知っている人の名前なのに、今だけどうしても出てこない。昨日覚えた英単語なのに、会話になった途端に口が止まる。そんなとき、日本語では「喉まで出かかっている」と言いますが、そのまま英語に置き換えようとすると迷ってしまいます。
英語でまず覚えたいのは、It’s on the tip of my tongue. です。直訳は「それは私の舌の先にある」で、「知っているのに、あと少しで思い出せそう」というもどかしさを自然に伝えられます。
この記事では、基本の語順、主語や時制の変え方、発音、場面別の会話、似た表現との違いまで順番に見ていきます。単語が出ないときに会話を止めない説明方法も扱うため、読み終えたらそのまま音読練習に移れます。発音や会話の反応を対面で確かめたい場合は、英語教室で講師に場面を設定してもらう方法もあります。
「喉まで出かかっている」の英語はIt’s on the tip of my tongue.
- 定番の形はIt’s on the tip of my tongue.
- 「知らない」ではなく「知っているのに今だけ出ない」ときに使う
- rightを加えると「本当にあと少し」という気持ちが強まる
最初に一文だけ覚えるなら、It’s on the tip of my tongue. を選びましょう。名前、英単語、映画の題名、場所の名称などを知っているはずなのに、ほんの一時的に思い出せない場面で使えます。
英語では、発音される直前の言葉が「舌の先」に来ていると考えます。日本語は「喉」、英語は「舌の先」と場所こそ違いますが、言葉が口から出る直前で止まっているという発想はよく似ています。
- フレーズ
- It’s on the tip of my tongue.
- 日本語訳
- 喉まで出かかっているんだけど。もう少しで思い出せそう。
- 使う場面
- 知っている名前や単語を一時的に思い出せず、少し待ってほしいときに使います。
- 注意点・誤用例
- 初めて見た物の名前を知らない場合には向きません。また、It’s coming up to my throat.のようにthroatを使って直訳しません。
- 発音・ニュアンス
- 目安は「イッツ オン ザ ティポヴ マイ タング」。一語ずつ切るより、tip ofを「ティポヴ」のようにつなげると滑らかです。「記憶にはある」という含みがあります。
たとえば、目の前の俳優を見て名前を思い出そうとしているなら、What was that actor’s name? It’s on the tip of my tongue. と言えます。「名前は知らない」という意味ではなく、「分かっているはずだから少し待って」という合図になります。
さらに強く「本当にここまで来ている」と伝えたいときは、rightを加えて It’s right on the tip of my tongue. と言えます。ただし、普段の会話ではrightがなくても十分に気持ちは伝わります。
では、文の中のitやmyは、いつ、どのように変えればよいのでしょうか。ここを理解すると、自分だけでなく相手や第三者についても表現できるようになります。
主語・所有格・時制を変える基本ルール
- 対象が明らかならit、明確にしたいならnameやwordを主語にする
- myは思い出そうとしている人に合わせてyour、his、herなどに変える
- 今の状態はis、過去の状態はwasで表す
会話の流れから何を思い出そうとしているか分かるなら、It’s on the tip of my tongue. だけで自然です。英語のitは、直前に話題になった名前、題名、単語などを受けています。
思い出せない対象を主語にする
対象を明確にしたい場合は、His name、The word、The answerなどを主語にできます。His name is on the tip of my tongue. なら、「彼の名前がもう少しで出そう」という意味です。
- Her name is on the tip of my tongue.:彼女の名前が喉まで出かかっています。
- The restaurant’s name is on the tip of my tongue.:そのレストランの名前がもう少しで出てきそうです。
- The English word is on the tip of my tongue.:その英単語が喉まで出かかっています。
- The answer is right on the tip of my tongue.:答えは本当にあと少しで出てきそうです。
長い内容を主語にするなら、What I’m trying to remember is on the tip of my tongue. とも言えます。ここでのwhat I’m trying to rememberは疑問文ではなく、「私が思い出そうとしていること」という名詞のまとまりです。ただし、即座に反応したい会話では短いitの形が使いやすいでしょう。
myを思い出そうとしている人に合わせる
辞書では一般形として on the tip of one’s tongue と示されることがあります。one’sは、実際の文ではmy、your、his、her、our、theirなどに置き換えます。
- on the tip of my tongue:私が思い出せそう
- on the tip of your tongue:あなたが思い出せそう
- on the tip of his tongue:彼が思い出せそう
- on the tip of her tongue:彼女が思い出せそう
- on the tips of our tongues:私たちが思い出せそう
- on the tips of their tongues:彼らが思い出せそう
相手が考え込んでいるときは、Is it on the tip of your tongue? と尋ねられます。第三者の様子なら、The answer seems to be on the tip of his tongue. のようにseemを使い、「彼は答えを思い出しかけているようだ」と控えめに表せます。
複数の人なら、それぞれに舌があるためtonguesも複数形にするのが基本です。The title was on the tips of our tongues. は、「私たちはその題名を知っていたのに、誰もすぐには言えなかった」という状況を描けます。
現在・過去・継続を区別する
- フレーズ
- It was on the tip of my tongue, but I couldn’t remember it in time.
