海外で見つけた特許技術について問い合わせたいのに、「利用を決めた」と受け取られないか、「侵害を認めた」と誤解されないか不安で、英文メールを書き始められないことがあります。自社の発明を外国へ出願したい場合も、特許事務所へ何を伝えればよいのか、どの期限を優先すべきなのか迷いやすいものです。
海外特許に関するメールは、流暢で華やかな英語よりも、対象案件を正確に特定し、現在の検討段階を誤解なく伝えることが重要です。この記事では、特許権者へのライセンス問い合わせと、特許事務所への外国出願依頼を分け、件名、本文、注意すべき断定表現、返信がない場合のフォローまで実務の順番に沿って確認します。
英文そのものに慣れていない場合は、業務メールの基礎を英語教室で練習しながら、特許番号や契約条件など専門部分を弁理士・弁護士と確認する方法もあります。語学による意思疎通と法的判断は役割が異なるため、両者を切り分けると準備しやすくなります。
なお、この記事の英文は一般的な文案です。特定案件における権利範囲、侵害の有無、出願期限、契約条件を判断するものではありません。すでに製造・輸入・販売を始めている場合や期限が迫っている場合は、送信前に対象国の制度に通じた専門家へ相談してください。
海外特許メールは「許諾の相談」と「外国出願の依頼」を分ける
- 海外企業の特許を使いたい場合と、自社発明を外国へ出願したい場合では、宛先も内容も異なる
- 最初に目的を一文で定義すると、件名と必要情報を選びやすい
最初に行うことは、メールの目的を二種類に切り分けることです。一つは海外企業、大学、研究機関などが保有する特許について、利用許諾の協議が可能か尋ねるメールです。もう一つは、自社の発明を米国や欧州などへ出願するため、特許事務所や現地代理人へ手続を依頼するメールです。
ライセンス問い合わせの相手は、特許権者の知的財産部門、法務部門、事業開発部門、ライセンス部門、大学の技術移転部門などです。そこで伝える中心事項は、対象特許、想定用途、対象地域、協議への関心、秘密保持契約を結ぶ用意があることです。
外国出願依頼の相手は、日本の特許事務所や弁理士、場合によっては外国の現地代理人です。こちらでは、基礎となる出願番号、出願日、優先権期限、希望国、発明の名称、公開予定、必要資料、費用見積もりが中心になります。日本の代理人を通じて各国の現地代理人へ依頼する形も広く使われます。
一文で目的を固定する
下書きの先頭に、日本語で「海外企業が保有する特許のライセンス協議が可能か確認する」または「日本出願を基礎として外国出願の方法と費用を相談する」と書いてください。この一文に関係しない情報は、初回メールから外せる可能性があります。
目的を混ぜると、相手が何を返信すべきか分からなくなります。反対に、相手に求める次の行動が明確なら、担当部署への転送や面談の設定がしやすくなります。
- ライセンス問い合わせ:協議可能か、担当窓口は誰か、面談できるかを尋ねる
- 外国出願依頼:受任可能か、利益相反はないか、期限と見積もりを確認する
- 調査依頼:調査対象国、製品、技術範囲、利用目的、希望時期を伝える
では、メールを書く前に何を調べればよいのでしょうか。次は、番号の取り違えや宛先間違いを防ぐための確認手順です。
連絡前に特許番号・権利者・対象国を確認する
- 公開公報、登録特許、出願番号、公開番号、特許番号を区別する
- 権利者、法的状態、特許ファミリーを国・地域ごとに確認する
メールを送る前に、対象文献が出願公開の段階なのか、登録された特許なのかを確認します。公報を見つけたことと、その国で現在も有効な特許権が存在することは同じではありません。登録後でも、存続期間の満了、年金不納、放棄、無効判断などによって状態が変わる場合があります。
確認項目は、出願番号、公開番号、登録番号または特許番号、出願日、優先日、出願人、現在の権利者、発明者、法的状態、存続期間、権利移転、対応する各国出願です。メールには、確認できる範囲で国コードを含む番号と発明の名称を併記すると、相手が案件を特定しやすくなります。

特許権は国・地域ごとに確認する
特許権は、原則として成立した国や地域で効力を持ちます。日本の特許権が、そのまま米国、中国、欧州などを一括して覆うわけではありません。PCTに基づく国際出願も、世界共通の一つの特許権を成立させる制度ではなく、複数国への手続を進めるための仕組みです。
そのため、製造国と販売国の両方を確認します。部品を製造する国、組み立てる国、輸入する国、販売の申出を行う国、顧客が使用する国、近く進出する可能性がある国を書き出すと、調査対象を設定しやすくなります。
- 製品および主要部品を製造する国
- 組み立て、輸入、販売を行う国
- 顧客が製品や方法を使用する国
- ライセンスを希望する用途と市場分野
- 子会社、委託先、販売代理店が活動する国
特許ファミリーと現在の権利者を見る
