て判断すると間違えやすい
音がつながる条件は、最後に書かれたアルファベットではなく、実際に発音される音で判断します。takeは文字上ではeで終わりますが、発音は/teɪk/なので、最後の音は子音/k/です。そのため、take outでは/k/と後続の母音がつながります。
反対に、knowの最後のwは発音されません。know itでは、つづりだけを見ると子音と母音が並んでいるように思えますが、実際にはknowの母音とitの母音が隣り合います。発音記号や音声で語末音を確認する習慣が役立つのはこのためです。
カタカナは音の流れを想像する補助にはなりますが、英語の母音、子音、強弱を正確には表せません。「ギヴァップ」「キャナイ」などの表記だけで発音を決めず、音声と口の形を必ず確認してください。
違いが分かったところで、実際にどの組み合わせがつながるのかを見ていきましょう。最初に覚えたいのは、使用頻度が高く、口の動きも理解しやすい子音と母音の連結です。
リンキングの基本パターンを音の組み合わせで覚える
- 最優先は、語末の子音と次の語頭の母音をつなぐパターン
- 母音同士や同じ子音同士にも、滑らかに移動する方法がある
リンキングを練習するときは、表現を丸ごとカタカナで暗記するより、境目にある二つの音を観察します。どこで舌や唇を止め、どの瞬間に次の母音を出すかが分かると、初めて見る表現にも応用できます。
子音+母音:前の子音を後ろへ渡す
give up、pick up、take out、look at、can Iなどが基本例です。語末の子音の後ろに不要な母音を入れず、次の語の母音をすぐに続けます。つなぐ前に個々の音を確認すると、速さだけが上がって音が崩れるのを防げます。
- フレーズ
- give‿up
- 日本語訳
- 諦める、やめる
- 使う場面
- 努力をやめないよう励ますときは、Don’t give up.と言えます。
- 注意点・誤用例
- giveを「ギブ」と日本語の母音まで完成させてからupを始めると、間が空きます。また、giveの最後のeは発音しません。
- 発音・ニュアンス
- 下唇と上の歯で作る/v/を保ち、その摩擦からupの母音へ直接移ります。「ギヴァップ」は流れの目安であり、日本語の音をそのまま当てるものではありません。
- フレーズ
- I’ll pick‿it‿up after work.
- 日本語訳
- 仕事の後でそれを受け取ります。
- 使う場面
- 荷物や注文品を後で受け取る予定を伝える場面です。文脈によってpick upは「拾う」「迎えに行く」という意味にもなります。
- 注意点・誤用例
- pickの/k/とitの母音、itの/t/とupの母音という二つの境目があります。最初から文全体を速く読むと、itが消えて意味が不明瞭になることがあります。
- 発音・ニュアンス
- pick‿it、it‿upを別々に練習してから、pick‿it‿upへ広げます。北米英語ではitの/t/が短いはじき音になり、「ピキラップ」に近い流れで聞こえる場合があります。
同じ子音・近い子音:口の形を作り直さない
that time、good day、big game、feel likeのように、境目で同じ音または近い音が続くことがあります。この場合は、二つの音を日本語のように区切って反復するより、最初の子音の位置を少し保って次へ進みます。
| 表現 | 境目の扱い | 聞こえ方の目安 |
|---|---|---|
| that time | /t/の閉鎖を一度作る | ザッタイム |
| good day | /d/の位置を保つ | グッデイ |
| big game | /g/を二度強く破裂させない | ビッゲーム |
| feel like | /l/の舌位置から続ける | フィーライク |
母音+母音:短い滑り音で移動する
前の語が母音で終わり、次の語も母音で始まると、母音同士の間に短い/j/や/w/に近い移動音が生じることがあります。独立した強い音を挿入するのではなく、一つ目の母音の口の形から二つ目へ移る途中の動きとして捉えます。
- フレーズ
- May‿I ask a question?
- 日本語訳
- 質問してもよろしいですか。
- 使う場面
- 授業、会議、案内所などで、丁寧に質問を始めるときに使えます。
- 注意点・誤用例
- MayとIの間に日本語の強い「ヤ」を一音分足す必要はありません。また、くだけた許可の質問ではCan Iもよく使われます。
- 発音・ニュアンス
- mayの終わりからIへ移る途中に、短い/j/のような動きが生まれます。「メイ・アイ」より切れ目が小さく、「メイヤイ」に近く聞こえることがあります。
- フレーズ
- Go‿away for a while.
