レジで店員を呼ぶとき、人の前を通るとき、道を尋ねるとき。日本語なら全部「すみません」で片づく場面を、英語でどう言えばいいのか分からず固まってしまう——そんな経験はありませんか。とりあえず「Sorry」と口にしたら、相手が不思議そうな顔をした。そんな記憶がある方も多いはずです。
この記事を読み終えると、「今の『すみません』はどの役割で口から出ようとしているのか」を一瞬で見分け、Sorry・Excuse me・Thank you の三つに正しく振り分けられるようになります。判断の軸はたったふたつ、時間軸と非の所在だけです。
場面別の例文、実際の会話例、やりがちな誤用、発音練習、七日間の定着プランまで用意したので、読んだその日から口が動くようになります。独学で発音や語尾の上げ下げに不安が残る場合は、英語教室のように相手のいる場で試す方法も選択肢に入ります。
- 「すみません」が英語にならない理由——一語対一語の対応が存在しない
- コアイメージでつかむ、SorryとExcuse meの境界線
- 間違ったSorryが生む、こんなすれ違い
- Excuse meを場面別に使いこなす
- I’m sorryの正しい使い方と、注意すべき落とし穴
- 感謝の「すみません」はSorryではなくThank you
- Pardon me、I apologize、My bad——周辺表現の位置づけ
- 場面別・とっさの一言早見表
- 知っているのに使われない言いまわし——発音の壁を越える
- Sorryをめったに言わないアメリカ人と、英語圏の温度差
- つまずきやすい誤用パターンと言い換え
- 七日間で使い分けを身体に定着させるプラン
- 文化を学び、単語を選ぶという発想
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:使い分けの要点を振り返る
「すみません」が英語にならない理由——一語対一語の対応が存在しない
原因は語彙力ではありません。日本語の「すみません」には五つ以上の役割が詰め込まれているのに、英語ではその役割ごとに別の表現へ振り分ける必要がある、という構造の違いだけが問題なのです。
まずは、なぜ「すみません」がそのまま英語にならないのか、その仕組みから見ていきましょう。
- 日本語の「すみません」は謝罪・呼びかけ・感謝・聞き返しなど複数の役割を一語で兼ねている
- 英語の Sorry が第一に運ぶのは「自分に非がある」という含み
- 役割ごとに Excuse me、Sorry、Thank you へ振り分けるのが基本方針
- 「訳す」のではなく「今どの役割で言おうとしているか」を見分けるのが出発点
先に答えを言ってしまうと、「すみません」に対応する英単語は存在しません。だから探すのをやめて、役割ごとに振り分けるほうが早いのです。
理由は単純で、日本語の「すみません」が異常なほど働きすぎている言葉だからです。ひとつの音の連なりが、謝罪から呼びかけ、感謝、聞き返しまでを一手に引き受けています。これほど守備範囲の広い語を、英語の一語で受け止められるはずがありません。
日本語の「すみません」が担っている五つの役割
まずは日本語側を分解します。自分が普段どの意味で使っているかを確認してみてください。
- 相手に許しを求めるとき(本来の謝罪)
- 自分の用事で相手の時間や動作を止めてしまうときの、ごく軽い謝罪
- 人に声をかけて注意を引くとき(呼びかけ)
- 何かしてもらったときの、恐縮を含んだ感謝
- 聞き取れなかったときの聞き返し
日常で口にする「すみません」の大半は、二番目の軽い謝罪と三番目の呼びかけです。道を尋ねるとき、混雑した通路をすり抜けるとき、店員を呼ぶとき。どれも深い罪の意識はなく、人と人のあいだをなめらかにする社交的な潤滑油として口をついて出ています。
英語の Sorry が持っている四つの意味
次に英語側を並べます。辞書的に整理すると、sorry という語が抱えているのは次の四つです。
- 気の毒に思う、同情する
- すまないと思う
- ごめんなさい(謝罪)
- 残念に思う
ここで日本語側と重なるのは、実質的に三番目の謝罪だけです。しかもこの謝罪には「そう言った本人に非がある」という含みが付いてきます。呼びかけや感謝の役割は、まったく入っていません。
さらに厄介なのが、I’m sorry という形にしたときです。この形は一番目や四番目、つまり「気の毒に思う」「残念に思う」という同情の意味で解釈されることが非常に多く、文脈によっては謝罪の気配すら消えます。伝えたい中身がまるごと入れ替わってしまうわけです。
「訳す」より「役割を見分ける」
だからこそ、取るべき戦略は翻訳ではありません。口から「すみません」が出そうになった瞬間に、今のは呼びかけか、軽い謝罪か、本気の謝罪か、それとも感謝かと自問する。この一拍が入るだけで、選ぶべき英語はほぼ自動的に決まります。
