英語では物が「1つなのか(単数形)」「複数あるのか(複数形)」によって名詞の形が変化します。
絶対複数という特殊な例外もあります。絶対複数とは、常に複数形で使われる名詞のことです。たとえその物が1つしかなくても、複数形で表現されます。代表的な絶対複数名詞には「ハサミ」や「眼鏡」があります。さらに例外的なケースもあり、「シャツ」や「ビキニ」は単数形と複数形の両方が存在します
今回は、そんな単数形と複数形の基本ルールをおさらいしながら、応用編として「単数だけど複数形になる名詞」について学びましょう。
レッスンの内容
はじめに:英語の単数形と複数形
英語の単数形と複数形を間違えたからといって「会話が成立しない」ということはありませんが、片言感や違和感を与えてしまうでしょう。
英語を使って意思疎通ができるという段階から「正しい英語表現で会話ができる」というワンランク上のレベルを目指すために、単数形と複数形をしっかりとマスターしましょう。
英語の基本的な文法:単数形と複数形
英語では2つ以上(複数)の物を指す場合、名詞の語尾に –s や –es を付けるなどして形を変化させるというルールがあります。1つの物を「単数形」と呼ぶのに対して、複数の物を表す形に変化させた名詞を「複数形」と呼びます。
【名詞の単数形と複数形】
単数形 | 複数形 | |
犬 | Dog | Dogs |
時計 | Watch | Watches |
都市 | City | Cities |
人 | Person | People |
このように、物の個数によって名詞の形が変化するのは英語だけではありません。他にも、単数形・複数形の概念がある言語は複数存在します。
英語と似たようなルールで –s や –es を付ける言語には、フランス語やポルトガル語が該当します。他にも、イタリア語やドイツ語にも複数形という概念はあるものの、英語とはまた異なる独自のルールで名詞を変化させます。
日本語との比較:「達」の役割
日本語には、物の個数によって名詞の形を変化させるというルールはありません。英語を学ぶ上でこの複数形の –s や三単現の –s は日本人のつまずきやすいポイントともいえるでしょう。
単数形・複数形がどのようなものなのかをしっかり理解するために、日本語にも名詞の複数形があったらと仮定して考えてみましょう。
英語の複数形でつける –s や -es は、日本語の「達」や「ら」に似ています。日本語では主語が複数ある場合に、「彼」ではなく「彼ら」「君」ではなく「君達」と変化させますよね。
英語の場合は、これが名詞にも起こると考えましょう。
I have an apple.
私は、リンゴを持っています。
I have five apples.
私は、リンゴ達を5つ持っています。
イメージとしては、このような感じです。日本語では「リンゴ達」とは言いませんが、英語では名詞が複数ある際には、名詞の形が変化します。これが単数形・複数形のルールです。
複数形にしないとどうなるの?
単数形と複数形を誤って使ってしまった場合、ネイティブにはどのように伝わるのでしょうか?
まず、英語は単語の順番が大切です。順番さえ正しければ、単数形と複数形を間違えてしまっても伝えたいことは理解してもらえるでしょう。
正:I have five apples.
私はリンゴを5つ持っています。
誤:I have five apple.
私はリンゴを5持っています。
正:I read two books.
私は本を2冊読みました。
誤:I read two book.
私は本を2読みました。
このように、複数形にしなければならないシチュエーションで –s や -es を付け忘れると、日本語でいうところの単位(助数詞)が抜けたような違和感があります。単位が抜けていると違和感はあるものの、何が言いたいのかは理解できますよね。
英語は世界共通語なので、ネイティブ以外の人でも多くの人が第二言語として英語を取得しています。そのため、多少違和感があっても汲み取って理解してもらえることがほとんどです。
「間違ったらどうしよう」「間違えることが恥ずかしい」という気持ちを払拭して、どんどん声に出していくことが英会話上達のカギとなるでしょう。
絶対複数:物体は1つでも名詞は複数形?!
英語の名詞における単数形・複数形についておさらいしてきましたが、ここからは「絶対複数(Pluralia tantum)」というジャンルについて学んでいきましょう。
英語の絶対複数
絶対複数とは、常に複数形で使われる名詞のことで、例えその物が1つしかなくても複数形となります。絶対複数名詞の代表は「Scissors(ハサミ)」です。ハサミは1つだったとしても「Scissor」ではなく「Scissors」と複数形で使います。
I bought scissors.
私はハサミを買いました。(1つの場合)
I bought two pair of scissors.
