海外の街角で足元を見たら、さっきまであった鞄がない。頭が真っ白になって、口から出てくるのは「あの……マイバッグ……」という切れ切れの単語だけ。そんな場面を想像すると、少し背中が冷たくなりませんか。

「鞄を盗まれた」という日本語は、被害者である自分を主語にした受け身の形をしています。ところが、これをそのまま英語の受動態に置き換えると、多くの場合まったく違う意味になってしまいます。学校のテストで I was stolen my bag. と書いて赤ペンが入った記憶がある方も少なくないはずです。

この記事を読み終えたときには、盗難を伝える英語の三つの型、steal と rob の決定的な違い、警察官から飛んでくる質問への答え方、そして保険請求に必要な盗難届の頼み方まで、一続きの流れとして口から出せる状態を目指します。旅行前の数十分で読み切れる内容にまとめました。体系的に会話力を伸ばしたい方は英語教室のような場で口に出す練習を重ねると定着が早まりますが、まずはここで型を押さえていきましょう。

では、いちばん大事な三つの型から見ていきます。

ホテルの受付カウンターで足元を見下ろし、鞄がなくなったことに気づいて驚く日本人女性旅行者
記入していたほんの数分。足元に置いた鞄が消える瞬間は、驚くほど静かに訪れます。
目次 [ close ]
  1. 「鞄を盗まれた」を英語で言う三つの型
    1. 型1 My bag was stolen. / My bag got stolen.
    2. 型2 I had my bag stolen. / I got my bag stolen.
    3. 型3 Someone stole my bag.
  2. I was stolen my bag. が通じない二つの理由
    1. 理由その一 受動態の主語には目的語が入る
    2. 理由その二 steal は目的語を一つしか取らない
    3. 同じ考え方を他の被害表現へ広げる
  3. steal / rob / pickpocket / snatch / mug の使い分け
    1. steal は「物」を、rob は「人・場所」を
    2. 暴力の有無で選ぶ mug と snatch
    3. pickpocket は名詞でも動詞でも使える
    4. 届出で使う名詞の区別
  4. has been stolen と was stolen、どちらを使うか
  5. 警察署でのやりとりを丸ごと体験する
    1. 会話に出てきた語句の要点
  6. 警察で聞かれる六つの質問と答え方
    1. What happened? / Where did it happen?
    2. When did you last see it?
    3. What did it look like?
    4. What did you have in it?
    5. How much money was in it?
    6. 聞き取れなかったときの三つの一言
  7. 盗難届(police report)と保険請求の流れ
  8. 場面別に使い分けるフレーズ集
    1. まず助けを求めるとき
    2. ホテルや施設のスタッフに相談するとき
    3. カード会社への連絡
    4. 大使館・領事館への連絡
    5. 交通機関や店舗で被害に気づいたとき
  9. 音とリズムで覚える発音練習
  10. 会話文に潜む間違いを直してみる
    1. 冠詞の余り
    2. has gone と be gone
    3. 間接疑問の語順
    4. 複数形の付け忘れ
    5. 場所の言い方を引き締める
  11. 七日間で口に定着させる練習プラン
  12. 盗難に遭いにくくするための備え
  13. よくある質問
  14. 覚えておきたい要点の整理

「鞄を盗まれた」を英語で言う三つの型

この章の要点
  • 使える型は三つ。My bag was stolen.(物を主語)/I had my bag stolen.(自分を主語)/Someone stole my bag.(犯人を主語)
  • 助けを求める第一声は My bag was stolen. が最も安全で確実
  • 盗まれた確信がない段階では Someone took my bag. や I can’t find my bag. から始める
  • was と got は交換可能。届出書類では was、会話では got が自然

結論から述べます。「鞄を盗まれた」を英語で表すときは、主語を何にするかで三つの型に分かれます。この三つを丸ごと覚えてしまえば、旅行中のあらゆる盗難場面に対応できます。

なぜ三つも必要なのかというと、英語では「誰の視点から出来事を語るか」で文の形が変わるからです。日本語は「私は鞄を盗まれた」という一つの言い方で済みますが、英語では鞄を主語にするか、自分を主語にするか、犯人を主語にするかを選ばなければなりません。

それぞれの型を、実際の例文とともに確認していきます。

型1 My bag was stolen. / My bag got stolen.

盗まれた「物」を主語に置く、いちばん素直な形です。緊急時に迷ったらこれを使ってください。

フレーズ
My bag was stolen at the hotel.
日本語訳
ホテルで鞄を盗まれました。
使う場面
警察署の窓口、ホテルのフロント、保険会社への電話。場所や時刻を添えて事実を報告するとき全般に使えます。
注意点・誤用例
誤:I was stolen my bag./誤:My bag was robbed. rob は物を主語にできません。また stole(過去形)と stolen(過去分詞)の混同にも注意が必要です。My bag was stole. は誤りです。
発音・ニュアンス
was stolen は「ワズ・ストウルン」。stolen は「ストーレン」ではなく、o を「オウ」と二重母音で発音します。was と stolen をつなげて「ワズストウルン」と一息で言うと通じやすくなります。

同じ型で、対象を入れ替えた例文を並べておきます。声に出しながら読み進めてください。

  • My wallet got stolen on the train.(電車で財布を盗まれました。)
  • My smartphone was stolen from my back pocket.(後ろポケットからスマートフォンを盗まれました。)
  • My suitcase was stolen at the airport.(空港でスーツケースを盗まれました。)
  • My passport was stolen along with my bag.(鞄と一緒にパスポートを盗まれました。)
  • My laptop was stolen from the hotel room.(ホテルの部屋からノートパソコンを盗まれました。)

was でも got でもかまいませんが、got のほうが会話的で「その瞬間に起きた出来事」という感じが強く出ます。届出書や保険会社への文書では was stolen が無難です。

型2 I had my bag stolen. / I got my bag stolen.

