多義語とはひとつで複数の意味を持つ単語のことです。多義語自体は珍しいものではありませんが、その中でもニュアンスが大きく異なる意味を持つ単語について学習していきましょう。
日常会話にフォーカスをあてて、覚えておきたい多義語を8個紹介します。
レッスンの内容
そもそも多義語とは?
多義語とは、1つの言葉で複数の意味や使い方を持つ言葉のことです。
【日本語の多義語の例】
言語 | 意味 |
適当 | ・合致する ・大雑把 |
甘い | ・糖分がある ・惑わせる ・厳しくない ・緩い |
明るい | ・光が十分に感じられる ・目立つ色をしている ・楽観的で上機嫌な様子 ・見込みがある |
このように、日常生活で頻繁に使われる言葉の中にも多義語が多く存在します。
多義語の中には「甘い」の「厳しくない・緩い」のように複数の意味があるもののニュアンスとしては似通っているものもあれば、「適当」の「合致する・大雑把」ように意味が全く異なるものもあります。
ニュアンスの大きく異なる多義語については、「別の意味を知っているかどうか」が理解のカギを握ります。想像で判断できないからこそ、知識として頭に入っていなければ文章自体の意味が理解できなくなってしまうのです。
新しい英単語を覚える際には、単語の持つ複数の意味にも目を向けて学習を進めていきましょう。
よく使われる英語の多義語
日常会話でよく使われる多義語の中で、意味のニュアンスが大きく異なるものを8個紹介します。これらの単語が複数の意味を持っていること・どのような文章でよく使われるのかを文例を交えて分かりやすく解説します。
Right
【意味:右・正しい・権利・すぐに】
非常に有名な同音異義語の一つがこの Right です。左右の「右」という意味の他に、「正しい」や「権利」「すぐに」など様々な意味を持ちます。
一説によると、元々は正しい・正義という意味の単語でしたが、人間は右利きが多く、正しい方の手→右手→右と変化して現在のように複数の意味を持つようになったと考えられています。
That’s right.
その通り。
Are you all right?
大丈夫ですか?
I’m not sure that this is the right spelling.
このスペル合っているかどうか自信がないな。
I’m injured in the right hand.
私は右手を怪我している。
Human rights
人権
I’ll be right there!
すぐに行くね!
Hot
【意味:熱い・辛い・イケてる・人気・好調・話題の】
スラングも含めて Hot という単語は非常に多くの意味を持ちます。日本語でも、人気が高いものに対して「アツい!」と表現することがありますが、それに近い使い方をすることが可能です。
文脈から判断しなければなりませんが、熱い・辛い、どちらも食べ物に使われることが多いため、ネイティブでも分からないことはあります。その場合は「You mean spicy?(辛いってこと?)」と聞いてしまってもよいでしょう。
This soup is hot.
このスープは熱い。
This curry is too hot for child.
このカレーは子供には辛すぎる。
She is hot.
彼女イケてる。(イイ女)
This book is hot.
この本はとても人気がある。
What is hot in America now?
アメリカでは今何が話題ですか?
Season
【意味:季節・時期・味付け・調味】
名詞として「季節」という意味を持つ単語として有名ですが、動詞として使うと「味付け・調味」という全く別の意味になります。
先ほどの Hot とは違い、意味ごとに使われるシーンが異なるため文脈から判断しやすい多義語だといえるでしょう。
Season に関連する語句も併せて覚えておくと便利です。
- Seasonings 調味料
- Seasonality 季節性
I have seasonality allergies.
私には季節性のアレルギーがあります。
- Seasonal changes 季節の変わり目
When the seasonal changes, we tend to get sick.
季節の変わり目は体調を崩しやすくなります。
Japan has four seasons.
日本には四季がある。
It’s almost typhoon season in Japan.
日本はもうすぐ台風の時期です。
Which season do you like best?
あなたの一番好きな季節はなんですか?
She seasoned the meat with salt.
彼女は、肉に塩で味付けをした。
Book
【意味:本・予約をする・聖書】
本という意味で使われる Book も、使い方によって別の意味を持ちます。予約という意味名詞である Booking を動詞にした形が Book です。これは、予約情報を台帳(本)で管理していたことに由来していると考えられています。
聖書という意味で使われることも多く、シチュエーションによって意味を判別する必要です。
I bought a new book.
私は新しい本を買った
I would like to book 2 tickets.
チケットを2枚予約したいです。
I have a booking.
予約しています。
My daily routine is to read the book every morning.