では、その振り分けを支える判断の軸とは何でしょうか。次に、暗記に頼らずに済む二本の軸を確認します。
コアイメージでつかむ、SorryとExcuse meの境界線
- I’m sorry のコアは「心が痛い」、Excuse me のコアは「許してもらう・免じてもらう」
- 時間軸で見ると I’m sorry は過去向き、Excuse me は未来向き
- 非の所在が自分にあるなら I’m sorry、社会的な作法として添えるだけなら Excuse me
- この二軸で日常の大半の場面は迷わず処理できる
細かいルールを丸暗記するより、それぞれの語が持つ核の感覚を握るほうが実戦ではに速く判断できます。覚えるのは次の二行だけで十分です。
I’m sorry のコアは「心が痛い」。すでに起きたことについて、申し訳なさや残念さで胸が痛む状態を指します。Excuse me のコアは「許してもらう、免じてもらう」。これから起こす、あるいは今まさに起こしている小さな迷惑について、あらかじめ了解を取る合図です。
第一の軸——時間軸で切る
この二語の輪郭をもっともはっきりさせるのが時間軸です。I’m sorry は過去向き、Excuse me は未来向き。もう起きてしまったことへの心情表明が前者、これから相手の領域に少し踏み込む前の予告が後者です。
たとえば人の前を通ろうとするとき、迷惑はまだ発生していません。これから発生させる予定です。だから未来向きの Excuse me が選ばれます。逆に、うっかり相手の資料にコーヒーをこぼしてしまったなら、被害はすでに出ています。ここで未来向きの表現を使っても意味が通りません。
この一本だけでも判断精度はかなり上がります。迷ったら「その迷惑はもう起きたか、これから起きるか」と自分に問いかけてください。
第二の軸——非の所在で切る
もうひとつの軸は責任のありかです。自分に落ち度があると認めるなら I’m sorry、責任というほどのものではなく礼儀として一言添えるだけなら Excuse me。
ここが日本語話者にとって最大の落とし穴です。日本語の「すみません」は責任の有無をほとんど問いません。悪いことをしていなくても、社会的な潤滑油として口にできます。ところが英語の I’m sorry は、責任の所在に踏み込む言葉です。軽い気持ちで使うと、実際より重い意味が相手に届いてしまいます。
二軸を組み合わせると判断が速くなる
時間軸と非の所在、この二本を頭に置いて場面を眺めると、判断は数秒で終わります。未来向きで責任なし、なら Excuse me。過去向きで責任あり、なら I’m sorry。過去向きだけれど責任は自分にない、たとえば相手の不運を聞いたとき、なら I’m sorry to hear that という同情の形になります。

理屈が分かったところで、実際に間違えるとどうなるのかを見ておきましょう。失敗の手触りを知っておくと、記憶に定着しやすくなります。
間違ったSorryが生む、こんなすれ違い
- 呼びかけを Sorry で始めると「なぜ謝るのか」と問い返されることがある
- まだ何も起きていない場面に過去向きの表現を持ち込むのが不自然さの原因
- 正解は Excuse me、または Pardon me
- 道を尋ねる場面でも入り口は Excuse me で固定してよい
言葉に敏感な相手だと、善意で言った Sorry が思わぬ問い返しを招くことがあります。次のやり取りは、学校のロッカー前という誰にでも起こりうる場面です。
相手の生徒: Why do you say sorry to me?(なぜ私にごめんなさいって言うの)
相手の生徒: I’m talking with my friend in front of your locker, so I am interrupting you and you are doing nothing to me.(私が友達とあなたのロッカーの前でおしゃべりしているんだから、邪魔をしているのは私のほう。あなたは私に何もしていないでしょう)
学習者: Well, I didn’t mean that.(そういう意味ではなかったのですが……)
この場面で Sorry が不自然だった理由は、時間軸で説明できます。まだ何の迷惑も発生していないのに、過去向きの表現を持ち込んでしまったからです。Excuse me には「責任や義務を免除する、許す」という語感が核にあり、日本人が多用する軽度の「少し失礼します」にぴったり重なります。似た働きをする表現として Pardon me も使えます。
同じすれ違いは、道を尋ねる場面でも起こります。知らない人にいきなり I’m sorry と切り出すと、相手は「この人は何かやってしまったのだろうか」と身構えます。「道に迷って困っているんだな」とは受け取ってくれません。
