閉店間際のパン棚に残った食パン、値引きシールが貼られたままの菓子パン、サンドイッチ工場で切り落とされたパンの耳。まだ食べられるのに「翌日にまわせない」という理由だけで捨てられていきます。

その光景に引っかかりを感じたことがある方は多いはずです。そして海外ニュースで「廃棄パンから造られたビール」という話題を見かけて、どういう仕組みなのか、英語でどう説明すればいいのか気になった方もいるでしょう。

この記事を読み終えると、トーストエールという取り組みの中身、パンがビールに変わる工程、パンとビールが古代からつながっている理由、そして「食品廃棄」「発酵」「余剰パン」を英語で言い表すための語彙とフレーズが、そのまま口に出せる状態で手に入ります。会話例には日本人学習者がつまずきやすい誤用も含めてあり、正しい言い直し方まで確認できます。読み終えた日の夜、パブでも居酒屋でも、この話題ひとつで会話をつなげられるようになります。

食や環境の話題は、雑談から一歩踏み込んだ会話に発展しやすい素材です。発音や語順まで含めて練習したい方は、英語教室のような対話の場で試してみると定着が早くなります。まずは全体像から見ていきましょう。

小規模醸造所の作業台に積まれた売れ残りの食パンとパンの耳、大麦麦芽、ホップ、そして琥珀色のエールのグラスと背後の発酵タンク
余ったパンが麦芽の一部を置き換え、一杯のビールになる

トーストエールとは何か、3分でつかむ全体像

この章の要点
  • トーストエールは、廃棄予定のパンで麦芽の一部を置き換えて造るビール
  • ロンドンのブルワリーTOASTが広め、レシピを公開して各国に手法が渡った
  • ブランド名は「パン」と「乾杯」の二重の意味を持つ
  • 英語で語るなら bread、surplus、food waste、upcycle の4語が軸になる

トーストエールとは、行き場を失ったパンを原料の一部に使って醸造されたビールのことです。特殊な添加物を入れるわけではなく、通常なら大麦麦芽だけで用意する糖の材料を、パンで一部代替するという設計です。

なぜそれが成立するのか。理由はシンプルで、パンがすでに小麦から作られた「デンプンの塊」だからです。ビール造りは穀物のデンプンを糖に変え、その糖を酵母がアルコールと炭酸ガスに変えるという流れで進みます。パンは糖化の材料として十分に機能するため、麦芽の代わりを務められるのです。

具体的な担い手として知られているのが、ロンドンで立ち上がったブルワリーのTOASTです。食品廃棄の削減に取り組んできた活動家トリスタン・スチュアート氏が中心となり、パンの廃棄量が多くビール消費も大きいイギリスで事業化しました。ブランド名の「TOAST」は、素材そのものであるトーストを指すと同時に、英語で乾杯を意味する言葉でもあります。

つまりトーストエールは、廃棄パンを減らす仕組みであり、乾杯という日常の行為に問題提起を混ぜ込んだ商品でもあります。では、そもそもパンはなぜそれほど大量に捨てられるのでしょうか。前提となる数字から確認していきます。

日本とイギリス、捨てられるパンの現実

この章の要点
  • パンは日持ちせず、品切れを恐れて多めに焼く構造が余剰を生む
  • 売れ残りと、製造工程で出る端材(パンの耳)の二方向から廃棄が発生
  • 2015年時点の調査では、イギリスで生産されたパンの約44%が廃棄されていたとされる
  • イギリスには食べ残しの持ち帰り習慣が根付いておらず、皿の残りは廃棄に回る

パンが廃棄の上位に来る最大の理由は、日持ちのしなさです。無添加のものなら当日か翌日が限界で、袋詰めの食パンでも消費期限は数日しかありません。

加えて、焼き上がりの香りと棚の見栄えが売れ行きを左右します。棚が空いていれば売る機会を逃す。だから店側は多めに焼き、多めに仕入れる。この品切れを避けるための過剰生産が、構造的な余剰を生みます。

もう一方の入口が、製造工程で出る端材です。サンドイッチ工場では耳の部分が大量に発生し、それだけで巨大なコンテナが埋まっていきます。イングランド北部ヨークシャーの醸造所では、サンドイッチ工場から届いたパンの耳をステンレスタンクに投入する光景が日常になっているという報道もあります。

イギリスでは焼かれたパンの多くが行き場を失う

TOASTが問題視したのは、この構造の規模です。2015年時点の調査では、イギリスで生産されたパンのうち約44%が廃棄されていたとされます。焼かれたパンの3分の1は消費者の手に届くことなく処理場へ直行するという指摘もあり、パン屋が閉店時に抱える残り物は、フードバンクが回収して配りきれる量をはるかに超えています。