同じ発明について複数の国・地域に出願された文献群は、特許ファミリーと呼ばれます。米国文献を一件見つけた場合でも、日本、中国、欧州その他の地域に対応出願が存在する可能性があります。優先番号、出願人、発明者、発明の名称を照合し、名称だけで同一案件だと決めないことが大切です。
公報の出願人が現在の契約相手とは限りません。合併、事業譲渡、名称変更、権利譲渡が行われている場合があるからです。また、発明者が契約権限を持つとも限りません。企業案件では、権利者と担当部署を確かめてから送信します。
調査には、WIPOのPATENTSCOPE、欧州特許庁のEspacenet、各国特許庁の検索サービスなどを利用できます。ただし、表示される法的状態には反映の時間差や情報範囲の違いがあり得ます。重要な判断では、公式記録と専門家による確認を組み合わせてください。
公報が検索結果に出たという理由だけで、「許諾が必須」「自由に使える」「この企業が現在の権利者」と断定しないでください。権利の成立国、法的状態、請求項、自社製品との関係を個別に確認する必要があります。
英文特許は書誌情報・要約・請求項の順に読む
- 本文を一語ずつ訳す前に、書誌情報で文献を特定する
- 要約は候補選び、請求項は保護を求める構成の確認に使う
英文特許は、先頭から全文を直訳するよりも、目的に応じて読む場所を変える方が効率的です。最初にTitle、Applicant、AssigneeまたはPatent Owner、Inventor、Filing Date、Priority Date、Publication Number、Patent Number、Legal Statusを確認し、探している文献かどうかを特定します。
次にAbstractを読み、発明の目的、主要構成、想定用途をつかみます。Abstractは多数の候補を絞るには便利ですが、権利範囲そのものではありません。要約だけで実施可否を判断しないようにします。
Claimsでは独立請求項から確認する
Claimは請求項、Claimsは複数の請求項です。独立請求項はほかの請求項を引用せず、発明の基本的な構成を示します。従属請求項は、別の請求項を引用して条件を追加します。候補選びの初期段階では、独立請求項から読むと構造をつかみやすくなります。
ただし、請求項の意味は、明細書、図面、審査経過、関連法令や裁判例などと関係する場合があります。社内では候補抽出や技術比較まで行い、権利範囲や侵害の最終判断は対象法域に通じた専門家へ確認する、という役割分担が現実的です。
案件ごとの対訳表を作る
同じように見えるsupport、holder、mountが、文献内で異なる部材を指すことがあります。component、unit、moduleも、どこまでを一つの構成として扱うかが案件によって異なります。訳語を早い段階で一つに固定せず、原文、仮訳、図面番号、文脈、社内用語を対訳表に記録します。
| 英語 | 日本語の目安 | 確認点 |
|---|---|---|
| patent application | 特許出願 | 登録済みとは限らない |
| publication number | 公開番号 | 特許番号と区別する |
| patent owner | 特許権者 | 現在の権利者か確認する |
| independent claim | 独立請求項 | 基本構成を把握する |
| legal status | 法的状態 | 審査中、登録、失効などを確認する |
| field of use | 使用分野 | 用途による許諾範囲を示す |
| territory | 対象地域 | 製造国と販売国を照合する |
| royalty | ロイヤルティ | 計算対象、料率、控除を確認する |
読む順番が決まったら、次はいよいよ特許権者への初回連絡です。ここでは「関心は示すが、利用決定や侵害は認めない」という距離感が重要になります。
特許権者への初回メールは判断材料を簡潔に並べる
- 対象特許、想定用途、地域、検討段階、希望する次の行動を書く
- 許諾前の使用決定や侵害を認める断定を避ける
初回メールの目的は、契約条件を一度に確定することではありません。相手がライセンス協議に応じる意思を持つか、適切な担当者は誰か、次の面談へ進めるかを確認することです。長い技術説明より、相手が社内で振り分けられる情報を順番に並べます。
- 用件または特許番号が分かる件名
- 担当部署に合った宛名
- 氏名、役職、会社の事業概要
- 対象となる特許番号と発明の名称
- 連絡した目的と想定用途
- 製造国、販売国、使用分野の概要
- まだ社内評価中であること
- ライセンス協議への関心確認
- 秘密情報交換前のNDA提案
- 面談または担当者紹介の依頼
件名で内容を特定する
- フレーズ
- Subject: Licensing Inquiry Regarding U.S. Patent No. [PATENT NUMBER]
- 日本語訳
- 件名:米国特許第[特許番号]号に関するライセンスのお問い合わせ
