好きなものについて話しているとき、人は自然と口数が増えます。母語なら知っている語彙を次々に取り出して、あの角度からもこの角度からも良さを語れます。
ところが学習中の言語だと、口をついて出るのはいつも同じ一語。「It’s good」「It’s great」を三回も四回も繰り返して、自分でもどこか物足りなくなる——この感覚は、英語を話す誰もが一度は味わうものです。
こんなに好きなのに、この熱量はちゃんと届いているのだろうか。そこで力を発揮するのが類義語です。同じ「すごい」を別の言葉で言い直すだけで、伝わる温度も、話し手の印象も変わります。
この記事では、日常の定番から驚きを含む語、格式のある賞賛、くだけたスラングまで50通りの言い換えを、意味・使う場面・注意点・発音の目安つきで整理しました。あわせて、日本語の発想をそのまま英語にすると失礼になってしまう褒め方、褒められたときの返し方、類義語を自力で増やす辞書の使い方まで扱います。読み終えたその日から、褒め言葉の持ち駒を一つずつ増やしていけるはずです。独学と並行して会話の場を持ちたい方は、英語教室のような実践の機会も選択肢になります。

好きなものを語るのに、一語では足りない
- 同じ形容詞の繰り返しは、聞き手のなかで「良い」の輪郭をぼやけさせる
- 語彙が増えると、褒める対象の解像度そのものが上がる
- 目的は難しい単語を並べることではなく、良さを切り分けて伝えること
褒め言葉の語彙を増やす目的は、良さの解像度を上げることにあります。難しい単語を披露するためではありません。
理由は単純です。知っている単語がひとつしかなくても、会話は成立します。相手も文脈から気持ちを読み取ってくれるでしょう。ただし、同じ形容詞が繰り返されると、聞き手の頭のなかで「良い」の輪郭はどんどんぼやけていきます。
日本語で考えてみるとわかりやすいはずです。「すごかった、本当にすごかった、めちゃくちゃすごかった」と言われるより、「圧されるような声量で、衣装の趣向も凝っていて、最後の一曲は息を止めて見ていた」と言われたほうが、何がどう良かったのかが伝わります。
英語でも同じで、褒め言葉の語彙が増えると、褒める対象の解像度が上がるのです。声について、動きについて、全体の完成度について、それぞれ違う語をあてられるようになる。それが語彙を増やすということの中身です。
では、実際の会話ではどんな語が選ばれているのでしょうか。まずは一つの対象をたっぷり褒めている英文を読んでみます。
一人のアーティストを褒める英文から、言い換えを拾い出す
- 一つの対象を「声・動き・衣装・受けた衝撃・総合評価」に切り分けると、違う語が必要になる
- superior / brilliant / impressed / outstanding / worth などはいずれも excellent 圏の働きをする
- 身体感覚で語る表現は、形容詞をひとつ足すより雄弁になる
好きなアーティストについて語る英文を読むと、褒め言葉は一語ではなく束で使われていることがわかります。以下は、あるアーティストのパフォーマンスについて話す学習者の英文です。褒め言葉に当たる部分を探しながら読んでみてください。
- フレーズ
- I would like to talk about my favorite artist.
When I saw her for the first time, I thought she was like an odd person.
But it changed after I saw her performance.
Her voice was superior, and dance was brilliant.
Her hair style, makeup, and clothes fit in her performance.
At the first song in the performance, I was so impressed that I had goose bumps.
Her performance is outstanding.
Her performance is worth going. - 日本語訳
- 私の大好きなアーティストについて話したいです。
初めて彼女を見たとき、私は彼女が変わった人のように思いました。
しかし、彼女のパフォーマンスを見たあと、それは変わりました。
彼女の声は優れていて、ダンスは素晴らしかったです。
彼女の髪型、化粧、服は彼女のパフォーマンスに調和しています。
パフォーマンスでの最初の歌で、私は鳥肌が立つほど感動しました。
彼女のパフォーマンスは傑出しています。
彼女のパフォーマンスは行く価値があります。 - 使う場面
- 好きな音楽・映画・舞台について、少しまとまった長さで感想を述べるとき。スピーキングテストの「好きなものを説明してください」という設問にも近い形です。
- 注意点
- この英文は学習者らしい素直な言い方が残っています。fit in は「(集団に)溶け込む」の意味が強いので、衣装と演出の調和を言うなら matched her performance や went perfectly with her performance のほうが自然です。worth going も worth going to と目的語を補うと整います。
- 発音・ニュアンス
- superior は「スピアリア」(第2音節に強勢)、brilliant は「ブリリャント」と2音節でまとめる、outstanding は「アウトスタンディング」(stand に強勢)。goose bumps は「グースバンプス」で、b の前で軽く息を止めると英語らしく響きます。
この英文に登場した「すごい」の言い換え
いくつ見つかったでしょうか。使われていた語を並べます。
- superior(スピアリア)優れている
- brilliant(ブリリャント)素晴らしい、見事
- fit in(フィットイン)調和する、ぴったり合う
- impressed(インプレスト)感動して
- I had goose bumps(グースバンプス)鳥肌が立った
- outstanding(アウトスタンディング)傑出した、実に優れた
- worth(ワース)価値がある
これらはすべて「excellent=すばらしい」とほぼ同等の働きをしています。文脈によって意味が完全に一致するわけではありませんが、どれも一人のアーティストを褒めるために選ばれた言葉です。
ひとつの対象を、声・ダンス・衣装・受けた衝撃・総合評価と切り分けて、それぞれに違う語をあてる。これが語彙を増やす目的そのものだと言えます。
「鳥肌が立つ」は日本語と同じ発想
面白いのは I had goose bumps(鳥肌が立った)です。goose は「ガチョウ」、bump は「こぶ、ぶつぶつ」。羽をむしったガチョウの皮膚のぶつぶつに、感動で立った皮膚の粒立ちを重ねる比喩で、日本語の「鳥肌」とほぼ同じ着想です。
イギリス英語では goose pimples、少し硬い言い方では goosebumps ran down my arms のような表現も使われます。
- フレーズ
- It gave me chills. / It sent shivers down my spine. / It took my breath away. / It brought tears to my eyes.