食品廃棄全体では、イギリスは2019年に約950万トンを記録し、そのうちレストランを含む外食産業由来が約50万トンでした。注文1品あたりに換算すると130円前後の損失を店が被っている計算になります。

「How To Run A Pub」の調査では、注文した料理を食べきれずに残す客が27%以上いるとされ、残される定番はジャガイモやサラダといった副菜です。アメリカのように食べ残しを容器で持ち帰る習慣がイギリスには根付いていないため、皿の上の残りはそのまま廃棄へ回ります。専門家からは、持ち帰りの推奨、副菜の選択肢を増やすこと、軽めのポーションを用意すること、注文時にサイズを指定できるようにすることなどが提案されています。

一方で、レストラン業界のリサイクル率は他業種より進んでおり、食品廃棄量の半分以上が何らかの形で再利用されているという数字もあります。廃棄を出さない工夫と、出てしまったものを別の価値に変える工夫が、並行して走っている状況です。

日本の状況と重ねて考える

日本でも、コンビニやスーパー、小売店の売れ残りを中心に食品廃棄が積み上がっています。値引き、予約販売、寄付といった手段が広がってきましたが、それでも完全には解消されません。パンという商品特性が、どの国でも同じ課題を作っているわけです。

この共通点は、英語で話すときの入口としても使えます。「日本でも同じ問題があります」と一言添えるだけで、相手の関心が一気に高まります。次章では、余ったパンが実際にどうやってビールへ変わるのか、工程を順番に追っていきます。

廃棄パンがビールに変わるまでの工程

この章の要点
  • 回収→保管→粉砕→糖化(マッシング)→煮沸→冷却→発酵という流れ
  • 本来使う麦芽の一部をパンで置き換える設計がポイント
  • 麦芽を減らせる分、土地・水・肥料・製麦の熱エネルギーも削減できる
  • TOASTは2019年に食パン85万1388枚を再利用したと公表している

工程に特別な魔法はありません。ベーカリーやスーパー、サンドイッチ工場から集めたパンを受け入れ、冷凍などで保管します。醸造日にはパンを細かく砕き、水と大麦麦芽を加えて混ぜ、糖化させます。

この糖化工程がマッシング(mashing)です。デンプンが酵素の働きで糖に変わる段階を指します。得られた麦汁をホップとともに煮込み、冷却してから酵母を加えて発酵させる。ここから先は通常のビール造りと同じ道筋をたどります。

木のテーブルに並んだ食パンのスライスとパンの耳、大麦麦芽、生のホップ、乾燥酵母、琥珀色の麦汁が入ったビーカー
パン、麦芽、ホップ、酵母、麦汁。トーストエールの登場人物はこの5つ

麦芽を減らせることの意味

重要なのは、本来使う麦芽の一部をパンで置き換えるという設計です。麦芽の使用量が減るということは、大麦を育てるための土地、水、肥料、そして製麦にかかる熱エネルギーを削減できるということでもあります。

つまり廃棄物を減らしつつ上流の資源消費も抑えるという二段構えの効果があります。ごみ処理施設までパンを運ぶトラックのCO2排出も、その分だけ発生しなくなります。

規模の実感としては、TOASTが2019年に食パン85万1388枚を再利用して醸造したと公表している数字が分かりやすいでしょう。積み上げるとエベレストの約1.2倍の高さになる量です。

工程を英語で説明してみる

フレーズ
They replace part of the malted barley with surplus bread.
日本語訳
大麦麦芽の一部を、余ったパンで置き換えているんです。
使う場面
「どうやってパンがビールになるの?」と聞かれたときの最初の答えとして。工程の核心を一文で伝えられます。
注意点・誤用例
replace A with B の語順が肝です。replace A to B とは言いません。また「全部パンにする」という誤解を避けるため part of を入れておくと正確になります。
発音・ニュアンス
surplus は「サープラス」で第1音節に強勢。malted barley は「モールティッド・バーリィ」。replace の l を落とさず、re-PLACE と後半を強く出すと通じやすくなります。
フレーズ
The bread is crushed, mixed with hot water, and the starch turns into sugar.
日本語訳
パンは砕かれて湯と混ぜられ、デンプンが糖に変わります。
使う場面
工程を一歩踏み込んで説明するとき。相手が「それで味は大丈夫なの?」と乗ってきやすい話し方です。
注意点・誤用例
turn into は「別のものに変わる」。turn to sugar とすると不自然に響きます。starch と sugar はどちらも不可算扱いで、a を付けません。
発音・ニュアンス
starch は「スターチ」で語末の ch をはっきり。crushed は「クラッシュト」と語尾を無声で軽く止めます。