- 日本語訳
- しばらく離れてください。
- 使う場面
- 相手にその場を離れてほしい場面ですが、命令形なので言い方によっては強く響きます。
- 注意点・誤用例
- 丁寧に頼みたいなら、Could you give me a moment?などへ言い換えます。発音練習用の表現と、実際の対人場面での丁寧さは分けて考えます。
- 発音・ニュアンス
- goの終わりでは唇が丸くなっています。その形からawayへ移るため、短い/w/に近い音が自然に生まれ、「ゴウワウェイ」のような流れになります。
基本の連結が分かっても、実際の会話にはまだ聞き取りにくい音があります。理由は、会話では音がつながるだけでなく、弱くなったり別の音に近づいたりするからです。
脱落・同化・はじき音・弱形を区別する
- 聞こえない音が、本当に消えたとは限らない
- 複数の音声変化が同じフレーズ内で重なることがある
自然な会話を聞くときは、すべてをリンキングで説明しようとしないことが大切です。音が残ったまま境目を越える連結と、音が弱まる脱落、二つの音が混ざる同化では、起きていることが異なります。
脱落:作った音を強く解放しないこともある
good time、next day、first classのように子音が続くと、前の子音が聞こえにくくなることがあります。ただし、話者が舌や唇の位置をまったく作っていないとは限りません。口の中では閉鎖を作りながら、息を外へ強く解放しない発音もあります。
| 表現 | 弱くなりやすい音 | 聞こえ方の目安 |
|---|---|---|
| good time | /d/ | グッタイム |
| next day | /t/ | ネクスデイ |
| hot milk | /t/ | ホッミルク |
| send them | /d/ | センゼムに近い流れ |
「聞こえないなら発音しなくてよい」と単純に覚えると、語の形が大きく崩れることがあります。まず正しい子音の位置を作り、次の音が来るときに破裂や摩擦がどの程度弱くなるかを音声で確かめましょう。
同化:隣の音と混ざって別の音に近づく
/t/、/d/、/s/、/z/の後ろにyouの/j/が続くと、舌の動きが重なり、別の音に近づくことがあります。代表例は、don’t you、did you、miss you、as youです。
- フレーズ
- Did‿you call the restaurant?
- 日本語訳
- レストランに電話しましたか。
- 使う場面
- 予約や問い合わせの電話を済ませたか確認する場面です。
- 注意点・誤用例
- did youが常に同じ形へ変わるわけではありません。didを対比的に強調する場合は、/d/が明瞭に残ることがあります。
- 発音・ニュアンス
- didの/d/とyouの/j/が混ざり、/dʒ/に近づくため、「ディジュー」のように聞こえる場合があります。疑問文全体のイントネーションも一緒にまねます。
- フレーズ
- Don’t‿you need this?
- 日本語訳
- これは必要ではありませんか。
- 使う場面
- 相手が必要そうな物を置き忘れているときなど、確認を含めて尋ねます。
- 注意点・誤用例
- 否定疑問文は、話し手が「必要だろう」と予想している響きを持つことがあります。中立に聞きたい場合は、Do you need this?が使えます。
- 発音・ニュアンス
- /t/と/j/が影響し、/tʃ/に近い音になるため、「ドンチュー」のように聞こえます。ただし、強調や丁寧な読み上げでは変化が弱い場合もあります。
はじき音:北米英語のtやdが短く聞こえる
北米英語では、/t/や/d/が母音に挟まれ、後ろの音節に強勢がないとき、舌先を歯茎付近へ一瞬だけ当てる音になることがあります。発音記号では[ɾ]で表され、日本語のラ行や短いダ行に似て聞こえる場合があります。
water、better、cityの語中だけでなく、get it、put it on、check it outのように単語の境目を越えて現れることもあります。これは/t/が/l/へ変化したものではありません。舌先が一瞬触れる音として練習します。
- フレーズ
- Check‿it‿out.