- 使う場面
- 対象となる米国特許を特定して、権利者のライセンス部門へ初回連絡するときに使います。
- 注意点・誤用例
- 「Business Proposal」だけでは内容が曖昧です。番号を記載するときは、公開番号と特許番号を取り違えず、実在する対象番号へ置き換えます。
- 発音・ニュアンス
- licensingは「ライセンシング」に近く、最初の音節をやや強く発音します。inquiryは米国英語では「インクワイアリー」に近い響きです。件名では丁寧かつ中立的な語感になります。
検討中であることを明確にする
- フレーズ
- We are evaluating whether the patented technology may be suitable for our planned product.
- 日本語訳
- 当社では、その特許技術が計画中の製品に適している可能性があるか評価しています。
- 使う場面
- 技術への関心を示しつつ、採用や使用をまだ決定していないことを伝える場面です。
- 注意点・誤用例
- Our company decided to use your invention. と書くと、許諾前に採用を決定した印象を与えます。事実関係と社内検討段階に合う表現を選んでください。
- 発音・ニュアンス
- evaluatingは「イヴァリュエイティング」に近く、valueに当たる部分を意識します。may be suitableは「適している可能性がある」という慎重な距離感を作ります。
NDAと次の行動を提案する
- フレーズ
- We would be pleased to enter into a mutual non-disclosure agreement before exchanging confidential technical or commercial information.
- 日本語訳
- 秘密の技術情報または取引情報を交換する前に、相互の秘密保持契約を締結する用意があります。
- 使う場面
- 双方が技術資料、試験結果、販売計画などを開示する可能性があるときに使います。
- 注意点・誤用例
- Let us make the NDA. は命令的に響くことがあります。また、NDAの締結だけで特許ライセンスや共同開発の義務が生じるわけではありません。
- 発音・ニュアンス
- non-disclosureは「ノン・ディスクロージャー」に近い発音です。would be pleased toは押しつけず、協力する用意を丁寧に表します。

初回メールの完成テンプレート
- フレーズ
- Subject: Licensing Inquiry Regarding [COUNTRY/REGION] Patent No. [NUMBER]
Dear Licensing Manager,
My name is [NAME], and I am [TITLE] at [COMPANY], a [BUSINESS DESCRIPTION] based in Japan.
During our review of [TECHNOLOGY FIELD], we identified [PATENT NUMBER], titled “[TITLE OF INVENTION],” which appears relevant to a product currently under evaluation by our company.
We would like to ask whether your organization is open to discussing a potential license for this patent and any relevant patents in its patent family.
At this stage, we are considering the technology for [GENERAL USE] in products to be manufactured in [COUNTRY] and sold in [COUNTRIES/REGIONS]. No final decision has been made regarding its use.
If you are interested in exploring this opportunity, we would appreciate an introductory meeting. We are prepared to enter into a mutual non-disclosure agreement before exchanging confidential information.
Please let us know the appropriate contact person for further discussions.
