オフィスの電話を取ったら、受話器の向こうから英語が聞こえてきた。しかも名前を告げられた担当者は、今まさに席にいない——。この瞬間の頭の真っ白さは、経験した人にしか分からない種類の焦りです。
けれども安心してください。英語の不在対応で使う表現は、驚くほど数が限られています。必要なのは語彙力ではなく、やりとりの「型」を先に知っておくことだけです。実際、この記事で扱う中心的なフレーズは中学英語の範囲で組み立てられています。
この記事では、不在対応を4つのステップに分解し、第一声から不在の伝え方、戻り時間の説明、伝言の預かり方、電話番号やつづりの復唱、聞き取れないときの逃げ道、そして自分がかけた側で相手が不在だった場合まで、そのまま声に出して使える形で並べていきます。読み終えたときには、次に電話が鳴ったときの手順が頭の中で一本の線になっているはずです。より実践的に会話のテンポまで身につけたい方は、英語教室でロールプレイを重ねる方法も選択肢になります。
まずは、なぜ電話で頭が真っ白になるのか、その正体から見ていきましょう。
- 英語の電話で固まる本当の理由は「次の一手」が決まっていないから
- オフィスでの不在対応|会話例をまるごと1本
- ステップ2|相手の名前と会社名を確実に押さえる
- ステップ2.5|取り次ぎと保留のフレーズ
- ステップ3|「本人が電話に出られない」を失礼なく伝える
- ステップ4|伝言を預かる・折り返しを提案する
- 数字とスペルを確実に復唱する技術
- 携帯番号を教えるかどうかの判断基準
- 聞き取れないとき・困ったときの対処法
- 電話を切るときの締め方
- 自分がかけた側で、相手が不在だったとき
- 留守番電話への対応と応答メッセージ
- 誤解を招きやすい表現の使い分け
- そのまま使える伝言メモの型
- 緊張を減らすための現実的な工夫と練習メニュー
- よくある疑問Q&A(FAQ)
- まとめ:次に電話が鳴ったときのために
英語の電話で固まる本当の理由は「次の一手」が決まっていないから
- 電話で固まる原因は語彙不足ではなく、会話の進行手順が決まっていないこと
- 不在対応は「名乗る→相手を確認→不在と戻りを伝える→次の行動を決める」の4ステップで固定できる
- ステップを飛ばして不在だけ伝えると、伝言メモが書けず後で困る
- 各ステップに言い方を1つずつ持てば、それだけで会話は成立する
英語の電話で言葉が出てこなくなる最大の原因は、次に何を言うべきか決まっていないことにあります。単語を知らないからではありません。
理由は単純です。人は「選択肢が多すぎる状態」で判断を求められると動けなくなります。日本語の電話なら手順が体に入っているので考えずに口が動きますが、英語だと手順と語彙の両方を同時に処理しようとして負荷が跳ね上がるのです。
そこで、手順の側を完全に固定してしまいます。名指しされた本人が電話に出られない場合、やることは常に次の4つだけです。
- 名乗って用件を聞く
- 相手の名前と会社名を確認する
- 本人が出られない事実と、戻りの見込みを伝える
- 伝言を預かるか、折り返しを提案するか、かけ直してもらうかを決める
この4つが頭に入っていれば、あとは各ステップに1つずつ言い方をストックするだけで会話が成立します。4ステップ×1フレーズ、つまり4文で最低限の応対は完結するということです。
逆に、この順番を崩すと実務で困ります。特に多いのが、ステップ2を飛ばしてステップ3に進んでしまうケースです。相手の名前を聞かないまま「不在です」と伝えてしまうと、相手が「では伝言をお願いします」と言い出したときに、慌てて名前を聞き直すことになります。
相手が名乗らずに「Is Mr. Yamamoto there?」だけで切り出してくることは珍しくありません。ここで遠慮して名前を聞かないと、伝言メモの「誰から」の欄が空白のまま残り、担当者が折り返せなくなります。名前の確認は遠慮ではなく業務の一部だと考えてください。
つまり、英語の電話応対で最初に投資すべきは単語帳ではなく、この4ステップの順番です。手順が固定されていれば、多少聞き取れない部分があっても会話は前に進みます。

では、この4ステップが実際の会話ではどう流れるのでしょうか。まずは一本まるごと通して見てみます。
オフィスでの不在対応|会話例をまるごと1本
- 不在対応の会話は中学英語レベルの短文だけで完全に成立する
- 背骨になるのは「不在の告知」「伝言の提案」「番号の確認」の3文
- 相手からの「いつ戻るか」「別の連絡先は」という質問はほぼ定番なので先に想定できる
- 語彙を増やす前に、決まり文句を口に馴染ませることが最短ルート
結論から言えば、不在対応の会話は短い定型文の連続で成り立っています。以下の会話例に、難しい単語や複雑な構文は一つも出てきません。
- 会話例(受電・担当者が外出中)
- 担当者:Good morning. ABC Corporation, may I help you?
取引先:Yes, please. This is Mr. Bush from XYZ Corporation. Could I speak to Mr. Yamamoto?
担当者:I’m afraid he is out of the office.
取引先:When will he be there?
担当者:Well, I expect him back after three o’clock. Would you like to leave a message?
取引先:Yes, could you tell him to call me back?
担当者:All right. Could you tell me your phone number?
取引先:OK. It’s 070-3333-3333. I need his call by 5 p.m. It’s urgent. Or, can you give me a number to get in touch with him?
担当者:Sure. His cell phone number is 090-111-2222.
取引先:Thank you.