私は毎朝聖書を読むことを日課にしています。
Mean
【意味:意味する・つまり・意地悪】
動詞や名詞として使う時には「意味する」という使い方をしますが、形容詞として使う時には「意地悪な」と全く別の意味になります。品詞が違うため文中での使われ方が全く異なり、意味を捉え違えてしまうことはないでしょう。
Mean は慣用表現が非常に多い語としても有名です。よく使われる表現は、丸暗記して覚えてしまうのがおすすめです。
- I mean it. 本気です。
- By all means もちろん
- By no means なんとしてでも
- Transportation means 交通手段
What do you mean?
どういう意味?
I’m sorry, I didn’t mean it.
ごめんなさい、そんなつもり(意味)はなかったんです。
She is so mean to me.
彼女は私にとても意地悪です。
He’s mean!
彼って意地悪!
I mean, I want you to check carefully before submitting.
つまり、よく確認をしてから提出してほしいんです。
Pretty
【意味:可愛らしい・綺麗な・まぁまぁ】
Pretty と聞くと、形容詞としての「かわいい」という意味を思い浮べる方が多いでしょう。日本で使われている教科書には、Pretty dog や Pretty girl といった表現が多々見られます。
一方英語圏では「けっこう・まぁまぁ」といった副詞としての使い方の方が主流です。英語圏で生活していると日に何度も副詞としての Pretty を聞くことになるでしょう。
英和辞典や日本語のWEBサイトでは、Pretty に「とても・非常に」という意味があると記載されていることがあります。つまり副詞としての Pretty には Soso(まぁまぁ)や Not bud(悪くない)という意味と、So(とても)や Very much(非常に)という2つの意味があるということになります。
しかしネイティブは Pretty を「とても・かなり」という意味で使っていることはありませんし、英英辞典にもそのような記述はありませんので注意しましょう。
Today is pretty cold.
今日は、まぁまぁ寒い。
How are you? Pretty good.
元気? まぁまぁです。
The moon is pretty tonight.
今夜の月は綺麗です。
The puppies in that house are pretty.
その家の子犬はとても可愛らし。
Pretty good idea
まぁまぁいいアイディア
Run
【意味:走る・襲いかかる・流れる・ちょっと行く・傾向がある】
Run の意味は「走る」と教わりますが、基本的な意味は「継続して動く」というもので、脚を動かして走ることに限定された単語ではありません。従って Run が持つ複数の意味は全体的に移動や走ることに関係します。
日常会話でも使いやすい表現が多いので、是非覚えておきましょう。
Do not run in the room!
部屋の中で走らないで!
I ran for 10 minutes.
私は10分間走りました。
The dog ran at the girl.
その犬が少女に襲いかかった。
I’ll run over to convenience store.
ちょっとコンビニに行ってきます。
My whole family run to get cold easily.
私の家族は、寒がり体質の傾向がある。
The water is running.
水が流れている。
Sound
【意味:音・声・印象・騒ぎ・騒音】
Sound は使い方によって多くの意味を持つ単語です。名詞として使うと「音・声・響き・騒音」といった意味になり、形容詞としては「堅実な・健康な」という意味になります。また動詞としての使い方もでき、その場合には「鳴る・~のように聞こえる」という意味で使えます。
Make a sound.
音をたてる(鳴らす)
I couldn’t sleep because the sound.
騒音があり、良く眠れなかった。
I let out a loud sound unconsciously.
私は思わず大きな声を出した。
He is sound on his job.
彼は堅実な仕事をする。
Sounds good.
いいですね。(いい感じに聞こえるね。)
It sounds interesting.
それは面白そうですね。(面白そうに聞こえますね。)
会話例から見る多義語の使われ方
AyaとBillが会話をしています。
Bill:Hey, Aya! Do you know a multiple meaning word?
やぁ、アヤ!多義語って知ってる?
Aya:Let’s see… You say Multiple meaning, so it’s a word with several meanings?
えっと…Multiple meaning だから、いくつかの意味を持つ言葉ってこと?
Bill:Exactly!
その通り!
Aya:Like what?
例えばどんな?
Bill:The word “Gift” has many meanings.
「Gift」という単語にたくさんの意味があるんだよ。
Aya:I see. I know it means present. What else does it mean?
へぇ~プレゼントって意味は知ってるけど。他にどんな意味があるの?
Bill:Ability, Capacity, meaning of like that.
他には、才能とか能力っていう意味もあるよ。
Aya:I didn’t know that.
知らなかったわ。
Bill:For example, ”He has a gift for music” or “She has a gift for prophecy”.
例えば「彼は音楽の才能がある」とか「彼女は予言の能力を持っている」とかね。
Aya:That makes sense! Good to know.
なるほどね!知れて良かった。
Bill:How about Japanese? Is there something similar?
日本語はどう?同じようなものはある?
Aya:Of course! For example, the word “HINAN” means “evacuation” and “blame”.
もちろん!たとえば「ひなん」という言葉には「災害を避ける」と「責め立てる」いう意味があるのよ。
Bill:That’s new to me! Thank you!