Sincerely,
[NAME]
[TITLE / COMPANY / CONTACT DETAILS] - 日本語訳
- 件名:[国・地域]特許第[番号]号に関するライセンスのお問い合わせ
ライセンスご担当者様
私は日本を拠点とする[事業概要]、[会社名]の[役職][氏名]です。
[技術分野]を検討する過程で、「[発明の名称]」という[特許番号]を確認しました。当社が現在評価中の製品に関連する可能性があると考えています。
貴組織が、この特許および関連する特許ファミリーについて、ライセンスの可能性を協議するご意向があるか伺いたく存じます。
現段階では、[国]で製造し、[国・地域]で販売する製品の[一般的な用途]に利用する可能性を検討しています。利用に関する最終決定は行っていません。
ご関心がございましたら、概要を話し合う機会をいただけますと幸いです。秘密情報を交換する前に、相互の秘密保持契約を締結する用意があります。
今後の協議に適したご担当者をご教示ください。
- 使う場面
- 海外企業、研究機関、大学の技術移転部門などへ初めて連絡するときの骨組みです。角括弧内を実際の確認済み情報に置き換えます。
- 注意点・誤用例
- 対象技術をすでに使用している場合、この文案をそのまま使って事実と異なる説明をしてはいけません。送信前に専門家へ事実関係を共有し、適切な対応を確認します。
- 発音・ニュアンス
- appears relevant、potential license、under evaluationが慎重な語調を作ります。音読では一文ごとに区切り、特許番号、会社名、国名を明瞭に発音します。
このテンプレートは、相手の判断に必要な情報を示しつつ、商業条件を確定しない構成です。初回は協議可能性の確認までと考えると、秘密情報や価格上限を不用意に書きにくくなります。
交渉で不利になりやすい英文を安全な表現へ直す
- 自社の弱み、使用決定、侵害、予算上限を不用意に表明しない
- 評価中、関連する可能性、合理的な条件を協議したいという表現を使う
文法的に通じる英文でも、交渉上は強すぎたり、余計な情報を与えたりすることがあります。大切なのは、事実を隠すことではなく、確認できていない法的評価や未決定の社内方針を断定しないことです。
| 避けたい表現 | 置き換え例 | 理由 |
|---|---|---|
| We found your great patent. | We identified your patent during our review. | 主観的な持ち上げ方を避けられる |
| Your idea fits to our project. | The technology appears relevant to our project. | 自然で慎重な表現になる |
| We are not good at optics. | We are exploring technologies that could complement our in-house capabilities. | 弱みではなく補完関係を示せる |
| We decided to use your invention. | We would like to explore the possibility of obtaining a license. | 利用決定と誤解されにくい |
| We can pay a high license fee. | We are open to discussing commercially reasonable licensing terms. | 支払意思を示しつつ上限を明かさない |
We are infringing your patent.、We have copied your technology.、We need permission immediately to continue sales. など、侵害や実施を認めるような文は、法的評価を終える前に使わないでください。すでに事業を実施している場合は、相手への連絡より先に弁理士や弁護士へ相談することが重要です。
宛名が分からない場合
担当者名が分からなくても、Dear Licensing Manager,、Dear Intellectual Property Team,、Dear Technology Transfer Team, のように部署や役割へ宛てられます。大学の技術ならTechnology Transfer OfficeまたはTechnology Licensing Officeが窓口になることがあります。
氏名が分かる一方、敬称を推測しにくい場合は、組織の慣行を確認したうえでDear Alex Smith, のように氏名を使う方法もあります。初回連絡ではDearが無難です。やり取りが続いた後は、相手が使う挨拶や文体に合わせると自然です。
返信がない場合のフォロー
- フレーズ
- Subject: Follow-up: Licensing Inquiry Regarding [PATENT NUMBER]
Dear Licensing Manager,
I am following up on my email sent on [DATE] regarding a potential license for [PATENT NUMBER]. We remain interested in discussing whether the technology may be available for licensing for use in [FIELD OF USE].
If another person or department handles patent licensing matters, I would appreciate it if you could forward my inquiry or share the appropriate contact details.
Thank you for your time.