担当者:You’re welcome. - 日本語訳
- 担当者:おはようございます。ABC社です、ご用件をどうぞ。
取引先:はい、お願いします。XYZ社のブッシュです。山本さんはいらっしゃいますか。
担当者:この会話に登場する語句を分解すると、次のようになります。Corporation は「法人」、client は「顧客・お得意様」、This is ~ from … は「…の~です」という電話特有の名乗り方です。
Could I speak to ~? は「~さんをお願いします」、I’m afraid ~ は「
さらに tell ~ to … は「~に…するよう伝える」、by ~ は「~までに」、urgent は「緊急の」、get in touch with ~ は「~と連絡を取る」、cell phone は「携帯電話」。どれも見慣れた語ばかりです。
それでも用件は完全に成立しています。ここが英語の電話応対の本質で、語彙を増やす前にやるべきことは決まり文句を口に馴染ませることなのです。
全体像が見えたところで、ここからは各ステップを一つずつ分解していきます。最初は受話器を取った瞬間の第一声です。
ステップ1|電話を受けるときの第一声と名乗り方
- 第一声は「社名のみ」「社名+自分の名前」「お礼から入る」の3パターンで足りる
- 時間帯のあいさつを頭に付けるだけで印象が柔らかくなる
- 自分の名前は This is Sato. か Sato speaking. が定番で、I am Sato. は電話では不自然
- How may I help you? はより丁寧な響きになる
受話器を取った瞬間の第一声は、3パターンだけ用意すれば十分です。社名だけを言う型、社名と自分の名前を言う型、お礼から入る型の三種類です。
なぜ3つで足りるのか。第一声の役割は「どこにつながったか」を相手に知らせることだけであり、それ以上の情報は不要だからです。凝った言い方をしても、相手が求めているのは社名の確認です。
- フレーズ
- ABC Corporation, may I help you?
- 日本語訳
- ABC社です。ご用件をどうぞ。
- 使う場面
- 代表電話で受電し、まだ自分が担当かどうか分からない段階。最短で確実に名乗れる型です。
- 注意点
- 社名の英文表記は登記上の正式名称に合わせます。Corporation、Inc.、Ltd.、Co., Ltd. を自己判断で言い換えると、後の書類確認で混乱が生じます。
- 発音・ニュアンス
- 社名の後で軽く息を置き、may I help you? を上げ調子で終えます。社名を早口にすると聞き取ってもらえないので、社名だけはゆっくり丁寧に。
- フレーズ
- Thank you for calling ABC Corporation. This is Sato speaking.
- 日本語訳
- お電話ありがとうございます。ABC社の佐藤です。
- 使う場面
- 自分が窓口として応対を引き受ける場面。名前まで告げると、相手が後で「先ほどの佐藤さん」と指名できます。
- 注意点
- I am Sato. は文法的には正しいものの、電話ではほとんど使われません。This is Sato. または Sato speaking. を選びます。
- 発音・ニュアンス
- Thank you for calling は「サンキューフォコーリン」と一続きで軽く流し、社名で音量を戻すとメリハリが出ます。
3つ目の型は Hello, ABC Corporation, Sato speaking. How can I help you? です。How can I help you? と May I help you? を混ぜて How may I help you? とすると、より丁寧な響きになります。
時間帯に合わせて Good morning. や Good afternoon. を頭に付けるだけで印象がぐっと柔らかくなるのは、日本語とまったく同じ感覚です。緊張して早口になりそうなときこそ、この一言が呼吸を整えてくれます。
なお、かかってきた電話が自分宛てだった場合の返しも一緒に覚えておくと便利です。This is he. This is she. That’ll be me. This is Sato speaking. のいずれかで「私です」を表せます。
第一声が固まったら、次はステップ2。相手が誰なのかを確実に押さえる場面です。
ステップ2|相手の名前と会社名を確実に押さえる
- 名前と会社名を聞くのは失礼ではなく、伝言を成立させるための必須手順
- 聞き取れた名前はその場で復唱して自分で検証する
- May I ask who’s calling? は「どちら様でしょうか」に相当する定番
- 同姓の社員が複数いる場合は部署や下の名前で絞り込む
相手の名前と会社名の確認は、遠慮せずに必ず行うのが正解です。ここを飛ばすと、後の工程すべてが崩れます。
理由は実務的なものです。担当者が折り返すには、誰にどこへかけるのかが分からなければ話になりません。名前を聞くのは詰問ではなく、相手の用件を確実に届けるための作業です。
- フレーズ
- May I ask who’s calling, please?
- 日本語訳
- どちら様でしょうか。
- 使う場面
- 相手が名乗らずに担当者の名前だけを告げてきたとき。取り次ぎ前に必ず挟みます。
- 注意点
- Who are you? は同じ意味に見えて非常に直接的で、詰問の響きになります。電話では使いません。
- 発音・ニュアンス
- who’s calling を「フーズコーリン」とつなげ、最後の please を下げ調子で添えると柔らかくまとまります。
名前と会社名を聞く言い方は、状況に応じていくつか持っておくと便利です。May I have your name, please?(お名前を伺えますか)、Could you tell me the name of your company?(御社名を教えていただけますか)が基本形です。
聞き取れなかったときは I’m sorry, could I have your name again?(恐れ入りますが、もう一度お名前をお願いできますか)。つづりが分からないときは Would you mind spelling your name, please?(お名前のつづりを教えていただけますか)を使います。
そして最大のコツは、聞き取れた名前をその場で復唱することです。Mr. Bush of XYZ Corporation. Thank you. と繰り返せば、聞き間違いを自分で検証できます。同時に相手にも「正しく伝わった」という安心感が生まれます。
同姓の社員が複数いるとき
日本の会社では、佐藤・鈴木・田中といった名字が複数いるのが普通です。取り次ぎ先を絞り込む一言があると、内線の取り違えという事故を防げます。
- フレーズ
- There are two Satos here. Do you know which department he belongs to?