- 日本語訳
- 見てみて。確認してみて。
- 使う場面
- 面白い物、ウェブページ、場所、情報などに相手の注意を向けるくだけた場面です。
- 注意点・誤用例
- カタカナの「チェッキラウ」をそのまま再現しようとすると、母音が増えることがあります。check、it、outの語形を保ったうえで境目を滑らかにします。
- 発音・ニュアンス
- checkの/k/がitへつながり、北米英語ではitの/t/が短いはじき音になり得ます。最後のoutまで一息で進むと、「チェッキラウ」に近い流れで聞こえます。
弱形:短い機能語が会話の背景へ下がる
a、an、the、to、of、for、and、can、haveなどは、文中で強調されないと短く弱く発音されます。母音があいまいな/ə/へ近づいたり、子音が前後の語に取り込まれたりするため、単独で覚えた音と違って聞こえます。
- フレーズ
- I can do it.
- 日本語訳
- 私はそれができます。
- 使う場面
- 作業を引き受けたり、自分に可能だと伝えたりするときに使います。
- 注意点・誤用例
- 肯定文のcanを毎回強く読むと、不自然な対比が生じることがあります。ただし「できる」と強調するYes, I CAN.では強い形が適切です。
- 発音・ニュアンス
- 通常の肯定文ではcanの母音が弱くなり、/kən/に近づきます。doを目立たせ、canを短くすると、文の意味の中心が聞き手へ伝わりやすくなります。
音声変化は一つずつ独立して起こるとは限りません。check it outでは子音と母音の連結に加え、アクセントによってははじき音も加わります。次は、実際の会話場面で複数の変化を観察します。

日常会話でリエゾンの聞こえ方を確かめる
- 音の境目だけでなく、場面・意味・強調語を一緒に覚える
- 会話は役割を交代し、質問と応答を一まとまりで練習する
短い表現を実際の場面に入れると、どこを強く読み、どこを弱くつなぐかが見えやすくなります。ここでは注文、予定、意見、依頼という身近な場面を使います。
カフェで持ち帰りを頼む
- フレーズ
- 店員:Is that for here or to go?
学習者:To go, please. Can‿I get‿a small coffee? - 日本語訳
- 店員:店内ですか、持ち帰りですか。
学習者:持ち帰りでお願いします。小さいコーヒーをいただけますか。 - 使う場面
- カフェや軽食店で、持ち帰りの注文を伝える場面です。
- 注意点・誤用例
- Can Iを速く言うことに集中し、coffeeの種類や大きさを不明瞭にしないようにします。注文内容に関わるsmallとcoffeeを比較的はっきり発音します。
- 発音・ニュアンス
- canの/n/がIへつながり、「キャナイ」に近く聞こえます。getの/t/もaの母音へつながり、アクセントによっては短いはじき音になることがあります。
朝の予定を伝える
- フレーズ
- 学習者:I need to GET‿up at SIX.
会話相手:What time do you LEAVE? - 日本語訳
- 学習者:6時に起きる必要があります。
会話相手:何時に出発しますか。 - 使う場面
- 仕事、旅行、通学など、翌朝の予定を話す場面です。
- 注意点・誤用例
- need、to、get、up、at、sixをすべて同じ強さで読むと、意味の中心が伝わりにくくなります。速さよりGETとSIXの強調を優先します。
- 発音・ニュアンス
- need toでは子音が連続し、toは弱くなりやすい部分です。get upでは/t/から母音へ移り、北米英語でははじき音に近づく場合があります。
意見を伝える
- フレーズ
- 会話相手:Is this plan good for everyone?
学習者:I think‿it depends‿on the person. - 日本語訳
- 会話相手:この計画は全員にとってよいですか。
学習者:人によると思います。 - 使う場面
- 一つの答えに決められず、条件や人によって結果が異なると伝える場面です。
- 注意点・誤用例
- 主語がitなのでdependではなくdependsを使います。音をつなげることに気を取られ、三人称単数の/s/を落とさないようにします。
- 発音・ニュアンス
- thinkの/k/がitの母音へ、dependsの/z/がonの母音へつながります。depends onを意味のまとまりとして一息で発音します。
行動をやめてもらう
- フレーズ
- 学習者:Could‿you stop‿playing the guitar, please?