Sincerely,
[NAME] - 日本語訳
- 件名:再送:[特許番号]に関するライセンスのお問い合わせ
[送信日]にお送りした、[特許番号]のライセンス可能性に関するメールについてご連絡しました。当社は引き続き、[使用分野]において当該技術のライセンスが可能か協議することに関心があります。別の方または部署が特許ライセンスを担当されている場合は、問い合わせの転送または適切な連絡先の共有をお願いいたします。
- 使う場面
- 初回メールから数営業日から一、二週間ほど待っても返信がない場合の穏やかな確認に使います。案件の緊急度や相手の休業日も考慮します。
- 注意点・誤用例
- Why have you not replied? のように責める表現や、緊急性がないのに毎日再送する行為は避けます。大容量の添付資料を繰り返し送る必要もありません。
- 発音・ニュアンス
- follow upは「追加で確認する」という中立的な表現です。would appreciate it ifは、転送や連絡先共有を丁寧に依頼する定型表現です。
英文が整っても、初回メールに何を添付するかでリスクは変わります。次に、NDA締結前の情報管理と、ライセンス条件の見取り図を確認しましょう。
NDA締結前は秘密情報を送らず、契約条件を分けて考える
- 初回連絡では公開可能な情報だけを使い、秘密情報の交換前にNDAを検討する
- NDAと特許ライセンス契約は目的も効果も異なる
初回メールでは、自社製品の詳細図面、回路、ソースコード、試験データ、原価、顧客名、未公表の発売計画などを送らないのが基本です。相手が同じ市場で活動する企業なら、開示後に情報を回収することは困難です。まず公開情報の範囲で関心を確かめます。
双方が情報を開示するならmutual NDA、片方だけが開示するならone-way NDAが候補になります。確認事項には、秘密情報の定義、開示目的、共有できる人、口頭開示の扱い、例外、保持期間、返却・廃棄、準拠法、紛争解決、締結前に開示された情報の扱いなどがあります。
NDAは情報の取扱いを定める契約であり、特許を実施する許可ではありません。ライセンス、共同開発、購入、供給などの権利義務は、別の契約で合意する必要があります。
ライセンス交渉で整理する項目
- 対象特許、特許ファミリー、分割・継続出願、改良特許
- 製造、使用、販売、輸入など許諾される行為
- 対象国・地域と使用分野
- 独占、非独占、特許権者自身の実施可否
- 子会社、製造委託先、販売店への再許諾
- 契約一時金、売上連動、製品一個当たりの対価、最低保証
- 報告頻度、帳簿保存、監査の方法と費用負担
- 改良発明の帰属と相互利用
- 保証、補償、責任制限、第三者から請求された場合の対応
- 契約期間、特許失効時の扱い、解除、終了後の在庫販売
たとえばterritoryをWorldwideと書くだけでは、権利が存在しない国、将来出願する国、製造だけを行う国がどう扱われるか不明確な場合があります。field of useも、「カメラ」だけでは玩具、医療、監視、車載などの境界が曖昧です。契約本文と別紙で、対象番号、国、用途を具体化します。
対価については料率だけでなく、計算の基礎となる売上、値引き、返品、税金、通貨、送金手数料、支払時期も確認します。一つの数字だけで比較しないことが重要です。
一社からライセンスを得ても、製品に関係する第三者の特許まで利用できるとは限りません。レンズ、通信、画像処理、電源、筐体など、別の構成に関する権利や、意匠、商標、著作権、営業秘密、製品規制も個別に検討します。
特許事務所への外国出願依頼は期限と費用内訳を明記する
- 基礎出願、優先権期限、希望国、公開予定、必要資料を明記する
- 翻訳、国内外代理人、庁費用、中間対応を分けた見積もりを依頼する
自社発明を外国で保護したい場合は、ライセンス問い合わせとは異なり、期限の確認が最優先です。日本で先に特許出願し、パリ条約上の優先権を主張して外国へ出願する場合、特許・実用新案では原則として最初の出願から十二か月以内という期間が関係します。
PCT出願では、国際段階を経た後、希望する国・地域の国内段階へ移行します。移行期限は多くの法域で優先日から三十か月または三十一か月が目安になりますが、国・地域や事情によって扱いが異なります。WIPOの国別期限情報と代理人の指示を確認し、一般的な目安だけで予定を決めないでください。
日本の特許事務所へ送るメール
- フレーズ
- 件名:米国および欧州への外国特許出願に関するご相談
[特許事務所名]
[担当弁理士名]先生お世話になっております。[会社名・部署・氏名]です。
当社が日本で出願した下記案件について、米国および欧州での特許出願を検討しています。
・日本出願番号:[番号]
・出願日:[日付]
・発明の名称:[名称]
・希望国・地域:[国・地域]
・当社で管理している優先権期限:[日付]
・公開または製品発表の予定:[有無と日付]パリルートによる直接出願とPCT出願について、当社の事業計画に照らした選択肢、手続日程、必要資料をご案内いただけますでしょうか。期限は貴所でもご確認をお願いいたします。
また、翻訳費用、日本側代理人費用、現地代理人費用、庁費用、出願後の中間対応費用を分けた概算見積もりをお願いいたします。秘密資料の共有前に利益相反の確認が必要な場合は、必要な情報をご指定ください。
ご対応の可否と、初回打ち合わせの候補日時をご連絡いただけますと幸いです。
- 日本語訳
- この例は日本語メールのため、本文自体が日本語です。基礎出願、期限、希望国、公開予定、相談事項、見積もりの内訳、利益相反確認を一通で伝えます。
- 使う場面