- 日本語訳
- 佐藤は二人おりますが、部署はお分かりですか。
- 使う場面
- 名字だけで担当者を特定できないとき。部署が分からなければ Do you know his first name, by any chance?(下のお名前はお分かりでしょうか)と続けます。
- 注意点
- 相手が分からない場合に責める調子にならないよう、by any chance を添えて「もし分かれば」という含みを持たせます。
- 発音・ニュアンス
- department は「ディパートメント」の第二音節を強く。belongs to は「ビロングストゥ」と軽く流します。
相手が特定できたら、今度は本人が電話に出られるかどうかを確認する番です。ここで相手を待たせることになります。
ステップ2.5|取り次ぎと保留のフレーズ
- 無言で保留にせず、必ず「少々お待ちください」を添える
- 保留解除の Thank you for holding. は日本語の「お待たせいたしました」と同じ働き
- 転送は I’ll put you through. / I’ll transfer you to ~ が定番
- 社内へ取り次ぐときは相手名・会社名・回線番号の三点を伝える
保留にする前には、必ず一言添えるのが鉄則です。無言のまま保留音に切り替わると、相手は電話が切れたのかと不安になります。
理由は、電話では相手の顔が見えないぶん、沈黙の意味を推測できないからです。対面なら「席を確認しに行った」と目で分かりますが、電話では説明されない限り伝わりません。
保留と取り次ぎの定番フレーズは以下の通りです。
- Just a moment, please.(少々お待ちください)
- Hold on, please. / Please hold for just a minute.(少々お待ちください)
- Would you mind holding while I check?(確認いたしますので、少々お待ちいただけますか)
- I’ll put you through.(おつなぎします)
- I’ll transfer you to the person in charge.(担当の者におつなぎします)
- Let me transfer you to the Sales Department.(営業部におつなぎします)
- Thank you for holding.(お待たせいたしました)
保留を解除したときの Thank you for holding. は、日本語の「お待たせいたしました」と完全に同じ働きをします。ここを省略して唐突に本題へ戻ると、少し素っ気ない印象を与えます。
社内の同僚に取り次ぐときは、Yamamoto-san, you have a phone call from Mr. Bush of XYZ Corporation on line 2.(山本さん、XYZ社のブッシュさんから2番にお電話です)のように、相手・会社名・回線番号の三点を伝えます。
保留が長引きそうなときは、途中で一度戻って「まだ確認中です」と伝えます。目安として30秒以上待たせる場合は、He seems to be away from his desk. Would you like to keep holding, or shall I take a message?(席にいないようです。そのままお待ちになりますか、それとも伝言を承りましょうか)と選択肢を示すほうが親切です。
さて、確認に行ったところ本人は席にいませんでした。いよいよこの記事の中心、不在の伝え方です。
ステップ3|「本人が電話に出られない」を失礼なく伝える
- 不在の告知は I’m afraid / I’m sorry, but をクッションとして頭に置く
- 外出・離席・会議中・別の電話・出張・退勤で言い方が変わる
- 理由を明示したくないときは not available が万能
- 「席」は seat ではなく desk。away from his desk が正しい形
不在を伝えるときは、冒頭にクッション表現を置くのが基本形です。I’m afraid または I’m sorry, but を先頭に添えます。
理由は、これから伝える内容が相手の希望に沿わないものだからです。予告なしに He is out. と言い切ると、事実としては正しくても突き放したような響きになります。
状況別の不在の言い方
外出している場合は I’m afraid he is out of the office right now.(ただいま外出しております)、He is out at the moment.、He is not in the office today.(本日は不在にしております)が使えます。
席を離れているだけなら I’m sorry, but he is away from his desk.(ただいま席を外しております)。会議中なら I’m afraid he is in a meeting right now.、He is at a meeting until five.(5時まで打ち合わせです)。
別の電話に出ているなら I’m sorry. He is on another line.(ただいま他の電話に出ております)。出張中なら I’m afraid he is on a business trip until Thursday.(木曜日まで出張しております)。すでに退勤していれば He has already left for the day.(本日はもう退社いたしました)。
- フレーズ
- I’m afraid he is not available at the moment.
- 日本語訳
言わないほうがよい不在理由
日本語で「トイレに行っています」とは言わないのと同じで、英語にも伝えるべきでない情報があります。事実であっても口にしない表現があるのです。
He is in the restroom.(トイレです)、He is having a break right now.(休憩中です)、He is too busy to talk to you.(忙しくて話せません)はいずれも避けます。休憩中だと伝えれば時間帯によって相手に不快感を与えかねず、「忙しくて話せない」は相手の用件を軽く見ていると受け取られます。
理由をぼかす代わりに、次の行動をこちらから提示するのが礼儀です。He is away from his desk at the moment. Could I take a message? のように、不在の告知と対応案をセットで出すと会話が前に進みます。
もう一つ、日本語の「席」を英語にするとき seat を使いたくなりますが、オフィスの自席は desk です。away from his seat は劇場や乗り物の座席を思わせるので、away from his desk と覚えてしまいましょう。