- 日本語訳
- 喉まで出かかっていたのですが、時間内には思い出せませんでした。
- 使う場面
- 試験、クイズ、会議など、過去の時点で思い出せなかった出来事を振り返る場面です。
- 注意点・誤用例
- 過去の話なのにIt isのままにせず、状態が起きた時点に合わせてIt wasにします。
- 発音・ニュアンス
- wasは強く読まず、文の中心となるtip、tongue、couldn’t rememberを意識します。悔しさを表すならbutの後を少し強めます。
今まさに考えているならIt’s、過去の場面ならIt wasです。朝から何度も思い出そうとしている状態は、It’s been on the tip of my tongue all morning. と表すこともできます。
ただし、何時間もまったく手がかりがないなら、I’ve been trying to remember it all morning. のほうが合う場合があります。on the tip of my tongueは、基本的に「近いうちに出てきそう」という感覚を含むからです。

tongueとフレーズ全体の発音
- tongueの語尾のueは独立した音として読まない
- tip ofは切らずにつなげる
- 内容語のtipとtongueをややはっきり発音する
このフレーズでつまずきやすいのは、tongueのつづりと発音です。tongueは、カタカナなら「タング」に近く、最後のueを「ウエ」とは読みません。英語の発音記号では一般に /tʌŋ/ と表され、語末は日本語の「グ」を強く破裂させる音ではありません。
語末の /ŋ/ は、singの最後と同じ種類の音です。舌先を上の歯茎に付けず、舌の奥を持ち上げて鼻へ響かせます。「タン・グ」と二つに分けるのではなく、一息で「タング」と収める感覚です。
短く区切ってからつなげる
- my tongueだけを三回言う
- tip of my tongueを三回言う
- on the tip of my tongueまで広げる
- It’s on the tip of my tongue.を一息で言う
最初から長い文を速く言う必要はありません。my tongue、tip of my tongue、on the tip of my tongueの順に前へ伸ばすと、口の動きが安定します。速さよりも、tip ofを滑らかにつなぐことを優先してください。
自然な会話では、It’s、on、the、of、myをすべて同じ強さでは読みません。伝えたい中心はtipとtongueなので、その二語を少しはっきりさせ、間の機能語は軽くつなぎます。「イッツ・オン・ザ・ティップ・オブ・マイ・タング」と均等に区切るより、まとまりが生まれます。
感情を声に乗せる練習
同じ文でも、言い方によって印象が変わります。落ち着いて探すなら文末を大きく上げず、考えながら少し伸ばします。今にも思い出しそうなら、It’s right on the tip of my tongue! とrightを強めると、もどかしさが伝わります。
- 考え中の声:It’s on the tip of my tongue… Give me a second.
- 惜しい声:It’s right on the tip of my tongue!
- 相手を止める声:Don’t tell me yet. It’s on the tip of my tongue.
- 思い出した声:That’s it! Now I remember.
発音できるようになったら、単独の暗唱で終わらせず、前後の一言も加えましょう。実際の会話では、なぜ黙ったのか、相手に何をしてほしいのかまで伝えると流れが止まりません。
日常・授業・仕事で使える場面別例文
- 名前、単語、題名、専門用語など幅広い対象に使える
- Give me a second.を続けると沈黙の意図が伝わる
- 改まった場面ではI can’t recallを添えると落ち着いた印象になる
基本文を実際に使える形にするには、前後の一文とセットで覚えるのが近道です。ここでは、日常会話、授業、仕事という三つの場面で、相手の反応まで含めて確認します。
人や店の名前が出てこない日常会話
- フレーズ
- What’s the name of that café near the station? It’s on the tip of my tongue.