見知らぬ相手への第一声を I’m sorry にすると、警戒される、または「何を謝っているのか」と話が本題からそれる原因になります。呼びかけの入り口は Excuse me に固定してしまって構いません。この一点を直すだけで、ちぐはぐさは大幅に減ります。
では、その万能の入り口である Excuse me を、具体的にどんな場面でどう使うのでしょうか。ここからは実際に口にする形で押さえていきます。
Excuse meを場面別に使いこなす
- 呼びかけ、前を通る、軽い謝罪、聞き返し、反論の前置き、中座の六場面をカバーする
- 丁寧な響きを保ちながら、深刻でない場面で気軽に使える
- 複数人で通るときは Excuse us と変える
- Excuse me? は語尾を強く上げると詰問に聞こえるので注意が必要
Excuse me は、丁寧な響きを持ちながら深刻さを伴わない、きわめて使い勝手のよい表現です。親しくない相手にも、上司や取引先にも安心して使えます。まず覚えるべき一語と言い切ってよいでしょう。
人に声をかけて注意を引く
いきなり本題を切り出すと、相手は驚くか、聞き取れずに聞き返してきます。ひと言はさむことで相手に心の準備ができ、会話がなめらかに始まります。
すみません、博物館までの道を教えていただけますか。
「イクスキューズミー」に近く、キューの部分を強めて後半を軽く流します。語尾はやや下げるか平らに保つと、落ち着いた呼びかけになります。
旅行先や出張先で、通行人に道を尋ねるとき。駅員やホテルのスタッフにも同じ形で使えます。
I’m sorry, can you tell me the way …? と始めると、相手は謝罪の理由を探して混乱します。また Excuse me を省いて Where is the museum? だけを投げると、命令的でぶしつけな響きになります。
すみません、これはいくらですか。
but は弱く短く「バッ」程度に落とし、how much に山を作ると聞き取ってもらいやすくなります。
店で値札のない商品について尋ねるとき。市場やみやげ物店で頻出します。
この but は逆接ではなく、切り出しをやわらげるための接続です。「でも」と訳して意味を考え込む必要はありません。
すみません、この席は空いていますか。
is this seat の s 音が続くので、ひとつずつ区切らず「イズィスィート」と流すように言うと自然です。
カフェや列車、待合室などで、隣の席が空いているか確認するとき。
taken は「取られている」という意味なので、Yes と返ってきたら「使用中」です。空いていると勘違いして座らないよう気をつけてください。
友人同士なら Hey で足りますが、見知らぬ相手には Excuse me のほうがずっと丁寧に響きます。相手が振り向いてから本題に入る二段構えにすると、心理的な負担も軽くなります。
人の前を通る、体が触れる
スタジアムの座席、混んだ電車、狭い通路。相手に少し迷惑をかけながら移動するときの定番です。
ちょっと通ります。/すみません、通らせてもらえますか。
短く軽やかに、語尾を下げて言います。強く言い切ると押しのける印象になるため、声量はやや控えめが無難です。
混雑した車内で降車するとき、劇場の列を横切るとき、レジ前の人の後ろを抜けるとき。
連れがいて二人以上で通るときは Excuse us と変えます。自分ひとりの動作ではないので、この使い分けを知っているだけで自然さが増します。無言で押し分けて進むのは、多くの場面で失礼と受け取られます。
軽く謝る
罪の意識を感じるほどではないけれど、「失礼」「悪いね」と伝えたい場面。謝罪をすべて I’m sorry で済ませている人は、まずこの軽い謝り方を手札に加えると表現の幅がぐっと広がります。
ああ、おっと失礼。これに慣れていないもので。
oops は「ウプス」と短く。全体を軽い調子で言うのがこの表現の要で、深刻な声色で言うとかみ合いません。
操作を間違えた、順番を取り違えたなど、笑って済む程度の小さな失敗をしたとき。
相手に実害が出ている場面では軽すぎます。書類を汚した、予定を狂わせたといった場合は I’m sorry や I apologize に切り替えてください。
失礼!/今のはごめんね。
Sorry about that は about that をつなげて「アバウダッ」に近い音に。全体を一息で言うと角が立ちません。
すれ違いで肩が軽くぶつかったとき。接触がすでに起きているので Sorry about that も自然に使えます。
相手が転倒した、持ち物が壊れたなど実害があるなら軽い一言では足りません。状況を確認し、必要なら改めて謝罪します。
聞き返す
聞き取れなかったときの「もう一度お願いします」にも使えます。ただし、ここには落とし穴があります。
学習者: Excuse me?(何だって?)