どうしても「私」を主語にしたい場合は、have または get を使って「I+have+物+過去分詞」という形にします。学校英語で「私は鞄を盗まれた」の解答例として示されるのは、この型です。

フレーズ
I had my bag stolen while I was checking in.
日本語訳
チェックイン中に鞄を盗まれました。
使う場面
自分の身に起きた出来事として語るとき。旅の報告、友人への説明、被害の経緯を時系列で述べるときに向きます。
注意点・誤用例
誤:I had stolen my bag.(語順を変えると「私が鞄を盗んでいた」という自白になります)。物と過去分詞の順番を入れ替えないでください。
発音・ニュアンス
had my は d と m がつながり「ハドゥマイ」ではなく「ハッマイ」に近く聞こえます。stolen を強く長めに発音すると、被害の中心が伝わります。
注意点

I had stolen my bag. と語順を崩すと、「私は鞄を盗んでいた」という完了形の能動文になります。警察署でこの一言を発してしまうと、事情説明が振り出しに戻るどころか、こちらが疑われる展開になりかねません。物(my bag)を先、過去分詞(stolen)を後、という順番だけは体に刻んでおいてください。

この型を使った例文も並べておきます。

  • I got my bike stolen last night.(昨夜、自転車を盗まれました。)
  • I had my wallet stolen on the subway.(地下鉄で財布を盗まれました。)
  • I had my pocket picked in the market.(市場でポケットをすられました。)
  • I had my car broken into.(車上荒らしに遭いました。)

同じ「have+物+過去分詞」は、I had my hair cut.(髪を切ってもらった)のように「してもらう」という使役の意味にもなります。どちらの意味に読まれるかは、その動作が自分にとって望ましいかどうかで決まります。

髪を切ってもらうのは自分が頼んだこと。鞄を盗まれるのは望まないこと。だから前者は依頼、後者は被害として解釈されます。文の形が同じでも意味が分かれるのは、内容から自然に判断されるためです。

型3 Someone stole my bag.

英語は日本語よりも能動態を好みます。犯人が誰かわからないときも、someone や a thief を主語に立てて能動態で言い切るのが、実は最も自然な英語です。

フレーズ
Someone stole my bag from the counter.
日本語訳
誰かがカウンターから私の鞄を盗みました。
使う場面
周囲の人に助けを求めるとき、犯行が確実で状況を強く訴えたいとき。短く力のある言い方です。
注意点・誤用例
盗まれたと断定できない段階で stole を使うと、置き忘れだった場合に話がややこしくなります。確信が薄いときは Someone took my bag. や I can’t find my bag. に切り替えてください。
発音・ニュアンス
Someone の頭と stole に強勢を置きます。「サムワン・ストウル・マイ・バッグ」と四拍で刻むと、慌てていても明瞭に届きます。
  • Someone took my bag.(誰かが私の鞄を持っていきました。)
  • A thief took my backpack while I was asleep.(眠っている間に泥棒がリュックを持っていきました。
  • Somebody grabbed my bag and ran.(誰かが鞄をつかんで走り去りました。)
  • A man on a scooter took my bag.(スクーターに乗った男が鞄を持っていきました。)

ホテルのスタッフに最初に相談する段階なら、Someone took my bag. のほうが角が立たず、相手も落ち着いて対応してくれます。三つの型のうちどれを選ぶかは、確信の度合いと相手との関係で決めるとよいでしょう。

では、多くの学習者がつまずく I was stolen my bag. は、なぜ通じないのでしょうか。理由は二段構えになっています。

盗難を伝える英語の三つの文型を、物・自分・犯人という主語のアイコンとともに並べた図解イラスト
主語を何にするかで、同じ出来事が三通りの英文になります。

I was stolen my bag. が通じない二つの理由

この章の要点
  • 理由その一。受動態の主語には、能動態の目的語がそのまま入る
  • 理由その二。steal は目的語を一つしか取らない動詞で、「人+物」を並べられない
  • I was stolen. は「私自身が盗まれた」という物騒な意味に読まれる
  • 同じ考え方は broken into や picked にも応用できる

I was stolen my bag. は、受動態の作り方と動詞の文型という二つの点で成立しません。片方だけを直しても文にならないため、多くの学習者がここで足を取られます。

理由その一 受動態の主語には目的語が入る

受動態は、能動態の目的語を主語の位置へ引き上げて作ります。Someone stole my bag. の目的語は my bag ですから、受動態にしたときの主語も my bag でなければなりません。だから My bag was stolen. になります。

ここで I を主語に据えてしまうと、「盗まれたのは私自身」という意味に変わります。つまり I was stolen. は、人間そのものが持ち去られたと述べる文です。実際にはほとんど使われない、かなり物騒な表現になってしまいます。

