性別や既婚の有無など、敬称を間違うと失礼になってしまうかも…と、英語の敬称表現に対して苦手意識を持っている方もいるでしょう。
それぞれの敬称の意味や使い方はもちろん、「何を使えばよいか分からない時」の正しい対処法も解説します。
英語の敬称の使い方をマスターしよう
敬称とは、相手に対する敬意や尊敬の意を表すために使う接尾語です。名前と一緒に使われることが基本ですが、場合によっては敬称だけで呼びかける場合もあります。
日本語の敬称(一例) | 使い方 |
~さん、~様、~先生 | (苗字+敬称例) 田中さん、鈴木先生、小林様 |
日本語では、名前(苗字)の後に敬称をつけるのが一般的です。基本的には、性別や年齢による敬称の使い分けはなく「~さん」も「~様」も老若男女問わず使うことができるという特徴があります。
英語の敬称(一例) | 使い方 |
Mr、Mrs、Dr | (敬称+ファミリーネーム例) Mr. Suzuki、Mrs. Kobayashi |
英語では、敬称の後にファミリーネームをつけるという、日本とは逆の順番で使います。メールなどに書き起こす時には、ファミリーネームの前にスペースを忘れずに入力してください。
特徴は、性別による敬称の使い分けがある点です。普段、性別を問わない「~さん」や「~様」といった敬称を使っている日本人にとっては、慣れるまでは使いこなすのが難しいとされています。
英会話では必要不可欠なスキルですので、少しずつ練習を重ねましょう。
「性別による敬称」は主に7種類
まずは、「性別による敬称」を8種類紹介します。英語では、呼びかける相手の性別と年齢や結婚しているかどうかによって使うべき敬称が変わってきます。
日本語でも子どもや友人同士で使う「~くん」や「~ちゃん」という敬称があり、こちらも性別によって使い分けられていますよね。
しかし「としちゃん」「しゅうちゃん」のように男性にも「~ちゃん」を使うこともあるでしょう。
英語の敬称はこれよりも厳格に性別による使い分けが徹底されており、男性に対して女性用の敬称を使うことは絶対にありませんし逆も然りです。
男性に使う敬称
敬称(発音) |
Mr.(ミスター) |
Sir.(サー) |
Mstr.(マスター、ミスター) |
男性に対する敬称は、主に3つあります。それぞれの対象者と使い方を、例文を交えながら確認しましょう。
男性に使う一般的な敬称:Mr.
男性に対して使う最もポピュラーな敬称で、日本語に訳すと「~さん」が適当でしょう。
使い方は「Mr.+苗字」が基本ですが、場合によっては「Mr.+フルネーム」で使われることもあります。
Mr, Suzuki
スズキさん(男性)
Mr. John Smith
ジョンスミスさん(男性)
丁寧でかしこまった印象を与える:Sir.
Mr. よりも丁寧で敬意を払っているのが Sir. です。こちらは名前とセットで使う敬称ではなく、単体で使用します。
相手の名前が分からない時に使う敬称として知られていますが、名前を知っている相手に対して使っても問題ありません。
接客シーン・上司への呼びかけ・街中で知らない男性に声をかける時など様々なシチュエーションで使うことができます。
Good morning, sir.
お客様、おはようございます。
Excuse me, sir.
すみません。(Excuse me. よりも丁寧)
Yes sir, Mr. Satou.
かしこまりました、サトウさん。(Yes. よりも丁寧)
男の子に向けた敬称:Mstr.
日本語にすると「~君」と訳される「Mstr.」は、中学生くらいまでの男の子を対象とした敬称です。
日本では、大人同士でも上司が部下に対して「○○君」と呼ぶことがあります。そのため「~君」は子供だけを対象とした敬称ではないと感じる方もいるでしょう。
その点、Mstr. は「~お坊ちゃん」に近いニュアンスを含んだ、完全に子供を対象とした敬称ですので誤用には注意してください。
Mstr. Tormas
トーマス君
Mstr. Tarou
タロウお坊ちゃま
女性に使う敬称
敬称(発音) |
Mrs.(ミセス、ミシーズ) |
Ms.(ミズ) |
Miss(ミス) |
Madam(マダム) |
女性に対する敬称は、主に4つあります。それぞれの対象者と使い方を、例文を交えながら確認しましょう。
既婚女性に使う敬称:Mrs.
Mistress を略した敬称である Mrs. は、既婚の女性に対してのみ使用できます。
ドラマや映画などの吹き替えでは「~さん」と訳されることが多いですが、既婚者のみという点を考慮すると「~奥さん」と訳すこともできるでしょう。
配偶者と一緒にいる場合などを除き、相手が既婚者かどうかは簡単には判断できません。
「結婚してそうだから」といって Mrs. を使うのではなく、はっきりと結婚していることが分かっている相手にのみ使うのがマナーです。
Mrs, Suzuki
スズキ奥様(女性)
Mrs. Rebecca Smith
レベッカスミスさん(女性)
未婚女性に使う敬称:Ms.