- 日本出願を済ませ、外国出願の国、ルート、費用、日程を相談するときに使います。未出願の場合は、その事実と発明の公開予定を冒頭で伝えます。
- 注意点・誤用例
- 社内の期限管理だけに依存せず、代理人にも計算根拠を確認します。期限直前の相談では翻訳や現地手配が間に合わない可能性があるため、判明した時点で早く連絡します。
- 発音・ニュアンス
- 対面で説明するときは、PCTを一文字ずつ「ピー・シー・ティー」、priorityを「プライオリティ」に近く発音します。期限の日付は月と日の順序が地域で異なるため、英語では月名を綴ると誤解を減らせます。
外国の現地代理人へ送る英文
- フレーズ
- Subject: Request for Assistance with a [COUNTRY] Patent Application
Dear [NAME],
We are considering filing a [COUNTRY] patent application claiming priority to the following Japanese patent application:
Japanese Application No.: [NUMBER]
Filing Date: [DATE]
Title: [TITLE]
Priority Deadline: [DATE]Could you please confirm whether your firm is available to assist us with this matter, subject to a conflict check?
We would appreciate an estimate showing professional fees, official fees, translation-related costs, and other expected filing expenses. Please also let us know what documents and instructions you require and the recommended filing schedule.
A copy of the Japanese application can be provided through an agreed secure method after the conflict check.
Sincerely,
[NAME / TITLE / COMPANY] - 日本語訳
- 件名:[国名]特許出願へのご支援のお願い
下記の日本特許出願に基づく優先権を主張して、[国名]特許出願を行うことを検討しています。利益相反の確認を前提として、貴所で本件をご支援いただけるかご確認ください。専門家報酬、庁費用、翻訳関連費用、その他の出願費用を示した見積もりをお願いいたします。必要書類、指示事項、推奨日程もお知らせください。日本出願の写しは、利益相反確認後に合意した安全な方法で共有できます。
- 使う場面
- 外国の法律事務所または特許事務所へ、受任可否、利益相反、必要資料、費用、日程を確認するときに使います。
- 注意点・誤用例
- 依頼関係が成立しているか不明な段階で、機密性の高い資料を通常の添付ファイルとして送らないでください。現地で必要な委任状、翻訳、発明者情報などは国ごとに確認します。
- 発音・ニュアンス
- subject to a conflict checkは「利益相反確認を条件として」という意味です。official feesは特許庁などへ納める公的費用、professional feesは代理人の業務報酬を示します。
特許事務所を比べる視点
事務所の規模だけでなく、実際の担当者が自社の技術分野を理解できるか、希望国の出願経験があるか、現地代理人や翻訳者をどのように管理しているかを確認します。機械、電気、化学、情報通信、医薬、バイオでは、必要となる技術理解が異なります。
見積もりは、出願時だけでなく、翻訳、追加ページや請求項、拒絶理由への応答、登録、年金管理まで分けて確認します。低い初期費用だけを見ても、登録までの総額や社内負担は分かりません。担当者との連絡方法、回答までの目安、期限管理の分担も確認項目になります。
外国出願メールが整ったら、送信前の社内レビューへ進みます。ここで技術、知財、法務、事業の役割を分けると、誤送信や権限のない約束を防ぎやすくなります。
送信前レビューと発音練習を一つの手順にする
- 技術、知財、法務、事業の観点でメールを確認する
- 音読と役割練習で、強すぎる断定や曖昧な依頼を見つける
海外特許メールは、一人で書いてそのまま送るより、内容ごとに確認担当を分ける方が安全です。技術担当は対象技術と用途、知財担当は番号・権利状態・出願関係、法務担当は秘密情報と契約表現、事業担当は対象地域や取引目的を確認します。
送信前チェックリスト
- 件名に用件または対象番号がある
- 出願番号、公開番号、特許番号を区別した
- 現在の権利者と宛先部署を確認した
- 製造国、販売国、使用国を社内で整理した
- 利用決定や侵害を認める表現がない
- 未公開の図面、顧客名、価格、試験データを含めていない
- 予算上限や交渉上の弱みを不用意に書いていない
- NDA締結前に開示できる範囲を守っている
- 相手に求める行動が一つ以上明記されている
- 送信者に社外連絡の権限がある
- 署名に会社名、役職、連絡先がある
- 添付ファイル名と内容を再確認した

会話形式で面談の入り口を練習する
- フレーズ
- 特許権者側:Could you clarify the intended field of use?