相手の言葉が聞き取れなかったとき、あるいは内容が信じられず確認したいとき。
語尾を強く上げると、驚きや不快感の表明になります。「今なんて言ったの」という詰問に聞こえる場合があるので、純粋に聞き返したいときは別の言い方が安全です。
学校では Pardon や Pardon me を習った人が多いはずです。ただし地域差はあるものの、多くの英語話者には堅すぎる響きに聞こえ、日常会話ではあまり登場しません。知識としては持っておき、実際の会話では Excuse me や Could you say that again を主力にするのが現実的です。
Excuse me? を語尾を跳ね上げて言うと、相手には「聞き返し」ではなく「聞き捨てならない」という抗議として届くことがあります。同じ語であっても声色ひとつで意味が反転するため、聞き取れなかっただけのときは Could you say that again? と言葉で明示してください。
やわらかく反対する
反論の前に置くクッションとしても機能します。いきなり否定から入るより、会話の温度を保てます。
すみませんが、賛成はできそうにありません。
but の後にわずかな間を置くと、これから意見を述べるという合図になり、相手も受け止める姿勢を作れます。
会議や打ち合わせで、相手の提案に異論を述べるとき。
I don’t agree と言い切るより、I don’t think I can agree のほうが断定を避けられます。前置きを付けたからといって内容が伝わらなくなるわけではないので、理由は続けてはっきり述べてください。
席を外す、会話を中断する
少し失礼します。/失礼します、この電話に出ないといけないので。
for a moment を「フォラモーメン」とつなげると流れます。Please を付けるとより丁寧になり、目上の相手にも安心です。
会議中に中座するとき、食事の席を立つとき、通話に出るとき。

ここまでで Excuse me の守備範囲がつかめたはずです。では、本来の謝罪を担う I’m sorry はどう扱えばよいのでしょうか。ここには、知らずに使うと不利になりうる落とし穴があります。
I’m sorryの正しい使い方と、注意すべき落とし穴
- I’m sorry の働きは謝罪、残念、同情、異論のクッションの四つ
- 感謝の意味では使えない
- 相手が I’m sorry と言っても謝っているとは限らない
- 責任の所在が確定していない場面での多用は避けるのが賢明
I’m sorry は、日本語の「すみません」と違って感謝の役割を持ちません。担っているのは謝罪、残念、異論のクッション、そして同情です。相手が I’m sorry と言ったからといって必ずしも謝っているわけではないという点も、聞き手として押さえておきたいところです。
自分の非を認めて謝る
日本語の「ごめんなさい」に最も近い使い方です。責任を自覚したうえで、はっきり謝りたいときに選びます。
来られなくてごめんなさい。
that は省略しても自然です。sorry をやや長めに発音すると、気持ちがこもって聞こえます。
約束や集まりに行けなかったことを、後日あらためて謝るとき。
すでに起きたことへの謝罪なので、ここで Excuse me を使うと意味が通りません。時間軸が過去向きだからです。
ご面倒をおかけして申し訳ないのですが、お話があります。
I’ve got to は「アイヴガッタ」と縮めて発音されます。全体を早口にせず、bother you のあとで一息置くと聞き取りやすいです。
相手が明らかに忙しいなかで、どうしても伝えたい用件があるとき。
ここでの sorry は「相手の手を止めさせることへの心苦しさ」です。通りすがりに軽く声をかけるだけなら重すぎるので、その場合は Excuse me を選びます。
誠に申し訳ありませんが、ご招待にはお応えできません。
so を強めると気持ちの度合いが上がります。フォーマルな場では I’m afraid I can’t … に置き換えても品よく響きます。
招待や誘いを断るとき。相手の好意に応えられない心苦しさを表します。
断りの理由をひと言添えると誠実に響きます。逆に謝罪だけを何度も重ねると、かえって関係を気まずくします。