戻り時間の伝え方と前置詞の落とし穴
相手が最も知りたいのは「いつ連絡が取れるか」です。不在の事実だけを伝えて終わると、相手は次の行動を決められません。
- I expect him back after three o’clock.(3時過ぎには戻ると思います)
- He should be back by five.(5時までには戻る予定です)
- He will be back in an hour.(1時間ほどで戻ります)
- He’ll be in the office after lunch.(昼休み後には在席しております)
- He is at a meeting until four. It’s scheduled to end at four o’clock.(4時まで会議で、4時に終わる予定です)
- I’m afraid I’m not sure when he’ll be back.(申し訳ありませんが、戻りの時間は分かりません)
ここで前置詞を混同すると意味が変わってしまいます。by five は「5時までには(それより前に)」という期限、until five は「5時まで(ずっと続く)」という継続を表します。
つまり He will be back by five. は5時前に戻る見込み、He is in a meeting until five. は5時まで会議が続くという意味です。冒頭の会話にあった I need his call by 5 p.m. も「5時までに電話がほしい」という期限の表現でした。
戻り時刻が読めないときに、根拠のない He will be back soon. を言うのは避けてください。相手が待ってしまい、結果的に信頼を損ねます。分からないなら分からないと伝え、I’ll ask him to call you as soon as he gets back.(戻り次第、折り返すよう伝えます)と続けるほうが誠実です。
不在と戻り時間を伝えたら、会話はいよいよ最終ステップへ。相手に次の一手を選んでもらう場面です。

ステップ4|伝言を預かる・折り返しを提案する
- 不在を伝えたら必ず次の一手を提案し、判断は相手に委ねる
- 伝言で聞くべきは名前・会社名・電話番号・用件・折り返し希望時間の5点
- Let me write that down. でメモの時間を堂々と確保できる
- 急ぎの用件なら別の担当者に回すほうが相手のためになる
不在を告げた直後には、必ず選択肢を差し出すのが最も丁寧な形です。相手に決めてもらう構えを取ります。
理由は、相手の用件の緊急度をこちらが判断できないからです。急ぎなら別の担当者に回してほしいかもしれず、本人でなければ意味のない話なら折り返しを待つでしょう。選択肢を並べれば、相手が自分に最適な道を選べます。
選択肢を差し出すフレーズ
- Would you like to leave a message?(ご伝言を承りましょうか)
- Could I take a message?(伝言をお預かりしましょうか)
- Should I have him call you back?(折り返しお電話させましょうか)
- Would you like him to call you back later?(後ほど折り返しさせましょうか)
- I’ll tell him you called.(お電話があったことをお伝えしておきます)
- Would you like to hold?(そのままお待ちになりますか)
- Could you call again after three?(3時過ぎにおかけ直しいただけますでしょうか)
- Is there anyone else who can help you?(他の者でお役に立てることはございますか)
急ぎの用件なら、担当者を待たずに別の社員へ回すほうが相手のためになります。Let me transfer you to someone in the same department.(同じ部署の者におつなぎします)という選択肢も持っておくとよいでしょう。
伝言を受けるときの5つの質問
伝言を預かると決まったら、聞き取るべき情報は五つです。相手の名前、会社名、電話番号、用件、そして折り返しの希望時間。この五つを埋める質問を順番に出していきます。
- May I have your name again, please?(もう一度お名前をお願いできますか)
- May I have your phone number?(お電話番号をいただけますか)
- May I have your email address?(メールアドレスを教えていただけますか)
- What is this regarding?(どのようなご用件でしょうか)
- When would be a good time for him to call you back?(何時ごろに折り返すのがご都合よろしいですか)
- Just a moment. Let me write that down.(書き留めますので少々お待ちください)
- Let me repeat your information.(いただいた内容を復唱いたします)
- I’ll make sure he gets the message.(必ず申し伝えます)
- フレーズ
- Just a moment. Let me write that down.
- 日本語訳
- 少々お待ちください。書き留めます。
- 使う場面
- 相手が早口で情報を並べ始めたとき。メモを取る時間を堂々と確保でき、相手のペースに崩されずに済みます。
- 注意点
- 言わずに黙って書き始めると、相手は無言の理由が分からず不安になります。「今から書く」と宣言することが目的の一言です。
- 発音・ニュアンス
- write that down は「ライダッダウン」とつながります。急がず、むしろゆっくり言うほうが「待ってほしい」意図が伝わります。
では、聞き取った番号やつづりはどう確認すればよいのでしょうか。ここが実務で最も間違いが起きやすい部分です。
数字とスペルを確実に復唱する技術
- 電話番号は聞き取ったらその場で読み上げて確認する
- 英語では数字を一桁ずつ読み、0 はオーまたはゼロ
- 同じ数字が続くときは double three のようにまとめることがある
- つづりの確認にはフォネティックコード(通話表)が有効
電話番号は、聞き取ったらその場で必ず読み上げて確認します。後で確認する機会はありません。
理由は、番号を一桁でも聞き間違えると折り返しが不可能になり、伝言そのものが無意味になるからです。用件を完璧に聞き取っていても、番号が違えば意味を失います。
- フレーズ
- Let me confirm. That’s 070-3333-3333, correct?