- 日本語訳
- ぞくぞくした。/背筋が震えた。/息を呑んだ。/涙が出た。
- 使う場面
- ライブ、映画、絶景、スポーツの名場面など、形容詞では足りないほど心が動いたとき。感想文の締めにも向きます。
- 注意点
- It gave me chills は、恐怖で「ぞっとした」の意味にもなります。感動として伝えたいときは in a good way を添えたり、直前に The final song was unbelievable. のような一文を置いて文脈をつくると誤解がありません。
- 発音・ニュアンス
- chills は「チルズ」、shivers は「シヴァーズ」、spine は「スパイン」。took my breath away は breath を「ブレス」と短く、away を伸ばして余韻を残すと感情が乗ります。
感情を身体の反応で語ると、形容詞をひとつ足すより雄弁になります。amazing を三回言うより、身体に何が起きたかを一文で描くほうが伝わるのです。
super を語源に持つ仲間たち
superior(優れた)、superb(実に見事な)、supreme(最高の)。これらはいずれもラテン語の super(上に、超えて)を語源に持ちます。「上に立つ」「越えている」という発想が、そのまま賞賛の語になっているわけです。
surpass(上回る)、supersede(取って代わる)も同じ家系です。語源でまとめて覚えると、初めて出会う単語でも意味の見当がつくようになります。
同じように、outstanding は out(外へ)+ standing(立っている)で「群から頭が出ている」、exceptional は exception(例外)から「例外的に優れた」、incredible は in(否定)+ credible(信じられる)で「信じがたい」。部品に分けて意味を推測する癖をつけると、暗記の負荷が一気に下がります。

では、実際の会話で最も出番が多い語から順に見ていきましょう。
場面を選ばない基本の「すごい」10語
- great は最も出番が多く、相手を選ばず使える安全な一語
- excellent は客観評価、wonderful は喜び、fantastic は感情の振れ幅が大きい
- terrific は形が怖いのに意味は「素晴らしい」という例外
まず押さえるべきは、使用頻度の高い10語です。ここが自在に使えるだけで、会話の手触りは大きく変わります。
good / nice ——「良い」の土台
Nice shirt!(そのシャツいいね)、She is such a nice person.(彼女は本当にいい人だ)のように軽く投げられます。
ただし good だけでは褒め度が低く、場合によっては「まあ悪くない」と受け取られることもあります。作品や成果物に対する感想として It’s good. で終わらせると、物足りなさが残ると受け取られる場面もあるので、その先の語が必要になります。
great ——日常でもっとも出番の多い一語
- フレーズ
- You did a great job on the project. / I think it’s a great idea!
- 日本語訳
- あのプロジェクト、素晴らしい仕事だったね。/それはいい考えだと思う。
- 使う場面
- 職場でも友人同士でも、初対面でも使えます。good より確実に一段上で、否定的な含みがありません。迷ったらこれ、という位置づけの語です。
- 注意点
- 抑揚のない平坦な Great. は皮肉に聞こえます。トラブルの報告を受けて Great. と言えば「やれやれ」の意味になるほどです。褒めるときは語尾を上げ、少し声を張ること。
- 発音・ニュアンス
- 「グレイト」。語末の t は破裂させずに軽く止めると自然です。great job は t と j がつながって「グレイジョブ」に近く聞こえます。
excellent ——客観的な評価を下す
成果物や実力を褒めるのに向きます。Your presentation was excellent.(プレゼン、素晴らしかったです)、He is an excellent student.(彼は優秀な学生だ)。
上司や取引先にも使える中立的な硬さがあります。感情をあまり乗せず、基準に照らして高いと言うイメージです。発音は「エクセレント」で、最初の ex に強勢を置きます。
wonderful ——「喜び」の色が濃い
What a wonderful idea!(なんて素敵な考え)、I had a wonderful time with you today.(今日はとても楽しかった)。感謝と組み合わせると温かい響きになります。
wonder(驚き、不思議)から来ているため、驚きと喜びが混ざった手触りがあります。人柄や時間の共有について言うときにとくにしっくりきます。
fantastic ——感情の振れ幅が大きい賞賛
The concert last night was fantastic!(昨夜のコンサートは最高だった)、Your new hairstyle is fantastic!(その髪型すごくいい)。
fantasy と同語源で、「現実離れして素晴らしい」という誇張が入っています。テンションを見せたいときの一語です。発音は「ファンタスティク」で tas に強勢。
perfect ——文句のつけようがない
- フレーズ
- 学習者: Did you get Thursday off?