事故やトラブルの現場では扱いが変わります。英語圏では I’m sorry が「自分の過失を認めた発言」として受け取られる可能性があるため、責任の所在がまだ確定していない場面で反射的に連発するのは避けたほうが賢明です。まずは相手の安否を尋ねる Are you okay? から入る、という判断が現実的です。
謝罪をよりはっきり、あるいはカジュアルに伝える
謝意を明確かつ形式を保って伝えたいときは I apologize が使えます。書面なら Please accept my sincere apologies といった直接的な形もあります。
逆にごく親しい間柄なら My bad(僕のミスだ)というくだけた言い方も存在します。ただしこれは友人同士や気の置けない同僚のあいだで使う表現で、目上の相手や取引先、公式な場では選びません。
残念さ・同情を伝える
ここが誤訳の温床になっている用法です。謝罪ではなく、心を痛めていることの表明として使われます。
それは残念です(お気の毒に)。/お悔やみ申し上げます。
声のトーンを落とし、ゆっくり言うのが基本です。明るい調子で言うと軽く聞こえてしまいます。
相手が体調を崩した、試験に落ちた、家族を亡くしたなど、不運や悲しみを聞いたとき。
これを「ごめんなさい」と訳すと意味が壊れます。話し手はまったく謝っていません。災害についての海外からのコメント I’m sorry に謝罪の字幕が付いてしまった例が語られてきたほど、この語の輪郭はあいまいです。
申し訳ありませんが、アテネ行きの便はすべて満席です。
but の前で軽く切ると、悪い知らせを伝える前の予告として機能します。
窓口や電話で、相手の希望に沿えない事実を伝えるとき。
この sorry は満席にした責任を認めているのではなく、力になれない残念さの表明です。聞き手として謝罪だと受け取ると、話がずれます。
I’m sorry に出会ったら、謝罪なのか同情なのかを文脈で見極める習慣をつけましょう。話し手に非があるかどうかを確認すれば、たいてい判別できます。
異論を述べるときの前置き
申し訳ないですが、それは信じがたいですね。/すみませんが、あなたと同じ意見ではないようです。
きつくならないよう、声を張らず落ち着いた調子で。sorry を強調しすぎると皮肉に聞こえる場合があります。
議論の場で、相手の主張に疑問や反対を示すとき。
Excuse me, but … に置き換えることもでき、そちらのほうがより丁寧に響きます。相手が目上や取引先なら後者が無難です。
聞き返す
I’m sorry? あるいは Sorry? と語尾を上げるだけで聞き返しになります。Can you say that again? と続けなくても成立するので、とっさの場面で頼れる形です。
ここまでで謝罪系の二語は整理できました。しかし「すみません」にはもうひとつ、まったく別方向の役割が残っています。感謝としての「すみません」です。
感謝の「すみません」はSorryではなくThank you
- 恐縮を含んだお礼の「すみません」は Thank you に置き換える
- Sorry では相手の善意が空振りしてしまう
- 遅刻の場面でも Thank you for waiting を添えると印象がやわらぐ
- 「すみませんと言いたくなったら感謝で置き換えられないか考える」が指針になる
荷物を持ってもらったとき、ドアを押さえてもらったとき。日本語なら「あ、すみません」と口をついて出ますが、これを Sorry に置き換えると相手は首をかしげます。何を謝られたのか分からないからです。
ドアを押さえてくださって、ありがとうございます。
目を合わせて Thank you だけでも十分伝わります。急いでいるときは Thanks で構いません。
建物の出入り口で、後ろの人のためにドアを押さえてもらったとき。
Sorry と言うと、相手は「手間をかけさせたと思われている」と受け取り、善意が評価されません。謝罪ではなく感謝が正解です。
本当にありがとうございます。助かります。
appreciate はプリの部分に山を置きます。二文続けると丁寧さが増し、書面でも使える形になります。
手間のかかることをしてもらったとき。仕事の依頼を引き受けてもらったときにも使えます。
appreciate は「ありがたく思う」という動詞で、目的語に it を必ず置きます。I really appreciate だけでは文が終わりません。
遅れてごめんなさい。待ってくれてありがとう。