Mrs. が既婚女性を対象とした敬称であったのに対して、Ms. は未婚女性に対して使われる敬称です。
しかし、近年では既婚の有無で敬称を変えることに対する難しさや世界的なジェンダーレスへの取り組みなどが考慮され、「Ms. は女性に対して広く一般的に使える敬称」という認識が広がっています。
男性の敬称である「Mr.」のように、既婚の有無や年齢を問わず女性に対する敬称としての「Ms.」の新しい使い方が浸透しているため、例え既婚の女性に Ms. を使っても失礼な印象は与えません。
Ms. Suzuki
スズキ様(女性)
Ms. Rebecca Smith
レベッカスミスさん(女性)
女の子に向けた敬称:Miss
日本語にすると「~ちゃん」と訳される「Miss」は、中学生くらいまでの女の子を対象とした敬称です。ミス・ユニバースやミス・○○などのミスは「Miss」を意味しています。
日本では、大人同士でも友達同士で「○○ちゃん」と呼ぶことがあります。その点、Miss. は、「~お嬢さん」に近いニュアンスを含んでいるため大人に対して使うことはありませんので注意しましょう。
Miss Anita
アニータお嬢さん
Miss Hanako
ハナコちゃん
相手の名前が分からない時に使う:Madam
男性の「Sir.」と同じく、女性向けの丁寧で敬意を払った敬称が Madam です。こちらも名前とセットで使う敬称ではなく、単体で使用します。
相手の名前が分からない時に使う敬称として知られていますが、名前を知っている相手に対して使っても問題ありません。
ただ、男性の Sir. のように様々なシーンで使える万能な敬称という訳ではありません。
人によっては「おばさん」と言われているように感じるそうで、「おばさんなんて年齢じゃないのに失礼だわ」と怒られてしまうケースもあるようです。
そのため、Sir. と同じような感覚で多用するのは避けた方がよいでしょう。
Thank you, madam.
どうもありがとうございます。
Yes, madam.
はい、承知しました。(Yes. よりも丁寧)
「職業による敬称」覚えるべき2種類
特定の職業には、独自の敬称をつけることができるものがあります。中でも、日常会話で耳にする機会が多いと想定される2つの敬称を学んでいきましょう。
医師や博士号の資格者対する敬称:Dr.
病院の先生など医者や博士号を取得している人に対してはDr.(ドクター)という敬称を使いましょう。
日本では、医師、教師、政治家、指導者など幅広い職種に対する敬称として「先生」が使われていますが、Dr. にはそのような汎用性はありません。
Dr. Kobayashi
コバヤシ医師
Dr. Murphy
マーフィー博士
教授や講師に対する敬称:Prof.
大学などの教授や講師に対しては、Professor の略である Prof. という敬称を使うことができます。呼びかける時などは、略さずに Professor と言うのが一般的です。
魔法学校を舞台にしたハリーポッターシリーズでは、ハリーが学長であるダンブルドアに対して「Professor!」や「Professor, Dumbledore.」と呼びかけるシーンが印象的です。
日本語訳では「先生」と訳されていましたが、作者の中では学校の先生というよりも教授や講師に近い立ち位置であるため、Professor という敬称が使われているのでしょう。
【学校や習い事の先生に使う敬称は?】
日本では、教師や指導者のことを「先生」と呼びますが、先生を意味する Teacher は名前に付ける敬称として使うことはありません。
Teacher はあくまでも職業の名前なので、感覚としては「教師」に近い意味合いで使われます。先生に対して、「○○教師!」と呼ぶことも「教師!質問があります!」と言うこともありませんよね。
名前を呼ぶ時には、Mr. や Ms.、Sir. を使いましょう。
Hi, Mr. Suzuki.
スズキさん(先生)、こんにちは。
Excuse me sir, may I have a question.
すみません、質問があります。(先生が男性の場合)
その他の敬称
普段あまり使う機会はなさそうな敬称を、日本語訳と共にまとめて紹介します。
- Prime Minister 総理大臣
- President 大統領
- General 将軍
- Pope 教皇、司祭
- Dean 学長、学部長
- Mayor 市長
- Secretary 大臣
性別に関係なく使える英語の敬称
性別を区分しない新しい敬称「Mx.」
ジェンダーレス化や性にとらわれないという考え方の広がりへの配慮から生まれた新しい敬称が「Mx.(ミクス、マクス)」です。
イギリスをはじめとしたヨーロッパ諸国で使われ始め、現在では性別が不明な相手への一般敬称として世界中に浸透しています。
感覚としては、日本語の「~さん」や「~様」のようなイメージで使える敬称で、取引先とのメールなどでファミリーネームしか分からず性別が不明な状況などでも活用できます。
Mx.Tanaka
タナカさん
Mx. Anderson
アンダーソン様
知っておくと便利な敬称「Esq.」
Esquire の略からなる「Esq,(エスク)」は、 Mx. と同様に、性別を問わずに使えるニュートラルな表現です。日本語に訳すると「~様」や「~殿」に近いイメージの丁寧な意味合いを持ちます。
「Esq.」は、他の敬称とは使い方のルールが異なりますので、使う際には注意しましょう。
- フルネームが分かる場合のみ
- 名前+,+Esq. の順
Avery Smith,Esq.
エイヴェリースミス様
Yuu Nakano.Esq.
ナカノユウ様
フルネームが分かる場合にのみ使える限定的な敬称であるため、使う機会はあまり多くないかもしれません、
ビジネスシーンで海外の人とやりとりをする場合など名前だけでは性別の判断が付かない時に活用しましょう。
まとめ
まずは「男性には Mr.」「女性には Ms.」と覚えておきましょう。名前が分からない時には、「男性には Sur.」「女性には Mdm.」を使います。
この4つを頭に入れておくだけで、日常会話は特段問題なくこなせるはずです。余裕がでてきたら、その他の敬称についても少しずつ身につけていくと良いでしょう。
それではまた、See you!