工程が見えたところで、この取り組みが単なる商品開発と違う点に触れておきます。カギは、稼いだお金の使い道です。

収益の使い道と、世界へ広がった理由

この章の要点
  • 販売収益を食料廃棄削減に取り組むNPO「Feedback」へ寄付する設計
  • レシピを公開し、他の醸造所が同じ手法を使うことを歓迎している
  • 手法はアメリカ、アイスランド、南アフリカなどへ渡った
  • 掲げるゴールは「自分たちのビールが不要になること」

TOASTはビールの販売で得た収益を、世界各地で食料廃棄の削減に取り組むNPO「Feedback」に寄付する設計を採っています。ビールを飲むこと自体が廃棄削減の資金になる。飲み手にとっては、罪悪感のない一杯というより参加型の一杯になります。

創業者が掲げた目標は、自社の売上を伸ばすことではなく「廃棄パンからビールを造る」という考え方を世界に浸透させることでした。だからレシピを公開し、他の醸造所が同じ手法を採用することを歓迎しています。

実際に手法はアメリカ、アイスランド、南アフリカなどへ渡り、各地で同種のビールが生まれました。彼らの理想は、自分たちのビールが「不要になる」こと、つまりパンが余らない食料システムが実現することだという、逆説的なゴール設定になっています。

フレーズ
Their profits go to a charity that works on food waste.
日本語訳
その利益は、食品廃棄に取り組む団体へ寄付されています。
使う場面
「ただの話題作りでは?」と言われたときの返し。仕組みの真剣さを一言で伝えられます。
注意点・誤用例
go to で「〜に回る」。donate を使うなら They donate their profits to… と to が必要です。donate a charity とは言いません。
発音・ニュアンス
charity は「チャリティ」で第1音節に強勢。profits は「プロフィッツ」。イギリス英語では charity が非営利団体全般を指す日常語として広く使われます。

背景が分かったところで、この話題を実際の会話でどう扱うかに移ります。職場の同僚とのやりとりを想定した会話例を見ていきましょう。

英会話で使う「トーストエール」— 会話例と訳

この章の要点
  • 好きなビールの種類を聞く質問から自然に話題へ入れる
  • Have you ever heard of …? が話題導入の定型
  • 「どんな味?」「どこで買える?」まで用意すると会話が続く
  • 誘いの表現 Why don’t we …? で締めると次の予定につながる

以下は、英語話者の同僚と学習者が交わす会話の一例です。役割ごとに読み分けながら、声に出して追ってみてください。

ロンドンのパブのカウンターでエールのグラスを手に会話する日本人学習者とイギリス人の同僚
仕事あがりの一杯は、食と環境の話題を切り出す絶好の場面
同僚
What kinds of beer do you like?
どんな種類のビールが好きですか。
学習者
I like lager the best. But I had a chance to try ale in London, and it was really nice too.
ラガーが一番好きです。でもロンドンでエールを飲む機会があって、それもとても良かったです。
同僚
Then let me recommend one. Have you ever heard of “toast ale”?
それなら一つおすすめさせてください。「トーストエール」って聞いたことありますか。
学習者
Toast ale? I’ve never heard of that. Is it made from bread?
トーストエール?聞いたことがありません。パンから造られているのですか。
同僚
Yes, it is. In ancient times, beer was known as “liquid bread.” Bread and beer are closely connected.
そうです。古代にはビールは「液体のパン」と呼ばれていました。パンとビールは密接につながっているんです。
学習者
I can’t really imagine the connection between them.
その関係がうまく想像できません。
同僚
Both are made from grain and both are fermented. And this beer also helps reduce food waste.
どちらも穀物から造られ、どちらも発酵しています。しかもこのビールは食品廃棄の削減にも役立っています。
学習者
I see. So it cuts down on bread that would otherwise be thrown away. Now I wonder how it tastes. Is it sold at supermarkets?
なるほど。捨てられていたはずのパンを減らしているのですね。どんな味なのか気になります。スーパーで売っていますか。
同僚
Some supermarkets carry it. But why don’t we go to a pub with the team after work?
扱っているスーパーもありますよ。でも仕事のあと、チームでパブに行きませんか。
学習者
That’s a good idea!
それはいい考えですね。

この会話の骨格は、好みを聞く→話題を投げる→仕組みを説明する→誘うという4段です。トーストエールの部分を別の話題に差し替えても、そのまま流用できる型になっています。

ところで、この会話にはもとの教材で学習者がつまずきやすい形も含まれています。次に、そこを一つずつ直していきます。

学習者がつまずきやすい表現を言い直す

この章の要点
  • 素材は made from、作り手は made by、形が残るなら made of
  • 存在を知っているかは hear of、内容を聞いたかは hear about
  • introduce には to、be called には as を付けない
  • 「売っていますか」は Is it sold at …? / Do they carry it?