友人: Yeah, I did.
学習者: Perfect! Let’s meet at eleven, then. - 日本語訳
- 学習者: 木曜、休み取れた?
友人: うん、取れたよ。
学習者: 完璧。じゃあ11時に会おう。 - 使う場面
- 予定の確認、条件が揃った瞬間、注文が思い通りに通ったとき。単独で Perfect! と返せる便利な相槌です。
- 注意点
- very perfect とは言えません。perfect はそれ自体が極限を表すため、強めるなら absolutely perfect です。また That’s just perfect. を平坦な口調で言うと「まったく最悪だ」という皮肉になります。
- 発音・ニュアンス
- 形容詞の perfect は「パーフィクト」と前に強勢。動詞(完成させる)のときは後ろに強勢が移り「パフェクト」に近くなります。
super ——軽い驚きと満足の相槌
Your drum solo was super!(ドラムソロ最高だった)。単独で Super! とも言えます。副詞としても働き、super good、super easy のように使えるのが便利なところです。
terrific ——形は怖いのに意味は正反対
terrific は terrible(ひどい)や terrifying(恐ろしい)と同じ語源を持ちますが、現代の意味は「素晴らしい」です。Your test scores were terrific!(テストの点数、素晴らしいね)は純粋な褒め言葉。見た目に引っ張られて避けてしまう学習者が多い語なので、意識して使ってみる価値があります。逆に terrible を褒め言葉と勘違いすると正反対の意味になるため、この二語はセットで整理しておきましょう。
impressive ——努力や技術への敬意
The distance you can run is impressive.(そんな距離を走れるのはすごい)。「感心させられる」という含みがあり、積み上げたものへの敬意が乗ります。
先の英文に出てきた impressed は受け身で「感動した側」を主語にする形です。I was really impressed by her voice.(彼女の声には本当に感動した)のように使います。impressive は対象、impressed は自分と覚えると混同しません。
lovely ——イギリス英語の上品な定番
What lovely weather!(なんていい天気)。柔らかく上品な褒め言葉で、イギリスでは一日に何度も耳にします。
- フレーズ
- 店員: If you have a member’s card, you get ten percent off.
学習者: Oh, that’s lovely. Thank you! - 日本語訳
- 店員: 会員カードをお持ちなら10パーセント引きになります。
学習者: まあ、それは嬉しいです。ありがとう。 - 使う場面
- 嬉しい知らせへの反応、天気や景色、人の親切さについて。イギリス、アイルランド、オーストラリアなどで特によく使われます。
- 注意点
- アメリカ英語では lovely の使用頻度が下がり、やや上品・古風に響くことがあります。また lovely も平坦な口調では皮肉になり得るので、上向きの抑揚で言うのが基本です。
- 発音・ニュアンス
- 「ラヴリィ」。love と同じ母音で、o を「オ」と読まないよう注意します。
基本の10語が揃ったところで、次は「予想を超えた」ときに使う語群へ進みます。
驚きを含む「すごい」
- amazing・awesome・incredible は「予想を超えた」ときの三本柱
- unbelievable は悪い意味にも転ぶため、口調と文脈が必要
- breathtaking や mind-blowing はさらに強い驚きを表す
予想を超えたときは、驚きの成分が入った語を選びます。同じ「すごい」でも、良し悪しの評価ではなく「想定の外に出た」ことを伝える語群です。
amazing ——びっくりするほどすごい
That’s amazing!、She has an amazing talent for music.(彼女は音楽に驚くべき才能がある)、The view from the top was absolutely amazing.(頂上からの景色は本当に素晴らしかった)。
maze(迷わせる)と同語源で、「呆然とさせる」が原義です。使いやすさと強さのバランスがよく、great の次に覚えるならこの語が有力です。発音は「アメイジング」で maz に強勢。
awesome ——万能の褒め言葉
もともと awe(畏敬の念)+ some で「畏れを起こさせる」という重い語でしたが、現代のアメリカ英語では気軽な万能語になっています。Awesome job!、You’re awesome!
- フレーズ
- 友人: Dinner’s on me tonight.