初めて知った!ありがとう!
ポイント
会話で出てきた単語や表現をおさらいしましょう。
Multiple 複数・多数
簡単や単純を意味する Simple は「Sim(1つ)」+「Plex(~重)」が語源です。それに対して Multiple は「Multus(多数)」+「Plex(~重)」となり、複数・多数という意味になります。
このように新しい単語にふれた際には、構成や意味を調べると覚えやすくスムーズに語彙力アップが図れます。
Prophecy 予言・お告げ
神のお告げや未来を予知することなどを意味します。データに基づいた統計や予測ではなく、スピリチュアルな印象をあたえます。
Good to know. 知れて良かった。
何か有益な情報を教えてもらった時に使う定番フレーズです。それを知れてよかった・教えてくれてありがとう助かったよ。といった気持ちを伝えたい時に使いましょう。比較的カジュアルな表現なので、友人や家族など親しい間柄での会話にピッタリです。
Evacuation 避難
この単語も多義語にあたります。「排泄」という意味を持ち、医療現場などでよく使われます。会話文の中では、「避難」という意味で使っています。
- Evacuation drill 避難訓練
- Evacuation disorder 排泄障害
- Blame 責める・非難する
- That’ s new to me! 知らなかった!
直訳すると「それは私にとって新しい」となりますが、「知らなかった」「初めて知った」という意味で使われるフレーズです。日常会話でネイティブもよく使うので覚えておきましょう。
英単語の意味が分からない時は
今回紹介した単語だけでなく、英語には様々な多義語が存在します。そのため、実際に英語で会話をしていく中で「ちょっと意味が理解できない…」と感じることもあるでしょう。
そんな時は、恥ずかしがらず積極的に質問して解決してください。分からなかったことを曖昧なままにするのではなく、疑問を解消して知識とし自身の英語力をどんどん向上させましょう。
失礼のない聞き返し方
相手の話していることが理解できなかった場合には、以下のフレーズを使って聞き返すのがおすすめです。
I didn’t really understand what you were talking about just now.
I’m not sure what you mean.
I’m not sure I know what you are talking about.
いずれも「話している内容が十分に理解できなかった・どういう意味ですか?」と聞きたい時に使えます。言い方や表現を変えるなどして、もう一度説明してくれることでしょう。より丁寧に言いたい場合には文頭に「I’m sorry, but」をプラスしましょう。
友人同士などカジュアルなシーンでは「What do you mean?」などもよく使われる聞き返し方です。
1つの単語の意味が解らなかった場合には、以下のフレーズを使ってみてください。
What does ○○ mean?
Sorry, could you tell me what ○○ means?
文章全体ではなく、1つの単語にフォーカスした質問をしたい時にはこちらのほうが便利です。
失礼な聞き返し方
一方、下記の表現は聞き返しのフレーズとしては失礼にあたることもあるので使用には注意が必要です。
I don’t understand you.
I don’t know what you’re talking about.
I don’t get it.
かなりカジュアルで直接的な表現なので「あなたの言動が理解できない」「意見や論理がめちゃくちゃで意味がわからない」という伝わり方をしてしまう可能性があります。
英英辞典でも調べてみよう
先ほどの Pretty の例にもあるように、英和辞典と英英辞典では掲載内容に微妙な差異が出ることがあります。
英語初級者が基礎的な英単語の意味を調べる際には、素早く意味が理解できる英和辞典でも問題ありません。しかし英語中級者~上級者が、単語のより深い意味を知りたい・微妙なニュアンスの違いを理解したいと思う際には、英英辞典の使用がおすすめです。
- 英英辞典に載っている解説を訳して自分の中に落としこむ
- 英英辞典の単語使用例を複数見て、ニュアンスをつかむ
これらは、英語を英語として理解する脳を作るのに非常に効果的な方法です。インターネットの普及に伴い、辞書を引くという行為自体が少なくなっているでしょう。WEB上にも英語の意味を英語で解説するサイトやスマホアプリなどもありますので、活用してみてください。
英英辞典の検索例
今回紹介した多義語である「Right」の意味をオックスフォード英英辞典で調べてみました。一部を翻訳しましたので、英英辞典とはどのようなものなのかを理解するための参考にしてみてください。
Right (adjective)
True or correct as a fact
事実として真実または正しい
Morally good or acceptable
道徳的に良い、または受け入れられる
In a normal or good enough condition
正常であり十分な状態である様子
On or towards the side of the body that is towards the east when a person faces north
北を向いた時に、東側にくる身体の部分または方向
まとめ
多義語の意味は、日本語と同じ様に前後の文脈から判断することになります。会話で意味が分からず困ってしまわないように、単語が持つ複数の意味をしっかりとチェックして勉強しましょう。
それではまた、See you!