誤りやすい箇所を先に押さえておくと、自分が話すときの精度が上がります。理由は単純で、間違いのパターンは限られており、そのほとんどが前置詞と語順に集中しているからです。

made from と made by と made of

原材料が形を変えて別のものになる場合は from を使います。パンからビールになるなら It’s made from bread.、小麦からパンになるなら Bread is made from wheat. です。

by は作った主体を表します。made by a London brewery(ロンドンの醸造所によって造られた)が正しい使い方で、素材に by を当てると意味がずれます。素材の形がそのまま残っている場合は made of wood のように of を使う、という整理も一緒に覚えておくと便利です。

注意点

I think it made by bread, isn’t it? は二重に崩れています。受動態の be が抜けており、素材に by が使われています。正しくは I think it’s made from bread, isn’t it? です。原料を語る場面で by を選ぶと「パンが造った」と読まれ、相手が一瞬止まってしまいます。

hear of と hear about

存在を知っているかを尋ねるときは of が自然です。Have you ever heard of Toast Ale? が定型で、about を使うと「それについての詳しい話を聞いたことがあるか」という別のニュアンスになります。

答えるときも同じ前置詞を返します。I’ve never heard of it. が自然で、ここで about に変えると噛み合いません。聞かれた前置詞をそのまま返すと覚えておけば迷いません。

introduce と recommend の使い分け

introduce you nice beer とは言えません。I can introduce you to a nice beer. あるいは Let me recommend a nice beer. とします。人にモノを紹介するときは to が必要です。

なお introduce は人と人を引き合わせる場面で使われることが多いため、商品や店をすすめる会話では recommend や You should try … のほうが自然に響きます。

be called の後ろに as は不要

beer was called as “liquid bread” の as は余ります。Beer was called “liquid bread.” あるいは Beer used to be known as “liquid bread.” とすればすっきりします。call は as を取らず、know は as を取る、という対比で覚えると混同しません。

主語と動詞の一致、each other の扱い

Bread and beer is connected each other は二か所を直します。主語がふたつなので are、そして each other は代名詞なので前置詞が必要です。Bread and beer are connected to each other. が正しい形です。

より簡潔に Bread and beer are closely related. としても伝わります。会話では短いほうが強いので、こちらを口に馴染ませておくと便利です。

売られているかを尋ねる表現

注意点

Does it sell in any supermarkets? は「それ自体が売る」という構造になり、意味が通りません。Is it sold at supermarkets? か Do supermarkets carry it? を使います。店が商品を扱うことを carry や stock で表せると、買い物の会話が一段こなれます。

時代・冠詞・可算不可算

in the ancient time より in ancient times が定着した形です。時代を表す言い方は複数形になると覚えておきましょう。

飲み物としてのビールは不可算なので I like lager. で足ります。種類や杯数を数える場面では a lager、two beers(2杯のビール)と可算扱いになります。food waste も一般概念なので無冠詞が自然で、reduce the food waste より reduce food waste が引き締まります。

同様に the thrown away bread は不自然です。bread that would otherwise be thrown away(そうでなければ捨てられていたパン)と説明的に言い換えると、意味がはっきり伝わります。

直し方が整理できたところで、この話題で使う語彙をまとめて確認します。

食品廃棄・ビール・発酵の語彙リスト

この章の要点
  • 原料系(wheat, grain, malt, hops, yeast)と工程系(mashing, ferment)を分けて覚える
  • 廃棄系は food waste / surplus / upcycle の3語が軸
  • hops は常に複数形で使う
  • surplus は「捨てるパン」より前向きな響きを持つ