- 日本語訳
- 確認いたします。070-3333-3333でお間違いないでしょうか。
- 使う場面
- 電話番号やメールアドレス、日時など、間違いが致命的になる情報を聞き取った直後。
- 注意点
- 相手が double three とまとめて言った場合、自分の復唱では three, three と一桁ずつ読むほうが安全です。まとめ読みは聞き間違いの原因になります。
- 発音・ニュアンス
- 数字は3〜4桁ごとに区切って読み、区切りで一拍置きます。最後の correct? を上げ調子にすると確認の意図が明確になります。
名前や会社名のつづりが取れないときは、フォネティックコード(通話表)が助けになります。H as in Hotel, I as in India のように、その文字で始まる単語を添えて伝える方式です。
暗記する必要はありません。電話機のそばに一枚貼っておくだけで十分です。as in の代わりに as や for を使う話者もいます。
自分の名前を伝えるときにも使えるので、社名と自分の名前のつづりだけは事前に組み立てSato, S as in Sierra, A as in Alpha, T as in Tango, O as in Oscar. と一度声に出しておきましょう。
ところで冒頭の会話では、相手に担当者の携帯番号を伝えていました。これは実務では判断が必要な場面です。
携帯番号を教えるかどうかの判断基準
- 社外に個人の携帯番号を伝えるかは会社のルールと本人の意向で決まる
- 判断がつかないときは番号を出さずに用件を成立させる言い方を使う
- 「すぐ連絡して折り返させます」で相手の目的は満たせる
- どちらが正しいかではなく、事前に方針を決めておくことが重要
社外の相手に個人の携帯番号を伝えるかどうかは、事前に方針を決めておくことが肝心です。その場で悩むと対応が中途半端になります。
理由は、この判断が語学の問題ではなく社内ルールの問題だからです。冒頭の会話のように「緊急時は携帯を案内してよい」と決まっているなら即答が親切ですし、原則non-disclosureなら別の道を用意すべきです。
番号を明かさずに用件を成立させる言い方を、いくつか持っておきましょう。
- I’m afraid I can’t give out his mobile number, but I’ll contact him right away and ask him to call you.(携帯番号はお伝えできませんが、すぐに連絡して折り返すよう伝えます)
- Let me reach him and have him call you back within the next few minutes.(本人に連絡を取り、数分以内に折り返させます)
- If it’s urgent, I can email him right now.(お急ぎでしたら、今すぐメールで連絡いたします)
こう返せば、番号を出さずに「すぐ対応してほしい」という相手の目的は満たせます。相手が求めているのは番号そのものではなく、担当者と早く話せることだからです。
逆に社内で案内が許可されている場合は、Sure. His cell phone number is … と即答するのが親切です。どちらが正しいという話ではありません。
ここまでは会話が順調に進む前提で見てきました。次は、聞き取れないときや想定外の事態が起きたときの備えです。
聞き取れないとき・困ったときの対処法
- 聞き返すのは失礼ではなく、用件を取り違えるほうが迷惑になる
- Could you repeat that? と Do you mean …? の2文で精度が大きく変わる
- 間違い電話・退職者への電話・部署違いには専用の言い方がある
- 退職者の転職先や個人の連絡先は答えない
最後に、聞き返すのは失礼ではありません。分からないまま話を進めて用件を取り違えるほうが、はるかに大きな迷惑になります。
理由は明白です。電話応対の目的は「会話を滑らかに見せること」ではなく「用件を正確に届けること」だからです。目的に照らせば、確認は手抜きではなく品質管理です。
聞き返すフレーズ
- I’m sorry, but I can’t hear you very well. Could you repeat that?(お電話が遠いようです。もう一度お願いできますか)
- Could you speak more slowly, please?(もう少しゆっくりお話しいただけますか)
- Could you speak a little louder, please?(もう少し大きな声でお願いできますか)
- I’m having trouble hearing you.(よく聞こえないのですが)
- The reception is not very good.(電波状況が良くないようです)
- Do you mean …?(つまり…ということでしょうか)
Could you repeat that? と Do you mean …? の二つを言えるようになると、聞き取りの精度が体感で大きく変わります。相手の言葉を自分の言葉で言い直して確認する習慣は、対面の会話以上に電話で効きます。
- フレーズ
- I’m sorry, but I can’t hear you very well. Could you repeat that?
- 日本語訳
- 申し訳ありません、お電話が遠いようです。もう一度お願いできますか。
- 使う場面
- 相手の声が小さい、早口、雑音が多いなど、聞き取れない理由を回線側に置いて聞き返したいとき。
- 注意点
- What? だけを返すのは避けます。単語としては通じますが、電話では素っ気なく響きます。Pardon? や Sorry? のほうが安全です。
- 発音・ニュアンス
- can’t hear you の hear you は「ヒアユー」がつながって「ヒアユ」に。repeat that は「リピーダッ」と軽く落とします。
間違い電話・退職・部署違い
- I’m afraid you’ve reached the wrong number.(番号をお間違えのようです)
- There is no one named Sato here.(佐藤という者はこちらにはおりません)
- Excuse me, what number are you calling?(失礼ですが、何番におかけでしょうか)
- I’m afraid Mr. Sasaki has already left the company.(佐々木は退職いたしました)
- He no longer works here, but I can connect you to his successor.(本人は退職しましたが、後任におつなぎできます)
- I’m sorry, that’s not our department. Let me transfer you.(担当部署が異なりますので、おつなぎします)
- I picked up the wrong extension.(内線を取り違えてしまいました)
退職者への電話は特に慎重に扱ってください。転職先や個人の連絡先を尋ねられても答えてはいけません。後任者を案内する形に切り替えるのが正しい対応です。
英語が話せる人に代わる
最後の逃げ道を用意しておくと、心の余裕が生まれます。使わずに済むことのほうが多いはずですが、持っているだけで受話器を取る手が軽くなります。
- Hold the line, please. I will get someone who speaks English.(そのままお待ちください。英語が話せる者に代わります)
- I will transfer you to someone who can help you in English.(英語で対応できる者におつなぎします)
- I’m sorry, my English is limited. Could you send us an email instead?(英語が不得手なため、メールでご連絡いただけますでしょうか)
では、無事に用件を聞き終えたあと、どう会話を締めればよいのでしょうか。
電話を切るときの締め方
- 切る直前に「次に何が起こるか」を一度だけまとめて言う
- 番号・時刻・行為者の三点を並べると認識がそろう
- Is there anything else I can help you with? で取りこぼしを防ぐ
- Thank you for calling. と Have a nice day. で気持ちよく締める
電話を切る直前には、次に何が起こるかを要約します。これが認識のずれを防ぐ最後の関門です。
理由は、電話では記録が残らないからです。メールなら文面を読み返せますが、電話は双方の記憶だけが頼りです。締めの要約が、その記憶を一致させます。
- Is there anything else I can help you with?(他にご用件はございますか)
- Thank you for calling.(お電話ありがとうございました)
- Have a nice day.(よい一日をお過ごしください)
- I’ll make sure he calls you back before five.(5時までに折り返すよう申し伝えます)
- I’m afraid I have to get going now.(恐れ入りますが、そろそろ失礼いたします)
具体例を挙げると、So, he will call you at 070-3333-3333 before five. Thank you for calling. のように、番号・時刻・行為者を並べて締めるのが確実です。
この一文があるだけで、相手は「自分の用件が正しく理解された」と確認できます。切った後の不安が残りません。
ここまでは受ける側の話でした。次は立場を入れ替えて、自分がかけた側で相手が不在だった場合を見ていきます。
自分がかけた側で、相手が不在だったとき
- 受ける側とかける側のフレーズは対になっており、セットで覚えると定着が早い
- 不在と言われたら「戻り時間を聞く」「伝言を頼む」「かけ直す」「別の担当者を求める」の4択
- 急ぎなら別の担当者に代わってもらうほうが早く解決する
- 携帯にかけ直すときは相手の状況を気遣う一言を添える
かける側のフレーズは、受ける側と対で覚えるのが効率的です。表と裏をセットにすると記憶の定着が早くなります。
理由は、同じ場面を別の視点から言い換えているだけだからです。Would you like to leave a message? と Could I leave a message? は、同じ状況の裏表です。
名乗りと用件の伝え方
- フレーズ
- Hello, this is Sato of ABC Corporation. Could I speak to Mr. Bush?