学習者: Really? That’s awesome! Thank you so much. - 日本語訳
- 友人: 今夜は僕が払うよ。
学習者: 本当に? それはすごくありがたい。本当にありがとう。 - 使う場面
- 友人や同僚とのカジュアルな会話全般。相手の申し出、達成、持ち物、どれにでも返せます。
- 注意点
- かなりくだけた語なので、フォーマルな書面や初対面の取引先には excellent や wonderful を選びます。連発すると語彙が乏しく聞こえるのもこの語の落とし穴です。
- 発音・ニュアンス
- 「オーサム」。aw を「オー」と伸ばし、some は「サム」と軽く。「アウェサム」とは読みません。
incredible / unbelievable ——信じがたいほど
He showed incredible courage.(信じられないほどの勇気を見せた)、She has an incredible skill.(とんでもない技術を持っている)。
unbelievable は incredible とほぼ同義ですが、悪い意味の「信じられない(ひどい)」にも転びます。サービスの遅さに対して This is unbelievable. と言えば完全な苦情です。褒め言葉として使うなら、In a good way. を添えるか、直後に何が良かったのかを一文で説明して意図を明確にしてください。
astonishing / astounding / breathtaking / mind-blowing
さらに強い驚きの語群です。The scenery was breathtaking.(息を呑む景色だった)、The ending was mind-blowing.(結末に頭をやられた)。
astonishing と astounding は書き言葉やニュース寄り、breathtaking は視覚的な絶景、mind-blowing は作品や発想に向きます。使いどころを絞ることで、出したときの効果が大きくなる語です。
remarkable ——落ち着いた驚嘆
She has made remarkable progress.(目を見張る進歩を遂げた)。remark(言及する)から「言及に値する」という成り立ちで、感情を抑えた大人びた賞賛になります。
ここまでが日常の語群です。次に、少し格を上げたいときの選択肢を見ていきます。
格を上げたいときの賞賛15語
- 文語寄りの語は、対象の大きさや格式に合わせて選ぶ
- magnificent は壮麗な建築、spectacular は視覚的迫力、sublime は芸術や料理の評
- impeccable と flawless は「欠点がない」という角度からの賞賛
やや文語寄り、あるいは大きな対象に向く語群です。対象の格と語の格を合わせるのが選び方のこつになります。
- superb(スパーブ)ほとんど excellent の強化版。That was a superb performance. / She is a superb dancer.
- magnificent(マグニフィセント)壮麗で堂々とした対象に。The pyramids of Egypt are absolutely magnificent.
- spectacular(スペクタキュラー)視覚的な迫力に。This painting is spectacular. / He is a spectacular opera singer.
- splendid(スプレンディッド)「実に見事」。ややクラシックな響きで、朗報への反応にも。We had a splendid opportunity.
- marvelous(マーヴェラス)「驚異的に素晴らしい」。That ballet performance was marvelous. / The caviar is simply marvelous.
- fabulous(ファビュラス)華やかさを伴う賞賛。She looked fabulous in her dress. / We had a fabulous evening.
- exceptional(イクセプショナル)「例外的に優れている」。Her talent is exceptional. / My grandma’s apple pies are exceptional.
- outstanding(アウトスタンディング)「抜きん出ている」。out(外へ)+ standing(立っている)で、群から頭が出ているイメージ。He has outstanding piano skills.
- eminent(エミネント)「卓越した」。人物の名声に使われます。an eminent scholar in the field(その分野の卓越した学者)
- supreme(スプリーム)「最高の」。the supreme achievement of his career
- superior(スピアリア)「(他より)優れた」。比較対象があるときは to を伴います。This model is superior to the older one.
- sublime(サブライム)「崇高なほど素晴らしい」。芸術や料理の評で見かけます。The dessert was sublime.
- impeccable(インペッカブル)「完璧で欠点がない」。His manners are impeccable.
- flawless(フローレス)「傷ひとつない」。a flawless performance
- stellar(ステラー)「際立って優秀な」。She got stellar reviews for her role.
superior は比較の語なので、He is superior. と単独で言うと「人として上等だ」という尊大な響きになりかねません。比べる相手を to で示すか、an excellent player のように別の語に置き換えるのが安全です。また magnificent を日常の些細なものに使うと大げさで冗談めいて聞こえます。壮大な建築や自然、格式のある演奏に取っておく語だと考えてください。
格式ある語を押さえたら、逆側の端であるくだけた表現も見ておきましょう。使う相手を選ぶぶん、距離が近い人には効果的です。
くだけた場面のスラング
- sick・crazy・insane は本来否定的な語で、口調と場面が揃って初めて褒め言葉になる
- badass は語に ass を含むため職場では避ける
- smashing・cracking・brilliant はイギリス英語の定番
親しい相手やSNSでは、より生きた言い方が飛び交います。ただし相手との距離感が前提条件になる語群です。
cool / sick ——「かっこいい」の定番と要注意語
cool は「かっこいい」の定番。Wow, this is so cool!
sick は本来「病気の」ですが、若者言葉では「イケてる」。Did you see that shot? That was sick!(あのシュート見た? やばい)、Your guitar is so sick!
sick は文の作り方によって本来の意味で受け取られます。I feel sick. は「気分が悪い」、That’s sick. は文脈次第で「趣味が悪い、悪趣味だ」という強い非難にもなります。褒め言葉として機能するのは、スポーツの妙技や音楽・映像作品に対して、明るい口調で言ったときだけ。年上の相手や職場では使わないほうが無難です。
sweet / crazy / insane ——反応としての「すごい」
sweet は「やった、いいね」。Oh, sweet! My new phone finally arrived!
- フレーズ
- 友人: I run ten kilometers every morning before work.