- 日本語訳
- 駅の近くにある、あのカフェの名前は何だっけ。喉まで出かかっているんだけど。
- 使う場面
- 以前訪れた店、知人、歌手、俳優、映画などの固有名詞を思い出そうとするときです。
- 注意点・誤用例
- 店を一度も知らないなら、What’s the name of that café?だけで十分です。記憶にある場合にon the tip of my tongueを添えます。
- 発音・ニュアンス
- 最初の質問は相手への問いかけですが、後半は自分の記憶を探している独り言に近い響きです。文末を少し下げると自然です。
会話では次のように続けられます。
- 会話
- 学習者:Who sang this song? I know her name. It’s on the tip of my tongue.
会話相手:Take your time. Do you want a hint?
学習者:Not yet. I can almost remember it.
会話相手:All right. I’ll give you a second.
学習者:I’ve got it! That’s the singer I was thinking of. - 日本語訳
- 学習者:この歌を歌ったのは誰だっけ。名前は知っているんだけど、喉まで出かかっている。
会話相手:ゆっくりでいいよ。ヒントがいる?
学習者:まだ大丈夫。もう少しで思い出せそう。
会話相手:分かった。少し待つよ。
学習者:分かった! 私が考えていた歌手はその人だ。
授業中に答えが出てこない場面
- フレーズ
- Don’t tell me the answer yet. It’s on the tip of my tongue.
- 日本語訳
- まだ答えを言わないで。もう少しで思い出せそうだから。
- 使う場面
- 授業、クイズ、単語練習などで、自力で思い出す時間がほしいときに使います。
- 注意点・誤用例
- Don’t tell me.だけでは強く聞こえることがあります。yetを添えると「今はまだ」という一時的な依頼になります。
- 発音・ニュアンス
- 命令の形でも、穏やかな声でyetを軽く添えれば自然な依頼になります。pleaseを加えても構いません。
試験中に頭が真っ白になり、手がかりまで消えた場合は、on the tip of my tongueより My mind went blank. が合います。「あと少しで出そう」なのか、「何も浮かばない」のかを区別すると、状態を正確に伝えられます。
会議で用語や顧客名が出てこない場面
- フレーズ
- I can’t recall the exact term at the moment, but it’s on the tip of my tongue.
- 日本語訳
- 今は正確な用語を思い出せませんが、もう少しで出てきそうです。
- 使う場面
- 会議や打ち合わせで、正確な名称を確認しながら発言を続けたい場面です。
- 注意点・誤用例
- 顧客名などを推測で言うより、at the momentを添えて一時的に思い出せないと伝え、必要なら資料を確認します。
- 発音・ニュアンス
- recallはrememberよりやや改まった響きです。at the momentによって「今この瞬間は」という限定が加わり、落ち着いた印象になります。
仕事では、思い出そうとして長く沈黙するより、I’ll check the exact name and get back to you. と続ける選択肢もあります。「正確な名称を確認して、あらためてお伝えします」という意味で、会話を前へ進められます。
次は、目的の英単語そのものが出てこないときの会話です。ここでは、フレーズを言うだけで終わらず、形や用途を説明して相手に助けてもらいます。

単語が出ないときに会話を止めない説明の型
- 思い出せないことを伝えたら、分類・用途・外見の順で説明する
- What do you call this in English?で相手に尋ねられる
- 候補が当たったらThat’s it!で反応する
会話中に単語が出ないときは、一つの単語を無言で探し続ける必要はありません。分類、用途、外見、場所のうち、言えるものから伝えれば相手が候補を出せます。
- I can’t remember what this is called in English.と状況を伝える
- It’s a kind of stationery.と分類を示す
- You use it to fasten sheets of paper together.と用途を言う
- It’s small and made of plastic and metal.と外見や素材を加える
- Do you mean a stapler?という候補を確認する
- Yes, that’s it!と反応して単語を言い直す
文房具の名前を思い出す会話
- 会話
- 学習者:I can’t remember what this is called in English. It’s on the tip of my tongue.
会話相手:What does it look like?
学習者:It’s a small stationery item. You use it to fasten sheets of paper together.
会話相手:Do you mean a stapler?
学習者:Yes, that’s it! A stapler. Now I remember.