日本語の「私は鞄を盗まれた」は、被害を受けた人を主語に立てられる便利な構文です。この便利さがそのまま英語に持ち込めないことが、誤りの出発点になっています。

理由その二 steal は目的語を一つしか取らない

give や show のように「人に物を」と目的語を二つ並べられる動詞は、確かに存在します。I was given a book. のような受動態が作れるのは、能動態が Someone gave me a book. という二重目的語の形を取れるからです。

しかし steal は「〜を盗む」という目的語一つの動詞です。Someone stole me my bag. という文は英語として存在しません。存在しない能動態からは、当然、受動態も作れません。

試しに I was stolen my bag. を能動態へ戻してみてください。Someone stole me my bag. という奇妙な文が現れます。この不自然さがそのまま受動態にも残っている、というのが構造上の説明です。

同じ考え方を他の被害表現へ広げる

「何が被害を受けたのか」を主語や目的語に据える、という原則は他の場面にも効きます。次の三つを見比べてみてください。

  • My car was broken into.(車上荒らしに遭いました。)— 壊されて侵入されたのは車
  • I had my pocket picked.(すられました。)— 探られたのはポケット
  • My room was broken into while I was out.(外出中に部屋に侵入されました。)— 侵入されたのは部屋

ただし、この原則には例外的に見える仲間がいます。rob という動詞です。次はその違いを整理します。

steal / rob / pickpocket / snatch / mug の使い分け

この章の要点
  • steal は「物」を目的語に取る。rob は「人・場所」を目的語に取る
  • だから I was robbed. は正しく、My bag was robbed. は誤り
  • 物を添えるときは I was robbed of my bag. と of を使う
  • 名詞は theft(窃盗)/robbery(強盗)/burglary(侵入盗)/shoplifting(万引き)で区別する

「盗む」系の動詞は、目的語に何を取るかで役割が分かれます。ここを押さえると、警察官に状況を誤解されるリスクが大きく下がります。

steal は「物」を、rob は「人・場所」を

steal の目的語は盗まれた物です。steal a bag、steal money、steal a car。だから受動態にすると My bag was stolen. という形になります。

一方 rob の目的語は、奪われた人や場所です。rob a bank、rob a tourist。人を目的語に取れるので、受動態では I was robbed. と言えます。これが「強盗に遭った」という定番表現です。

注意点

My bag was robbed. は英語として成立しません。rob の目的語になれるのは人か場所だからです。物を明示したいときは I was robbed of my bag.(鞄を奪われました)と、前置詞 of でつなぎます。逆に I was stolen. も誤りですから、「人には rob、物には steal」と対で覚えるのが安全です。

暴力の有無で選ぶ mug と snatch

mug は、路上で暴力や脅しを伴って襲うことを指します。I was mugged near the station.(駅の近くで強盗に襲われました。)のように使い、身体的な危険があったことが伝わります。

snatch は、ひったくりです。My bag was snatched by a guy on a motorbike.(バイクの男に鞄をひったくられました。)のように、瞬間的に奪い去られた状況を表します。

pickpocket は名詞でも動詞でも使える

pickpocket は「すり犯」という名詞でも、「すりを働く」という動詞でも使えます。混雑した観光地でよく耳にする語です。

フレーズ
I was pickpocketed on the bus.
日本語訳
バスの中ですられました。
使う場面
満員の公共交通機関や人混みで、気づかないうちに抜き取られた場合。A pickpocket got my wallet.(すりに財布を取られました)と名詞で言うこともできます。
注意点
pickpocket は人を目的語に取るので、受動態の主語は人になります。My wallet was pickpocketed. とは言いません。物を主語にしたいなら My wallet was stolen. を使ってください。
発音
「ピックポケティッド」と四拍。最初の pick に強勢を置きます。語尾の -ed は「イッド」と一音節分はっきり出します。

届出で使う名詞の区別

窓口では、動詞ではなく名詞で被害の種類を伝える場面があります。次の五つを押さえておけば十分です。

  • theft:窃盗全般。暴力を伴わない盗みを広く指します
  • robbery:暴力や脅迫を伴う強盗
  • burglary:住居や建物への侵入盗
  • shoplifting:万引き
  • purse snatching:ひったくり

迷ったら I’d like to report a theft.(窃盗の届けを出したいです。)が最も汎用性の高い一言です。細かい分類は、窓口の担当者が状況を聞いて判断してくれます。

語彙の整理ができたところで、次は時制の話に進みます。同じ「盗まれた」でも、現在完了と過去形で伝わる印象が変わります。

has been stolen と was stolen、どちらを使うか

この章の要点
  • 被害の直後、助けを求める場面では現在完了 has been stolen が合う
  • 時刻や場所を特定して述べるときは過去形 was stolen に切り替える
  • yesterday や at three o’clock などの過去を示す語句は現在完了と同居しない
  • 背景説明には過去進行形(I was filling in a form when it happened.)を使う

最後にの使い分けはこうです。今まさに困っているなら現在完了、いつどこでを述べるなら過去形。この一線を引いておけば、時制で悩む時間がなくなります。

My bag has been stolen. は「今この瞬間、鞄がない状態に置かれている」という被害の継続感を伴います。盗まれた直後に駆け込んで助けを求める場面では、この形がぴたりと合います。

一方、My bag was stolen yesterday afternoon.(昨日の午後に盗まれました。)のように、はっきりした過去の時点を示す語句が入ると、現在完了は使えません。届出書に経緯を書くときや、後日に保険会社へ説明するときは過去形が主役になります。

