アメリカ社会のお墓との付き合い方

  1. 会話で学ぶ英語表現

日本人はお盆やお彼岸や年末など、ご先祖のお墓参りをしますが、海外ではどのようにご先祖様と接しているのでしょうか。

アメリカ社会のお墓との付き合い方を紐解きながら、関連する英語表現を学びましょう。

アメリカ社会のお墓との付き合い方

お墓は英語で「Grave」

一般的なお墓は、英語で Grave です。意味を調べると「死体を埋めるための穴」と出てくる場合もあり、土葬を連想させますが、日本のように火葬してから骨だけを埋葬するようなお墓に対しても Grave が使われます。

I went to visit my grandfather’s grave.

私は、おじいちゃんのお墓へ行きました。

We dug a grave for our pet hamster.

亡くなったペットのハムスターのためにお墓を掘りました。

英語の辞書では、どのような説明がなされているのか見てみましょう。

Grave(ɡreɪv)

A place in the ground where a dead body is buried

A plot of ground, or the hole dug in it, in which a dead person is buried

引用:Cambridge English Dictionary

死体が埋葬されている地面の場所

死者が埋葬される地面の区画、またはそこに掘られた穴

宗教上の考え方や地域によって、死者の埋葬方法は異なります。Grave は宗教や埋葬方法などを限定せず、広く一般的な「墓」という意味を持った言葉であることがわかります。

類語として覚えておきたいのが「Gravesite」です。Grave(墓)と Site(敷地)が組み合わさった単語で、墓地や墓所という意味になります。

Grave が1つの墓石や1つのお墓を意味していたのに対して、Gravesite はお墓のあるエリア全体を指す単語です。

スラング的な意味として、“誰からもアクセスされなくなったインターネットサイト”というニュアンスで使われることもあります。

When was the last time I went to gravesite?

最後に墓地へ行ったのはいつだったかな?

If you do not refresh its content regularly, it will be gravesite.

定期的に新しいコンテンツを出していないと、墓場サイトになってしまいますよ。

ジェット気流の跡が見える晴天の下にある、ギザの大スフィンクスとピラミッドの画像。スフィンクスは前景にあり、ピラミッドは背景に大きくそびえ立っています。観光客向けに、英語の説明板があちこちに設置されています。

他にもある「お墓」の言い方

お墓を表現する英単語は他にもいくつかあります。Grave との違いや、それぞれの単語が持つニュアンスをおさらいしましょう。

Tomb(発音記号:túːm

こちらも「墓」と訳される単語ですが、ニュアンスを含めて考えると「墳墓」や「遺跡」と訳してもよいでしょう。現代ではあまり使われない、若干の古めかしさをイメージさせる言葉で、皇族や王族の墓という印象も与えます。

「一般人の埋葬されているお墓」というニュアンスで使われることはほとんどありません。

Tutankhamen’s tomb

ツタンカーメンのお墓

The pyramids of Egypt are actually massive tombs.

エジプトのピラミッドは巨大なお墓です。

The ancient tomb has been completely plundered.

古墳はすっかり荒らされていた。

Tomb にはもう一つ「墓標」という意味もあります。こちらの意で使う時には、高貴な人物のお墓と言うニュアンスは含みません。

My grandfather’s name is engraved on this tomb.

この墓標には、おじいちゃんの名前が刻まれています。

He broke down in tears when he saw the tomb.

彼は墓標を見て泣き崩れました。

Cemetery(発音記号:sémətèri

こちらも墓を意味する単語ですが、共同墓地や霊園とも訳されます。「複数の墓が集まる場所」といったニュアンスを含み、公共の埋葬施設や特定の宗教団体が管理するエリアのことです。

宗教団体ではありますが、教会墓地のことは Cemetery とはいいません。

The family decided to bury their pet in the pet cemetery near their hometown.

その家族は、故郷の近くのペット用霊園にペットを埋葬すると決めました。

Her body was laid away in that cemetery.

彼女の身体は、その共同墓地に埋葬された。

There is his grave in Aoyama cemetery.

青山霊園に、彼のお墓があります。

Mausoleum(発音記号:m`ɔːsəlíːəm

複数ある「墓」を意味する単語の中でも、Tomb と近い意味を持ちます。一般的な個人の埋葬には使われず、歴史的な背景や碑文、彫刻、彫像などの装飾要素のある大きな墓や壮麗な墓を指します。

日本語では御霊屋(みたまや)・御陵 (ごりょう) と訳してもよいでしょう。

Tomb との違いは規模で、Mausoleum の方が大きく壮大な印象を与えます。

The Imperial mausoleum

歴代天皇の御陵

The main mausoleum is just like a beautiful palace.