語彙は意味を並べるだけでは定着しません。カテゴリーごとに束ねて、実際の文の中で覚えるのが近道です。

lager / ale

ラガーとエール。ラガーは発酵が進むと酵母がタンクの底へ沈殿していくタイプ、エールは酵母が液面近くに浮き上がってくるタイプです。発音は「ラーガー」「エイル」に近く、ale は二重母音なので「エール」と伸ばしきらないほうが通じます。

wheat / grain / malted barley

小麦/穀物/大麦麦芽。パンの原料を語るなら wheat、ビールとパンの共通点を語るなら grain とまとめるのが便利です。wheat は「ウィート」で、white と混同されないよう語頭をはっきり出します。

ferment / fermented / fermentation

発酵する/発酵した/発酵。日本の食文化を語るときにも使い回せる一群です。Miso and soy sauce are fermented, too.(味噌も醤油も発酵食品です)のように広げると会話が続きます。発音は「ファーメント」で第2音節に強勢。

food waste / surplus bread / thrown away

食品廃棄/余剰のパン/捨てられる。surplus はTOAST自身が使う言い方で、「捨てるパン」より前向きな響きがあります。thrown away は throw away の過去分詞で、be thrown away の受動態で使うのが基本です。

upcycle

価値を上げて再利用する。単なるリサイクルと区別して使われます。They upcycle surplus bread into beer. のように upcycle A into B の形が定型です。名詞形は upcycling。

brewery / brewer / brew

醸造所/醸造家/醸造する。brewery は「ブルーワリー」で第1音節に強勢。動詞 brew はコーヒーや紅茶にも使えるので、brew a cup of tea と併せて覚えると出番が増えます。

mashing / wort / hops / yeast

糖化工程/麦汁/ホップ/酵母。mashing は砕いたパンや麦芽を湯と混ぜて糖を取り出す段階です。hops は常に複数形で使い、苦味と香りの元を指します。wort の発音は「ワート」ではなく「ウァート」に近く、yeast は「イースト」で長い母音を保ちます。

語彙が揃うと、歴史の話にも踏み込めます。会話で最も反応が良いのが、次の「液体のパン」という話題です。

ビールは「液体のパン」— 古代からの関係

この章の要点
  • ビールは紀元前4千年前のメソポタミア文明で造られていたとされる
  • 労働の報酬や神への捧げ物として扱われ、「液体のパン」と呼ばれた
  • パンを焼いてから水でふやかし、糖化させてビールにする手順が存在した
  • TOASTのレシピはこの古代の考え方に立っている

廃棄パンのビールは新しい発想に見えて、実は原点回帰です。ビールは紀元前4千年前のメソポタミア文明で造られていたという資料が残っており、放置された麦の粥に空気中の酵母が入り込み、偶然発酵したものが最初のビールだったという説が広く語られてきました。

古代の記録では、ビールは労働者への報酬として支給され、神への捧げ物としても扱われていました。栄養価が高く、水よりも安全に飲めることもあって、「液体のパン」という呼び名が生まれます。パンと同じ穀物からでき、パンと同じように腹を満たす。当時の人にとって、両者は同じ食卓の兄弟のような存在でした。

パンを経由してビールを造る古い手順

ビールの作り方の一つに、小麦の種を発酵させて粉にし、それを水でといてパンとして焼き、さらにそれを水でふやかして酵素を糖化させ、アルコールを発生させるという方法があります。まさに、パンからビールを造っていたのです。

TOASTのレシピは、この紀元前4000年頃の考え方に立っています。メソポタミアやエジプトの人々が焼いた小麦のパンから「神聖な飲み物」を得ていた工程を現代の設備で再現し、パンに大麦麦芽、ホップ、酵母、水を組み合わせてラガーやエールに仕上げる。ロンドンで行われているパンをビールにする方法は、昔の人から学んだものなのです。

保存という観点でも、この関係は理にかなっています。穀物をそのまま置いておけば虫や湿気にやられますが、パンに焼き上げれば数日、ビールに変えれば数週間から数か月、栄養を保持できます。発酵は古代の保存技術であり、廃棄を減らす技術でもありました。

フレーズ
In ancient times, beer was known as “liquid bread.”
日本語訳
古代には、ビールは「液体のパン」と呼ばれていました。
使う場面
パンとビールの関係を説明する導入として。歴史の話は相手が驚きやすく、会話が伸びます。
注意点・誤用例
in the ancient time は不自然で、in ancient times が定型です。was called as とせず、called なら as なし、known なら as ありと整理します。
発音・ニュアンス
ancient は「エインシェント」で第1音節に強勢。liquid bread はゆっくり区切って言うと、引用のニュアンスが伝わりやすくなります。

歴史の次は、飲み比べの話に移りましょう。ラガーとエールの違いを英語で説明できると、パブでの会話がぐっと具体的になります。

ラガーとエール、何が違うのか

この章の要点
  • エールは上面発酵、ラガーは下面発酵
  • エールは15〜25度前後、ラガーは10度前後で発酵させる
  • ラガーはクリアで切れのある味、エールは香りが豊か
  • パンの香ばしさを活かしやすいのがエール寄りの設計