- 日本語訳
- ABC社の佐藤です。ブッシュさんをお願いできますか。
- 使う場面
- 取引先の代表番号にかけて、担当者を呼び出してもらうとき。続けて I’m calling to inquire about your products.(御社の製品についてお伺いしたくお電話しました)のように用件を添えます。
- 注意点
- this is Sato of ABC の of は from でも構いません。名乗りを省いて担当者名だけを告げると、受け手が伝言メモを書けず手間をかけます。
- 発音・ニュアンス
- 自分の名前と社名は、相手が書き取れる速度でゆっくり。Could I speak to は「クダイスピークトゥ」と一息でつなげます。
不在と言われたときの4つの選択肢
- Do you know what time he will be back?(何時ごろお戻りになりますか)
- Could I leave a message?(伝言をお願いできますか)
- Would you mind taking a message for me?(伝言をお願いできますでしょうか)
- Would you mind asking him to call me back?(折り返しをお願いできますでしょうか)
- Could you tell him to call me back before three?(3時までに折り返すようお伝えいただけますか)
- Let me give you my number.(電話番号を申し上げます)
- Could you tell him I called?(お電話した旨をお伝えいただけますか)
- I’ll call back later this afternoon.(午後にまたお電話いたします)
- Then please tell him that I’ll send him an email.(では、メールをお送りするとお伝えください)
- Is there someone else I can speak to about this matter?(本件について分かる別のご担当者はいらっしゃいますか)
急ぎの用件なら、伝言よりも「別の担当者に代わってもらう」ほうが早く解決します。最後の一文はその切り札です。
携帯にかけ直す場合は、Hello. Is this Mr. Bush’s mobile phone?(ブッシュさんの携帯電話でしょうか)や I just called your office and was told you are out. Could I talk to you for a moment?(先ほど御社にお電話したところ外出中と伺いました。少しお時間いただけますか)が使えます。
相手の状況を気遣う一言があるだけで、突然の携帯への着信も受け入れられやすくなります。いきなり用件に入るより、経緯を一文添えるほうが丁寧です。
そして、かけた先が人ではなく留守番電話だった場合。ここにも型があります。
留守番電話への対応と応答メッセージ
- 留守番電話に残す情報は伝言と同じ5点(名前・会社・用件・番号・希望する対応)
- 録音は聞き返せないので、番号はゆっくり2回言うと親切
- 自社の応答メッセージには営業時間を入れると時差のある相手に役立つ
- 組み立ての型を決めておけば録音でも慌てない
留守番電話に残す情報は、伝言メモと完全に同じ5点です。名前、会社、用件、番号、希望する対応です。
理由は、録音メッセージも結局は伝言だからです。違いは相手が質問して補えないという一点だけ。だからこそ、こちらから抜けなく並べる必要があります。
- フレーズ(留守番電話に残す)
- Hello, this is Sato of ABC Corporation. I’m calling regarding Mr. Bush’s visit to Japan next month. Please call me back at your convenience. My number is 03-1234-5678. Thank you.
- 日本語訳
- ABC社の佐藤です。来月のブッシュさんの来日についてご連絡しました。ご都合のよいときに折り返しをお願いします。番号は03-1234-5678です。よろしくお願いします。
- 使う場面
- 海外の企業に電話して留守番電話につながったとき。用件は一文に絞り、詳細は折り返しか後続のメールに回します。
- 注意点
- 録音は相手が聞き返せません。番号は一桁ずつゆっくり読み、可能なら最後にもう一度繰り返します。早口で長々と用件を語ると、肝心の番号が埋もれてしまいます。
- 発音・ニュアンス
- at your convenience は「アッチュアコンヴィーニエンス」。急かさない配慮を示す定型句で、緊急時は as soon as possible に差し替えます。
自社の応答メッセージを英語で用意する場合は、次のような組み立てが定番です。Thank you for calling ABC Corporation. We are unable to answer the phone at the moment. Our business hours are 9 a.m. to 6 p.m., Monday to Friday. Please leave your name, number and a message after the tone, and we’ll get back to you as soon as possible.