状況の背景を語るには過去進行形も欠かせません。I was filling in a form when it happened.(記入している最中に起きました。)のように、背景を過去進行形、出来事を過去形で表すと、聞き手が時間の流れを追いやすくなります。

フレーズ
My bag has been stolen. It happened about fifteen minutes ago.
日本語訳
鞄を盗まれました。15分ほど前のことです。
使う場面
最初の一文で被害を現在完了で伝え、二文目で時刻を過去形で補う型。時制の切り替えを二文に分けることで、どちらの規則も自然に守れます。
注意点・誤用例
誤:My bag has been stolen fifteen minutes ago. 現在完了に ago は付けられません。ago を使うなら過去形、現在完了なら just や recently を添えます。
発音
has been は弱く速く「ハズビン」。stolen だけをはっきり強く出すと、緊急性が声に乗ります。

では、ここまでの型と時制が実際の会話でどう並ぶのか。警察署でのやりとりを、まるごと一つ追ってみましょう。

警察署でのやりとりを丸ごと体験する

この章の要点
  • やりとりは「被害の申告→経緯→鞄の特徴→中身→金額」というほぼ決まった順で進む
  • 長い一文を作らず、短い文を重ねるほうが確実に伝わる
  • fill in(英)と fill out(米)はどちらでも通じる
  • It’s gone. は「消えてそこにない」状態を表す定型表現

場面は、ホテルのカウンターで書類に記入している最中に、足元の鞄が消えたという状況です。学習者が最寄りの警察署へ向かい、窓口の警察官と話しています。聞かれる順番が読めていれば、答えを差し込むだけで済みます。

会話例(At the police station)
学習者:Can you help me? My bag has been stolen.
警察官:Calm down, please. Explain what happened.
学習者:Yes. When I was filling in a form at the hotel front desk, I put my bag down behind me. It was only for a few minutes. And now it’s gone.
警察官:What did the bag look like? What did you have in it?
学習者:It’s a blue leather bag. Inside there were a brown leather wallet, my keys, a digital camera, a handkerchief and so on.
警察官:Do you know how much money you had in the wallet?
学習者:Let me see… two fifty-dollar bills, a twenty-dollar bill, three five-dollar bills and some change.
日本語訳
学習者:助けてください。鞄を盗まれました。
警察官:落ち着いてください。何が起きたのか説明してください。
学習者:はい。ホテルのフロントで書類に記入していたとき、鞄を自分の後ろに置いたのです。ほんの数分のことでした。そして、なくなってしまいました。
警察官:その鞄はどのようなものでしたか。中には何が入っていましたか。
学習者:青い革の鞄です。中には茶色い革の財布、鍵、デジタルカメラ、ハンカチなどが入っていました。
警察官:財布の中にはいくら入っていたか、わかりますか。
学習者:ええと……50ドル紙幣2枚、20ドル紙幣1枚、5ドル紙幣3枚と、いくらかの小銭です。
使う場面
現地の警察署の窓口で盗難届を出すとき。空欄に自分の情報を入れ替えれば、そのまま台本として使えます。
発音・ニュアンス
Can you help me? は「キャニュ・ヘウプミ」とつなげます。Let me see… は「レッミスィー」と一語のように発音し、考える時間を稼ぐ役に立ちます。

会話に出てきた語句の要点

stolen は steal(盗む)の過去分詞です。変化は steal – stole – stolen。過去形 stole と過去分詞 stolen を混同すると被害説明が伝わりにくくなるので、この三形はセットで音読しておいてください。

calm down は「落ち着く」。警察官や周囲の人からかけられる言葉です。Take a deep breath.(深呼吸してください)も同じ場面で登場します。

Explain what happened. は命令形なので少しきつく響きますが、実務の場では普通の言い方です。Could you tell me what happened? と丁寧に聞かれることもあります。

fill in a form は「書類に記入する」。イギリス英語では fill in、アメリカ英語では fill out が好まれます。窓口では You need to fill out this form.(この書類に記入してください)と必ず言われるので、耳慣らしをしておくと安心です。

put down は「置く」。put my bag down のように動詞と down の間に目的語を挟む形がより自然に響きます。put down my bag も間違いではありません。

置いた場所の言い方も揃えておきましょう。behind me(自分の後ろに)、next to me(すぐ隣に)、under the table(テーブルの下に)、on the chair(椅子の上に)、by my feet(足元に)。この五つで大半の状況を描写できます。

時間の長さは for a few minutes(数分間)、for a second(ほんの一瞬)、just for a moment(ちょっとの間)を使い分けます。目を離した時間が短かったことを伝えると、状況が正確に共有されます。

It’s gone. は「なくなってしまった」。be gone は「消えてそこにない」という状態を表す定型で、会話では It has gone. より It’s gone. のほうが自然に響きます。

and so on は「〜など」。口頭では and stuff like that、and things like that も同じ働きをします。bills は紙幣で、イギリス英語では notes(a ten-pound note)を使います。change は小銭で、数えられない扱いのため some change、a little change と言います。

では、この会話で警察官が投げていた質問を、一つずつ分解して答え方を組み立てていきます。

警察署の受付で日本人旅行者が手振りを交えて状況を説明し、制服の警察官がクリップボードにメモを取っている様子
窓口でのやりとりは事務的に進みます。答える順番を知っておくだけで気持ちが楽になります。

警察で聞かれる六つの質問と答え方

この章の要点
  • 質問は六つに絞られる。何が/どこで/最後にいつ見たか/どんな見た目か/中身/金額
  • 鞄の特徴は「大きさ→形→古さ→色→素材」の順に形容詞を並べる
  • 金額は fifty-dollar bill のように単位を単数形で使う
  • 正確でなくてよい。About や Roughly を添えれば概算で通る

現場のやりとりは、ほぼ決まったパターンに収まります。聞かれる側の英語を先に知っておけば、あとは自分の情報を差し込むだけです。

What happened? / Where did it happen?