前半は控えめに、後半は明るめに。声のトーンを変えることで、二つの気持ちが伝わります。
待ち合わせに遅れて到着したとき。自分の非は認めつつ、相手の忍耐にも触れる形です。
謝罪だけを繰り返すと空気が重くなります。感謝を一文添えると、その場の緊張がほどけます。
謝るより感謝を伝えたほうが、相手の行為を正しく評価したことになり、関係も明るくなります。感謝で置き換えられないか考えるという発想は、英語で話すときの心強い指針になります。
三つの柱が見えてきたところで、その周辺にある表現の位置づけも確認しておきましょう。使い分けの地図が完成します。
Pardon me、I apologize、My bad——周辺表現の位置づけ
- Pardon me は Excuse me に近いが、やや堅い響きを持つ
- I apologize は形式的で、責任を明確に引き受ける表現
- My bad は親しい相手限定のくだけた言い方
- 丁寧さの度合いを段階で覚えると、場面ごとに選びやすくなる
Sorry と Excuse me の二本柱が立ったら、周辺表現は「丁寧さの目盛り」として整理するのが早道です。同じ謝罪でも、相手との距離と場面の重さで選ぶ語が変わります。
Pardon me は Excuse me とほぼ同じ働きをしますが、響きが少し堅めです。人の前を通るときや聞き返すときに使えますが、日常会話では Excuse me のほうが自然に感じられる場面が多いでしょう。
I apologize は、責任を明確に引き受けて謝る形式的な表現です。仕事のミスを詫びるとき、公式な場で謝罪するときに向いています。書面では Please accept my sincere apologies といったさらに丁寧な形も使われます。
My bad は「僕のミスだ」というくだけた言い方で、友人同士や気の置けない同僚のあいだで使われます。目上の相手や取引先、公式な場面では選びません。軽さがそのまま無責任さと受け取られる危険があるからです。
では、実際の場面でとっさに引ける一覧を用意しました。ここだけ保存しておけば、旅先でも困りません。
場面別・とっさの一言早見表
- 日常で出会う十の場面と、対応する英語表現を一覧化
- 呼びかけ系はほぼ Excuse me に集約される
- 感謝の場面で Sorry を使わないことが最重要
- 迷ったときはこの表に立ち返れば判断できる
日本語の「すみません」を左に、対応する英語を右に並べました。呼びかけ系はほぼ Excuse me に集約されるという点に注目してください。
| 日本語の「すみません」 | 英語 | 補足 |
|---|---|---|
| 知らない人に話しかける | Excuse me. | 呼びかけの基本形 |
| 人の前を通る | Excuse me. / Excuse us. | 複数人なら us |
| 軽くぶつかった | Excuse me. / Sorry about that. | 深刻でない接触 |
| 自分の明確なミスを謝る | I’m sorry. / I apologize. | 責任を認める場面 |
| 相手の不運に同情する | I’m sorry to hear that. | 謝罪ではない |
| 聞き取れなかった | Sorry? / Could you say that again? | Pardon? は堅い |
| 反論の前置き | I’m sorry, but … / Excuse me, but … | 後者がより丁寧 |
| 席を外す | Excuse me for a moment. | 中座の合図 |
| お礼としての恐縮 | Thank you. | Sorry は不自然 |
| 店員を呼ぶ | Excuse me. | 手を軽く挙げて |
| 話に割り込む | Sorry to interrupt, but … | 行為を言葉にする |
| 返信が遅れた(書面) | Please excuse my late reply. | 動詞としての excuse |
表を見て納得しても、実際の場面で口が動かなければ意味がありません。じつは多くの学習者がここでつまずいています。その理由は、意外にも発音にあります。
知っているのに使われない言いまわし——発音の壁を越える
- Excuse me が使われないのは知識不足ではなく、言いにくさが原因
- 実際の音は文字面ほど長くない