学習者: Every morning? That’s crazy! How long have you been doing that? - 日本語訳
- 友人: 毎朝、仕事前に10キロ走ってるんだ。
学習者: 毎朝? それはすごい。いつからやってるの? - 使う場面
- 常識を超えた量・速さ・規模を聞いたとき。友人同士の会話向けです。質問を続けると、褒めるだけで終わらず会話が伸びます。
- 注意点
- crazy と insane は人の判断や計画に向けると「頭がおかしい」という批判になります。You’re crazy. は親しい間柄の冗談として成り立つ一方、初対面では失礼です。行為や数字に向けて That’s crazy! と言うほうが安全です。
- 発音・ニュアンス
- crazy は「クレイズィ」で z の濁りをしっかり出します。That’s crazy! は crazy を高く跳ね上げると感嘆になり、平坦に落とすと呆れになります。
dope / fire / lit / epic ——物・場・体験の「最高」
dope と fire は物や作品に対する「最高」。This ramen is fire.(このラーメン最高)。lit は場の盛り上がりに。The party last night was lit.
epic / unreal / wild は体験の規模や意外性に。That trip was epic.(あの旅行は最高だった)。流行の速い語群なので、聞いて理解できるようにしておき、自分で使うのは相手に合わせるという構えが現実的です。
badass / It rocks. ——格好良さの表現
badass は「向かうところ敵なし」の格好良さ。You are a badass!、His motorcycle is badass.
badass は語自体に ass が含まれるため、職場、学校、初対面の場では避けてください。褒める意図でも、下品な語を選んだという印象だけが残ることがあります。同じ意味合いを保ちつつ安全に言うなら、You’re unstoppable. や That’s seriously impressive. に置き換えられます。
It rocks. は「最高にイケてる」。You rock!(君最高)、His new album rocks! と、人にも作品にも使えます。
イギリス英語のスラング
イギリス英語なら smashing と cracking が使えます。I had a smashing time with you today!(今日は最高に楽しかった)、That was a cracking dinner!(素晴らしい夕食だった)。
brilliant もイギリスでは口癖のように使われ、アメリカ英語の awesome や great に相当します。逆にアメリカで brilliant と言うと「頭が切れる、天才的」の色が濃く出るため、単なる「いいね」の代わりにはなりません。この英米差は覚えておくと便利です。
語彙が一気に増えたところで、「どれをどのくらいの強さで使えばよいのか」を整理しておきましょう。
強さの目安をつかむ
- 厳密な階段ではないが、5段階の目安を持つと選びやすくなる
- 副詞を足すと温度を細かく調整できる
- 極限を表す語に very は付けにくく、absolutely や truly を使う
厳密な階段ではありませんが、感覚の目安を持っておくと選びやすくなります。
| 段階 | 主な語 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 軽い肯定 | good, nice, fine | 挨拶がわり、日常の些細な良さ |
| 標準の賞賛 | great, lovely, cool | 会話の中心。誰にでも使える |
| 明確な高評価 | excellent, wonderful, fantastic, superb, impressive | 成果物、実力、体験 |
| 驚きを含む | amazing, awesome, incredible, spectacular | 予想を超えたとき |
| 最上級 | outstanding, exceptional, magnificent, breathtaking, sublime | 特別な対象、格式ある場面 |
副詞を足せば温度をさらに動かせます。really / very / so / truly / absolutely / incredibly / genuinely。
perfect, amazing, incredible, outstanding, flawless のような「それ自体が極限を表す語」に very は付けにくいという点に注意してください。very perfect ではなく absolutely perfect、very amazing ではなく truly amazing が自然です。逆に great, nice, good には very がよく合います。これは「もう上限に達している語を、さらに程度で測ろうとする」ことになるためです。
強さの目安が持てたら、次は「何を褒めるか」で語を選ぶ段階です。ここからが実践編になります。
何を褒めるかで言葉を選ぶ
- 抽象的な great より「何がどう良かったか」を添えるほうが信頼される
- 料理は質問を添えると会話が続く
- 外見は身体そのものではなく、持ち物や選択を褒めるのが安全
褒め言葉の効き方は、対象に合った語を選べているかで決まります。仕事・才能・料理・外見の四つの場面で見ていきます。

仕事・成果を褒める
- フレーズ
- You did a fantastic job on this. / Your report was thorough and well-organized. / I was really impressed by how you handled that client. / That’s a brilliant solution.
- 日本語訳
- この仕事、実に見事です。/報告書は網羅的で整理が行き届いていました。/あの顧客対応には感心しました。/見事な解決策です。
- 使う場面
- 同僚への感想、上司からの評価、取引先への謝意。会議の終わりやメールの結びにも置けます。
- 注意点
- 抽象的な great の一言だけで終えると、社交辞令に聞こえることがあります。何がどう良かったのかを添えると信頼される褒め方になります。また上司に対して I’m impressed. と言うと評価者の立場に立つ響きが出るため、It was very helpful, thank you. のような言い方が無難です。
- 発音・ニュアンス
- thorough は「サラ」に近く、through(スルー)とは別語です。well-organized は organ に強勢。brilliant はイギリスでは軽い賞賛、アメリカでは知性への賛辞に寄ります。
才能・技術を褒める
- フレーズ
- You have a real gift for languages. / Your timing on the drums is impeccable. / How do you do that? You make it look so easy.
- 日本語訳
- 語学の才能が本当にある。/ドラムのタイミングが完璧だ。/どうやってるの? 簡単そうに見せてしまう。
- 使う場面
- 演奏や実演を見たあと、相手の得意分野の話を聞いたとき。三つめのように質問形にすると、相手が話しやすくなります。
- 注意点
- 才能だけを褒めると、積み上げた練習を無視したように響くことがあります。You must have practiced a lot.(きっとたくさん練習したんだね)を添えると、努力への敬意も伝わります。
- 発音・ニュアンス
- impeccable は「インペッカブル」で pec に強勢。gift for の for は弱く「フォ」と流します。
料理を褒める
- フレーズ
- 学習者: The sauce is incredible — what’s in it?
店員: There’s a bit of miso in it, actually.