出来事と場所は、短い文を重ねて伝えます。長い一文にまとめようとせず、二文か三文に切るほうが確実に伝わります。

  • It happened at the front desk of the Grand Hotel.(グランドホテルのフロントで起きました。)
  • I was at a café on Fifth Avenue.(五番街のカフェにいました。)
  • It happened somewhere between the station and my hotel.(駅とホテルの間のどこかで起きました。)
  • I was on the number 12 bus when I noticed it.(気づいたときは12番のバスに乗っていました。)

When did you last see it?

最後に見た時刻を答えます。正確でなくてかまいません。幅を持たせた答え方を覚えておくと、記憶があいまいでも慌てずに済みます。

  • I last saw it around three o’clock.(最後に見たのは3時ごろです。)
  • Sometime between two and three.(2時から3時の間のどこかです。)
  • About ten minutes before I noticed it was gone.(なくなったと気づく10分ほど前です。)
  • I’m not sure exactly, but it was before lunch.(正確にはわかりませんが、昼食より前です。)

What did it look like?

鞄の特徴は、形容詞を並べる順番を意識すると一気に言いやすくなります。英語では、大きさ→形→古さ→色→出身→素材→名詞という順に並ぶのが原則です。

  • It’s a small blue leather shoulder bag.(小さい青い革のショルダーバッグです。)
  • It’s a black nylon backpack with two front pockets.(前ポケットが二つある黒いナイロンのリュックです。)
  • It has a silver buckle and a red keychain on the handle.(銀色のバックルと、持ち手に赤いキーホルダーが付いています。)
  • It’s about this big.(だいたいこのくらいの大きさです。)
  • There’s a small tear on the bottom corner.(底の角に小さな裂け目があります。)

言葉に詰まったら、手で大きさを示しながら It’s about this big. と言えば十分に伝わります。ブランド名や型番、スマートフォンやパソコンならシリアル番号やIMEI番号を控えておくと、発見時の照合が格段に楽になります。

What did you have in it?

中身は貴重品から順に挙げます。パスポート、カード、現金、薬。この順で並べると、相手も対応の優先度を判断しやすくなります。

  • My passport and two credit cards were in it.(パスポートとクレジットカード2枚が入っていました。)
  • There was a brown leather wallet, my keys, a digital camera and a handkerchief.(茶色い革の財布、鍵、デジタルカメラ、ハンカチが入っていました。)
  • My prescription medicine was in the side pocket.(横のポケットに処方薬が入っていました。)
  • My return flight ticket was inside too.(帰りの航空券も中に入っていました。)

持ち物をまとめて言うなら、my belongings、my personal belongings、my personal effects が便利です。All my personal belongings were stolen.(所持品を全部盗まれました。)は、旅行中の被害を一言で表す定番です。

被害の大きさを口語で強調する言い方もあります。The thieves made off with everything I had.(泥棒に持っていたものを全部持ち去られました。)、My room was cleaned out.(部屋をすっからかんにされました。)。窓口では使いませんが、聞いて意味がわかると心強い表現です。

How much money was in it?

金額の言い方には、日本語話者がつまずきやすい点が二つあります。一つは紙幣の言い方、もう一つは合計額の伝え方です。

注意点

a fifty-dollar bill のように名詞の前で単位を修飾する場合、dollar を複数形にしてはいけません。誤:fifty-dollars bill。正:a fifty-dollar bill。three five-dollar bills では、後ろの bills だけが複数形になります。数えられる名詞の複数化は、金額の話になると抜けやすい部分です。

  • About two hundred dollars in cash.(現金で200ドルほどです。)
  • Roughly one hundred and fifty euros.(150ユーロくらいです。)
  • Two fifty-dollar bills, a twenty and three fives.(50ドル札2枚、20ドル札1枚、5ドル札3枚です。)
  • Maybe thirty thousand yen and some local currency.(3万円ほどと、現地通貨が少しです。)

口語では a twenty、three fives のように単位を省いて数字だけで言うこともよくあります。慌てているときは About two hundred dollars. と概算で答えれば十分です。

聞き取れなかったときの三つの一言

聞き取れないときに黙って頷いてしまうのが、最ももったいない対応です。次の三つは、その場で書類の内容を左右するほど重要です。

  • Could you speak more slowly, please?(もう少しゆっくり話していただけますか。)
  • Could you write that down?(それを書いていただけますか。)
  • Is there anyone who speaks Japanese?(日本語を話せる方はいますか。)

質問への答え方が揃ったところで、次は帰国後の手続きに直結する書類の話に移ります。ここを取り逃すと、補償が受けられなくなる可能性があります。

盗難届(police report)と保険請求の流れ

この章の要点
  • 保険やカードの補償には、現地警察が発行する盗難届の控えがほぼ必須
  • 書類は police report / theft report / certificate of theft と呼ばれる
  • 受理番号(case number)を必ず書き取ってもらう
  • 紛失(lost)と盗難(stolen)は補償の扱いが変わるため区別して申告する