違いの根っこは酵母と発酵温度です。エールは上面発酵、ラガーは下面発酵と呼ばれます。

上面発酵酵母は摂氏15〜25度程度の常温域で活発に働き、発酵中は炭酸ガスに押し上げられて液面近くに集まります。下面発酵酵母は摂氏10度前後の低温でゆっくり働き、仕事を終えるとタンクの底に沈んでいきます。エールのほうが歴史が古く、ラガーは低温管理の技術が発達した中世以降に確立した造り方です。

味わいと選び方

低温でじっくり発酵させるラガーは、酵母が生む副産物が抑えられるため、クリアで切れのある味わいになります。日本で親しまれているビールの多くがこのタイプなので、「ラガーが一番好き」という感覚はごく自然です。

対してエールは、発酵温度が高い分エステル類などの香り成分が豊かに生まれ、フルーティーさやスパイシーさ、麦の甘みが前に出ます。ロンドンのパブで飲む一杯がまさにこれで、初めて飲んだ人が「これも良かった」と感じるのは、香りの層が明確に違うからです。

トーストエールがエールを軸に展開しているのも、パンの香ばしさや穀物感を活かしやすいという理由と相性が良い選択です。

フレーズ
Ale is fermented at a warmer temperature, so it has more fruity aromas. Lager is fermented cold, so it tastes crisp and clean.
日本語訳
エールは高めの温度で発酵させるので果実のような香りが強く、ラガーは低温で発酵させるのですっきり切れのある味になります。
使う場面
パブやバーで「どっちがおすすめ?」と聞かれたとき。相手の好みに合わせて提案する前置きになります。
注意点・誤用例
aroma は可算名詞なので複数形 aromas が自然です。crisp は「パリパリ」ではなく飲み物の切れの良さを表します。tastes の後ろに形容詞を置く形(tastes crisp)を崩さないよう注意します。
発音・ニュアンス
aroma は「アロウマ」で第2音節に強勢。fruity は「フルーティ」、crisp は語末の sp を軽くまとめます。ビールの説明では crisp と clean をセットで使うと通りが良くなります。

food waste と food loss はどう違うのか

この章の要点
  • 日本語の「フードロス」は、英語では food waste が一般的
  • food loss は収穫・輸送・加工・保管など前半で失われるもの
  • food waste は小売と消費の段階で捨てられるもの
  • パンの廃棄は food waste の代表格

日本語では「フードロス」という言い方が定着していますが、英語で同じ意味を伝えたいときは food waste が一般的です。国際的なレポートでは food loss and waste とまとめて書かれることも多く、両者は発生する場所で区別されます。

food loss は、収穫、輸送、加工、保管といったサプライチェーンの前半で失われるものを指します。天候や設備の不備、輸送中の傷みが原因になりやすく、途上国で比重が大きい傾向があります。

food waste は、小売と消費の段階で捨てられるものを指します。売れ残り、期限切れ、食べ残しがこれに当たり、先進国で比重が大きい問題です。パンの廃棄はまさに food waste の代表格にあたります。

会話で使うなら、次のような言い方が便利です。Bread is one of the most wasted foods in the UK.(イギリスで最も捨てられている食品のひとつがパンです)、This beer helps reduce food waste.(このビールは食品廃棄の削減に役立ちます)、They upcycle surplus bread into beer.(余剰のパンをビールにアップサイクルしています)。

注意点

「フードロス」をそのままカタカナ発音で food loss と言っても、相手には削減活動の話として伝わりにくい場合があります。日常会話では food waste を選び、統計や政策の文脈では food loss and waste と言い分けるのが安全です。また reduce の後ろに the を付けたくなりますが、一般概念なので無冠詞が自然です。

日本でも進む余剰パンの活用

この章の要点
  • 小規模醸造所やパンメーカーが余剰パンの活用に取り組んでいる
  • 麦芽の20%をパンで代替した事例が報じられている
  • アップサイクル事業を支援する自治体の取り組みもある
  • 入手可否や販売状況は各醸造所の告知を確認するのが確実

イギリスの発想は日本にも届いています。パンの耳や閉店間際のパンを麦芽の一部に置き換えてクラフトビールを醸造する動きが、各地の小規模醸造所やパンメーカーから出てきました。

報じられている事例では、横浜の百貨店のベーカリー売場で廃棄間近になっていたパンを引き取り、本来使う麦芽の20%をパンで代替してビールを製造・販売しています。麦芽の2割をパンに置き換えるという比率は、味の設計と廃棄削減を両立させる現実的な線として参考になります。