学習者: That explains it. This might be the best curry I’ve ever had. - 日本語訳
- 学習者: このソース素晴らしいですね。何が入っているんですか?
店員: 実は少し味噌が入っているんです。
学習者: なるほど。今まで食べたなかで一番のカレーかもしれません。 - 使う場面
- レストラン、ホームパーティー、招かれた食卓。You’re an amazing cook.(料理が本当に上手だ)も定番です。
- 注意点
- It’s not bad. は「悪くない」で、褒め言葉としては弱すぎます。招かれた席では物足りない評価と受け取られることも。delicious の一言で止めず、質問を添えると会話が続きます。
- 発音・ニュアンス
- incredible は「インクレディブル」で cred に強勢。what’s in it は三語をつないで「ワッツィニット」のように流れます。
外見・服装を褒める
英語圏では「持ち物や選択」を褒めるのが安全です。I love your jacket. Where did you get it?(そのジャケット素敵。どこで買ったの?)、That color really suits you.(その色、本当に似合っている)、You look great today.
身体そのものより、センスや工夫を褒めるほうが受け取りやすいという発想です。相手が選んだものを褒めれば、その選択を認めたことにもなります。
この「身体か、選択か」という線引きは、次に扱う失礼な褒め方を避けるための鍵にもなります。
つまずきやすい褒め方と、その言い換え
- 身体の部位の寸法や肌の色への言及は避け、選択やセンスを褒める
- 体型・体重・年齢への言及は、初対面や職場では持ち出さない
- 棒読みの Great. は皮肉になる。声・表情・短さの三点が揃うと伝わる
よく紹介される注意点は、日本語の発想をそのまま英語にしたときに起こる行き違いです。どれも褒める意図があるのに、別の意味で届いてしまう言い方です。
目や脚の寸法に言及しない
You have big eyes.(目が大きいね)は、日本では褒め言葉として通用しますが、英語圏ではその価値観が共有されていません。驚いた顔を指摘されたように響くこともあります。You have beautiful eyes. に置き換えます。You have long legs. も同様で、体の部位の寸法に言及するのは踏み込みすぎです。褒めたいなら You look great in those jeans. のように服装経由にします。
肌の色に触れない
Your skin is so white. は避けたい言い方です。肌の色は人種と結びついた繊細な話題で、褒める意図でも別の意味に受け取られます。肌について触れたいなら You have beautiful skin. が無難で、色ではなく状態を褒める形になります。
体型・体重・年齢は持ち出さない
体型への言及全般も注意が必要です。You’re so skinny! は健康や食習慣への口出しに聞こえかねません。You look really healthy. や You look fit. のほうが安全です。
You’ve lost weight! も、本人が望んで痩せたかどうかがわからないため、初対面や職場では持ち出さないほうがよいでしょう。
年齢に触れる You look young for your age. も、後半が余計になります。You look great. で十分です。条件をつけない褒め方のほうが、まっすぐ届きます。
語そのものが二面性を持つ場合
sick, crazy, insane, wicked はいずれも本来は否定的な語で、褒め言葉として機能するのは口調と場面が揃ったときだけです。terrific は逆に、形は怖いのに意味は良いという例外です。
もっとも誤解を招くのは「口調」
そして最も誤解を招くのが、抑揚のない Great. や That’s just perfect. という言い方。棒読みだと皮肉になります。
褒めるときは、声を上げて、笑顔で、短く。この三つが揃っていれば、選んだ単語が多少不自然でも気持ちは伝わります。逆に言えば、語彙を増やす前に整えるべきは声のほうだということです。
褒め方が整ったら、次は褒められたときの側に立ってみましょう。ここは日本語の作法と大きく違うところです。
褒められたときの受け取り方
- まずは Thank you! と受け取るのが基本
- That’s not true. は褒めた側の行き場を失わせる
- 受け取ったあと一言足すと、そのまま雑談に発展する
日本では賞賛に対して謙遜する作法が根づいています。しかし英語で That’s not true.(そんなことないよ)と返すと、褒めた側は行き場を失います。まずは Thank you! と受け取るのが基本です。
- フレーズ
- Thank you, that means a lot coming from you. / Thanks! I worked really hard on it. / That’s so kind of you to say.