学習者:At this stage, we are evaluating the technology for use in consumer toy cameras. We would prefer to discuss product-specific details after an NDA is in place.
特許権者側:Which markets are you currently considering?
学習者:Our initial evaluation covers Japan and the United States, but no final market decision has been made. - 日本語訳
- 特許権者側:想定している使用分野を明確にしていただけますか。
学習者:現段階では、一般消費者向けのトイカメラでの利用を評価しています。製品固有の詳細は、NDA締結後に協議できればと考えています。
特許権者側:現在、どの市場を検討していますか。
学習者:初期評価の対象は日本と米国ですが、市場に関する最終決定は行っていません。 - 使う場面
- 初回オンライン面談で、用途と対象地域を尋ねられた場面です。公開できる概要は答え、製品固有の情報はNDA後に回します。
- 注意点・誤用例
- 秘密情報でない一般的な用途まで一切答えないと、相手が案件を評価できません。社内で「NDA前に話せる範囲」を事前に決めておきます。
- 発音・ニュアンス
- clarifyは「クラリファイ」、intendedは「インテンディド」に近い発音です。At this stageを文頭に置くと、回答が現在の検討段階に限られることを示せます。
発音と文面を同時に整える練習
まず、メールを意味のまとまりごとにスラッシュで区切ります。たとえば、We would like to ask / whether your organization is open to discussing / a potential license. のように分けます。一息で全文を読もうとせず、依頼、条件、対象を順に発音します。
次に、patent、license、confidential、territory、priority、applicationの六語を単独で読み、その後に文へ戻します。patentは米国英語では「パトゥント」に近く、licenseは名詞でも動詞でも使われます。confidentialは「コンフィデンシャル」に近く、denの前後を滑らかにつなげます。
最後に、技術担当者役と特許権者役に分かれ、用途、地域、NDA、次回面談の四項目だけで三分間の模擬会話をします。言えなかった内容は難しい単語を増やすのではなく、短い文へ分割してください。短く正確に答える練習が、実際の会議で役立ちます。
一週間の実践メニューで自社用テンプレートを作る
- 調査、下書き、法務確認、音読を別の日に分ける
- テンプレートは案件ごとに番号、国、用途、期限を入れ直す
知識を読んだだけで終わらせず、自社の架空ではない候補案件を一件選び、公開可能な情報だけで練習用下書きを作りましょう。実際の送信権限がない場合は送らず、社内教材として確認します。
一日目:目的と対象国を一枚にする
「許諾相談」「外国出願」「調査相談」のどれか一つを選びます。製造国、販売国、使用国、希望時期、担当部署を記入し、不明な項目には推測ではなく「要確認」と書きます。
二日目:番号と権利関係を照合する
出願番号、公開番号、特許番号、優先番号を別々の欄に記録します。出願人、権利者、発明者も分け、法的状態と確認日を残します。特許ファミリーがある場合は、国・地域ごとに一行ずつ整理します。
三日目:英語の骨組みだけを書く
自己紹介、対象特許、関心の理由、用途、地域、検討段階、NDA、次の行動を各一文で書きます。技術詳細を盛り込む前に、相手が「誰が、何について、何を求めているか」を把握できるか確認します。
四日目:危険な断定を探す
use、infringe、copy、need permission、decided、mustなどの語を検索し、事実と検討段階に合っているか確認します。断定を弱めればよいとは限らないため、すでに実施している事実がある場合は専門家へ正確に共有します。