営業時間を明示すると、時差のある相手にとって親切な案内になります。相手は次に何時にかけ直せばよいか、その場で判断できます。
フレーズが揃ってきたところで、日本語の感覚とずれやすい表現を整理しておきましょう。ここを押さえると誤解が減ります。
誤解を招きやすい表現の使い分け
- I’m afraid は事実の予告、I’m sorry は謝意が強い
- Would you mind …? への承諾は No. で表す
- expect は断定を避けて見通しを示す便利な動詞
- 英語には自社の社員を呼び捨てにする謙譲のルールがない
日本語の感覚をそのまま英語に移すと、意図と逆の意味になる表現がいくつかあります。あらかじめ知っておけば防げるものばかりです。
I’m afraid と I’m sorry
I’m afraid は「残念ながら/申し訳ありませんが」と、これから伝える内容が相手の希望に沿わないことを予告するクッションです。自分に非がない事実を伝えるときに向いています。
一方 I’m sorry は謝意が強く出るため、こちらの不手際が絡む場面と相性がよい表現です。不在の告知はどちらでも成立しますが、I’m afraid のほうが淡々として業務的な響きになります。
Would you mind …? への答え方
Would you mind holding? は直訳すると「待つことを気になさいますか」なので、承諾するときの答えは No.(いいえ、気にしません)になります。日本語の感覚で Yes. と答えると「待ちたくない」の意味になってしまいます。実際の会話では No, not at all. / Sure, no problem. / Of course not. が承諾の合図です。No = OK と結び付けて覚えておきましょう。
expect の使いどころ
expect は「期待する」と訳されがちですが、電話応対では「見込んでいる」というニュアンスで働きます。I expect him back after three. は断定を避けつつ見通しを示す便利な形です。
確定した予定なら He will be back at three.、あくまで見込みなら I expect him back around three. と使い分けると、後で齟齬が生じにくくなります。
cell phone と mobile phone
cell phone は主に北米、mobile phone はイギリスやオーストラリアなどで一般的です。どちらを使っても通じますが、相手の地域に合わせると会話がなめらかになります。省略形の cell や mobile も日常的に使われます。
Welcome と You’re welcome
Thank you. への返しは、正式には You’re welcome. です。Welcome. 単独でも通じますが、少しカジュアルな響きになります。取引先との電話では You’re welcome. / My pleasure. / Not at all. / Happy to help. のいずれかを選ぶほうが無難です。
敬称の付け方
日本語では社外の相手に自社の社員を語るとき「山本」と呼び捨てにしますが、英語にはこの謙譲のルールがありません。Mr. Yamamoto is out of the office. と敬称を付けても失礼にはなりません。
ただし、社名を英語で名乗るときの Corporation / Inc. / Ltd. / Co., Ltd. は自社の正式表記に従ってください。会社の登記上の英文名称と違う言い方をすると、後の書類確認で混乱が生じます。
表現の整理ができたら、次は実務で本当に効く道具を作ります。紙一枚で対応の質が変わります。
そのまま使える伝言メモの型
- 受話器を取る前に、記入枠を書いた紙を机に置いておく
- 枠の横に、枠を埋めるための質問文を添える
- 期限と緊急度はメモの中で最も重要な情報
- 紙を見ながら順に読むだけで必要な情報が漏れなく集まる
実務で最も効果があるのは、記入枠を先に紙に書いておくことです。空欄があれば、埋めようとして自然に質問が出ます。
理由は、電話中の脳が「聞き取り」「意味理解」「次の発話」「記録」の四つを同時に処理しているからです。記録の枠組みを外部化すれば、その分の負荷が減ります。
メモの枠は次の8項目です。Caller(お名前)/Company(会社名)/Phone(電話番号)/Regarding(用件)/Call back by(折り返し希望時刻)/Urgent?(急ぎか否か)/Taken by(受けた人)/Time(受電時刻)。
そして枠を埋めるための質問文を、枠の横に添えておきます。May I have your name, please? / Could you tell me the name of your company? / May I have your phone number? / What is this regarding? / When would be a good time for him to call you back? の五つです。
紙を見ながら順に読むだけで、必要な情報が漏れなく集まります。暗記の必要はありません。
冒頭の会話で相手が言った I need his call by 5 p.m. It’s urgent. のような期限と緊急度は、メモの中で最も重要な情報です。ここを取り違えると、他のすべてを正しく聞き取っていても意味がなくなってしまいます。時刻と urgent の有無は、必ず復唱して確認してください。
道具が揃ったら、あとは練習です。緊張を減らすための具体的な工夫を見ていきましょう。
緊張を減らすための現実的な工夫と練習メニュー
- 英語の電話が苦手な理由は語学力ではなく経験量にある
- 定型文を手元に置く・声に出す・聞き返す一文を反射化する・メモの型を用意するの4点が効く
- うまくいかなかった電話こそ、自分に必要なフレーズを教えてくれる
- 汎用的な単語帳より、自分の職場で必要だった一文を積み上げるほうが早い
英語の電話が苦手だという声の原因は、語学力ではなく経験の量にあります。ここを取り違えると、対策の方向がずれてしまいます。
苦手の理由を並べてみましょう。相手が早口である、なまりに慣れていない、表情やジェスチャーが見えない、自分の英語が伝わっているか不安、困ったときの言い方を知らない、周りの同僚に聞かれるのが恥ずかしい——。
これらは、日本語で電話を取り始めた新入社員が挙げる理由とほとんど同じです。つまり原因の大半は言語ではなく、電話という媒体そのものと場数の不足にあります。
今日からできる4つの準備
対策も同じ方向を向きます。定型文を紙に書いて手元に置く、受電のロールプレイを声に出して繰り返す、聞き取れなかったときの一文だけは反射で出るまで練習する、メモの型を用意しておく。この四つを整えるだけで、実務の手応えは変わってきます。
1週間の練習メニュー例
練習は短く、毎日繰り返すほうが定着します。以下は一例です。自分の職場の状況に合わせて入れ替えてください。
- 1日目:第一声の3パターンを各10回音読する。社名を自社の正式表記に置き換えて言えるようにする。