メインとなる霊廟は、美しい宮殿のようです。

イギリスの墓地で、男性が花束を持って墓の前でひざまずいている。

日本のお墓とアメリカのお墓の違い

アメリカと日本では、お墓の仕様や墓地の雰囲気はもちろん、お墓に対する考え方に大きな違いがあります。

これには宗教的な要因も大きく関係しており、キリスト教の信仰者が多いアメリカと仏教徒や無宗教者の多い日本とでは、宗教ごとの死に対する考え方や捉え方が異なり、お墓事情にも影響を与えているからです。

アメリカでは「個人墓」が主流で、1人に1つのお墓を建てる仕様で、日本で主流となっている、先祖代々同じ墓に入り続ける「家族墓」は、アメリカでは非常に珍しいものとなっています。

アメリカでは、霊園を“神に感謝する場所”と考える傾向にあり、草花が咲き明るい雰囲気が特徴です。公園のような開放的なエリアで、地域によっては観光名所になっている霊園もあります。

日本では、墓地や霊園と聞くと「オバケが出る」「薄暗くて怖い場所」といったイメージが強いですが、これは日本のテレビアニメやホラー映画による影響で、世界的にはお墓=怖いというイメージはありません。

夜の墓地や霊園を肝試しと称して探検する人もいますが、死者の眠る神聖な場所でふざけた行為をするのは言語道断!と捉えられてしまうケースもあるので、話題としては注意が必要です。

関連語句

  • Holy / Sacred 神聖な
  • A holy place 神聖な場所
  • A sacred day 神聖な日
  • Ghost おばけ
  • Haunted place / Ghostly place 心霊スポット
  • Test your courage 度胸試し

会話

ブライアンが最近お墓に行ったのはいつでしょうか。ケイ(Kei)とブライアン(Brian)の会話をみてみましょう。

Kei:There are many graves in a church yard. Where is your ancestor’s grave, Brian?

教会のお庭にはたくさんのお墓があるね。君の先祖のお墓はどこにあるの、ブライアン?

Brian:My ancestor’s grave is in Kansas. My grandfather was from Kansas. I visit Kansas often, but I hardly go to the graves.

僕の先祖のお墓はカンザスにあるよ。僕のおじいちゃんはカンザス出身なんだ。カンザスにはよく行くけど、お墓にはほとんど行かないよ。

Kei:You don’t visit the graves?

お墓参りしないの?

Brian:There is no custom of visiting the ancestor’s grave, for us.  Last time I went there was about two years ago. 

僕たちはお墓参りをする習慣がないんだよ。最後に僕がそこにいったのは、だいたい2年前かな。

My dad had a call from my uncle because my grandmother passed away.

おばあちゃんが亡くなったんだよ、っておじさんがお父さんに電話をくれたんだ。

Kei:I’m sorry to remind you the sad memory.

悲しい記憶を思い出させてしまってごめんなさい。

Brian:It’s all right. I think she lived her life happily. Her face was laughing.

大丈夫だよ。彼女は幸せに人生を送ったと思うよ。彼女の顔は笑っていたんだ。

We go to Kansas to see our family, but we do not go Kansas for visiting our grave.

僕たちは家族に会いにカンザスには行くけど、お墓参りをする為にカンザスには行かないよ。

Kei:The way of thinking about the grave is different from Japanese.

お墓についての考え方が日本人とは違うんだね。

ブライアンが最後にお墓に行ったのは、約2年前におばあちゃんが亡くなった時でした。お墓に対する考え方で、日本人とアメリカ人に違いがあるようですね。

ポイント

会話に出てきた単語や表現をおさらいしましょう。

Ancestor’s grave 先祖(代々の)お墓

Ancestor は「先祖」を意味する単語です。今回の会話文のように、Ancestor’s として先祖達→先祖代々と表現しても良いですし、ancestral で先祖伝来の(先祖代々の)を表現してもよいでしょう。

例)I want to know about my ancestors. 私は、ご先祖のことについて知りたい。

例)The ancestral graves is located in Yamanashi Prefecture. 私の先祖のお墓は山梨県にあります。

I hardly go ほとんど行かない

Hardly は「ほとんど~ない」という意味の副詞で、Almost not Rarely と置き換えることもできます。程度の話でも回数の話でも、どちらの場合にも使える非常に便利な表現で、ネイティブの会話にも頻繁に出てきますので必ず覚えておきましょう。

例)I’m hardly hungry. 私はほとんどお腹がすいてない。

例)I hardly go shopping on weekdays. 平日に買い物へ行くことはほとんどありません。

Custom 習慣

習慣はこのほかにも Habit という言い方もあり、こちらは癖や個人の好みに対してよく使われます。一方で、Custom は形式的な習慣に使われます。今回はブライアンの家族でのお墓参りに対する習慣、でしたので Custom を使用しています。

Passed away 亡くなる

死ぬことは直訳すると Die ですが、あまりにも直接的すぎるため会話で使うのには注意が必要です。Pass away の方がオブラートに包んだような控えめな表現となり、柔らかく丁寧な印象を与えます。

例)Her grandmother passed away 3 days ago. 彼女のおばあちゃんは、3日前に亡くなった。

例)The father of my friend passed away last night. 友達のお父さんが昨夜亡くなりました。

I’m sorry to remind you the sad memory. 悲しい記憶を思い出させてしまってごめんなさい。

一般的によく使用されるのは、” I’m sorry to hear that”(それはお気の毒です)ですが、今回は2年前と比較的過去の話なのでこのような表現にしています。