- 前半に強く息を入れ、後半を軽く流すと一拍で出せる
- 先に Excuse me だけを投げる二段構えが実戦で効く
Excuse me も Pardon me も、知識としては多くの人が知っています。言い換え問題にも登場します。それでも実際の会話で使う人が少ないのは、ひとつには発音のしにくさがあるでしょう。カタカナで書いてみると差は明らかです。
Sorry は「ソーリー」。対して Excuse me は「エクスキューズ ミー」、Pardon me は「パルドン ミー」。音の数が倍以上に増えます。とっさの場面で口が動くのは、どうしても短いほうです。
ただ、実際の会話での Excuse me は文字面ほど長くありません。前半に強く息を入れて後半を軽く流す「イクスキューズミー」に近い音になり、慣れると一拍で出せます。
三段階の発音練習
声かけの場面では、Excuse me の一語だけを先に投げて、相手が振り向いてから本題に入る二段構えにするのがおすすめです。一文をまるごと組み立てる必要がなくなるので、心理的な負担がかなり軽くなります。
言いやすさに引きずられて Sorry ばかり使っていては、自分の意思は正しく届きません。「すみません」が今どの役割で口から出ようとしているのかを一瞬だけ確かめる。それだけで選択の精度は変わります。
ところで、なぜ英語話者はそこまで Sorry を慎重に扱うのでしょうか。その背景には文化があります。
Sorryをめったに言わないアメリカ人と、英語圏の温度差
- 訴訟の多い社会では、非を認める含みを持つ言葉が慎重に扱われる
- 事故現場で最初に口にするのは謝罪ではなく安否の確認
- イギリスやカナダでは Sorry が社交的なあいづちとして頻繁に使われる
- 同じ英語でも地域による温度差がある
日本人が Sorry を連発する一方で、アメリカでは、よほどのことがない限り Sorry を口にしない傾向が指摘されます。先のロッカーの場面で、相手をアメリカの生徒に設定したのはそのためです。
背景には社会のあり方があります。アメリカは他国に比べて、物事を裁判で決着させることが多い社会です。
過去には、濡れた猫を電子レンジで乾かして猫が死んでしまったのは「生き物を入れるなと説明書に書いていなかったせいだ」として、メーカーを相手に訴訟を起こし多額の賠償金を得たという話が語られてきました。真偽をめぐる議論はあるものの、この逸話が長く語り継がれてきたこと自体が、その社会の空気をよく示しています。
「自分が悪い」という姿勢がわずかでも見えると、後々どう使われるか分からない。だからこそ、非を認める含みを持つ Sorry は慎重に扱われます。追突事故の現場でも、まず口にするのは謝罪ではなくAre you okay? です。
ちなみにこれは英語圏全体に共通するわけではありません。イギリスやカナダでは Sorry が日本語の「すみません」に近い社交的なあいづちとして頻繁に使われ、すれ違いや小さな行き違いのたびに飛び交います。ぶつかりそうになった双方が同時に Sorry と言う光景も珍しくありません。
同じ英語でも地域によって温度差があるという点は、頭の片隅に置いておくと役に立ちます。ただし迷ったときは、呼びかけを Excuse me にしておけばどの地域でも失礼になりません。
文化の背景が分かったところで、実際の会話でつまずきやすいパターンを洗い出しておきましょう。自分の癖に当てはまるものがあれば、それが最初に直すべき点です。
つまずきやすい誤用パターンと言い換え
- 呼びかけを I’m sorry で始めるのが最も多い誤用
- お礼を Sorry で済ませると相手の善意が空振りする
- 謝る必要のない場面での謝罪は、自信のなさとして受け取られやすい
- 謝罪の連発は誠実さではなく頼りなさに見えることがある
ここからは、実際の会話で起こりやすい六つのパターンと、その言い換えを並べます。心当たりのあるものから順に直していくのが効率的です。
誤:Sorry, can I ask a question?正:Could I ask a question? / May I ask something?質問や依頼のたびに謝ると、自信のない人という印象を与えます。
仕事の場で謝罪を重ねすぎると、誠実さよりも「この人に任せて大丈夫か」という不安を相手に与えることがあります。謝罪は一度、そのあとは何をどう直すかを具体的に示す。この順序を守るだけで、同じ状況でも受け取られ方が変わります。