私はハサミを2つ買いました。
このように、1つのハサミを表す場合と複数のハサミを表す場合で、どちらも複数形が使われています。これが絶対複数の名詞の特徴です。
絶対複数と不可算名詞との違い
絶対複数と度々混同されるのが「不可算名詞」です。不可算名詞とは、その名の通り数えられない物のことで、水や素材・地名や人名などの固有名詞が該当します。
不可算名詞の中には、語尾が –s で終わる単語もあります。そのため、1つの物を表しているのに複数形のように見えるため、絶対複数と誤解されてしまうことがあるのです。
- 絶対複数…数えられるが、常に複数形で表現する単語(単数形がない)
- 不可算名詞…数えられない物で、常に単数扱いする単語(複数形がない)
【不可算名詞で語尾が -s で終わる単語一例】
ジャンル | 単語(意味) |
学問 | Linguistics(言語学) Mathematics(数学) Physics(物理学) |
病名 | Measles(はしか) Diabetes(糖尿病) Shingles(帯状疱疹) |
競技・ゲーム | Hurdles(ハードル走) Dominoes(ドミノ) Billiards(ビリヤード) |
その他 | News(ニュース) Business(ビジネス) Olympics(オリンピック) Clothes(衣類) |
語尾が –s で終わるという点が共通していても、絶対複数と不可算名詞は別物であるということを理解しましょう。
代表的な絶対複数となる名詞一覧
絶対複数となる名詞を、ジャンルごとに分けて紹介します。例文の部分では、単数であっても語尾が –s や -es など複数形の形をとっていることに注目してみてください。
身につける物:衣類・アクセサリー
- Pants パンツ(ズボン)
- Glasses 眼鏡
- Shoes 靴
- Socks 靴下
- Stockings ストッキング
- Sunglasses サングラス
- Gloves 手袋
- Earrings イヤリング、ピアス
- Pajamas パジャマ
- Suspenders サスペンダー
- Jeans ジーンズ
- Gogglesゴーグル
After taking a bath, put on my pajamas.
お風呂に入ってから、パジャマを着ます。
When you go to the pool, don’t forget to bring your goggles.
プールへ行く時は、ゴーグルを忘れずに持っていきましょう。
I always wear sunglasses when I drive.
私は、車を運転する時はいつもサングラスをかけています。
The waist of this pants was a little bit big for me, so I use suspenders.
このズボンのウエストは私にとって少し大きかったので、サスペンダーを使っています。
Today is payday, so I bought earrings that I had been wanting for a long time.
今日は給料日だったので、ずっと欲しかったイヤリングを買いました。
家庭で使う物:日用品、文房具
- Scissors はさみ
- Compass コンパス(文具、方位磁石)
- Tweezers ピンセット
- Nail clipper 爪切り
- Pliers ペンチ
- Tongs トング
- Earphones、Earbuds イヤホン
- Binoculars 双眼鏡
I’m planning to go to a concert by my favorite artist, so I bought binoculars.
大好きなアーティストのコンサートに行こうと思って、双眼鏡を購入しました。
In today’s lesson, we will use a compass to draw circles.
今日の授業では、コンパスを使って円を書いてみましょう。
When dish out the food, please use this tongs.
料理を取り分ける際には、このトングをご使用ください。
Does anyone have tweezers? I’ve got a splinter in my finger.
誰か、ピンセット持ってない?指にとげが刺さってしまったよ。
その他
- Crossroads 交差点
- Means 手段
- Belongings 所持品・荷物
- Valuables 貴重品
- Leftovers 食べ残し・残り物
- Goods 商品
- Alms 施し物
This is a means of last resort to win.
これは、勝つための最後の手段だ。
There is one big crossroads in this town.
この町には、大きな交差点が1つあります。
This morning, I ate leftovers vegetable soup from yesterday.
今朝、昨日の残り物の野菜スープを食べました。
絶対複数の名詞が複数形を取る理由
絶対複数について理解を深めるためには、なぜこれらの名詞が常に複数形で表現されるのかという「理由」が重要なポイントです。
- 2つの部分が合体して1つの物を作っている
- 常に複数(セット)で使用される
いずれかの理由に当てはまる物(名詞)は、絶対複数として単数形の形を持たず、常に複数形の形で扱われます。上記に該当しない単語もありますが、多くの絶対複数の名詞は2つのうちいずれかに当てはまります。
それぞれの理由を詳しく確認しましょう。
2つの部分が合体している
2つの部分がくっついて1つになっている物は、絶対複数として扱われます。例えば、ズボンは右足の部分と左足の部分が組み合わさって1つのズボンを構成しています。また、眼鏡やサングラス・ゴーグルなどは、右目のレンズと左目のレンズがセットで1つの物を作っていると考えます。
- Scissors(ハサミ)…2つの刃が組み合わさっている
- Compass(コンパス)…2本の軸を組み合わせた構造
- Crossroads(交差点)…2つの道路が交差している
「2つの部分が合体している→物は1つでも複数形」となり絶対複数扱いになるのです。
常に複数(セット)で使用される
使用目的が常に複数となる物も、絶対複数として扱われます。靴や靴下など、右足用と左足用の2つを常にペアで使いますよね。また、イヤホンや手袋も同様の理由です。
- Pajamas(パジャマ)…上下をセットで着るため
- Earrings(イヤリング、ピアス)…左右の耳に付けることが多く、セットで扱われるため
「単体では使われず複数をセットで使う→常に複数形」となり、絶対複数扱いとなるのです。
絶対複数の物の数え方
常に複数形の形をとる絶対複数の物を数える時は、どのように表現するのでしょうか?
I have an apple.
私はリンゴを持っています。(1つ)
I have two apples.