海外旅行保険やクレジットカードの付帯保険で補償を受けるには、現地警察が発行する盗難届の控えがほぼ必須です。その場で頼まないと、後から取得するのは非常に手間がかかります。

窓口で使う頼み方を並べておきます。順番どおりに言えば、必要な書類がひととおり揃います。

  • I need to report a theft.(窃盗の届けを出したいです。)
  • Could I get a copy of the police report? I need it for my insurance.(届出書の控えをもらえますか。保険の請求に必要です。)
  • Could you write down the case number for me?(受理番号を書いていただけますか。)
  • How long does it take to process this?(手続きにはどのくらいかかりますか。)
  • Do I need to come back later?(あとでもう一度来る必要がありますか。)
  • Can you stamp this document, please?(この書類に押印していただけますか。)
フレーズ
Could I get a copy of the police report? I need it for my insurance.
日本語訳
届出書の控えをもらえますか。保険の請求に必要です。
使う場面
警察署で届出の手続きが一段落したタイミング。理由(for my insurance)を添えると、担当者が必要な形式を判断してくれます。
注意点
国や地域によって、控えの発行に日数がかかることがあります。滞在期間が短い場合は I’m leaving the country tomorrow.(明日この国を出ます)と伝えて、当日に受け取れる形式を相談してください。
発音
Could I get a copy of は「クダイ・ゲラ・カピオヴ」とつながります。police は後半に強勢が来て「ポリース」。前半を「ポ」と軽く発音するのがポイントです。

場面別に使い分けるフレーズ集

この章の要点
  • 第一声は「起きたこと」と「してほしいこと」を二文に分ける
  • ホテルでは防犯カメラと遺失物の確認を依頼できる
  • カード会社には freeze / replacement という語で用件が通る
  • パスポート被害は警察届出と在外公館連絡を並行して進める

相手が誰かで、言うべきことは変わります。相手別に一言目を用意しておくのが、いちばん実用的な備えになります。

まず助けを求めるとき

短い二文に分けると、緊張していても口が動きます。「起きたこと」と「してほしいこと」を切り離すのが要点です。

  • My bag was stolen. I need help.(鞄を盗まれました。助けが必要です。)
  • Please help me. Could you call the police?(助けてください。警察を呼んでいただけますか。)
  • Where is the nearest police station?(最寄りの警察署はどこですか。)
  • Is there a police officer around here?(この辺りに警察官はいますか。)
注意点

盗んだ相手を追いかけるのは危険です。相手が単独とは限らず、共犯者が近くにいる場合もあります。まず人が多い安全な場所へ移動し、周囲の人や店員に声をかけるほうが確実です。持ち物より身の安全が優先されます。

ホテルや施設のスタッフに相談するとき

  • I think my bag was stolen at the front desk about ten minutes ago.(10分ほど前にフロントで鞄を盗まれたようです。)
  • Could you check the security cameras?(防犯カメラを確認していただけますか。)
  • Has anything been turned in to lost and found?(遺失物として何か届いていませんか。)
  • Could you help me contact the police?(警察に連絡するのを手伝っていただけますか。)
  • Could you call a Japanese-speaking staff member if there is one?(日本語を話せるスタッフがいれば呼んでいただけますか。)

なくしたのか盗まれたのかがはっきりしない段階では、lost と stolen を使い分けます。I lost my bag. は自分の不注意で置き忘れた場合、My bag was stolen. は第三者に持ち去られた場合です。

判断がつかないときは I can’t find my bag.(鞄が見つかりません)から始めるのが正確で、後の手続きでも矛盾が生じません。

カード会社への連絡

  • I’d like to report my credit card stolen.(クレジットカードの盗難を届け出たいです。)
  • Could you freeze my card right away?(すぐにカードを止めていただけますか。)
  • Were there any charges after two o’clock today?(今日の2時以降に利用がありましたか。)
  • I’d like to request a replacement card.(カードの再発行をお願いしたいです。)
  • Can you send it to my hotel in Rome?(ローマのホテルに送っていただけますか。)

大使館・領事館への連絡

パスポートが鞄に入っていた場合は、警察への届出と並行して在外公館に連絡します。帰国日が迫っているときは、その旨も最初に伝えてください。

  • My passport was stolen. I need to report it.(パスポートを盗まれました。届け出が必要です。)
  • I need an emergency travel document to go back to Japan.(帰国のための渡航書が必要です。)
  • What documents do I need to bring?(どんな書類を持っていけばよいですか。)
  • My flight is the day after tomorrow.(私のフライトは明後日です。)

交通機関や店舗で被害に気づいたとき

  • I think I was pickpocketed on this train.(この電車の中ですられたようです。)
  • My bag was taken from the overhead rack.(頭上の棚から鞄を取られました。)
  • Could you make an announcement about a lost bag?(鞄の紛失について放送していただけますか。)
  • Where can I report this at the airport?(空港ではどこに届け出ればよいですか。)

フレーズが揃っても、口が動かなければ意味がありません。次は、音として体に入れるための練習方法に進みます。

音とリズムで覚える発音練習

この章の要点
  • steal は長い「イー」、still は短い「イ」。母音の長さで意味が変わる
  • stolen は「ストーレン」ではなく「ストウルン」と二重母音で
  • robbed の語尾は「ロブド」と d を軽く添える
  • 強く読むのは内容語(stolen, bag, help)だけ。機能語は弱く速く