会話相手:Don’t worry. It happens to everyone. - 日本語訳
- 学習者:これを英語で何と呼ぶのか思い出せません。喉まで出かかっているんです。
会話相手:どんな見た目ですか。
学習者:小さな文房具です。紙を一緒に留めるために使います。
会話相手:staplerのことですか。
学習者:そう、それです! stapler。今、思い出しました。
会話相手:気にしないで。誰にでもありますよ。 - 使う場面
- 物は分かっているものの、その英語名だけを思い出せないときに使える一連の流れです。
- 注意点・誤用例
- stationeryは文房具類をまとめて表す数えない名詞なので、a stationeryとはせず、a stationery itemとします。
- 発音・ニュアンス
- That’s it!は候補が当たった瞬間の「それだ!」です。明るく短く言い、その後にA stapler.と単語を反復すると記憶にも残りやすくなります。
名前を尋ねる便利な質問
- What do you call this in English?:これは英語で何と言いますか。
- What’s the English word for this?:これに当たる英単語は何ですか。
- I can’t remember what this is called.:これを何と呼ぶのか思い出せません。
- What’s that word again?:あの単語、何だっけ。
- What do you call the thing you use to cut paper?:紙を切るために使う物は何と呼びますか。
What’s that word again?のagainは、単純な「もう一度」だけではありません。以前は知っていた、または直前に聞いたものの、今は出てこないという「何だっけ」の感覚でも使われます。
用途・外見・場所を説明する型
- You use it to cut paper.:紙を切るときに使います。
- It’s used for measuring length.:長さを測るために使います。
- It’s something you use to hold papers together.:紙をまとめておくために使う物です。
- It’s long, thin, and usually made of plastic.:細長く、たいていプラスチック製です。
- It looks like a pair of scissors, but it’s smaller.:はさみに似ていますが、もっと小さいです。
- You usually find it on a desk.:普通は机の上にあります。
- We keep it next to the printer.:プリンターの横に置いています。
外見を尋ねるWhat does it look like?と、性質や全体的な印象を尋ねるWhat is it like?は区別しましょう。色、形、大きさを知りたいなら前者です。「その店はどんな感じですか」のように全体像を尋ねるなら後者が合います。
stationeryは「文房具」、stationaryは「動かない」という意味です。つづりが一文字違うため、a stationery itemと書くときはeを確認しましょう。また、紙をホチキスで留める動作にはfileではなくstapleまたはfastenを使います。
身近な文房具を説明してみる
- stapler:It’s a tool used to fasten sheets of paper together with metal staples.
- ruler:It’s a long, flat tool used to measure things or draw straight lines.
- paper clip:It’s a small piece of bent wire used to hold papers together.
- hole punch:It’s a tool used to make holes in paper.
- correction tape:It’s used to cover writing mistakes with a thin white strip.
- mechanical pencil:It’s a pencil with thin replaceable lead inside.
名前を隠し、英語の説明だけを読んで物を当てる練習も効果的です。逆に、物を一つ選んで分類、用途、外見の三文を作れば、未知の単語に出会ったときにも応用できます。
ここまでで会話を続ける準備は整いました。次に、「思い出す」に関係するremember、recall、remindが同じ形で使えない理由を整理します。
remember・recall・remind・forgetの違い
- rememberは「覚えている」と「思い出す」の両方に使える
- recallは意識的に記憶をたどる、やや改まった語
- remindは「人に思い出させる」で、目的語に人を置く
「思い出す」と言いたいとき、最も広く使えるのはrememberです。I remember his name.なら「名前を覚えている」、I just remembered his name.なら「たった今、名前を思い出した」となります。
remember:覚えている・思い出す
- I remember her name.:彼女の名前を覚えています。
- I can’t remember her name.:彼女の名前を思い出せません。
- I just remembered where I put the stapler.:ホチキスをどこに置いたか、今思い出しました。
- Do you remember meeting him?:彼に会ったことを覚えていますか。
「思い出せない」はI can’t rememberが扱いやすい形です。It’s on the tip of my tongue.を続ければ、「まったく分からないのではなく、あと少し」という情報を加えられます。
recall:記憶をたどって思い出す
recallは、過去の発言、出来事、細部を意識的に呼び戻す響きがあります。日常会話ではrememberがより一般的ですが、正確な語句や過去の状況を落ち着いて述べるときにrecallが合います。
- I can’t recall his exact words.:彼の正確な言葉を思い出せません。
- Do you recall meeting her before?:以前、彼女に会ったことを覚えていますか。
- I don’t recall seeing that document.:その書類を見た記憶がありません。
I can’t recall the exact name at the moment.は、仕事でも使いやすい言い方です。rememberを使っても誤りではありませんが、recallには記憶を探している落ち着いた響きがあります。
remind:人に思い出させる
- フレーズ
- Please remind me to buy staples.