私はリンゴを2つ持っています。
通常は、このように名詞の前に個数を入れ、名詞を複数形に変化させます。前置詞や名詞の変化を見れば、単数か複数かを理解することができますね。
しかし絶対複数の名詞で同じように文章を作ると、若干ニュアンスが変わってきます。
I bought scissors.
私はハサミを買いました。
I have glasses.
私は眼鏡を持っています。
個数を明確に伝えたいシーンでなければ、上記の表現で全く問題ありません。但し「1つ持っている」のか「複数持っている」のか、これら文章だけではわかりません。
そこで、個数を明確に伝えたい時には「個数+ pair of 」という表現を使いましょう。
I bought one pair of scissors.
私はハサミを1つ買いました。
I have two pair of glasses.
私は眼鏡を2つ持っています。
実際の会話例で見る複数形の名詞
絶対複数が具体的にどのように使われているのかを、会話例から学びましょう。今回は、おばあちゃんと孫のエマ(Emma)の会話です。猫のホリー(Holly)のいたずらに悩まされているようです。
会話例
Grandmother:Emma, have you seen my glasses?
おばあちゃん:エマ、私の眼鏡見なかったかしら?
Emma:I didn’t see them, but I saw your earrings in Holly’s bed.
眼鏡は見なかったわ、でもホリーのベッドにおばあちゃんのイヤリングがあるのは見たわ。
Grandmother:Oh, Holly what a mischievous cat!
あれまぁ。ホリーったらいたずら猫ちゃんね!
Emma:Scissors are also in there. She likes glittering items.
はさみもそこにあったわ。彼女はきらきら光る物が好きなのよ。
Grandmother:I need to get them back. By the way, where are my shoes?
取り戻さなくちゃね。ところで私の靴はどこかしら?
Emma:They are under the chair, you are sitting.
靴はおばあちゃんが座っている椅子の下にあるわ。
Grandmother:I wonder if Holly did this too.
これも、ホリーの仕業かしら。
Emma:It’s just that Grandma is forgetful.
それは、おばあちゃんが忘れっぽいだけでしょ。
Grandmother:Oh dear. You got me!
あらあら。バレちゃったわね!
Emma:Oh, you are playful!
もう!おばあちゃんったらお茶目なんだから。
Grandmother:Now then, I wonder where are my glasses.
さてさて眼鏡はどこかしら。
Emma:Let’s find it together!
一緒に探そう!
ポイント
会話で出てきた単語や表現をおさらいしましょう。
- Mischievous いたずら好きな、わんぱくな
- Glittering キラキラ光る、きらめく
- Forgetful 忘れっぽい
- You got me! バレちゃった!
- Playful お茶目・面白い
Be動詞や代名詞の使うときの注意点
物が1つでも常に複数形として扱われる絶対複数に対しては、Be動詞や代名詞も複数形の形を取ります。例文の中でも、以下のように眼鏡やハサミは1つですが Them や Are など複数形の形が使われています。
I didn’t see them.
私は(眼鏡を)みていません。
Scissors are also in there.
ハサミもそこにありました。
They are under the chair.
それら(靴)は、椅子の下にあります。
I wonder where are my glasses.
眼鏡はどこかしら。
絶対複数の名詞を、単数で扱うことはないと覚えていきましょう。
絶対複数の例外のさらに例外を学ぶ
「シャツ」は絶対複数?
さて、2つの部分がくっついて1つになっていることから絶対複数となる名詞の、代表的に Pants(ズボン)や Jeans(ジーパン)がありましたね。同様の理由で、シャツも右半身と左半身の部分がくっついていることから絶対複数では?と思う方も多いでしょう。
実は、シャツは絶対複数ではありません。1着では「Shirt」と表現し、複数ある時にはじめて「Shirts」となり単数形と複数形がそれぞれ存在するのです。
ズボンは右足分と左足分が合わさったと考えるものの、なぜ右腕分と左腕分が合わさったトップスは単数扱いになるのでしょうか。
この明確な理由は分かっていませんが、昔のズボンは左右でパーツが分かれており、一方のシャツは1枚の布から作っていたから単数扱いになるという説があります。
「ビキニ」の英語表現はBikini?それともBikinis
では女性の水着の「ビキニ」、”Bikini”はどうでしょうか。ビキニも上下セットで使う物ですが、絶対複数とは考えません。
I bought a new bikini.
私は新しい水着(ビキニ)を買った。
She has three bikinis.
彼女はビキニを3着持っている。
上下がセットであると考える「パジャマと同じように絶対複数?」と思ってしまいますが、単数形が存在します。こちらも、明確な理由は分かっていません。
まとめ
英語の単数形・複数形そして例外である「絶対複数」についての理解は深まりましたか?間違っていても会話は成立するケースが多いですが、ワンランク上の違和感のない自然な英会話を目指す方は、しっかりとマスターしておきましょう。
特に絶対複数については、間違えやすいポイントです。単語数も少なく、日常会話で出てくる単語となるとかなり限定的になるでしょう。慣れるまでは大変ですが、例文などを交えながら覚えていってください。
それではまた、See you!