緊急時に伝わるかどうかは、文法よりも強勢の置き方で決まります。焦って早口になっても、要点の語だけ強く出せれば相手は理解してくれます。

まず注意したいのが母音の長さです。steal は「スティール」と長めに、still は「スティル」と短く。My bag was still there. と My bag was stolen. では、伝わる内容が正反対になります。

stolen の o は二重母音です。「ストーレン」と平板に伸ばすのではなく、「ストウルン」と口を丸めてから緩める動きを入れます。第二音節の -len は弱く、ほとんど「ルン」に近い音になります。

robbed は「ロッブド」。語尾の d を落とすと robbed か rob か判別しにくくなります。逆に「ロッブドゥ」と母音を足しすぎると別の単語のように聞こえるため、d は舌先で軽く触れる程度に留めます。

文全体のリズムも練習しておきましょう。次の三文を、太字の位置を強く読む意識で三回ずつ音読してみてください。

  • My BAG was STOlen. I need HELP.(強勢は bag / sto / help)
  • SOMEone STOLE my BAG.(強勢は some / stole / bag)
  • I had my BAG STOlen at the HOtel.(強勢は bag / sto / ho)

was、my、at、the といった機能語は弱く速く流します。全部を同じ強さで読むと、かえって聞き取りにくい英語になります。

会話文に潜む間違いを直してみる

この章の要点
  • only a for a few minutes のような冠詞の余りは頻出の書き間違い
  • 物が消えた状態は has gone より It’s gone. が定型
  • Do you know のあとは平叙文の語順に戻す(間接疑問)
  • three five-dollar bills のように、後ろの名詞だけを複数形にする

日本語話者が英文を組み立てるとき、決まった場所に引っかかりが残ります。自分のつまずき方を先に知っておくと、実際の場面での精度が上がります。

冠詞の余り

誤:It was only a for a few minutes. の a は余分です。正:It was only for a few minutes. a few 自体に冠詞が含まれているため、前に a を置く必要はありません。

has gone と be gone

And now it has gone. は文法的には成り立ちますが、日常会話なら And now it’s gone. のほうが自然に響きます。has gone は「どこかへ行ってしまった」という移動の含みが強く、物が消えた状態を言うなら be gone が定型です。

間接疑問の語順

誤:Do you know how much money did you have in the wallet? では疑問文が二重になっています。正:Do you know how much money you had in the wallet? Do you know のあとは平叙文の語順に戻します。

この語順は被害状況を尋ねられる場面で頻繁に登場します。Do you remember where you left it?(どこに置いたか覚えていますか)、Can you tell me what time it happened?(何時に起きたか教えてもらえますか)。いずれも後半が「主語+動詞」の順です。

複数形の付け忘れ

誤:three five-dollar bill/正:three five-dollar bills。前の単位(dollar)は単数のまま、後ろの名詞(bills)だけを複数形にします。数えられる名詞の複数化は、金額の話になると抜けやすい部分です。

場所の言い方を引き締める

at the counter in the hotel は間違いではありませんが、at the hotel front desk や at the reception desk のほうが引き締まります。ホテルの受付は front desk、reception のどちらでも通じます。

七日間で口に定着させる練習プラン

この章の要点
  • 1日10分。三つの型から始めて、質問への応答まで広げる
  • 暗記ではなく「声に出す」ことを軸にする
  • 自分の鞄と持ち物を実際に英語で描写しておく
  • 最終日は台本を見ずに一人二役で通す

知識として理解しただけでは、現場で声になりません。口が覚えるまで音にするのが、この記事の内容を実用に変える唯一の道です。

  1. 1日目:三つの型(My bag was stolen. / I had my bag stolen. / Someone stole my bag.)を各10回、声に出す
  2. 2日目:My bag を wallet、passport、smartphone、suitcase に入れ替えて音読する
  3. 3日目:steal と rob の違いを、I was robbed. と My bag was stolen. の対比で確認しながら音読する
  4. 4日目:自分が旅行で使う鞄を、大きさ→色→素材の順に英語で描写して録音する
  5. 5日目:中身と概算金額を英語で言う。My passport, two credit cards and about three hundred dollars.
  6. 6日目:警察の六つの質問を音声で聞く想定で、答えだけを続けて言う練習をする
  7. 7日目:台本を見ずに、警察官役と学習者役を一人で交互に演じて通す

4日目と5日目は、旅行のたびに更新する価値がある作業です。自分の鞄と持ち物を英語で描写した文をメモに残しておけば、実際の場面ではそれを読み上げるだけで済みます。

自宅の机でノートを見ながら英語のフレーズを声に出して練習し、パスポートの写しと保険カードを並べている学習者の後ろ姿
出発前の10分。声に出す練習と控えの準備が、現地での落ち着きにつながります。

一人で音読していると、通じているのか不安になる瞬間があります。相手のいる環境で口に出す機会を持つと、緊張した状態でも言葉が出る感覚が育ちやすくなります。

盗難に遭いにくくするための備え

この章の要点
  • 危ないのは「体から離す」と「視界から外す」の二つ
  • 控えは紙とデータの両方で持ち、端末を失っても取り出せる場所に置く
  • パスポート写しと保険証券番号は最優先で用意する
  • 服用薬やアレルギーの英語表記も用意しておくと身を守れる