行政側の動きもあります。クラフトビールを活用したアップサイクル事業を支援する自治体の取り組みが公表されており、余剰食材を醸造で価値に変える発想が、個々の醸造所の努力から一段広い枠組みへ移りつつあります。

ただし、こうした商品は数量限定や期間限定で登場することが多く、常時どこでも買えるとは限りません。飲んでみたい場合は、気になる醸造所やベーカリーの告知を直接確認するのが確実です。

フレーズ
Some breweries in Japan are doing something similar with leftover bread.
日本語訳
日本でも、余ったパンで似たことをしている醸造所がいくつかあります。
使う場面
海外の話題に自国の情報を足して会話を対等にしたいとき。「日本ではどう?」と聞かれる前に出せると印象が良くなります。
注意点・誤用例
leftover は名詞・形容詞どちらでも使えますが、leftovers と複数形にすると「食べ残し」を指します。パンの余りは leftover bread、surplus bread のどちらでも通じます。
発音・ニュアンス
breweries は「ブルーワリーズ」。something similar は「サムシン・シミラー」とつなげて言うと自然です。断定を避けたいときは Some … で始めると安全な言い方になります。

知識が揃ったら、あとは口に馴染ませる作業です。次に、発音と音読の手順を具体化します。

発音練習とシャドーイングの手順

この章の要点
  • この話題の難所は waste、wheat、yeast、brewery、ale の5語
  • 語末の子音を落とさないことが伝わりやすさに直結する
  • 単語→フレーズ→文→会話の順に音を大きくしていく
  • 録音して聞き返すと、自分の癖が最速で見つかる

発音は難しい音を全部直そうとすると続きません。この話題で使う頻度が高い5語に絞って整えるだけで、通じ方が変わります。

waste は「ウェイスト」。waist と同じ音で、日本語の「ウエスト」に引っぱられると母音が短くなりがちです。二重母音をしっかり伸ばしましょう。

wheat は「ウィート」で、語頭の w を丸めた唇から始めます。yeast は「イースト」で長母音を保ち、east と同じ音になります。brewery は「ブルーワリー」で第1音節に強勢、真ん中を弱く速く抜けるのがコツです。ale は「エイル」で、日本語の「エール」のように平らに伸ばすと別の語に聞こえます。

複数形も忘れがちなポイントです。loaf の複数形は loaves(ロウヴズ)で、two loaves of bread のように使います。語末の s と t を落とさないだけで、意味の取り違えが大きく減ります。

4段階の音読ドリル

練習は段階を上げていく形が効率的です。以下の順で進めてください。

  1. 単語だけを5回ずつ。waste / wheat / yeast / brewery / ale / surplus / fermented / upcycle。
  2. 2〜4語のかたまりで10回。surplus bread / food waste / made from bread / malted barley / closely connected。
  3. 本記事の例文を1文ずつ、意味を思い浮かべながら5回。
  4. 会話例を役割ごとに通しで音読し、次に相手のセリフを聞いて自分のセリフだけ言う練習に切り替える。

4段目まで来たら、スマートフォンで自分の声を録音して聞き返してみてください。強勢の位置と語末の処理が、思っていた形と違うことに気づけます。気づいた箇所だけを1段目に戻して修正すれば、練習時間が短くても精度が上がっていきます。

ひとりで話す練習に使えるお題

語彙を定着させたいときは、独り言で説明する練習が効きます。次の3つのお題を、それぞれ30秒で英語にしてみましょう。

  • トーストエールとは何か、相手が全く知らない前提で説明する。
  • パンとビールが古代からつながっている理由を、2文で述べる。
  • 日本の食品廃棄について自分が感じていることを、率直に述べる。

言葉が詰まった箇所こそが、次に覚えるべき表現です。詰まった単語だけをメモに書き足していけば、自分専用の語彙リストができあがります。

1週間で定着させる復習プラン

この章の要点
  • 1日15分、7日で「語彙→誤用の修正→通し会話」まで持っていく
  • 覚える順番は、名詞→動詞→前置詞の組み合わせ
  • 7日目は自分の言葉で説明する日にあてる
  • 忘れた箇所は前日に戻るだけでよく、最初からやり直さない