- 日本語訳
- ホチキスの針を買うよう、私に思い出させてください。
- 使う場面
- 忘れないよう、後で相手から声をかけてもらいたいときに使います。
- 注意点・誤用例
- I remind his name.を「彼の名前を思い出す」の意味では使えません。その場合はI remember his name.です。
- 発音・ニュアンス
- remindは後半のmind側に強勢があります。remind me to+動詞で「私が〜するのを思い出させる」という型になります。
remindは、主語がきっかけ、目的語が思い出す人になります。This song reminds me of my childhood.なら、「この歌が私に子どものころを思い出させる」、つまり「この歌を聞くと子どものころを思い出す」です。
forget:忘れる・覚えていない
I forgot his name.は、名前を忘れたという事実を述べます。一方、His name is on the tip of my tongue.は、忘れているものの記憶のすぐ近くまで来ている感覚を表します。
- I forgot her name.:彼女の名前を忘れました。
- I’ve forgotten what I was going to say.:何を言おうとしていたのか忘れてしまいました。
- I can’t remember his name, but it’s on the tip of my tongue.:彼の名前を思い出せませんが、もう少しで出てきそうです。
rememberは自分の記憶にある情報を取り出す語、remindは人に思い出させる語です。「私はその名前を思い出せない」ならI can’t remember the name.とし、I can’t remind the name.とはしません。
四語の役割が分かると、「忘れた」をすべてI forgot.で済ませずに、状態の細かな違いを表せます。では、on the tip of my tongue以外には、どのような言い方があるのでしょうか。
「思い出せない」を表す類似フレーズの使い分け
- あと少しならon the tip of my tongueまたはI can almost remember it.
- 何も浮かばないならI’m drawing a blank.
- 用事をうっかり忘れたならIt slipped my mind.
似た表現は、記憶がどれくらい近くにあるかで選ぶと分かりやすくなります。「すぐ出そう」「何も出ない」「予定を忘れた」「話の筋を見失った」は、それぞれ別の状態です。
I can’t remember.
I can’t remember.は最も広く使えます。あと少しで出そうかどうかを指定せず、単に「思い出せない」と伝えます。場所、名前、出来事など、対象を後ろに続けることもできます。
- I can’t remember where I left my keys.:鍵をどこに置いたか思い出せません。
- I can’t remember what she said.:彼女が何と言ったか思い出せません。
- I can’t remember the English word for this.:これを表す英単語を思い出せません。
I can almost remember it.
almostによって、思い出す直前まで来ていることを直接表します。on the tip of my tongueより慣用句らしさが少なく、意味を組み立てやすい言い方です。
- Wait, I can almost remember his name.:待って、彼の名前をもう少しで思い出せそう。
- Don’t give me the answer. I can almost remember it.:答えを言わないで。もう少しで思い出せそう。
I’m drawing a blank.
- フレーズ
- I studied this last night, but I’m drawing a blank.
- 日本語訳
- 昨夜これを勉強したのに、何も思い浮かびません。
- 使う場面
- 質問されたものの、頭の中が空白になり、答えや手がかりが出ない場面です。
- 注意点・誤用例
- 「あと少しで思い出せそう」という場面には合いにくく、その場合はon the tip of my tongueを使います。
- 発音・ニュアンス
- blankをやや強く読むと、頭に何もない感覚が伝わります。試験や突然の質問で使いやすい口語表現です。
It slipped my mind.
It slipped my mind.は、予定、連絡、買い物など、覚えていた用事が頭から抜けたときの「うっかり忘れていた」です。名前が今にも出そうな状態とは異なります。
- I’m sorry I didn’t call you. It completely slipped my mind.:電話しなくてごめんなさい。すっかり忘れていました。
- I meant to bring the document, but it slipped my mind.:書類を持ってくるつもりでしたが、うっかり忘れました。
His name escapes me.
His name escapes me.は、「彼の名前が今はどうしても思い出せない」という落ち着いた響きです。the exact dateやthe titleなどを主語にして、The exact date escapes me at the moment.とも言えます。
on the tip of my tongueほど「もうすぐ出そう」という期待は強くありません。今は記憶から取り出せないという事実を、少し控えめに述べたいときに向いています。
I can’t put my finger on it.