五日目:秘密情報と添付を点検する
本文、署名、メール履歴、ファイル名、文書プロパティまで確認します。削除したつもりのコメントや変更履歴が残っていないか、安全な共有方法が決まっているかも点検します。
六日目:音読と模擬質問を行う
特許番号、発明名称、会社名、用途、国名を声に出します。同僚には「なぜ関心があるのか」「どの国で使うのか」「予算はいくらか」「すでに使っているのか」と質問してもらい、答えられる範囲と専門家へ回す範囲を区別します。
七日目:承認経路と保存場所を決める
誰が技術内容を確認し、誰が法的表現を確認し、誰が送信を承認するかを決めます。送信済みメール、返信、面談議事録、NDA、契約案を案件番号にひもづけ、後から経緯を追える状態にします。
この流れを繰り返すと、英文テンプレートだけでなく、社内の確認手順も整っていきます。ただし、テンプレートは過去案件の文章を自動的に正当化するものではありません。案件ごとに事実を入れ直すことが欠かせません。
海外特許メールに関するQ&A
- 初回連絡、返信待ち、NDA、期限など迷いやすい点を短く確認する
- 法的判断や個別期限は専門家と公式記録で確認する
海外特許を見つけたら、すぐに許諾依頼を送るべきですか?
すぐに送るのではなく、公開公報か登録特許か、対象国で権利が有効か、現在の権利者は誰か、特許ファミリーがあるかを確認します。自社製品が請求項とどう関係するかは、必要に応じて弁理士や弁護士へ相談してください。
初回メールに自社製品の図面を添付してもよいですか?
未公開の構造、試験データ、原価、顧客名などが含まれる図面は、原則としてNDA締結前に送りません。まず公開可能な概要だけで相手の関心と担当窓口を確認し、安全な共有方法を合意してから必要な範囲を開示します。
返信がない場合、どのくらい待って再送しますか?
案件の緊急度や相手の休業日にもよりますが、数営業日から一、二週間ほど待ち、前回の送信日、特許番号、目的を短く再掲する方法があります。毎日の再送や、責める表現、大容量添付の繰り返しは避けます。
NDAを結べば特許技術を使用できますか?
使用できるとは限りません。NDAは秘密情報の利用や開示を管理する契約であり、特許の実施許諾ではありません。技術を実施する権利は、対象特許、地域、用途、期間、対価などを定めたライセンス契約で確認します。
PCT出願をすれば世界共通の特許を取得できますか?
世界共通の一つの特許が成立するわけではありません。PCTは複数国への出願手続を進めるための国際的な仕組みであり、権利取得には希望する国・地域の国内段階へ移行し、それぞれの制度に従って審査を受ける必要があります。
英文特許はAbstractだけ読めば足りますか?
足りません。Abstractは候補文献の技術概要を把握するのに役立ちますが、権利範囲そのものではありません。書誌情報、独立請求項、明細書、図面、法的状態を確認し、重要な判断では審査経過や対象国の法制度も検討します。
外国出願の相談では何を最初に伝えるべきですか?
基礎となる出願番号、出願日、発明の名称、希望国・地域、社内で管理している優先権期限、公開予定を最初に伝えます。期限は代理人にも確認してもらい、利益相反確認、必要資料、翻訳、費用内訳、推奨日程を尋ねます。
海外特許メールで最も重要なのは、難しい英単語を並べることではありません。対象となる番号、現在の権利者、国・地域、検討段階、相手に求める行動を、事実に沿って明確にすることです。
ライセンス問い合わせでは、技術への関心を示しながら、許諾前の使用決定や侵害を認める表現を避けます。外国出願依頼では、期限、希望国、公開予定、必要資料、費用内訳を早い段階で共有します。どちらの場合も、秘密情報の管理と社内承認を送信前の手順に含めてください。
まずは自社案件について、「目的」「対象番号」「対象国」「検討段階」「次に求める行動」の五項目を一枚に書き出してみましょう。そのうえでテンプレートへ当てはめ、技術、知財、法務、事業の確認を経れば、相手が判断しやすく、自社も管理しやすいメールへ近づけられます。