- 2日目:不在の言い方を状況別に音読する。外出・離席・会議中・別の電話・出張・退勤の6種類。
- 3日目:戻り時間の言い方と、by と until の使い分けを声に出して確認する。
- 4日目:伝言を受ける5つの質問を、メモの枠を見ながら順に読む練習をする。
- 5日目:自分の名前と社名をフォネティックコードで言えるようにする。電話番号も一桁ずつ読む。
- 6日目:聞き返す3文と、英語が話せる人に代わる1文を反射で出るまで繰り返す。
- 7日目:冒頭の会話例を、担当者役と取引先役の両方で通して音読する。
そして、うまくいかなかった電話は次の教材になります。「あの言い方が出てこなかった」と気づいたその表現こそ、自分の業務にとって本当に必要なフレーズです。
汎用的な単語帳よりも、自分の職場で実際に必要だった一文を積み上げていくほうが早く実戦力になります。電話のそばのメモは、そうやって少しずつ育っていきます。

音読だけでも効果はありますが、相手の返答が読めない状況での練習は一人では作れません。実際のテンポで受け答えする経験を積みたい場合は、対話形式の練習環境を利用する方法もあります。
最後に、実務で迷いやすい点をQ&A形式でまとめておきます。
よくある疑問Q&A(FAQ)
- 実務で判断に迷う場面を、想定質問の形で整理する
- 迷ったときの原則は「相手の目的を満たす別の道を示す」こと
- 用語の意味を押さえておくと、応対の理由が理解しやすくなる
担当者が不在のとき、最低限これだけ覚えればよい表現は何ですか
三つあります。I’m afraid he is out of the office.(不在の告知)、Would you like to leave a message?(伝言の提案)、Could you tell me your phone number?(番号の確認)です。この三つが背骨になっていて、口から出るようになれば不在対応の大部分は乗り切れます。あとは戻り時間の言い方と、聞き返す一言を足すだけです。
He is out. と He is not available. はどう使い分けますか
He is out. は「外出している」と場所の事実を伝えます。He is not available. は理由を明示せず「対応できない」ことだけを伝える表現です。休憩中や来客対応中など、伝えづらい事情のときは not available が便利です。ただし多用すると情報を出さない印象になるので、伝えて問題ない理由なら明示したほうが相手は次の行動を決めやすくなります。
by five と until five はどちらを使えばよいですか
意味が違うので場面で選びます。by five は「5時までには(それより前に)」という期限を表し、He will be back by five.(5時までには戻ります)のように使います。until five は「5時までずっと」という継続を表し、He is in a meeting until five.(5時まで会議です)となります。折り返しの期限を聞かれた場面では by、状態が続く期間を伝える場面では until です。
担当者の携帯番号を教えてほしいと言われたらどう答えますか
社内ルールで許可されているかどうかで決まります。判断がつかないときは I’m afraid I can’t give out his mobile number, but I’ll contact him right away and ask him to call you.(携帯番号はお伝えできませんが、すぐに連絡して折り返すよう伝えます)と返します。相手が求めているのは番号そのものではなく担当者と早く話すことなので、代替の道を示せば目的は満たせます。
相手の英語が聞き取れないとき、何回まで聞き返してよいですか
回数の決まりはありません。分からないまま進めて用件を取り違えるほうが大きな迷惑になるので、必要なだけ確認してください。同じ聞き方を繰り返すより、Could you repeat that? のあとは Do you mean …? と自分の言葉で言い直して確認するほうが早く解決します。それでも難しい場合は I’m sorry, my English is limited. Could you send us an email instead? に切り替える選択肢もあります。
Would you mind holding? に Yes と答えると、どういう意味になりますか
「待つのは困ります」という拒否の意味になります。この文は「待つことを気になさいますか」という問いなので、承諾するときは No. が正解です。実際には No, not at all. や Sure, no problem. がよく使われます。No が承諾にあたる点だけ結び付けて覚えておくと、言われた瞬間に迷いません。
退職した社員宛ての電話がかかってきたらどうしますか
I’m afraid Mr. Sasaki has already left the company.(退職いたしました)と伝え、He no longer works here, but I can connect you to his successor.(後任におつなぎできます)と続けます。転職先や個人の連絡先を尋ねられても答えてはいけません。後任者を案内する形に切り替えるのが正しい対応です。
フォネティックコードとは何ですか
アルファベットを聞き間違えないように、その文字で始まる単語を添えて伝える方式です。通話表とも呼ばれます。H as in Hotel, I as in India のように使い、B と V、M と N のような紛れやすい音を確実に区別できます。暗記は不要で、電話機のそばに一覧を貼っておけば十分です。
自社の社員に Mr. を付けて話すのは失礼になりませんか
なりません。日本語では社外の相手に自社の社員を呼び捨てにする謙譲のルールがありますが、英語にはこの慣習がありません。Mr. Yamamoto is out of the office. と敬称を付けても問題ありません。むしろ社名の英文表記を正式なものと揃えるほうが、実務上は重要です。
まとめ:次に電話が鳴ったときのために
- 不在対応の背骨は3文。不在の告知、伝言の提案、番号の確認
- 4ステップの順番とメモの枠が揃えば、聞き取りに集中できる
- 紙に書いて電話のそばに貼り、声に出して読むところから始める
ここまで並べてきたフレーズを振り返ると、背骨になっているのはたった3文だと分かります。I’m afraid he is out of the office. と Would you like to leave a message? と Could you tell me your phone number? です。
この三つが口から出るようになれば、不在対応の大部分は形になります。あとは戻り時間の言い方と、聞き返す一言を足すだけです。
思ったほど、難しい言葉は使わなくてよいのです。冒頭の会話例に出てきた表現は、どれも中学英語の範囲でした。それでも用件は完全に成立していました。
紙に書いて電話のそばに貼り、声に出して三回読む。それだけで、次に鳴った電話の音が少し違って聞こえるはずです。