I can’t put my finger on it.は、名前だけでなく、違和感の原因や微妙な違いを特定できないときに使います。Something feels different, but I can’t put my finger on it.なら、「何かが違う気はするが、どこかは特定できない」です。
I lost my train of thought.
会話の途中で何を言おうとしていたか分からなくなったなら、I lost my train of thought.が合います。単独の単語ではなく、話の流れそのものを見失った状態です。
- Sorry, I lost my train of thought.:すみません、何を話そうとしていたか分からなくなりました。
- Where was I?:どこまで話していましたか。
- What was I saying?:私は何を言っていましたか。
I’m almost there.とI’m this close.
I’m almost there.は本来「もうすぐ到着する」という意味ですが、考えや答えに近づいている流れでも使えます。電話で単独使用すると到着の意味に取られやすいため、Don’t tell me yet. I’m almost there.のように文脈を添えましょう。
I’m this close.は、親指と人差し指で小さな間隔を示しながら「あとほんの少し」と伝える口語表現です。Give me a second. I’m this close to remembering it.のように、to remembering itを続けると意味が明確になります。
直訳や冠詞で起こりやすい間違い
- 日本語につられてthroatを使わない
- a tipではなくthe tipを使う
- tongueのつづりと所有格を確認する
最も避けたいのは、日本語の「喉」をそのままthroatに置き換える直訳です。It’s coming up to my throat.では、言葉を思い出しかけているという慣用的な意味になりません。身体の不調や、何かが喉へ上がってくる状況を連想させる可能性があります。
誤:It’s coming up to my throat.
正:It’s on the tip of my tongue.
「喉まで出かかっている」は単語単位で直訳せず、英語の決まったまとまりとして覚えましょう。
a tipではなくthe tip
tipは「先端」です。この表現では舌の特定の部分である「その先端」を指すため、on the tip of my tongueとtheを使います。on a tip of my tongueとはしません。
my tongueを省略しない
on my tongueだけでは、「舌の上に味や物がある」という文字どおりの意味に近づきます。慣用表現ではon the tip of my tongueという一続きの形が必要です。
tongueのつづりを確認する
tongueは発音だけを頼りにするとtongやtungと書きたくなることがあります。正しいつづりはt-o-n-g-u-eです。母語を意味するmother tongue、言い間違いを意味するa slip of the tongueと一緒に見ると定着しやすくなります。
「言いかけたが、あえて言わなかった」という用法
on the tip of one’s tongueは、記憶が出てこない場合だけでなく、「言葉は分かっていたが、口に出す直前でやめた」という意味になることがあります。前後の文によって判断します。
- I can’t remember his name. It’s on the tip of my tongue.:名前を思い出せない。
- An angry reply was on the tip of my tongue, but I stayed quiet.:怒った返事を言いかけたが、黙っていた。
- I had a question on the tip of my tongue, but the meeting ended.:質問しようとしていたが、会議が終わった。
誤解を避けたいなら、記憶の話ではbut I couldn’t remember it、発言を控えた話ではbut I didn’t say itを続けます。前後の動作を明示すれば、どちらの意味か判断しやすくなります。
相手が思い出せないときの自然な返し方
- まず待つか、ヒントが必要かを確認する
- 答えを即座に言わず、最初の音や用途をヒントにできる
- That happens to everyone.で安心させられる
相手がIt’s on the tip of my tongue.と言ったら、すぐ答えを言うとは限りません。自力で思い出したい人もいるため、Do you want a hint?と確認すると親切です。
少し待つ
- Take your time.:ゆっくりでいいですよ。
- No rush.:急がなくて大丈夫です。
- I’ll give you a second.:少し待ちますね。
- There’s no hurry.:急ぐ必要はありません。
Take your time.は、考える時間を与える穏やかな表現です。会議など時間が限られている場面では、必要に応じてWe can come back to it later.と伝え、「後で戻りましょう」と進行できます。
ヒントを出す
- Do you want a hint?:ヒントが要りますか。
- It starts with an S.:Sで始まります。
- It has two syllables.:二音節です。
- It sounds a little like “paper.”:paperに少し似た音です。
- You used it yesterday.:昨日それを使っていました。
- You can usually find it near a printer.:普通はプリンターの近くにあります。
語学練習では、答えをそのまま示す前に、最初の音、音節の数、用途などを一つだけ出す方法があります。一つで足りなければ二つ目を加え、相手が思い出す余地を残します。
候補を尋ねる
- Do you mean a stapler?:staplerのことですか。