- 日本語訳
- ありがとう、あなたにそう言われると嬉しいです。/ありがとう、けっこう頑張ったんです。/そう言ってもらえて嬉しいです。
- 使う場面
- 仕事を褒められたとき、発表後、料理や服装を褒められたとき。一つめは尊敬している相手に、二つめは同僚や友人に向きます。
- 注意点
- No, no, it’s nothing. や My English is very bad. のような強い否定は、会話を止めてしまいます。謙遜したいときは Thank you — I still have a lot to learn, though. のように、感謝を先に置いて後半で控えめさを出すと自然です。
- 発音・ニュアンス
- that means a lot は means を高く、coming from you を一息で流します。kind of you to say は「カインドヴユートゥセイ」とつなげます。
相手の服を褒められたなら Thanks! I got it at a little shop downtown. と情報を返せば、そのまま雑談に発展します。
褒め言葉は一方通行ではなく、やりとりです。受け取り方を覚えておくことが、そのまま次の会話の入口になります。
では、記事に載っていない語を自分で見つけるにはどうすればよいのでしょうか。ここで辞書の話に移ります。
類義語を自力で増やす道具、thesaurus
- thesaurus(類義語辞典)で候補を集め、英英辞典で定義と例文を確認する
- 意味のずれと品詞の違いという二点を必ずチェックする
- 辞書に載っていても、相性のよい名詞(コロケーション)は限られる
こうした単語を自分で掘り出すには辞書が要ります。使うのは類義語辞典、thesaurus(シソーラス)です。書籍もありますし、オンラインでも無料で引けます。
使い方の考え方は日本語の類義語辞典と同じですが、英語では確認すべき点が二つあります。
ひとつは、並んでいる語が本当に自分の言いたい意味を持っているか。great の項目には「偉大な」「巨大な」「(口語で)素晴らしい」が混在しており、選び間違えると意味がずれます。
もうひとつは品詞です。impress は動詞、impressive は形容詞、impression は名詞で、文の型ごと変わります。品詞を確かめずに差し替えると、単語は合っているのに文が壊れるという事故が起きます。
安全な三ステップ
英英辞典に慣れていないうちは、英和辞典との併用が現実的です。手順としては、①thesaurus で候補を集める、②英英辞典で定義と例文を確認する、③実際の使用例をコーパスや検索で見て、どんな名詞と結びつくかを確かめる、という流れが安全です。
a magnificent building は自然でも a magnificent pencil が奇妙に響くように、形容詞には相性のよい相手(コロケーション)があります。辞書に載っているからといって差し替えが常に成立するわけではない、という一点だけ押さえておけば大丈夫です。
類義語辞典で見つけた見慣れない語を、確認せずに会話で使うのは避けてください。sublime を日常の些細な物に使えば大げさに響き、eminent を友人に向ければ冗談にしか聞こえません。難しい語ほど使用範囲が狭いという性質があります。まず例文を三つ見て、どんな名詞と一緒に使われているかを確かめてから口に出す、という順序を守ると失敗が減ります。
道具が揃ったら、あとは使う経路をつくるだけです。最後に、道具も相手も要らない練習法をお伝えします。
定着させるための小さな習慣
- 一日ひとつだけ使う語を決めると、負荷なく回せる
- 同じ形容詞を二回使わないという制約が、語彙を引き出す
- 「形容詞+理由」の型で覚えると、丸暗記が会話の技術に変わる
語彙は一覧を眺めるだけでは動きません。使う経路を作っておくと定着します。

一日ひとつだけ、新しい褒め言葉を決めて使う。今日は superb の日、明日は impressive の日、と決めておくだけで、意識が向きます。
映画や音楽の感想を三文で書き、同じ形容詞を二回使わないという制約をかける。制約があると、記憶の奥にある語が引き出されます。
好きなものについて一分間話す練習をして、録音して聞き返し、繰り返している語を別の語に置き換える。この三つは道具も相手も要りません。
「形容詞+理由」の型で覚える
さらに、褒め言葉は「形容詞+理由」の型で覚えると実戦で使えます。Your presentation was outstanding — the way you handled the questions was especially impressive.
このように、強い一語を出したら、その根拠を一文足す。これだけで、単語の丸暗記が会話の技術に変わります。
一週間の練習例
段階を踏みたい場合の一例です。無理のない範囲で組み替えてください。
- 1日目:great / excellent / wonderful の三語を、それぞれ違う対象について声に出して使う。
- 2日目:amazing / awesome / incredible に置き換えて、驚きの成分を意識する。
- 3日目:好きな作品の感想を三文で書き、同じ形容詞を使わない。
- 4日目:格式のある語(superb / magnificent / exceptional)から一語だけ選び、例文を三つ集める。
- 5日目:褒められたときの返し方を三つ音読し、抑揚をつける。
- 6日目:一分間スピーチを録音し、繰り返している語に印をつける。
- 7日目:印をつけた語を別の語に置き換えて、もう一度録音して聞き比べる。
独学で口の動きまで整えるのは難しいところがあります。抑揚や口調は相手の反応があってこそ調整できるものなので、会話の相手を確保できる環境を併用すると、覚えた語が使える語に変わりやすくなります。
よくある質問
- 迷ったときは great、驚きを伝えたいときは amazing が汎用的
- スラングは聞いて分かるようにしておき、使うのは相手を選ぶ
- 語彙より先に、声の張りと表情のほうが伝わり方を左右する
まず何語だけ覚えれば会話が回りますか
great、excellent、wonderful、amazing、impressive の五語をまず自在に使えるようにすると、日常のほとんどの場面をカバーできます。great は相手を選ばず使える汎用語、excellent は成果物への客観的な評価、wonderful は喜びを乗せた言い方、amazing は予想を超えたとき、impressive は努力や技術への敬意という住み分けです。この五語で足場をつくってから、superb や breathtaking のような語を一つずつ足していくと、無理なく語彙が広がります。
amazing と incredible はどう使い分けますか