理屈が分かっても、口が動くかどうかは別問題です。次に、身体に落とし込むための具体的な手順を用意しました。
七日間で使い分けを身体に定着させるプラン
- 日本語の「すみません」を分類する習慣が英語への切り替え回路を育てる
- 耳から真似ることで、語尾の上げ下げの違いが体感として残る
- 一日十分程度の短い練習を七日続ける形で組んでいる
- 最後は実際の相手に向かって使い、反応を確かめる段階に進む
鍛える方向はふたつあります。ひとつは、自分が日本語で「すみません」と言った瞬間を意識的に拾うこと。今のは呼びかけか、謝罪か、お礼か。日常のなかで分類する癖をつけておくと、英語に切り替える回路が育ちます。
もうひとつは、耳から真似ること。Excuse me? は語尾の上げ方ひとつで、丁寧な聞き返しにも詰問にもなります。映画やドラマの中で誰がどんな声色で言っているかを観察し、少し大げさなくらいに真似てみるのが近道です。恥ずかしいほど誇張して発音すると、違いが体感として残ります。
この二方向を、一日十分程度で回せる形に組んだのが次の七日間プランです。
文化を学び、単語を選ぶという発想
- 対応する一語を探すより、伝えたい中身を分解して組み直すほうが確実
- 「よろしくお願いします」「お疲れさま」なども同じ構造の課題を抱えている
- 何を失礼と感じるかは文化によって線引きが違う
- 単語帳だけでは埋まらない領域があると知ることが出発点になる
Sorry はひとつの例にすぎません。日本語の発想をそのまま英単語に置き換えると意味がずれる語は、ほかにもたくさんあります。「よろしくお願いします」「お疲れさま」「もったいない」なども、対応する一語を探すより、その場で何を伝えたいのかを分解して英語に組み直すほうが確実です。
たとえば初対面での「よろしくお願いします」は、状況によって Nice to meet you にも I’m looking forward to working with you にもなります。日本語では同じ音でも、英語では中身を言葉にする必要があるからです。
自分の気持ちを英語で説明するときには、相手の国の文化を知る必要があります。何を失礼と感じ、どこに責任の線を引き、どういう言葉に安心するのか。これは単語帳や文法書だけでは埋まらない領域で、実際のやり取りや映画、ニュース、読み物といった多様な入口から少しずつ知識を積み上げていくしかありません。
「すみません」という一語の裏側をのぞくだけでも、言葉と文化がどれだけ深く結びついているかが見えてきます。次に口から「すみません」が出そうになったら、ほんの一瞬だけ立ち止まってみてください。その一瞬が、伝わる英語との分かれ道になります。
最後に、学習を進めるなかでよく出てくる疑問をまとめておきます。気になる項目から目を通してください。
よくある質問(FAQ)
まとめ:使い分けの要点を振り返る
- 「すみません」に対応する英語の一語は存在しない
- 時間軸と非の所在という二軸で振り分ける
- 呼びかけは Excuse me、責任ある謝罪は I’m sorry、お礼は Thank you
- 発音練習と分類の習慣で、口が動くところまで持っていく
この記事で押さえてきたことは、突き詰めればひとつです。「すみません」を訳さない。訳そうとするから迷いが生まれるのであって、役割ごとに振り分けると決めた瞬間から、判断は驚くほど軽くなります。
判断の軸は二本だけでした。その迷惑はもう起きたか、これから起きるか。そして、自分に落ち度があるか、ないか。未来向きで落ち度なしなら Excuse me、過去向きで落ち度ありなら I’m sorry。お礼の気持ちが混じっているなら Thank you。
あとは口が動くかどうかの問題です。Excuse me を Sorry と同じ速さで言えるようになれば、とっさの場面でも正しいほうが先に出ます。三段階の発音練習と、日本語の「すみません」を分類する習慣。この二つを続けるだけで、選択の精度は着実に上がっていきます。
言葉の裏側には、その言葉を使う人たちの感じ方があります。何を失礼と思い、どこに責任の線を引くのか。「すみません」ひとつを掘り下げただけでも、そのことが見えてきました。ここで得た視点は、これから出会う他の表現にもきっと役立ちます。
それではまた、See you!