- Are you thinking of the word “stationery”?:stationeryという単語を考えていますか。
- Is “ruler” the word you’re looking for?:探している単語はrulerですか。
- Could it be “paper clip”?:paper clipではありませんか。
Do you mean…?は、相手の意図を確認する短く便利な形です。Are you thinking of…?は、相手の頭にある候補を推測する響きがあります。どちらも語尾を軽く上げると質問らしくなります。
安心させる
- That happens to me all the time.:私にもよくあります。
- Don’t worry. It happens to everyone.:気にしないで。誰にでもあります。
- I know the feeling.:その感じ、分かります。
- Words disappear at the worst possible moment sometimes.:言葉は困るタイミングで出なくなることがありますよね。
単語が出ないことを失敗として扱わず、会話の中で助け合える状態にすることが大切です。返答まで一緒に練習すると、自分が思い出せない側でも、相手を助ける側でも対応できます。
読んだ直後にできる発話トレーニング
- 基本文を前後の表現と一緒に音読する
- 物の名前を隠し、分類・用途・外見で説明する
- 短い録音で発音と間の取り方を確認する
理解した表現を会話で使うには、思い出せない瞬間から思い出した瞬間までを一続きで練習します。必要なのは、声を録音できる端末と、身の回りの物だけです。
第1段階:基本の三文を音読する
- I know this word, but it’s on the tip of my tongue.
- Give me a second. I can almost remember it.
- That’s it! Now I remember.
一文目は困っている声、二文目は考えている声、三文目は思い出した明るい声で読みます。感情を変えると、文の意味と音が結び付きやすくなります。
第2段階:主語と時制を入れ替える
- His name is on the tip of my tongue.
- The answer is on the tip of her tongue.
- The title was on the tip of my tongue.
- The names were on the tips of our tongues.
一つの文を丸暗記するだけでなく、name、answer、titleを入れ替えます。次にmyをherやourへ変え、最後にisをwasへ変えます。少しずつ動かせば、語順を崩さずに応用できます。
第3段階:身の回りの物を説明する
机の上から一つ選び、英語名を言わずに説明します。次の枠を順に埋めてください。
- 分類:It’s a kind of…
- 用途:You use it to…
- 外見:It’s small, long, round, flat…
- 素材:It’s made of…
- 場所:You usually find it…
たとえばrulerを隠すなら、It’s a long, flat tool. You use it to measure things or draw straight lines. You often find it on a desk.と言えます。難しい形容詞を探すより、知っている短い語を重ねることを優先しましょう。
第4段階:一人二役で会話する
- 練習会話
- 学習者役:What’s that word again? It’s on the tip of my tongue.
会話相手役:Do you want a hint?
学習者役:Yes, please.
会話相手役:It starts with an R. You use it to measure things.
学習者役:A ruler?
会話相手役:That’s right.
学習者役:Yes, that’s it! A ruler. - 日本語訳
- 学習者役:あの単語、何だっけ。喉まで出かかっている。
会話相手役:ヒントが要りますか。
学習者役:お願いします。
会話相手役:Rで始まります。物を測るために使います。
学習者役:rulerですか。
会話相手役:正解です。
学習者役:そう、それです! ruler。
役を変えるときは、声の高さや向きを少し変えると練習しやすくなります。学習者役では考える間を取り、会話相手役では急かさない速度で話します。

第5段階:録音を確認する
- tip ofを不自然に分断していないか
- tongueの語尾を「グ」と強く破裂させすぎていないか
- 一語ずつ同じ強さで読んでいないか
- Give me a second.が相手への自然な合図になっているか
- That’s it!で思い出した変化が声に出ているか
一度にすべて直す必要はありません。最初はtongue、次はtip ofの連結、その次は文全体のリズムというように、確認項目を一つに絞ります。録音を聞いたら、同じ文を一回だけ言い直して終了しても構いません。
無理なく続ける復習の流れ
- 最初の復習:基本文を見ながら三回音読する
- 次の復習:日本語だけを見て英語を言う
- その次の復習:name、word、answerを入れ替える
- 仕上げの復習:物を一つ選び、会話形式で説明する
単語カードの表には「喉まで出かかっている」、裏にはIt’s on the tip of my tongue.だけでなく、Give me a second.とThat’s it!も書いておくと、会話の流れごと思い出せます。
一人での音読後、相手の反応も含めた練習を試したい場合は、短いロールプレイを依頼すると実践に近づきます。たとえば「私が文房具を説明するので、英単語を推測してください」と最初に伝えると、目的の明確な練習になります。
すぐ使えるフレーズを場面ごとに確認
- 中心表現はIt’s on the tip of my tongue.