会話相手:Of course. Sorry about that. - 日本語訳
- 学習者:ギターを弾くのをやめてもらえますか。
会話相手:もちろんです。すみません。 - 使う場面
- 音が気になるときなど、相手へ行動を止めてほしいと丁寧に頼む場面です。
- 注意点・誤用例
- Stop playing the guitar.だけでは強い命令に聞こえることがあります。状況に応じてCould youとpleaseを使い、声の調子も穏やかにします。
- 発音・ニュアンス
- couldの/d/とyouの/j/が影響し、「クッジュー」に近く聞こえる場合があります。stopとplayingの/p/は二回強く破裂させず、唇の閉鎖を一度保って次へ進みます。
リエゾンが自然でも、語法や丁寧さが場面に合っていなければ、意図した印象にはなりません。発音練習では、誰が誰に、何のために言う表現なのかも一緒に確認してください。
リエゾンを聞き取るための段階練習
- 短い音声を使い、聞き取れない原因を一つずつ分類する
- 境目の反復、同時読み、少し遅れて追う練習、録音比較の順で進める
リエゾンは、ルールを読んだだけでは安定して聞き取れるようになりません。効果的なのは、聞こえなかった箇所を特定し、文字と音を照合し、自分の口でも同じ動きを試すことです。
手順1:短い音声を文字なしで聞く
最初は一文から二文、数秒程度の音声を選びます。長いニュースや映画の場面では、未知語、文法、背景知識、話者の感情などが重なり、音の問題だけを見つけにくくなるためです。
二回ほど聞き、聞こえた単語、一語に聞こえた部分、消えたように感じた音、予想と異なった音を書きます。正解を当てることより、自分がどう聞き間違えたかを残すことが重要です。
手順2:スクリプトと照合して原因を分ける
英文を見たら、聞こえなかった理由を次のように分類します。
- 単語の意味を知らなかった
- 単語単独の発音を誤って覚えていた
- 子音と母音がつながっていた
- 子音が弱く、解放されていなかった
- 同化によって予想外の音になっていた
- 機能語が弱形になっていた
- 文の処理が音声の速度に追いつかなかった
英文を読んでも意味が分からないなら、必要なのは語彙や文法の確認です。文字なら理解できるのに音では分からないなら、音と既知の表現を結び付ける練習が中心になります。
手順3:音が変わる境目へ印を付ける
連結する場所には‿、弱くなる音には括弧、強く読む語には大文字など、自分が見て分かる記号を付けます。
- 練習用の表記
- Can‿I HAVE‿it?
I’ll PICK‿it‿UP.
Did‿you GET‿it?
Because‿of the RAIN, we stayed‿INSIDE. - 日本語訳
- いただけますか。
私が拾います。
受け取りましたか。
雨のため、私たちは室内にいました。
手順4:難しい境目だけを反復する
I’ll pick it up after work.が難しいなら、最初から文全体を繰り返しません。pick、pick‿it、it‿up、pick‿it‿up、I’ll pick‿it‿up、全文という順番で広げます。
- 個々の単語を正確に発音する
- 境目の二語だけをゆっくりつなぐ
- 不要な母音が入っていないか確認する
- 意味のまとまりへ広げる
- 強く読む語を決める
- 音源の速度へ少しずつ近づける
口の動きが安定する前に速度を上げると、必要な音まで消えやすくなります。ゆっくりでも音の受け渡しができていれば、速度は後から調整できます。
手順5:音声と同時に読み、次に少し遅れて追う
英文を見ながら音声とほぼ同時に読むと、発音だけでなく、強弱、音の高低、息継ぎ、感情を観察できます。追えない場合は再生速度を少し下げても構いませんが、口の動きが整ったら元の速度でも確認します。
同時読みができたら、英文を見ずに音声の少し後ろを追います。最初は音の再現を優先し、次に意味を理解しながら追い、最後は音声を止めて自分だけで同じ文を再現します。
手順6:録音して一項目だけ直す