The way of thinking 考え方

墓地にある生花の花束が置かれた墓石。その下に英語の碑文が刻まれている。背景には他の墓石が見える。

先祖を大切にする気持ちは共通

どのような宗派であっても、先祖を敬う敬意は存在しています。日本人がお盆やお彼岸にお墓参りをすること、もちろんこれも仏教からきていますね。

日本人は無宗教者が多いといわれており、信仰とはあまり縁がないと考えられていますが、日常に仏教の教えが溶け込んでいるのも事実です。

仏教では、お盆には亡くなった先祖の魂が一時的に帰ってくると考えているため、お墓参りや家族が集まって仏壇に手を合わせるなどし、先祖への感謝と現世の安寧を祈る行事として定着しています。

また、年末年始や命日など1年の節目となるタイミングや家族が集まった時などにもお墓参りをして、墓石を洗ったりお花や個人の好きだったものを備えるの風習です。

【お墓参りの風習がないアメリカ】

先ほどの会話文にもあった通り、アメリカではこのような「お墓参り」という風習はありません。行きたいと思った人が行くというスタンスです。

定期的に行かないからといって薄情者だと思われることもありませんし、頻繁に手入れをしないといけないという義務感もありません。

家族総出で墓石の手入れをする一大イベントというよりは、お花を片手にフラッと話をしにいくといった感じのカジュアルなイメージです。

また、日本では仏壇を家に置き、毎日お線香をあげて手を合わせるという家もあります。近年では、仏壇のある家も少なくなってきましたが、「祖父母の家へ行ったらまずは仏さまに挨拶を」という環境で育ってきた人も多いでしょう。

仏教ではないアメリカには、もちろん「仏壇」という概念はありません。遺骨や遺灰を家に置いておくという人も稀で、あったとしても写真を飾る程度でしょう。

ご先祖様を丁寧に供養する文化が根付いている日本人からすると、少々寂しさを感じるかもしれませんが、これは宗教的な死後の価値観などによるもので、ちゃんと故人への想いはあります。

キリスト教の信仰では亡くなると天国行きが決まっているので、生きている人に供養してもらう必要はないと考えるのです。

日本の葬儀で、黒いスーツを着た人が花で飾られた棺のそばで白いバラを持っています。

お墓や埋葬に関する英単語と例文

Memorial service 供養・法要

故人を想うイベントというニュアンスで訳されることも多い単語ですが、「供養」や「法要」に近い意味合いを持ちます。葬儀や埋葬が終わった後に行われるという点がポイントです。

日本の供養に関する行事でいうと、お盆・法事・一周忌・四十九日などを英語で説明するときには、Buddhist(仏教の)を付けて「Buddhist memorial service」と表現すると意味がスムーズに伝わります。

例)There is a Buddhist memorial service today. その日は法事があります。

例)Memorial service held on the forty-ninth day following a person’s death. 死後49日目に行う法要です。

Offer お供えする

“お供え”という言葉は英語にありませんので、お墓に置く・何かを差し出すというニュアンスで考えた時に最適なのが Offer です。実際、お墓に何かを置くときは Place an offering がよく使われます。

Give Put を使って表現する人もいますが、Give には「自分の持っているものを差し出す」というニュアンスがあり、故人を想って用意したお供え物であれば、相手の気持ちを考えたというニュアンスが含まれる Offer の方が適切です。

また Put は、単に「置く」という意味ですので、故人に捧げるという相手を想う心使いが伝わりません。

例)I will offer flowers. お花を供えようと思います。

例)Are you going to place offerings? 何かお供えしますか?

Bury 埋葬する、葬る

Bury は、埋めるや覆うという意味の動詞です。埋葬以外にも、幅広いシーンで使える単語なので覚えておきましょう。

例)Where is her body buried? 彼女の遺体はどこに埋葬されていますか?

例)His burial will be held after the funeral at ABC Cemetery. 彼は、葬儀の後でABC墓地に埋葬されます。

Funeral 葬式

家、葬儀場、教会などで行わる故人を忍ぶセレモニーのことで、宗教的なリーダー(牧師、神父など)や家族、親しい人がスピーチを行います。葬式の雰囲気や内容は日本とは大きく異なりますが、「葬式」を英語にするのであれば Funeral が最適でしょう。

例)The funeral ended yesterday. 昨日、葬式が終わりました。

例)That was a very good funeral. とても素敵な葬式でした。

例)To attend a funeral 葬式に参列する

まとめ

宗教による考え方の違いだけでなく、親族やお墓に対する尊敬の意識が薄れてきているのも、日本だけではなく、近代化した各国で見られる傾向です。

様々な考え方があるなかでも、今の自分があることがこれまで頑張ってきた先祖の人々のおかげ、であることを忘れないようにするのが大切ではないでしょうか。

それではまた、See you!

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