- 会話を保つにはGive me a second.やHow can I describe it?を添える
- 思い出したらThat’s it!やIt just came to me!で反応する
最後に、会話の段階ごとに使える表現を並べます。すべてを一度に覚えず、まずは困る・説明する・思い出すの三段階から一文ずつ選んでください。
言葉が出ないことを伝える
- It’s on the tip of my tongue.:喉まで出かかっています。
- I know this word, but I can’t remember it right now.:この単語は知っていますが、今は思い出せません。
- I can almost remember it.:もう少しで思い出せそうです。
- What’s that word again?:あの単語、何でしたっけ。
- Give me a second.:少し待ってください。
別の言葉で説明する
- How can I describe it?:どう説明すればよいでしょう。
- It’s a kind of stationery.:文房具の一種です。
- You use it to hold sheets of paper together.:紙をまとめて留めるために使います。
- It’s small and usually made of metal.:小さくて、たいてい金属製です。
- You often find it on a desk.:机の上でよく見かけます。
相手に助けを求める
- Can you help me?:手伝ってもらえますか。
- What do you call this in English?:これは英語で何と言いますか。
- Do you know the word I mean?:私が言おうとしている単語が分かりますか。
- Could you give me a hint?:ヒントをもらえますか。
思い出したときに反応する
- That’s it!:それです。
- I’ve got it!:分かりました。思い出しました。
- Now I remember.:今、思い出しました。
- It just came to me!:今ふと思い出しました。
- Yes, that’s the word I was looking for.:そう、それが探していた単語です。
英会話では、目的の単語が出ないこと自体より、その後にどう動くかが重要です。It’s on the tip of my tongue.で状態を知らせ、知っている語で説明し、候補が出たらThat’s it!と反応する。この一式が身に付けば、単語一つで会話全体が止まりにくくなります。
「知らないから話せない」ではなく、「名前は今出ないけれど、別の言葉で伝えられる」と考えてみてください。まずは目の前にある文房具を一つ選び、It’s on the tip of my tongue.から始まる三往復の会話を声に出してみましょう。
「喉まで出かかっている」の英語に関するQ&A
- 基本形、時制、rightの役割を短く再確認できる
- 似た表現との使い分けを確認できる
- 直訳や発音に関する疑問を解消できる
ここでは、実際に使う直前に迷いやすい点を短い答えで確認します。
「喉まで出かかっている」は英語で何と言いますか?
It’s on the tip of my tongue.と言います。知っている名前や単語を、今だけ思い出せないときに使う定番表現です。
right on the tip of my tongueのrightにはどんな役割がありますか?
rightは「まさに」という強調です。It’s right on the tip of my tongue.とすると、本当にあと少しで思い出せそうな感覚が強まります。
過去に思い出せなかったことはどう表しますか?
isをwasに変え、It was on the tip of my tongue.とします。but I couldn’t remember itを続けると、喉まで出かかっていたのに思い出せなかったことが明確になります。
throatを使って表現できますか?
通常は使いません。日本語の「喉」を直訳せず、英語ではon the tip of my tongueという決まった表現を使います。
I’m drawing a blank.との違いは何ですか?
on the tip of my tongueは、あと少しで思い出せそうな状態です。I’m drawing a blank.は、頭が空白になり、答えや手がかりが何も浮かばない状態を表します。
It slipped my mind.との違いは何ですか?
It slipped my mind.は、予定や用事をうっかり忘れていたときに使います。知っている名前や単語がもう少しで出そうな状態には、on the tip of my tongueが適しています。
相手が思い出せないときは何と返せばよいですか?
Take your time.やDo you want a hint?が自然です。答えをすぐ教える前に、相手が少し待ってほしいのか、ヒントがほしいのかを確認できます。
tongueはどのように発音しますか?
カタカナでは「タング」に近く、語尾のueを独立して読みません。最後は舌先で強い「グ」を作らず、舌の奥を上げて鼻へ響かせる音です。