録音を聞くときは、元の音源、自分の録音、元の音源の順に再生します。一度にすべてを直そうとせず、今日は語末の不要な母音、次回は弱形というように、確認項目を一つか二つに絞ります。
- 単語間に長い空白がないか
- 語末子音へ母音を足していないか
- 重要語と機能語の強さが同じになっていないか
- つなげようとして子音を丸ごと失っていないか
- 元の音源より速く言おうとしていないか
- 意味上の区切りまで消していないか
録音の目的は、英語話者と声質を同じにすることではありません。単語の境目、音の強弱、聞き手に必要な子音が保たれているかを確認することです。
毎日続けやすい7日間の実践メニュー
- 一日に扱う音声変化を絞り、短い表現を文まで広げる
- 最終日は新しい教材へ進まず、録音を比較して弱点を選ぶ
練習量を増やしすぎるより、短い表現を聞く、印を付ける、口に出す、録音するという流れを繰り返すほうが変化を確認しやすくなります。次のメニューは、一回につき短時間でも進められる構成です。
1日目:子音+母音だけを扱う
give up、pick up、take out、look at、can Iの五つを使います。各表現を単独で読み、語末子音の位置を作ったまま次の母音へ移します。その後、Don’t give up.、I’ll pick it up.のように短い文へ入れます。
2日目:母音同士の移動を扱う
may I、see it、go away、go out、do itを練習します。/j/や/w/を強く足すのではなく、最初の母音から次の母音へ移る途中の音として確認します。鏡を使い、唇が丸い位置から開く動きなどを観察します。
3日目:同じ子音と脱落を聞く
that time、good day、first class、next dayを使います。子音を二回強く出す読み方と、一度の閉鎖から次へ進む読み方を録音し、違いを聞きます。消すことを目標にせず、口の位置と解放の有無を観察します。
4日目:同化を扱う
did you、don’t you、miss you、would youを練習します。まず変化させずにゆっくり読み、次に音源の自然な発音をまねます。どちらも言える状態にすると、強調や話す速さによる違いへ対応しやすくなります。
5日目:弱形と強調語を扱う
I can do it.、a cup of tea、I need to go.を使います。文の意味を担うDO、TEA、GOを目立たせ、can、of、toを短くします。すべての単語を弱くするのではなく、前景と背景を作る感覚で読みます。
6日目:一つの会話を役割交代で読む
この記事のカフェ会話を使い、最初は店員、次は学習者の役割を読みます。質問だけでなく応答まで読むと、英語のリズムが会話の意図によってどう変わるかを確認できます。
7日目:最初と最後の録音を比べる
1日目に録音したI’ll pick it up.をもう一度録音します。単に速くなったかではなく、pickとitの間、itとupの間、強調語、不要な母音の有無を比べます。
改善した点を一つ、次に直す点を一つだけ書きます。比較できる記録を残すと、感覚だけで判断せずに次の練習内容を決められます。

独学で陥りやすい失敗と修正方法
- すべてを速く、強く、長くつなげる必要はない
- 発音の自然さより、意味が明瞭に伝わることを優先する
カタカナだけで音を固定する
カタカナ表記は、単語の境目が移動する感覚をつかむときには便利です。しかし、英語の母音、子音、音の長さ、強弱を十分には表せません。「キャナイ」と書いても、canの/n/やIの二重母音まで正確に示せるわけではありません。
音声を聞き、口の動きを観察し、必要なら発音記号を確認した後で、カタカナを流れのメモとして使います。最後はカタカナを隠し、英文と音声だけで再現します。
文中のすべてを無理につなげる
リエゾンは、文全体を息継ぎなしで読む技術ではありません。英語にも意味のまとまりがあり、話し手が情報を区切る場所があります。
- フレーズ
- When‿I arrived, / everyone was waiting.