どちらも驚きを含む賞賛ですが、amazing は「呆然とするほどすごい」で使用範囲が広く、日常のあらゆる場面で使えます。incredible は in(否定)+ credible(信じられる)という成り立ちどおり「信じがたいほど」で、程度が常識を超えているときに向きます。景色や才能にはどちらも使えますが、記録的な数字や信じにくい出来事には incredible のほうがしっくりきます。なお incredible とほぼ同義の unbelievable は悪い意味にも転ぶため、褒め言葉として使うときは文脈を明確にしてください。
very amazing と言ってはいけないのはなぜですか
amazing、perfect、incredible、outstanding、flawless などは、それ自体がすでに程度の上限を表す語です。上限に達しているものを very で「とても」と測ろうとすると、論理が噛み合わなくなるため不自然に響きます。強めたい場合は absolutely、truly、really、genuinely を使い、absolutely perfect、truly amazing のようにします。一方で great、nice、good のように程度に幅がある語には very がよく合います。
スラングは覚えるべきですか
聞いて理解できるようにしておく価値は高い一方、自分から使うのは相手と場面を選ぶのが安全です。sick、crazy、insane、wicked は本来否定的な語で、口調と関係性が揃わないと褒め言葉として届きません。badass は語に不適切な部分を含むため職場や学校では避けます。流行の速さもあるため、映画やSNSで見聞きしたときに意味が分かる状態を目標にし、自分の口から出す語は great や amazing のような安全圏に置いておくと失敗が少なくなります。
イギリス英語とアメリカ英語で気をつける語はありますか
brilliant はイギリスでは口癖のように使われる軽い賞賛で、アメリカ英語の awesome や great に近い位置にあります。ところがアメリカで brilliant と言うと「頭が切れる、天才的」という知性への賛辞の色が濃く出るため、単なる「いいね」の代わりにはなりません。lovely もイギリスでは日常的ですが、アメリカではやや上品・古風に響くことがあります。smashing と cracking はイギリス寄りの語です。相手がどの地域の英語を話すかを聞き取って寄せていくと、自然さが増します。
外見を褒めたいときは何を言えば安全ですか
身体そのものではなく、相手が選んだものやセンスを褒めるのが基本です。I love your jacket. Where did you get it?、That color really suits you.、You look great today. のような言い方は、相手の選択を認める形になるため受け取りやすくなります。目や脚の寸法への言及、肌の色、体型、体重、年齢はいずれも避けたい話題です。日本語では褒め言葉として通用する表現でも、英語圏では価値観が共有されていないため、別の意味で届いてしまうことがあります。
褒められたとき謙遜したいのですが、どう言えばいいですか
まず Thank you! と受け取ってから、後半で控えめさを出すのが自然です。Thank you — I still have a lot to learn, though. のように、感謝を先に置けば相手の言葉を否定せずに済みます。That’s not true. や My English is very bad. のような強い否定は、褒めた側の行き場をなくし、会話を止めてしまいます。Thank you, that means a lot coming from you. や That’s so kind of you to say. も覚えておくと便利です。
単語を覚えても口から出てきません。どうすればいいですか
一覧を眺めるだけでは語彙は動かないため、使う経路をつくるのが有効です。一日ひとつだけ使う語を決める、感想を三文で書いて同じ形容詞を二回使わない、一分間話して録音し繰り返している語を別の語に置き換える、という三つはどれも道具も相手も必要ありません。加えて「形容詞+理由」の型で覚えると実戦で出やすくなります。強い一語を出したら、その根拠を一文足す。この癖がつくと、単語の暗記が会話の技術に変わります。
用語のおさらい
- thesaurus とコロケーションは、語彙を自力で増やすための土台
- 語源をたどると、初見の語でも意味の見当がつく
thesaurus(シソーラス)
類義語辞典のこと。ある語と近い意味を持つ語をまとめて示してくれます。候補を集める道具として優れていますが、意味のずれと品詞の違いを自分で確認する必要があります。
コロケーション
語と語の自然な結びつきのこと。a magnificent building は自然でも a magnificent pencil が奇妙に響くのは、magnificent と相性のよい名詞が限られているためです。例文を複数見て、どんな語と並ぶかを確かめる習慣が役立ちます。
super(語源)
ラテン語で「上に、超えて」を意味します。superior(優れた)、superb(実に見事な)、supreme(最高の)、surpass(上回る)、supersede(取って代わる)はすべてこの family に属します。語源で最後に、初見の語でも意味の見当がつきます。
英語で人を褒めてみよう
- 「すごい」の裏には、優れている・驚いた・感動した・心を奪われたなど複数の気持ちがある
- 同じ広がりは「うれしい」「疲れた」など、どの日常語にもある
- 完璧な発音より、良いところを見つけて口に出すことが先
「すごい」という一語の裏には、優れている、驚いた、感動した、心を奪われた、価値がある——といういくつもの気持ちが折り重なっています。類義語を覚える作業は、その折り目をひとつずつ開いていくことに近いのです。
そしてこれは「すごい」に限りません。「うれしい」「疲れた」「気になる」、どの日常語にも同じ広がりがあります。ひとつの語で切り開いた道は、他の語でも使えます。
英語圏の人々は、本当によく人を褒めます。日本語以外での会話に慣れていない人が輪に入ると、その頻度に驚くこともあるほどです。だからこそ、褒め言葉の持ち駒が増えると、会話がぐっと回りはじめるのです。
完璧な発音や文法よりも、まずは相手の良いところを見つけて口に出すこと。superb でも brilliant でも sick でも構いません。返ってくる笑顔が、その単語を記憶に留めてくれます。
「日本人らしくないね」と言われたら、それはもう会話の幅が広がった証拠かもしれません。
それではまた、See you!