読んだ内容を使える状態に変えるには、短時間の反復が向いています。1日15分を7日続ける形で組んでみました。

  1. 1日目:語彙カード(bread, wheat, grain, malt, hops, yeast, brewery, food waste, surplus, upcycle)を読み上げて意味を確認する。
  2. 2日目:made from / made by / made of を使った文を各3つ自作する。
  3. 3日目:hear of と hear about、be called と be known as を含む文を各3つ自作する。
  4. 4日目:工程の説明3文(回収→糖化→発酵)を、見ずに言えるまで繰り返す。
  5. 5日目:ラガーとエールの違いを2文で説明する練習。
  6. 6日目:会話例を役割ごとに通しで音読し、録音して聞き返す。
  7. 7日目:メモを見ずに、トーストエールについて1分間話す。

途中で抜け落ちた語があっても、慌てて最初に戻る必要はありません。前日の課題に一度だけ戻るという運用にすると、負担を増やさずに穴を埋められます。

夜の机の上に開かれた英単語のノートと鉛筆、伏せたスマートフォン、琥珀色のエールのグラスとトーストの皿
1日15分、机の上で声に出す時間が定着を支える

ひとりの練習で形が整ったら、あとは相手のいる場で試す段階です。反応が返ってくると、どの表現が伝わりやすいかが体感で分かります。

よくある質問

この章の要点
  • 味、安全性、パンの比率など気になりやすい点をまとめて確認できる
  • 会話で使える一文回答も併せて掲載

トーストエールはどんな味がするのですか

パンを使うといっても、パンの味がそのまま出るわけではありません。エールを軸にした造りでは、発酵由来の香りに穀物の香ばしさや麦の甘みが重なった味わいになります。銘柄やスタイルによって差が大きいため、実際の風味は商品ごとの説明を確認するのが確実です。

廃棄予定のパンを使ったビールは安全なのですか

使われるのは、傷んだパンではなく「売れ残り」や「サンドイッチ工場で出た耳」など、食べられる状態のものです。回収後は冷凍などで保管され、醸造では煮沸の工程を通ります。通常のビール製造と同じ衛生管理のもとで造られています。

パンはどのくらいの割合で麦芽の代わりになるのですか

全量を置き換えるのではなく、一部を代替する設計です。報じられている日本の事例では、本来使う麦芽の20%をパンで代替しています。比率は醸造所や目指す味によって変わります。

トーストエールを英語で説明するとき、最初の一文はどう言えばよいですか

It’s a beer made from surplus bread that would otherwise be thrown away. と言えば、素材と目的が同時に伝わります。もっと短くするなら It’s beer brewed with leftover bread. でも十分です。

made from と made by はどう使い分けますか

原材料が形を変えて別のものになる場合は from、作った主体を示す場合は by です。パンから造られたビールなら made from bread、ロンドンの醸造所が造ったなら made by a London brewery となります。素材の形が残っているものには made of を使います。

food waste と food loss の違いは何ですか

food loss は収穫、輸送、加工、保管といったサプライチェーンの前半で失われるものを指し、food waste は小売と消費の段階で捨てられるものを指します。パンの廃棄は food waste にあたり、日常会話でも food waste のほうが通じやすい言い方です。

ラガーとエールの違いを一文で言うとどうなりますか

Ale is fermented warm and tastes fruity, while lager is fermented cold and tastes crisp. と言えば要点が伝わります。技術的に言い添えるなら、エールは上面発酵、ラガーは下面発酵という区別になります。

日本でも廃棄パンを使ったビールは飲めますか

余剰パンを活用したクラフトビールを手がける醸造所やパンメーカーの取り組みが各地で出てきています。ただし数量限定や期間限定の販売が多く、常時どこでも買えるとは限りません。気になる醸造所の告知を直接確認するのが確実です。

捨てられるはずだったパンで、乾杯する

この章の要点
  • トーストエールは廃棄削減と古代の技術が交差した一杯
  • 語る英語の軸は surplus、food waste、made from、upcycle
  • 明日からできるのは、この話題を誰かに英語で話してみること

行き場のなかったパンが、砕かれ、湯と混ぜられ、糖に変わり、酵母の働きで一杯のビールになる。工程そのものは古代メソポタミアの人々がすでに知っていたものでした。

その古い知恵を、現代の食料システムへの問いかけとして持ち出したのがトーストエールという取り組みです。ブランド名が「パン」と「乾杯」の二重の意味を持つことも、この姿勢をよく表しています。

英語で語るときの軸は4つです。surplus bread(余ったパン)、food waste(食品廃棄)、made from(〜から造られる)、upcycle(価値を上げて再利用する)。この4語を通せば、仕組みも意義も伝わります。

最後にひとつだけ行動を選ぶなら、Have you ever heard of toast ale? という一文を誰かに投げてみることです。話題を持っている人は会話が続くようになります。次の一杯の席が、そのまま練習の場になります。