- 日本語訳
- 私が到着したとき、全員が待っていました。
- 使う場面
- 過去の到着時の状況を説明する場面です。
- 注意点・誤用例
- when Iの内部はつながりますが、arrivedの後ろには意味上の区切りを置けます。全体を無理に一息で読む必要はありません。
- 発音・ニュアンス
- whenの/n/をIへつなぎ、従属節の終わりで短く区切ります。区切りは単語ごとではなく、意味のまとまりごとに置きます。
速さを発音の良さだと考える
速く話すほど自然になるわけではありません。舌や唇の位置が不安定なまま速度だけを上げると、聞き手が単語を識別するために必要な音まで失われます。
個々の音、単語のアクセント、語の境目、強弱、速度の順に整えます。ゆっくりでも、重要語が明瞭で、意味のまとまりの内部が滑らかなら、聞き取りやすい英語になります。
音声変化を必ず起こる規則として覚える
リエゾン、脱落、同化の程度は、話す速さ、地域、場面、強調、話者の発音によって変わります。did youが「ディジュー」に近づく場合でも、didを強く対比させるなら/d/が明瞭に発音されることがあります。
聞き取りでは複数の可能性を知り、自分が話すときは無理に変化を作りすぎない姿勢が適切です。変化には幅があると理解すれば、違う発音に出会ったときも柔軟に対応できます。
リエゾンだけで聞き取りを改善しようとする
会話が理解できない原因は音声変化だけではありません。語彙を知らない、文法構造をすばやく処理できない、単語のアクセントを誤っている、話題の背景を知らない、といった要素も関係します。
音声を聞いた後、スクリプトを読んでも意味が分からなければ、語彙や文法へ戻ります。読めば分かるのに聞こえなければ、発音と音声変化を確認します。この切り分けを行うと、同じ箇所を目的なく再生し続ける状態を避けられます。
英語のリエゾンに関するQ&A
- 名称やアクセントの違いにこだわりすぎず、実際の音を確認する
- 最初は日常で使う短い表現から練習する
リエゾンとリンキングは同じですか?
英語学習では同じ意味で使われることがあります。ただし、リンキングを単語間の連結に限定し、リエゾンを脱落、同化、弱形、はじき音まで含む広い言葉として使う教材もあります。
リエゾンを使わないと英語は通じませんか?
一語ずつ区切っても、個々の音、単語のアクセント、語順が明瞭なら通じる場合があります。ただし、語末へ不要な母音を加えたり不自然な場所で毎回止まったりすると、相手が単語を識別しにくくなることがあります。
アメリカ英語とイギリス英語で違いはありますか?
どちらにも連結、同化、脱落、弱形がありますが、現れ方には違いがあります。北米英語ではtやdのはじき音が目立ち、イギリス英語系の一部では次に母音が来ると語末のrが現れるlinking rが聞かれます。
カタカナ発音は使わないほうがよいですか?
音の流れや境目を把握する補助としては使えます。ただし、英語の母音、子音、強弱を正確には表せないため、実際の発音は音声、発音記号、口の形と組み合わせて確認してください。
どの表現から練習すればよいですか?
Can I、give up、pick it up、take it out、look at it、did you、don’t you、it depends onなど、短く使用頻度の高い表現から始めます。単独で終わらせず、自分が使う一文へ入れて練習すると応用しやすくなります。
リエゾンは速い会話だけで起こりますか?
速い会話で変化が目立つことはありますが、ゆっくりした自然な発話でも音はつながります。リエゾンは速度を上げる技術ではなく、隣り合う音の間で口を効率よく移動させる仕組みです。
発音できれば聞き取れるようになりますか?
自分で音の動きを再現する練習は、聞こえた音と知っている表現を結び付ける助けになります。ただし、聞き取りには語彙、文法、話題の知識、処理速度も関係するため、発音練習だけですべての問題が解消するわけではありません。
英語のリエゾンを学ぶ第一歩は、速く話すことではなく、単語の境目で口がどう動くかを知ることです。give up、can I、pick it upのような短い表現を選び、音声を聞き、境目へ印を付け、ゆっくり再現してみてください。
連結に慣れたら、脱落、同化、弱形、はじき音を一つずつ観察します。一度にすべてを変えようとせず、録音ごとに確認項目を絞ると、自分の発音で何が起きているかを捉えやすくなります。
今日の練習では、I’ll pick it up.を三回録音してみましょう。一回目は単語を確認し、二回目はpick‿itとit‿upをつなぎ、三回目はPICKとUPを意識して文全体を読みます。三つを聞き比べるだけでも、単語の集まりが一続きの音へ変わる過程を確認できます。