海外では、鞄が消える出来事は珍しくありません。特に危険なのは、荷物を体から離して置くことと、視界から外すことです。

書類を書くほんの数分でも、足元や背後に置いた荷物は狙われます。カフェで椅子の背に掛けたコート、テーブルの上に置いたスマートフォン、空港のカウンターで足元に下ろしたスーツケース。どれも一瞬の油断が入り込む隙になります。

出発前に控えておくと役立つものを挙げておきます。パスポートの写真ページの写し、海外旅行保険の証券番号と緊急連絡先、宿泊先の名称・住所・電話番号、カード会社と携帯電話会社の海外からの連絡先、渡航先の緊急通報番号。

これらは紙とデータの両方で持ち、データは端末を失っても取り出せる場所に保管しておくのが安全です。服用中の薬やアレルギーの英語表記も、思わぬ場面で身を守ります。

そして何より、被害を伝える英語そのものを口が覚えるまで声に出しておくことです。My bag was stolen. I need help. この二文が最初に出れば、あとは相手が質問を重ねてくれます。完璧な文法よりも、何が起きて何をしてほしいのかが伝わることのほうが、その場では何倍も価値を持ちます。

よくある質問

この章の要点
  • 迷いやすい点を質問形式で確認できる
  • 試験の解答としての正解と、会話での自然さは必ずしも一致しない
  • lost と stolen の区別は補償手続きにも影響する

最後に、学習者からよく挙がる疑問をまとめました。気になる項目だけ拾い読みしても役に立ちます。

「鞄を盗まれた」の英訳として、テストではどれを書くのが正解ですか?

問題文が「私は鞄を盗まれた」と主語を「私」に置いている場合は、I had my bag stolen. が想定解答になることが多いです。主語の指定がなければ My bag was stolen. でも正解として扱われます。いずれの場合も I was stolen my bag. は誤りです。

I was robbed. と My bag was stolen. はどう使い分けますか?

rob は人や場所を目的語に取る動詞なので、I was robbed. は「自分が強盗に遭った」という意味になり、暴力や脅迫を伴う状況で使われます。steal は物を目的語に取るため、気づかないうちに持ち去られた場合は My bag was stolen. が適切です。物を明示して奪われたと言いたいときは I was robbed of my bag. と of でつなぎます。

was stolen と got stolen に意味の違いはありますか?

意味はほぼ同じで、どちらも通じます。got のほうが会話的で、その瞬間に起きた出来事という感じが強く出ます。届出書や保険会社へ提出する文章では was stolen のほうが落ち着いた印象になり無難です。

盗まれたのか置き忘れたのかわからないときは、どう言えばよいですか?

I can’t find my bag.(鞄が見つかりません)から始めるのが正確です。断定を避けたい場合は Someone might have taken it.(誰かが持っていったかもしれません)と可能性の形にできます。lost と stolen は保険の補償の扱いが変わることがあるため、確認できていない段階で stolen と断言しないほうが後の手続きで矛盾が生じません。

警察に届け出るとき、まず何と言えば通じますか?

I need to report a theft.(窃盗の届けを出したいです)が最も汎用性の高い一言です。そのうえで My bag was stolen at the hotel this afternoon. のように場所と時刻を添えると、担当者が必要な書類を判断しやすくなります。保険請求を予定しているなら、手続きの最後に Could I get a copy of the police report? と控えを依頼してください。

鞄の特徴を英語で説明するとき、形容詞はどの順番に並べますか?

大きさ、形、古さ、色、出身、素材、名詞という順が原則です。a small blue leather shoulder bag のようになります。言葉に詰まった場合は、手で大きさを示しながら It’s about this big. と言えば十分に伝わります。

fill in と fill out はどちらを使うべきですか?

どちらでも通じます。イギリス英語では fill in、アメリカ英語では fill out が好まれる傾向があります。警察署では You need to fill out this form. と言われる場面が多いため、両方を聞いてわかる状態にしておけば十分です。

覚えておきたい要点の整理

この章の要点
  • 三つの型を押さえれば、どの場面にも対応できる
  • I was stolen my bag. は受動態の主語と steal の文型の二点で成立しない
  • 人には rob、物には steal
  • 直後は現在完了、時刻や場所を添えるときは過去形

「鞄を盗まれた」を英語にするときは、盗まれた物を主語にした My bag was stolen.、自分を主語にした I had my bag stolen.、犯人を主語にした Someone stole my bag. の三つを押さえておけば、どんな場面にも対応できます。

I was stolen my bag. が成り立たないのは、受動態の主語の選び方と steal の文型という二つの理由からです。受動態の主語には能動態の目的語が入り、steal は目的語を一つしか取りません。

rob は人や場所を目的語にする動詞なので、I was robbed. や I was robbed of my bag. という形をとります。人には rob、物には steal。この一点を区別できていれば、状況を誤解されることはありません。

被害の直後は My bag has been stolen. と現在完了で、時刻や場所を添えて説明する段階では過去形で。特徴は大きさ・色・素材の順に並べ、中身は貴重品から。最後に Could I get a copy of the police report? と控えを頼むところまでが一連の流れです。

使う日が来ないのがいちばんです。それでも、この一群の英語を口に入れておくことは、旅の安心をひとつ増やす備えになります。次の旅の前に、My bag was stolen. I need help. の二文だけでも声に出しておいてください。